催眠おじさんVS美少女勇者:地球最大の決戦!RtA 作:ルシエド
ホモおじさんは笑い、懐に手を突っ込んだ。
おじさんと少女達が、咄嗟に構える。
夏の日差し、蝉の声、さざめく木々の新緑に、遠くより響く少年少女のスポーツの歓声……夏の風に乗る夏の風物詩達を切り裂くように、『赤い光』が空中を切った。
「まさか、いきなりこの切り札を切らされるとは思ってもみませんでしたよ」
赤い光の剣。遠目にはめっちゃ長い交通整理の棒のように見えるが、刀身が光の刃で構築されており、おじさんはホモおじさんが持つそれに、とても見覚えがあった。
「……その、光の剣は」
「正式名称は忘れましたがジェダイが振ってる光線銃の弾とか跳ね返すやつです」
「そこまで覚えてるなら正式名称覚えとけよ」
「あ、最近漁った乃木家の秘匿資料にあった神世紀72年の鏑矢様の武器と似てる~」
「やめろ園子! 変な風評被害を拡散させるな!!」
「私達の先輩はBLおじさんだったのかな~」
「やめろ!」
おじさんの危機感が、最大限に高まる。
だがもう遅い。須美の力で揺らいだ催眠を、ホモおじさんはおじさん達が予測した速度より遥かに速くに補強し、彼と彼女らの追撃を既に防いでいる。
領域が、踏まれている。
この空間全体が、催眠の足で踏み抑えられているような……そんな感覚。
おじさんと勇者達の体の動きが阻害されている。
否。"何もしないことを受け入れさせられている"。
「気を付けろ! 小生はこの剣を知っている!
勇者と同じ!
バーテックスと同じだ!
代理戦闘の駒!
力を与える者と力を受け取る者、両者の目的が一致した―――」
「その通り」
ホモおじさんが、世界に赤い光の刃を突き立てる。
その瞬間、催眠のレベルが、更に桁違いに上昇した。
素の状態のホモおじさんは実のところ、素の状態のおじさんと催眠合戦をすれば成すすべなく負けるレベルの力しか無かった。
催眠おじさんのレベルを強さに例えるなら、チャドを孕ませることはできるが黒崎一護を孕ませることができない、そのくらいのレベル。
だが、今は違う。
王クラスの催眠術師であるおじさんに抵抗すら許さず、そのおじさんを超える出力値を持つ園子にも邪魔させず、ホモおじさんの催眠が周囲を飲み込んだ。
剣豪が振るうその赤き刃は、使えば使うほどに、使用者の力を高めていく。
「ですがもう遅い。
この赤き光の剣はダークサイドの男根そのもの……
所有者の力を何倍にも高め、世界に"挿入"することで、世界を絶頂させる!」
ククク、とホモおじさんは笑う。
「ゲスの暗黒卿があなたを参考にして完成させたものですよ……分かりますか?」
世界への催眠干渉。
外付けツールによる弱い催眠術師のブースト。
全て、おじさんがこれまで見せてきたものだ。
それを統合した剣を持つ者―――催眠剣豪。
それが強化形態を使用していないおじさんを凌駕するのは、必然のことであった。
同時に。
これは
世界への干渉と、力無き者への外付けアイテムによる強化。
催眠おじさんと、おじさんの力を参考にしたアイテムで下駄を履いているホモおじさんと、神樹の勇者―――三者は、基本の部分に共通プロトコルを持っていた。
なればこそ、暫定で最も強い力を持つホモおじさんが場を支配する。
おそらく今神樹が世界を樹海化させても、ホモおじさんの固有結界『催眠アナル中出しホモ妊娠双子出産領域』には押し負けてしまうだろう。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
おじさんが頬を赤らめ、熱っぽい目でホモおじさんを見つめる。
ホモおじさんがシャツの裾を上げ、毛だらけのデブった腹を出すと、おじさんは顔を赤らめて咄嗟に目を逸らした。
おじさんの息は切れ、心臓は早鐘を打ち、ホモおじさんから目が離せない。
どこか楽しくて、どこか嬉しくて、どこか幸せで、何故か苦しかった。
その気持ちを、叔父さんは知っている。
おじさんの初恋は、可愛らしい女の子だった。
黒く長い髪の、生真面目で頑固者で、年齢不相応なくらいに体は大人っぽくて、笑うと朝顔の花のようで、真っ直ぐで不器用だからすぐ転びそうな、そんな女の子。
二度目の恋は、むさくるしいホモおじさんだった。
「おじさま! おじさましっかり! おじさまは小さい女の子が好きですよね!?」
須美がおじさんに抱きついて止めようとするが、抑止力になりもしない。
「いや別に……
須美のことはまあ……嫌いじゃないけど……?
