「大きくなりたーーーーーい!!!!!」
普通の人のおよそ13倍の声量のバカでかい声が太平洋に向かって響く。
「もうなってるじゃん」
彼女の頭の上に乗りながら、私の耳は今異形になりうまく蓋がされている。
「そうじゃないって、わかってるのに言わないでよ〜」
「そうだね〜」
雄英高の校舎がある敷地から少し離れてある第十三演習場は、大井川の広い河口部と右岸の浜辺までを演習場とする場所で、その広さから私たちが放課後よく使う場所の一つだった。
今日の午後からの授業は入学してからもう何度目になるかわからない屋内戦闘演習。優ちゃんにとっては屋内と戦闘がそれはもうとにかく鬼門だ。情況設定と建物の構造によっては外からのサポートに徹するということもできるけれど、今回はそれが許されなかった。
「対人戦闘の訓練も、頑張ってはいるんだけどね〜」
「秀くんも美月ちゃんも使い勝手の良い個性と運動神経抜群で、ど〜〜しろって言うのよ!!」
「そうだね〜」
ヒーローの戦いはどれだけ自分の個性が有利な状況に引き摺り込むかだとは誰が言ってただろうか。でも優ちゃんの場合はその状況というのがなかなか限定的で難しい。あと優ちゃん自身は運動神経が決していい方というわけでもないのだ。
「金曜もまた演習で今度は救助演習だって先生言ってたよ。また大活躍じゃん。苦手な泳ぎも克服して海難もいけるようになったし」
「私はビックになりたいのーーーー! ビルボードチャート上位に登るような人はみんなヴィラン検挙で功績を挙げてるのーーー!! わかってるのに言わないでってばーーーーー!」
「……そうだね〜」
この異能を最初に個性と呼んだのは誰だったのか。ずいぶんとキザで、でもセンスがある。大きくなりたくても大きくなれない女の子、優ちゃんは雄英に入るまでずっとそうだったのだろうし、きっとこれからもずっとそう悩むのかもしれない。
でも、秀くんも美月ちゃんも、優ちゃんがいたからあんなに強くなってしまったという所は結構あると私は思ってる。優ちゃん自身は気付いているだろうか。
いつでも諦めずに大きくなろうとする彼女の姿は眩しくかわいい。Mt.レディ、岳山優の名前が全国へ轟く日はきっとそう遠くはない。
「とりあえず、今日は室内想定の組み手だね」
よっと、と言って飛び降りる。優ちゃんの顔面を縦に横切り目指すはその大きなお山。の前に大きな手が私をつまむ。全く痛くない絶妙な力加減。目の前にはジト目の顔。
「ねえ、のりちゃん」
ニヤッと口角が吊り上がる。
「次やったらお仕置きって言ったよね」
「ソウダッタカナー」
「あのね、私一度のりちゃんを好き放題してみたかったんだ」
「えーっとそれはどういう?」
「ふふえへへ、今日のパンツは何色かなー?」
掌に乗せかえられ、手早く両手を拘束された私の太腿を優ちゃんの小指が上がってくる。
「こら! やめろってば!! しかも今日のは未遂!」
「悪い子にはお仕置きしないとね〜〜」
「どっちがだーーーーー!!」
その日の自主練は結局、個性で一度小さくなり拘束を抜け出した私と優ちゃんとの個性全開ガチ追いかけっこと相成ったのだった。
Mt.レディがめちゃかわいくなって来たので続きました。岳山優ちゃんと同級生にしてしまいました。モノローグ書き始めたときは緑谷くんの一年上のつもりでした。
岳山ちゃんの同級生の友達に対する言葉使いに自信がない。