催眠おじさんVS美少女勇者:地球最大の決戦!RtA 作:ルシエド
大型バーテックスは、それぞれが十二星座の名を冠し、固有の能力を持つ。
一回目の敵は水瓶座。
水を操る能力を持っていた。
二回目の敵は天秤座。
竜巻を操る能力を持っていた。
美森の勇者システムを導入し、この時代の勇者システムは相応に強化されている。
須美銀園子で連携すれば、敵が一体なら楽勝。
二体なら手こずる。
三体までなら死者無しで倒せる可能性が高い。
四体出てくれば、勇者が命を捨てて相打ち覚悟で挑まなければならない段階に入る。
「……いや……いやいやいや! 増えすぎだろ!」
だから、銀が大声を上げたのは、当然のことだった。
「
先頭を往くは蠍座。
即死毒のバーテックス。
その上を飛行するのは射手座。
破壊の針を矢として放つバーテックス。
射手座の後ろに見えるのは乙女座。
広範囲を爆撃し焦土とするバーテックス。
やや迂回するようにして側面から攻めて来ようとしているのは山羊座。
地震を操るバーテックス。
後詰めに回っているのは蟹座。
攻撃反射能力を持った反射板をいくつも飛ばしているバーテックス。
「いや……これ本気でヤバくないか……?」
「……」
「敵が多いね……どうしよっか」
敵一体に対し、銀が前衛、園子が中衛、須美が後衛、この三人で数の優位を常に作り続けるのが彼女らの基本戦術である。
敵が二体以上になると、この基本戦術は途端に優位性を失ってしまう。
三体以上になるともう話にならなくなってくる。
一人一体で受け持っても、援護のない銀は叩き潰され、園子は攻撃力が足らず磨り潰され、須美は火力不足で押し留め切れず接近されて消し飛ばされる。
仮に一人一体を受け持つことに成功しても、敵が五体である以上、素通りした二体が世界をそのまま消滅させてしまう。
気合や根性でひっくり返せない、絶対的な戦力差が、そこには存在していた。
「パワーだけはアップしてるらしいし、とにかく危険でも攻撃して敵の数を減らす?」
「ちょっと銀。それだと真っ先に死んでしまうのはあなたよ」
「死んじゃいそうなのはダメだよ。怪我もダメ。
私達の方が数が少ないんだから、一人欠けたらその時点で負けになっちゃう。
ジリ貧になっちゃうかもしれないけど、安全策で行った方がいいかなあって思うよ」
過去最高にグダグダに戦闘に入ったというのに、過去最悪の敵の布陣だった。
まるで前編がボーボボで後編が鬼滅の刃最終決戦のようなアンバランス感。
ギャグの流れで微妙に心が入り切らなかった少女を確実に殺しに来ている状況。
所詮は畜生のバーテックスに人の心を解することなどないということか。
「やはりバーテックスは悪……!」
須美は改めてバーテックスの悪性を理解する。
バーテックスが居なければ、勇者が戦う必要はなかった。
世界が危機に陥ることはなかった。
中庭の大惨事はなかった。
須美の一世一代の名台詞はちゃんとおじさん本人に言えた。
名台詞の感動は余すことなくおじさんに伝わっていたはずだった。
須美の決意と覚悟はギャグにならなかったかもしれなかった。
そうしていればおじさんも須美にもっとメロメロになっていたかもしれなかった。
おじさんは叔父として姪をもっと溺愛していたかもしれなかった。
須美がちょっとやってもらいたがっていたおじさんの肩車まで行けたかもしれなかった。
あーんしておじさんが受け入れてくれるようになっていたかもしれなかった。
