福が笑うまで   作:茅橋

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 目覚ましが鳴る少し前に目が覚め、体を起こし虚空を眺め、目覚ましの音が鳴ったらアラームを切ってベッドから降りる。電気ケトルに水を入れてスイッチを入れ、トースターに食パンを放り込む。靴下スカートブラに肌着まで着替えたら朝食の時間。ティーバックにお湯を注いで紅茶をいれてトーストにバターを塗る。食べ終わったら食器をざくっと片付けて、顔を洗って歯を磨く。

 鏡に映る私はそれはもうひどい顔面だった。福笑いみたいだった。目鼻口耳、どれをとっても普通の位置にはなく、目は左右非対称どころか上下に非対称で、鼻は曲がり、口は斜めに歪み、顔の輪郭まで歪んでいた。福笑いの方が顔の輪郭が整ってるだけマシだなと笑った。笑えなかった。

 

 人は生まれながらに平等ではない。少なくともこの世界では顕著にそうだ。いろんな人がいる。でも喋り出した頃の小さな私はそんなことは知らなかったから、変だ変だと鏡をみるたびに言い続けた、らしい。それを見る母はどんな心境だっただろう。

 "個性"で顔を変えてもう一度鏡を見る。地味目の女の子。よく見ると結構整ってるけれど目が大きいわけでもなくて、鼻は小さい。どことなくぼけっとしていて、やっぱり地味。これが、私の普段の顔。

 ブラウスを着て、ネクタイを締めブレザーに袖を通す。リュックを背負って靴を履く。

 借りているワンルームアパートから坂を登って徒歩十分。国立雄英高等学校の校門は朝6時から開いている。

 

 

 

 幼い頃の私は知るはずのないことをなぜか知っている子だった。それは言葉だったり常識だったり、ちょっとした科学知識だったりして、ついでに私の中には私ではない他人の記憶が少しだけあった。これも個性なのだろうかとずっと考えてきたけれど、一人の人間が持てる個性は一つだけ。だからこれはもっとオカルトな話なのだと思っている。

 どうせ前世とやらがあるなら月のお姫様がよかった。個性がない世界の一般男性Aではなく。

 "彼"が生きていた世界は個性が生まれる前の世界、あるいは個性が生まれなかった世界で。その彼の知識と経験は私が思春期に大いに悩むはずだった悩みから私を達観で救ってくれた。けれど同時に彼の記憶がなければ私の悩みはもっと素直だっただろうかと、あるいは悩みすらしなかったかもしれないと今でも少し思う。

 

 世界総人口の約8割がなんらかの特異体質となったこの超人社会、街に出れば異形系の個性を持つ人なんてざらにいる。けれど私は思ってしまった。どうせなら蛇頭や虫頭の方がよかったなと。

 だから私はヒーローを目指した。ヒーロー免許に付随する個性の自由使用のために。私の持つ学力や諸々のアドバンテージを最大限利用して、最難関と言われるヒーロー科にも入った。

 

 そしてこの春、私福原祈は雄英高校2年に進級する。

 

 

 

 

 






 ヒロアカの世界観好きです。あの世界で人を動かしてみたい気持ちが溢れてしまった。

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