それはそれとして小さい女の子が好きっていうかと別に……
どっちかっていうと安芸さんくらいのバランスが……めっちゃ好き……」
「おじさまー! うっ、私も……」
催眠に、飲み込まれていく。
「東郷さん……これが最後なら……謝っておきたいんよ……」
「なに……そのっち……」
「催眠術で私をおじさんだと思わせて抱きついてごめんね~」
「あっ……こ、このっ、やけにおじさまが甘えてくると思ったら……ちょっと説教……」
「ふかふかだったんよ……」
強力な催眠に、正気が飲まれていく。シズクの動きまで止まってしまった。
「流石あの御方の力……
あの御方の傘下に加わって正解だった。
催眠無効特異点の二重人格ですら、この力の前では無力……!」
赤き光の刃を振り、ホモおじさんは高らかに笑う。
更に油断せず、須美の弓を弾き飛ばした。
体に染み付いた癖でもなんでも、この弓がまた鳴ってしまえば、催眠が緩み、それだけで全てが逆転されてしまうかもしれないからだ。
「この弓はわたくしの天敵なのでどけておかないと……」
ホモおじさんは須美の弓を拾おうとしたが、触れた手の先がジュッと焼けた。
完全なダークサイドであるホモおじさんを、弓の方が拒絶する。
「あっづぁ! え、何これ……
神の力で作った魔祓いの弓はとんでもないな……
神の代理戦争に使うには絶対環境に合ってませんよこれぇ……」
それは鏑矢にして梓弓。
邪悪なる魔を祓う神の弓。
バーテックスという『神聖な天使』にこそ通じないが、邪悪なる催眠おじさんという『魔』では触れることも叶わない。
ホモおじさんはおじさんを睨みつける。
こんな少女を抹殺せず、むしろ庇護に回ったおじさんに、ホモおじさんは不満と不可解を表情に浮かべていた。
催眠おじさんは何事もなければ世界すら支配してしまえる。
だが時たま催眠おじさんすら倒す存在が現れる。
薄い本の催眠おじさんに負けて終わる者がそこそこいるのはそのせいだ。
鷲尾須美はおじさんキラーになり得るものであり、成長すればいずれおじさんキラーキラーでも手に負えなくなり、おじさんキラーキラーキラーにも成長してしまう。
ゆえにこういった人物は育つ前に潰さなければならない。
それが闇の催眠おじさんの理だ。
変わり果てた――ように見えた――おじさんを見て、ホモおじさんはおじさんを矯正せねばと決意する。ついでに自分の道に引きずり込もうと決意する。
欲望から「フヒッ」という声がちょっと漏れた。
ホモおじさんは咳払いし、欲望を隠し、自分の天敵を自分の手で育てているようなおじさんの正気を疑い始める。
「本当に何を考えていらっしゃるんですか。
こんな存在を育てれば、いつか我々は滅ぼされますよ」
ホモおじさんがおじさんの顎に手を当て、顔を逸らそうとするおじさんの顔をクイッと動かし、自分と見つめ合う姿勢を作る。
ホモおじさんの目を見て、おじさんの顔がかっと赤く染まった。
普段軽快だったり飄々としているおじさんがうぶな処女のような所作を見せたことで、ホモおじさんと須美と美森はちょっとクラっときた。
「や……やめろ……小生はそっちの趣味はない……!」
「照れちゃって。かわいいね。おじさん興奮するよ」
膨大な経験値と鍛え上げた技量で、おじさんはなんとかホモおじさんの催眠に抵抗するが、もはや焼け石に水だ。
オッサン相手に発情させられ、恋をさせられてしまっている時点で、なすすべがない。