だがマネキンだった。
マネキンだったのだ。
『四国で唯一頬を赤らめてマネキンに誓いを立てた女』に須美はなってしまった。
須美の脳内で"バーテックスの罪"が八割くらい中庭に集約されているような気もするがきっと気のせいだろう。彼女は気高い勇者なのだから。
全てバーテックスが悪い。
バーテックスこそが諸悪の根源。
そこに疑いの余地などなかった。
だが勝ちの目が見えない。
このままではバーテックスが全て悪いのに、勇者達は敗北してしまう。
諸悪の根源が笑うことになってしまう。
かに、見えた。
「臆するなメスガキ共!」
「「「 ! 」」」
「奴らは数が多いだけの雑魚! 催眠集団売春堕ちする前のギャル軍団に等しい!」
止まりし時の中央。橋を覆う樹海の上に、悠然と立つ男が一人。
「あ、あれは……」
「おじさま!? どうして樹海に!? 樹海化で皆時間は止まってるはずなのに!」
「わ~、インチキおじさんすごい~!」
「私も居るわよ?」
「東郷さん!」
狙撃銃を杖のようにして立つ東郷美森が、勇者の装束で微笑んでいる。
そうして、おじさんと東郷が少女三人を守るように立つ。
須美は青き勇者装束。
銀は赤き勇者装束。
園子は紫の勇者装束。
東郷は須美の装束を更に青白に寄せた勇者装束。
私服のおじさんが恥ずかしいぐらいに浮いていた。
たとえるならば、プリキュアの薄い本にただ一人存在している竿役おじさんのように。
天井知らずに恥ずかしい存在と成り果てたおじさんは、胸の前にスマホを構えている。
そこにこそ、彼がこの世界に無理矢理参戦できた理由があった。
「お前達に勇者システムがあるように、小生はTMNシステムの開発を完了した」
「TMNシステム……?」
「『自己感度三千倍』。
催眠術師の、究極最強の自慰システム。
これを調整し、長時間安定稼働させ……
時が止められた世界に入るために必要なものは三つ。
一つ目は時間停止AVに繋がる能力の保有。これは催眠があった。
二つ目は『時』という神の領域への到達。おじさんは既に一歩手前に居た。
そして三つ目が……おじさんでは微妙に不足していた、時を感じ理解する感覚能力である。
時間感度三千倍化総合システム―――
感度三千倍催眠は己にかけるならば時の世界への入門を成功させ、対魔忍にかければ性交を成功させる。
大切なのは自己か、他人かということだ。
本当は、まだまだTMNシステムは実戦投入できるレベルにはなかった。
だがおじさんは媚薬で感度を引き上げ、無理にこれを実用レベルに仕上げていた。
原理的にはドラクエのきのみ、ポケモンのヨクアタールに相当するドーピングと言えるだろう。
薬剤の併用は高血圧や糖尿病のリスクを爆発的に引き上げるが、背に腹は変えられない。
おじさんは命懸けで、勇者の危機に駆けつけんとしたのである。
それを理解している美森は、心底心配そうにおじさんを見ていた。
「おじさま、TMNは試作版で無理して出てきたんですから無理はしないでくださいね?」
「分かってる。どんな不具合が起こるか分からないからな」
「油断せず行きましょう」
「いくぞ須美! 銀! 園子! 美森! 諸悪の根源であるバーテックスを倒すんだ!」
「いかなる時も須美ちゃんのせいにはしないけど、バーテックスのせいにはするの流石です」
好ましい人間の前では『お前じゃなくて小生のせいだ』と言い、嫌いな人間や敵に対しては『お前のせいだしお前が悪いぞ』と言う、好感度基準のダブスタ。
