現役のデュエリストには物足りない内容かもしれません。
まずは自己紹介をしよう。俺の名前は
「おーーい、遊蓮くーん。見て見て、これぇー」
「響、まずはおはようだろ」
「うん、おはよう。でさー、これこれ」
響は見せつけるように1枚のカードをこちらに向けた。
「へぇ、ギルフォード・ザ・ライトニングか」
《ギルフォード・ザ・ライトニング》
星8/光属性/戦士族/攻2800/守1400
このカードはモンスター3体をリリースして召喚する事もできる。
(1):モンスター3体をリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した場合に発動する。
相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
まあ強いっちゃあ、強い。光属性や戦士族はサポートカードも多いし、十分フィニッシャーになりうるカードだ。だが、やはり単体では使い難さが目立つ。一応響のデッキは戦士族主体だが、考えなしに差し込んでは活躍できまい。シナジーのあるカードを組み込む必要があるが……。
ここで響の顔を見つめて思い直す。
さすがに楊枝で重箱の隅をほじくるようなちゃちゃをいれて、太陽のような笑顔を曇らせるほど、俺は鬼畜ではない。
「強力なカードだな。こりゃあ、響のエースも交代かな?」
「えぇー、それはないよ。わたしのエースは不動だよ」
そう言って響は自分のデッキケースから1枚のカードを引き抜いた。
《E・HERO ジ・アース》のカードを。
世界に1枚ずつしか存在しない「プラネット・シリーズ」のひとつ。
ランクはもちろん【
――そのレプリカである。
とはいえ、相当なレアカードなのは間違いない。封入率は明らかにされていないが、【Bランク】に指定されているからだ。
それを引き当てたのだから、かなりの豪運と言えるだろう。レプリカだがしっかりとシリアルナンバーが刻まれており、さすがの響も即日に所有者登録を行った。これを怠ると、響のような子供が持っているレアカードなど簡単に奪われてしまうからだ。
レアカード狩りは重罪だ。レプリカとはいえ【Bランク】のカードを強奪すれば、初犯であっても執行猶予なしの実刑は免れない。また捌くのだって闇ルートにしか流せない。基本的にリスクとリターンが釣り合っていないため、登録されたレアカードを強奪するやつはほとんどいない。噂ではそういった闇組織が存在するみたいだが、俺たちが関わることはないだろう。
「でも、召喚したことはないんだろ?」
俺がそう指摘すると、響は息が詰まったように押し黙った。融合素材である《E・HERO オーシャン》も《E・HERO フォレストマン》も響は持っていない。結構な高額カードだからな。パックから狙うというのもあまり現実的ではない。実際、響は最初そうしていたが、いつからか購入を控えて貯金するようになっていた。
「ねぇねぇ、今日もお昼休みにデュエルしようよ」
「なんだ、また俺の連勝記録を更新させてくれるのか? 響は本当にいいやつだなぁ」
「むー、そうはいかないよ。昨日、未来と一緒にデッキ調整したからね。遊蓮くんじゃ、すぐに役不足だよ」
自信があるのかないのか分かんねぇな。
「じゃあ、いつも通りエクストラデッキはなしでな」
「うん、いいよ」
この世界は融合、シンクロ、エクシーズといったエクストラデッキに入るカードは軒並み高額だ。
ペンデュラム? リンク? そんなもの、ここにはないよ。
響だって例の1枚しか持ってない。何故こんなに希少なのか、理由は分からん。流通量が少ないのは確かなのだが、メインデッキで勝負しろよというメッセージだろうか。
一度そういったカードを使ってボッコボコにしたら「なしなし、そういうのは全部なしッ!」と涙ながらに懇願された。それ以来、響とのデュエルではエクストラデッキは使っていない。
エクストラなしなら【帝】を使いたいが、あれも割と高いんだよな。
「じゃあ、響」
「うん、遊蓮くん」
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー。俺は《アームド・ドラゴン LV3》を召喚」
《アームド・ドラゴン LV3》
星3/風属性/ドラゴン族/攻1200/守 900
(1):自分スタンバイフェイズにフィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。
手札・デッキから「アームド・ドラゴン LV5」1体を特殊召喚する。
「さらにカードを2枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「わたしのターン、ドローッ!」
相変わらずの気合だ。あれで最後まで持つんだから大したもんだよ。
「魔法カード《増援》を発動。その効果でデッキから《切り込み隊長》を手札に加えて、そのまま召喚ッ! そして効果発動。手札の《E・HERO ワイルドマン》を特殊召喚ッ!」
ワイルドマンか……罠カードの効果を受けないヒーローモンスター。攻撃力は1500と高くないが、って1200のドラゴン置いてる俺が言えることじゃないな。
「まだまだいくよ。装備魔法《融合武器ムラサメブレード》をワイルドマンに装備、さらにフィールド魔法《ガイアパワー》を発動ッ!」
《切り込み隊長》 攻撃力 1200 → 1700
《E・HERO ワイルドマン》 攻撃力 1500 → 2300 → 2800
おお、攻撃力2800か。ギルフォード・ザ・ライトニングいらないじゃん。
ワイルドマンは罠カードの効果を受けない。装備状態のムラサメブレードは破壊されない。なかなか考えてるな。
「バトルッ! ワイルドマンでアームド・ドラゴンを攻撃ッ! ワイルド・スラッシュッ!」
「リバースカードオープン。《和睦の使者》を発動。このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる」
アームド・ドラゴンの眼前に和服の巫女が現れバリアを張る。攻撃は弾かれ、ワイルドマンは悔しそうに引き下がった。