ホモおじさんがおじさんの頬に、剃ってから30時間くらいのあごひげを擦り付けると、それだけでおじさんは胸が高鳴り、恋愛感情が倍加してしまう。
「や……やめろ……小生は男だ……おっさんだぞ……」
「かまいませんよ……ささいなことです……」
「小生は須美のものだ……ずっと彼女の叔父として、傍にいると……」
「フフ……すぐに快楽で忘れさせてあげます……ホモセで……!」
「やめろ……! ホモセなど……
関係ないTwitterの公式アカウントに特撮の台詞画像でクソリプする奴くらい嫌いだ……!」
「そんなに嫌いだと流石に傷付く」
「ごめんな」
「いいんですよ、今からわたくしのこと好きになってもらいますから……!」
受け入れること、受け入れないこと。
人類の歴史はその繰り返しである。
愛をもって他人を受け入れる。
嫌悪ゆえに他人を受け入れられない。
国益のため多国籍企業を受け入れる。
国益のために移民を受け入れない。
おおらかに違う趣味の人間をコミュニティに受け入れる。
心地いいコミュニティを維持するために面倒な人間を受け入れない。
受け入れる、受け入れないを繰り返し、人はコミュニティや社会を構築し、文明や在り方を進化させ続けてきた。
受け入れるだけの集団は必ず破綻し、受け入れないだけの集団は停滞し腐敗するからだ。
受け入れさせることは難しい。
大赦が勇者という生贄の詳細を包み隠さず説明してしまえば、勇者のお役目を受け入れさせることはとても難しくなってしまうだろう。
受け入れることも難しい。
たとえば友達が『私が勇者として犠牲になればいいんだよ』と言ったところで、その友達の自己犠牲の悲痛な願いを受け入れることは、とても難しいだろう。
けれど、"受け入れない"を選んだところで、何かが変わる保証もない。
世界は、とても難しくできている。
催眠は、そんな人類の基本と密接な関係がある。
"自分を受け入れさせる"こと―――そのために催眠を使う者は、とても多いからだ。
そして、そこにこそBL催眠種付けの本質がある。
どう言い繕っても、催眠種付けは和姦の皮を被せた強姦である。
男性向けの催眠種付け本は多くの場合、和姦など成立しようもない関係性の女性に対し、自主的な和姦を催眠で強制するという最悪の中の最悪だ。
が。
女性向けのBL催眠種付けは、少し違う。
『男と男がセックスなんておかしい』という前提を持たせたまま、自分を受け入れさせる……そんなジャンル属性を、強く持っているからだ。
"受け入れさせる"のは同じだ。
だが男性向け作品の催眠おじさんは、レイプへの忌避感を残すということはあまりない。
体の自由だけを奪う催眠で強姦に移ることはあっても、これはまた別ジャンルだ。
精神を操作する場合、男性向け作品の催眠おじさんは女性に全てを受け入れさせるため、ストレートな和姦になる。
対し、女性向け作品の催眠おじさんは、男性向けと比べると遥かに多く"背徳感"を残す。
「男と男がセックスするのは当然だろ?」ではなく、「お前は男が好きなんだよ……」「そ、そうなのか……でも男同士なんて……!」を好む。
大まかな傾向の話ではあるが、男女の嗜好の違い……シコの違いであるというのが、専門家達の見解であるらしい。
BL系催眠おじさんの特徴は、受け入れさせること。
性格を別物にするほどの改変を加えず、受け入れさせること。