これこそがダークサイドの真骨頂だ。
初手はバーテックスが取った。
射手座が、矢にして針である飛び道具を放つ。
それは針。
光の針。
一本一本が、鋼鉄の戦艦を前後一直線に、豆腐のように貫く威力があった。
同時に放たれた針の数は数は千や二千ではなく、万に少し届かないくらいか。
射手ゆえに必殺。射手ゆえに矢。されど羽無き矢は針である。
樹海の空を覆うほどの数のそれを、おじさんがぼんやり見上げていた。
ぎょっとして、須美が慌てて弓を引く。
実は須美よりも早く反応していた美森が、須美の反応と動きを見て、少しだけ引き金を引くのを待った。
「危ない!」
システムのバージョンアップにより、チャージ速度も破壊力も格段に増した『溜め撃ち』が、須美の弓から放たれた。
針の雨を見た瞬間、須美は一本一本撃ち落とすことを諦めた。
ゆえに、力を込めて爆裂させた。
須美の矢は爆発し、針を粉砕するのではなく爆風でまとめて吹き飛ばす。
僅かに残った数本の針を、一呼吸待った東郷の正確無比な狙撃が粉砕した。
構えた狙撃銃を下ろした美森が横を見ると、須美がおじさんに顔真っ赤一歩手前といった表情で掴みかかっている。
「な……なんで微動だにしないんですか!? 避けなかったら死にますよ!?」
「須美のその顔が見たかった」
「もう!」
カウンターで、美森が牽制の銃撃を放つ。
美森の牽制が怪物達の移動と攻撃を抑え込み、バーテックスは突破の方法を模索し始める。
"突破される前に次の手を打ちたい"と美森は考え、おじさんの意見を求めた。
「おじさま、敵は五体。
これを乗り越えてしまうと敵が進化して次回が本格的に厳しくなりますが……」
「小生が参戦できるなら問題はない」
「ん……それは、そうかもしれませんね」
美森が納得した様子で頷く。
須美、銀、園子が「ん?」と首を傾げる。
おじさんの手の中で、スマホがくるりと回った。
『そういえばおじさまがこんなにスマホを長く持ってるのは珍しい』と、須美は思った。
「私が二体。おじさまが二体。須美ちゃん達に一体担当してもらいましょうか」
「そうだな。そうしよう」
「えっ……む、無茶ですよ! おじさまスキップして足を挫くくらいなのに!」
「うるせえ」
「大丈夫よ須美ちゃん。おじさまを信頼して任せてあげて」
「……っ、……東郷さんは何か知ってるんですか?」
「ええ。私はあの人のあの力に、何度も助けられたから」
おじさんが、指をぱちんと鳴らす。
「切り札を切る」
それが、パレードの始まりを告げる鐘の音となった。
おじさんが持参したバッグから、スマホが飛び出す。
飛び出す。
飛び出す飛び出す飛び出す。
一個や二個ではない。
明らかに百を超えるスマホがバッグから自分の意思で飛び立ち、自分の力で飛翔し、おじさんの周りをくるくると飛び回っている。
そしておじさんの背後に、整列した。
その姿を、須美は昔絵本で見たことがあった。
サバンナの広大な大地を、最も強く偉大なオスが先頭に立ち、背後に仲間達が並ぶ姿。
大自然の中でこそ際立つ、獣が本能で構築する、野生の群れ。
「大量のスマホ……!?」
「見なさい、須美ちゃん。
あれがおじさまの軍勢。
スマホという名の、王者の群れよ」
「シャブでも打ってるんですか?」
「私が愛国ならおじさまは愛姪。
其は無数にして一つ。
其は無機にして有機。
輝く心に輝く液晶!