「ううー、バトルフェイズは終了。わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」
立花響 LP4000 手札1 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚」
《アームド・ドラゴン LV5》
星5/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1700
(1):手札からモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
この効果を発動するために墓地へ送ったモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
その相手モンスターを破壊する。
(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊したターンのエンドフェイズに、
フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。
手札・デッキから「アームド・ドラゴン LV7」1体を特殊召喚する。
さて、ひとつめの効果を発動したいが、あいにく攻撃力2800以上のモンスターは手札にない。せめて「元々の攻撃力」だったらなぁ。ま、愚痴っても仕方ない。
「魔法カード《ナイト・ショット》を発動。伏せカードを破壊」
「――ッ! チェーンして発動……はできないんだったぁぁッ!」
伏せカードの《収縮》が効力を発揮できずに墓地へと送られる。おお、危ないところだった。
「バトルフェイズ。アームド・ドラゴンで切り込み隊長を攻撃」
アームド・ドラゴンの尾撃で切り込み隊長が破壊される。
立花響 LP4000 → 3300
「カードを1枚伏せてターンエンド、そしてエンドフェイズに《アームド・ドラゴン LV5》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV7》を特殊召喚」
《アームド・ドラゴン LV7》
星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。
(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
墓地へ送ったそのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
立花響 LP3300 手札1 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「わたしのターン、ドローッ!」
さあ、モンスターの攻撃力は同じ。どうするかな。
「わたしは永続魔法《連合軍》を発動。この効果でワイルドマンの攻撃力がアップッ!」
《E・HERO ワイルドマン》 攻撃力 2800 → 3000
おお、攻撃力3000か。ギルフォード・ザ・ライトニングいらないじゃん。
ここで響の手が止まる。おそらく追撃のモンスターを召喚するか思案しているのだろう。俺のフィールドには伏せカードが2枚。昔は無警戒に突っ込んでくるばかりだったからなぁ、成長したもんだ。
「バトルッ! ワイルドマンの攻撃ッ! ワイルド・スラッシュッ!」
「リバースカードオープン。《攻撃の無敵化》のひとつめの効果を発動。アームド・ドラゴンはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない」
「でも、ダメージは受けてもらうよッ!」
音羽遊蓮 LP4000 → 3800
「バトルフェイズは終了。わたしはモンスターをセットしてターンエンド」
立花響 LP3300 手札0 モンスター2 伏せ0
音羽遊蓮 LP3800 手札2 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。魔法カード《抹殺の使徒》を発動。セットモンスターを除外」
「ああ、わたしの《ネクロ・ガードナー》が……」
ネクロ・ガードナーか、ちゃんと防御面も考え始めたようだな。つかこいつで追撃しようと考えてたのか? まあ連合軍があるから、多少のダメージソースにはなりそうだが。
「続けて《ボマー・ドラゴン》を通常召喚」
《ボマー・ドラゴン》
星3/地属性/ドラゴン族/攻1000/守 0
(1):このカードの攻撃で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。
(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。
このカードを破壊したモンスターを破壊する。
「バトル。ボマー・ドラゴンでワイルドマンを攻撃」
「確かボマー・ドラゴンの効果って……」
当然ようにボマー・ドラゴンはワイルドマンの剣で両断されるが、両手に抱えていた爆弾でワイルドマンを道連れにする。
「続けてアームド・ドラゴンでダイレクトアタック」
「えーと。アームド・ドラゴンの攻撃力が2800で、わたしのライフが3300だから、500残るッ!」
立花響 LP3300 → 500
「な、なんとか持ちこたえた……」
「それはどうかな? リバースカードオープン。《
「え? お互いに? 1000ポイント?」
俺のフィールドにいるアームド・ドラゴンの指に破壊指輪がはまり、閃光を放つ。哀れアームド・ドラゴンは爆発四散。その衝撃波が互いのプレイヤーにダメージを与える。
音羽遊蓮 LP3800 → 2800
立花響 LP 500 → 0
デュエルデスクから試合終了を告げる無情のブザーが鳴り響いた。
「ううー、また負けたぁー」
「でも惜しかったじゃない。ライフは削れたし」
観戦していた未来がやってきて、響を慰める。
「そんな低い志でやってないよ。それに削れたのは実質200ポイントだし」
「それもそうね」
「未来ー、もっとちゃんと慰めて。わたしはすっごく落ち込んでるのッ!」
「はいはい」
未来は溜め息をこぼしながら、やれやれといった表情でこちらに向いた。
俺は何も言えずに肩をすくめるだけだった。