仮に催眠で男を受け入れさせようと、催眠解除からの第二ラウンドを入れ、「男同士なんて嫌だ!」を入れる。
男消費者は「オッサンなんて嫌!」シーンを入れるか入れないかで需要が半々になるが、女性向けのホモ作品は『男同士は禁忌だ』というシーンが無ければ、意味が無いからである。
男性消費者はオッサンに感情移入することもでき、変態は女性の方に感情移入するが、女性向けのホモホモパラダイスは読者と登場人物の性別が一致しない。
なればこそ、至高のシコを試行し続けたシコシコの果てに、この違いは生まれたのだ。
つまるところ。
BL催眠種付けおじさんの催眠とは、
だから、ホモおじさんを皆自然と受け入れていた。
今も敵である彼を自然と受け入れてしまっている。
男と男の恋愛を受け入れてしまい、ホモの世界に引きずりこまれてしまう。
受け入れさせる催眠は強烈で、ホモおじさんに対する恋愛感情を、おじさんはごく自然に受け入れてしまっている。
もはや絶体絶命。おじさんに活路なし。行き先に希望なし。
このままオッサン愛用のオッサンオナホとして生きていくしかない。
おじさんが覚悟を決めるべき時が、迫っていた。
それはそれとして。
シズクがフルパワーでホモおじさんを殴り飛ばした。
ホモおじさんが地面を転がり、関節と筋肉の具合を確かめるようにシズクが拳で空を打つ。
「???」
状況が理解できなくて、殴られた頬を抑えて困惑するホモおじさんの鼻っ面に、シズクの追撃のパンチが刺さった。
『あーんぱーんちっ』
「一々言わなくていいんだよオラッ!」
「ぎゃふっ!」
「俺も催眠使えんだぜ、採点してくれよホモ野郎」
「……???」
「俺が頭殴ると相手の記憶が消えるんだ。オラ行くぞ、記憶消去催眠!」
「ぐっ、北斗神拳伝承者に絶対選ばれなさそう……って、なんで催眠が効いてない!?」
ホモおじさんは必死に転がって回避する。
破れかぶれに赤い光の刃を振るうが、シズクはさらりとかわして踏み込み、ホモおじさんに蹴り込んだ。
蹴りが太腿に当たって止まり、ホモおじさんは『今こいつ金玉蹴り潰そうとした』と気付き、ゾッとする。
先程まで、山伏シズクは催眠に囚われて動きが止まっていたはずなのに、何故急に動き出したというのだろうか。
「いや、まさか、お前」
考えられることは一つ。
山伏シズクが、催眠にかかっていたフリをしていた、ということだ。
「な、なんでだ、なんでかかったフリなんかを」
「分かってねえなぁ」
「は……?」
シズクはホモおじさんにだけ聞こえるように、耳元でささやくように言う。
「俺がお前瞬殺したらしずくのありがたみがイマイチ伝わんねえだろ」
「は?」
「ちょっとピンチになってから俺が逆転すりゃ皆しずくを重用するって寸法だ」
『シズク……』
「え、ま、ちょ」
「しずくの敵の親が消えた今、俺の仕事は活躍してしずくの価値を高めることだぜっと」
シズクは流れるようにホモおじさんの足を掴み、転ばし、関節を極める。
技もクソもない本能的な『こうすれば相手は転ぶ』『この関節はこう極めれば力が入らない』という思考による攻撃だったが、催眠に特化したホモおじさんでは防げず、あっという間に足首の関節を極められてしまう。
関節技は、正しい極め方をすれば筋力差が十倍あっても余裕で抑え込める、弱者の技である。
「あだだだだだだだだだっ!!」
「くははっ! いいとこに来てくれたぜお前!
しずくは催おじに救われてばっかだったからな!