おじさまという一つの意思、一つの催眠に隷属する、無数の催眠神話群……!」
「あ、熱く語ってる姿が絶妙に気持ち悪い……!」
「いや須美も好きなもの語る時はあんな感じだぞ」
「だよね~」
「!?」
スマホの画面が輝いていく。
スマホが光になっていく。
光が風となり、雨となり、弾丸となる。
風がおじさんに吹き付けその体に纏われた。
雨がおじさんに降り注ぎその体に染み込んだ。
弾丸がおじさんに突き刺さり、その体に打ち付けられた。
次々と、光になったスマホがおじさんという個に融合していく。
「こ、この姿は―――この光は―――!?」
無数の光が一際強く輝き、そして。
「―――『
百のスマホを繋げた鎧、剣、翼、頭部装甲を身に着けたおじさんが、その姿を表した。
「ダサいね~」
「……」
「違いますわしおじさん! 園子に悪気はないんです! アタシもないから!」
「東郷さん……? あの、あのおじさまは」
「どうかした? おじさまが何かおかしいのかしら」
「全部」
驚愕する人間達の様子に興味はないと言わんばかりに、バーテックスが東郷の牽制を抜け、攻め始める。
蟹座は浮遊する反射板を飛ばし、攻撃を反射することができる。
射手座は針の如き矢を飛ばし、敵を撃つ。
この二つの能力を合わせることで、敵に四方八方からの包囲攻撃を可能とするのだ。
火薬を使った銃弾よりも遥かに速く、人間が扱える槍よりも遥かに大きな針が、四方八方・上左右前後から一斉に襲いかかる。
おじさんが指を鳴らすと、その針の全てが、空中で静止した。
「な、なんだ? 四方八方から来てた針が全部止まって……」
「この針は奴らの意思に沿って飛ぶ。
攻撃者の意思に従っている。
誰かの意思に従うということは、寝取れるということだ。
寝取れるということは、裏切らせることができるということだ。
通常の種付けおじさんは性交を経なければ寝取れない。
だが催眠おじさんの一族ならば―――スマホの画面を見せた瞬間に、寝取れる」
「おじさま、脳細胞が家出しておられませんか?」
須美は己の口から、自分でもびっくりするくらい無感情な声が出ている気がした。
「耳を澄ませてみろ。耳を澄ませろ、耳須美」
「耳を須美の……澄ませたからって、何かが聞こえるわけでもないでしょう?」
『ごめんなさい、バーテックス様……!』
『私これ以上されたらもう……!』
『この気持ちは催眠なんかじゃない』
『先輩ごめんない……マシュはこの人と幸せになります』
『あはは……あたし、裏切っちゃった……』
『気持ちいいからしょうがないじゃない!』
『もうバーテックス様の粗末な御霊じゃ我慢できないの』
「聞こえるはずだ須美……針の雌豚どものこの声が!」
「気持ち悪い!」
かつてある宇宙で、催眠おじさんの一族が最弱の時代があった。
催眠アプリは正面直線上にしか効果を及ぼさないことが多く、正面にさえ立たなければ脅威はなく、目標が正面に居ても事前動作で避けられてしまうことが多かった。
種付けおじさんのカースト最下位。
支配者にあるまじき弱者。
だが彼らは諦めなかった。
彼らは己の能力ではなく、催眠アプリの可能性を信じた。
いつか英雄の時代は終わり、個人の能力ではなく機械の時代が来る。
個人の才能に依存しない、機械の大量生産の時代が来る。
誰にでも使える催眠アプリの時代が来ると、彼らは未来を夢見たのだ。
その時代に彼らが考案したものの一つが、『
全身にスマホを貼り付け、全方向にスマホ画面を向ける。
これによって全方位への常時催眠アプリ起動が可能となっていた。
理論上敵が時間を止めて接近してすら、全方位への常時催眠を受けて無力化されてしまう上、全スマホを一方向に向ければ宇宙怪獣すら従える。
百以上を基本とする催眠アプリは使い手の催眠力を桁違いに高め、周囲を浮遊する数個のスマホは能力を中継する催眠ドローンへと昇華される。
催眠おじさんの一族は、かくして宇宙の頂点へと駆け上がった。
対人においてはハイパー・無敵と言われるほどに。
催眠おじさん達は歴史の陰に消え、やがて彼らは伝説となる。
その伝説の一族の子孫、たった二人の生き残り、その片割れがここにいる。
「小生の切り札とは―――小生自身が、催眠アプリになることだ」
全身催眠アプリ。
ゆえに全方向に隙はなし。
それは世界を陵辱し、世界を雌落ちさせる究極の力。
後頭部からでも妊娠させることができるその姿は、まさしく人類の永遠の敵。
美森は謳うように、誇らしく、楽しげに、おじさんを褒め称えた。
「恐れ慄きなさい。あれこそ、おじさまが天の神と互角に戦った究極の姿―――!!」
「東郷さんもしかしておじさまに関して私より遥かに麻痺してませんか?」
いくつかの宇宙を、地球を、おじさんはこれで救ってきた。
ドイツ言語圏では『スマホ太郎』とドイツ語の名で呼ばれ恐れられたことすらもあるという。
おじさんが指を一本振れば、空中で止まっていた雌豚の針達が快楽欲しさに裏切り、巨大なバーテックス達に殺到した。
バーテックス達は射手座の針にハリネズミのような状態にされ……なおも止まらない。
「オイオイ、全身ハリネズミになっても死ぬ気配ねえぞ。
どういう生物だ? 普通の生物じゃあねえな……さて、どうすっか」
射手座がまた針を放ち、おじさんがまた催眠で止める。
だが今度は針同士がぶつかり合い、ガチガチカチカチと音を立て始めた。
「わしおじさん?