ここでいっぺん借りを返して、しずくの総合評価を上げて大事にさせるって寸法よぉ!」
『シズクはもう、本当に……』
ホモおじさんは赤い刃を振るうがシズクは首を傾けるだけで余裕にかわし、ホモおじさんが世界に催眠の刃を突き立て"領域"を構築しても、シズクに催眠は全く届かない。
「催眠! 催眠! ここまで力込めてんのに催眠かかってねえのおかしいだろうがァ!」
『……あれ。何やってたんだっけ』
「俺の相方にはしっかりかかってんぞー」
「ええ……? い、いやそれなら、主人格に人格交代させれば……!」
ホモおじさんはここまでの道中も鑑みて、しずくが主人格・シズクが副人格だと見抜き、しずくを操ってシズクに交代させようとする。
が、無駄。
『シズク、代わって、代わって』
「な、何故変わらん……!?」
「あーそれな。
俺らはなぁ、主人格が望んでも人格交代できねえんだ。
主人格の命の危機にだけ変わんだよな。
あとはまあ時間経過で適当に……次にいつ代わるかは俺にも分からん」
『シズク……足の上にアリさんがいるよ』
「が、ガバガバチェンジの二重人格……!
完全に別存在として独立しているからか……!」
「そういうこったな。オラ肘打ち!」
「ひでぶっ」
シズクの追撃で、ホモおじさんに更にダメージが叩き込まれる。
成人男性と元虐待児童の小学生女児という時点で、シズクには圧倒的なまでにスペックの不利が存在していたが、それが問題にならないくらいにシズクは強かった。
ありとあらゆる意味で、山伏シズクは催眠おじさんの天敵である。
シズクはホモおじさんを抑え込みつつ、どこか自嘲するように、どこか誇らしげに、どこか諦めたように、どこか納得したように、複雑な感情が混ざった言葉を漏らす。
「こういう風に暴力を振るってるとな。
……俺は、あの親の娘だってのを実感する。
キレやすく、短気で、すぐ暴力が出る。最悪だ。
だけどな、それでいい。
しずくにとって嫌なものは、全部俺が受け持つ。
しずくが親から受け継いだ、親の嫌いな部分は、全部俺が引き受ける」
『……シズク』
関節の固定を外すために動き始めたホモおじさんの動きに合わせ、関節を極めるのをやめ、シズクはサッカーボールを蹴るようにホモおじさんを蹴る。
「テメエみたいなのから、しずくを守るのが俺の役目だからなァ!!」
「ぐっ」
蹴りを防いだホモおじさんに距離を詰め、シズクはマウントを取って軽くパンチを顔面に打つ。
ホモおじさんの両腕に防がれたが、またシズク優位の状況が出来た。
シズクは拳を振り下ろす連撃を止めず、常に優位の状況を作る。
「一つ、気に入らねえことがあんだよ」
「き、気に入らないこと……?」
そして、攻撃的な表情のまま、言い放った。
「あのオッサンはお前のもんじゃねえ。
もちろん他の誰のものでもねえ。
―――しずくと俺の魔法使いだ。汚えオッサンは失せな」
「―――」
『シズク』
それは、シズクにとって譲れない一線であり。
ホモおじさんにとっても、譲れない一線だった。
「ふざけんなくらああああああああああああ!!」
「うおっ」
「オッサンとオッサンの恋に口出ししてくんじゃねえええええええええ!!」
「片思いを催眠で叶えようとするクズじゃねーか身の程を知れ!」
「うるせええええええ!! こうなったら相討ち覚悟だ!」
「は?」
「わたくしは『受け入れさせる催眠』使い!
お前に催眠が効かなくても、主人格に消えない傷を刻み込んでやる!」
『私?』
「おい待てコラ!」
「傷を"受け入れろ"主人格! 永遠に消えない傷をよォー!」
「オラッ! 催眠記憶消去拳!」
「ぶへっ! か、顔殴られても止まるもんかよ……! あの人はわたくしとホモになるんだ!」
「こ、こいつ……!」
ホモおじさんが、自らの命すらも燃やし、自分の専門から少し外れた攻撃系催眠を発動しようとし、シズクがなんとかしずくを庇おうとしたその瞬間――
「―――
――シズクがホモおじさんを追い込み、叩きのめし、気を引いてくれたおかげで、僅かな隙を突くことができたおじさんが、動くことができた。
おじさんのスマホは万全の稼働状態にあるのが残り27。
そのスマホが飛翔し、おじさんに催眠アプリで多重的な干渉を起こし、なんとかBL催眠を崩壊させる。その後、腕に集まることで、おじさんの催眠を極限まで強化していた。
自由になったおじさんは強力な催眠干渉でシズクを守護し、ホモおじさんの力を抑え込んだ。
シズクはホモおじさんを蹴り飛ばし、抜け目なくホモおじさんの赤い刃の剣をスリのように掠め取っていく。
これは
万全の催眠術師が発動する究極形態にあらず。
追い込まれ、ボロボロにされ、多くのものを失い、なおも戦うおじさんの姿。
死の危険にさらされた男のチンポが盛大に勃起する現象と同じように、追い詰められた催眠おじさんが戦うための、究極ではない最終のスタイル。
腕・足・頭部etc……なけなしのスマホを体の各所に集めた限定的強化形態。
腕にスマホを集めれば、干渉力が飛躍的に増加する。
「大丈夫か、しずシズ」
「ああ、まあな」
『うん』
「そうか。よかった。あと、よくやってくれた。こいつは命の恩人扱いしねえとなあ」
「へっ、そいつは最高だな。後でしずくももてなしてやってくれ」
『シズクしか何もしてない……』
(いいんだよ、俺の功績はお前の功績だ)
ホモおじさんはおじさんに抵抗するが、もうどうにもならない。
催眠剣豪の証たる剣はもう奪われてしまった。
仮にあったとしても、スマホ軍団の召喚を許してしまった時点で、おじさんとホモおじさんの力は五分五分といったところだろう。
それでは、シズクの攻撃でダメージが溜まった今のホモおじさんではどうにもならない。
「貴様の力は小生の催眠で封じ、しばらく大赦の牢獄に繋いでおくとする」
催眠による高等技術・催眠封印。
まるで貞操帯で股間を封じられるように、まるでこの世に生まれて来る前の純粋無垢な赤ん坊が精子だったころ精液に封印されていたように、ラブコメの初期ヒロイン達が全てラストバッターの真冬先生を封印する存在になってしまったように……覆うことで、封印する。
おじさんは後悔を抱えたまま通信交換をすると進化してしまうタイプのポケモンなので、この男を野放しにした結果後悔することなど許せるはずもない。
リスクマネジメント。
念には念の為、不都合なことが一切できないよう、精神に楔も思いっきりぶっ刺していた。
だがホモおじさんは、108の催眠スマホを揃えていないおじさんを見て笑う。
あまりにも脆弱。
あまりにも備えが弱すぎる。
催眠アプリを導入したスマホが108なければ、彼は催眠の王たりえず、また5chとニコニコ大百科のレスバで自演勝利できないことを、ホモおじさんは知っていた。
「は……はははっ……!
それしか在庫がないのですか、催眠アプリスマホは……!