なんか針がカチカチいってません?
アタシホラーでこういうの見たことあるような……」
「ちゃんと雌豚にしねえとこういう風に針と針が修羅場起こしちまうんだよな……」
「針が修羅場」
「針が張り合っちまうのさ、小生を取り合ってな」
「針が張り合う!?」
「
「
おじさんは腕を振り下ろし、自分と一体化した百のスマホとは別の、独立飛翔する数個の催眠ドローンを突撃させる。
「
飛んでいったスマホは催眠アプリでバーテックス達に催眠をかけるが、効きが悪い。
あっという間に解除されてしまう。
バーテックスの足止めにはなったが、バーテックスを掌握できない。
手応えの悪さに、おじさんは軽く舌打ちした。
「催眠耐性が高い……いや、違う。
それでいて強烈な使命感だけはある。
黒人托卵おじさんが見れば、
『こんな祝福されない命を生み出しやがって!』
と怒っていたところだ。こんな、他の生命を滅ぼすためだけの生命を生んで……!」
おじさんは苛立ちのまま、百を超えるスマホの催眠アプリを、一点に集中した。
「催眠領域展開・
射手座が『何かを思い出した』ように、バーテックス達から離れ、おじさんの前で大きな体をゆったりと前に傾ける。
まるで、王に忠誠を誓う騎士のように。
「お前射手座? はーん。
よし、お前は今日から射精座のバーテックスだ。
……小学生が居るからやめとこ。
うーん……よし、
『催眠NTR』。
隠されていたおじさんの奥の手。
秘めていた究極の力。
東郷美森が来た未来、最終決戦でこうしてバーテックス全てを寝取られた天の神は、おじさんと相打ちに持ち込まれてしまったのである。
山羊座が流れのまずさを感じて、地震を起こそうとする。
素の状態ではほぼ全員が飛べないのが勇者だ。
人間は地に足をつけていないと戦えない。
人間特攻の地震攻撃が発動され―――おじさんが地面を蹴ると、それだけで地震が止まる。
「全身催眠状態の小生にそんなものは通用しない」
地面が絶頂していた。
おじさんに蹴られてガチイキしていた。
蹴るだけで催眠から絶頂までのプロセスが完了していた。
地震が、地面が、旦那に言い訳できないほどにマゾ豚快楽落ちしている―――!
概念にすら催眠を掛ける極大のスケール。
この状態のおじさんは、力の規模が極大化しており、星すらも手中に収めることが可能だ。
時が止まった世界にさえ入ることができれば、止まった時の中で戦うことができれば、神々が相手ですら"ワンチャン"がある。
相手がメスであれば、戦いの中では負けることなどありえない。
おじさんは味方に付いた射手座の上に乗り、先頭になって進む。
少女らの盾になるように。
敵からの攻撃を己が防ぐと言わんばかりに。
誰よりも前に出て、戦いに挑む。
「皆の者、小生に続け!
この戦いは自由のためでも平和のためでも愛のためでもない!
正義のための戦いから一番遠い戦いだ!
小生が全てを支配するために!
小生が支配するお前達が!
お前達を支配しようとする神とその使徒を打ち倒し、明日も生きるための戦いだ!」
樹海に、おじさんの声が響く。
「人を殺す邪悪な支配者から世界を取り返し!
本当に多少でしかないが!
多少マシな、人を殺さない邪悪な支配者に世界を献上してみせろッ!!」
それは善が悪を倒す時に述べられる口上ではない。
悪が悪を討つ時に並べられる口上だった。