それではわたくしに勝てても、次に来る催眠剣豪に勝つことなど……」
「ウゼェ」
「はうっ」
鬱陶しいのでホモおじさんの股間をシズクが思い切り蹴り上げる。
おじさんは「うおっ」と声を漏らし、気絶して無防備になったホモおじさんに催眠の続きをかけ始める。ちょっと内股だった。女には分からない痛みであった。
シズクは舌打ちし、地面の小石を蹴り飛ばす。
横目にちらりと、シズクはおじさんを見た。
「あーあ、くそ、しまらねえな……結局助けられちまった」
『シズクは頑張ったよ』
「おう」
『私は見てた』
「お前はいつも俺を見てくれてる。お前さえいれば、俺は……」
しずくが居れば満足だ、といつもの自分でいようとしたシズク。
これまで通りでいい、とシズクは噛みしめるように思う。
その頭に、不思議な感触があった。
優しくて、暖かな感触があった。
シズクをいつも通り、これまで通りではいられなくさせる手が、シズクの頭を撫でた。
「よくやったなしずシズ。お前のおかげで、小生たちは助かった」
それは、子供が親に当たり前のようにされることで。
しずくもシズクも、ずっとしてもらえなかったことで。
彼にとっては、子供達と触れ合う中で学んでいったものだった。
自分よりもずっと大きな男の手に頭を撫でられて、シズクの顔がみるみる内に赤くなっていき、シズクの掌底がおじさんの腹に突き刺さった。
「げふっ」
『!?』
おじさんも、しずくも、びっくりした。でも一番びっくりしていたのはシズクだった。
「バーカ! お前ホントバカ! 死ね! しずくの頭に気安く触ってんじゃねえ!」
「……確かに今のは小生が悪いな。最近子供の頭撫でる癖がつきすぎていた」
「は? 悪いなんて言ってねえが? 俺がいつ悪いとか言った?」
「こいつめんどくせえ」
『シズク……』
おじさんとシズクがわちゃわちゃしていると、シズクの金的蹴りにより気絶したはずのホモおじさんが身じろぎし、僅かに意識を取り戻す。
「ぐ……うっ……」
「! この野郎、俺の蹴り食らってまだ意識が……」
「意識が朦朧としているな。今なら小生の催眠で情報を引き出せるか」
ホモおじさんの催眠の効果が切れ、須美、美森、園子と次々に勇者が正気を取り戻す中、おじさんの催眠誘導で、ホモおじさんは抱えていた情報を語り出す。
「くく。ゲスの暗黒卿による四国雌豚養殖場計画―――止められるものなら止めてみなされ」
「一度聞いたら十年くらい忘れられなさそうなワード出てきたな」
「ゲスの暗黒卿は神樹に中出しをし神樹を孕ませる……
受粉し妊娠した神樹は宇宙に種を撒く……
誰にも止めることはできない……!
ですが……ゲスの暗黒卿の愛弟子であり、催眠の王であるあなたなら、あるいは……」
「おおっと初見の話が出てきたぞ?」
「ガクッ」
「こいつ口でガクッって言いながら気絶した……」
引き出せた情報はそれが限界。
少女らは困惑し、だがおじさんは、かつて無いほどに深刻な表情をしていた。
「あの時のような戦いが始まるのか……射精と愛液で天の川が出来た、あの時と……」
「おじさまなんて?」
「また……誰かの喘ぎ声が『あいうえおを順番に言ってるだけじゃねえか』って言われるのか」
「おじさま?」
「ウルトラマンコスモスの名前が卑猥なものとして扱われる時代が来てしまうのか……?」
おじさんは何かを知っているようであった。
だが、何を知っているかを語らない。
それはおそらく、彼の過去に起因する凄惨かつ悲惨な何かであり……おじさんが未だ語らないそれを語らせることが、今の時代の彼の仲間の義務であり、責任だった。
それを語らせなければ、きっとこの世界に迫る危機を知ることはできない。
この世界を守ることすら、きっとできないだろうから。
「お、みんなー! 来てくれたのか! どした? 何かあったのか?」
そこに、三ノ輪銀が通りかかって、声をかけてくる。
ちょっと忘れかけていたが、おじさん達はここに、彼女を迎えに来ていたのだ。
「……何もなかったぞ! 試合どうだった!」
「おじさまがなかったことにし始めましたね」
「忘れたいのよ須美ちゃん……」
「乃木園子劇場~!」
「なんか始まったぞ俺は何すりゃいいんだオイ」
「インチキおじさんは何故今日の流れを忘れようとしたのか? 園子が調べてみました~!」
『あっ……』
「いかがでしたでしょうか?
何も分かりませんでしたね!
今後も調査を続けていきたいと思います!
情報まとメディアの乃木園子でした。わはは~」
「クソまとめサイトと化した乃木園子」
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