当初は俺と響もS.O.N.G.の潜水艦で島へと行く予定だったのだが。
「私のせいだよね。ごめんね、響、遊蓮くん」
「未来が気にする必要なんてないよ。わたしだって、未来と別行動するよりは一緒にいる方が全然いいし」
「そうそう、どうせ現地で合流するんだしな」
一般人である未来をあの潜水艦に乗せることは、さすがに許可が下りなかった。なので俺たちは運営側が用意したフェリーで島まで向かっている。
未来は参加することにあまり乗り気ではなかったのだが、響に押し切られる形で出場することになった。
島までは三日ほどかかる。参加者に退屈させないように娯楽施設も整っていた。デュエル場もあるが、あまり使われてはいない。観戦ができるため、自分のデッキを晒すことを嫌っているのだろう。それでもデュエルする人間はいるが、おそらくサブデッキか、もしくはメタを張ってきたデッキにメタを返すとか、そんな思惑だと思う。
「デュエル場があるのにデュエルできないのは、なんだかもったいないなぁ」
中には響のような能天気な人間もいる。あるいは自分に絶対の自信を持っているやつか。
「そういえば、マリアさんにデッキを見てもらったんだって?」
「へへー、実はそうなんだ。マリアさんもヒーローデッキを使うって聞いたから、いつかお話ししたいと思ってたんだ。色々と相談に乗ってもらって、カードまで貰っちゃった」
響は、にへらっと相好を崩す。そのまま三人でデュエル談義に突入した。
翌日、翌々日は響と未来のデッキ調整に手を貸したり、娯楽施設や飲食店を回ったりで、船旅はあっと言う間に終わりを告げた。
島の港には各地からやってきたであろう客船が数隻ならんでいた。船を降りるときに、船員からひとつの腕輪を渡された。その腕輪には星の形をしたピースが二つ輝いている。
……なんかこれ見たことあるな。
全員の下船が確認されると、拡声器を持ったスタッフがルールの説明を始めた。
『これより予選の説明を行う。君たちには先ほど渡したスターチップをデュエルで奪い合ってもらう。スターチップを十個集め、島の中央にある館を訪れた者が予選を通過できる。先着で16名だ。また、一度デュエルを行った相手と、再度デュエルすることは認められない。開始時刻は約一時間後。それまでは休むなり、島を散策するなり自由だ。質問があれば身近のスタッフに尋ねてくれ。以上だ』
最短で三戦か。でもそれをやると、一度は全賭けをしなければならない。さすがにリスクが大きいかな。
「遊蓮くん。マリアさんだよ。おーい、マリアさーん」
「ようやく着いたのね。貴方たちで最後よ」
この口ぶりだと随分と早くに着いていたようだ。
「マリアさん、わたしも頑張って予選を通過しますから、本選で戦いましょうね」
響は意気込んでそう言ったが、マリアさんは困惑したように苦笑しただけだった。
「残念だけど、それは無理ね。私はオブザーバーとして参加しているから」
「オブザーバー?」
意味が理解できずに、響は小首を傾げた。
「簡単に言うと、中から不正がないか見回ったり、参加者同士の小さなもめ事を仲裁したりと、予選を円滑に進めることが役割なの。デュエルはするけれど、仮にスターチップを十個集めても、本選に参加する権利はないのよ」
「へぇー、そんな役割が。あ、紹介します。わたしの親友の未来です」
「初めまして、小日向未来です。いつもうちの響がお世話になっております」
「なんだか保護者みたいな挨拶ね。マリア・カデンツァヴナ・イヴよ、よろしく」
ふたりはにこやかに握手を交わす。
「じゃあ、私はそろそろ行くわね。予選を通過できるように頑張りなさい」
マリアさんの背中を見送りながら、俺たちはこれからの行動について話し合うことにした。その結果、響と未来はふたりで、俺はひとりで行動することになった。
予選開始から数時間、太陽はそろそろ中天に差し掛かろうとしていた。スターチップは現在七つ。流石にこの規模の大会になると、参加者のレベルも高く、一戦一戦が濃厚なものだった。
しかし予想以上に広い島だな。相手を探すのも一苦労だ。
島を丸々ひとつ使ってやる意味があるのかとも思ったが、まあ話題作りみたいなものだろう。参加者が口出しすることじゃない。
休憩をはさむか思案していると、近くの茂みがガサゴソと動いた。そこから飛び出してきたのは、小さな女の子だった。
最初は面食らったが、この年で参加条件を満たしたのなら、この子は相当の手練れだろう。ならば、相手にとって不足はない。
「おーい、ちょっとそこ行くお嬢さん」
「――ッ! 貴方は……音羽遊蓮さん」
「なんだ、知ってるのか。ま、ツヴァイウィングの件は、結構荒れたからな」
アレは色々な意味で盛り上がりを見せた。ルール的にも戦術的にも問題はなかったのだが、アイドルファンからは、ちょいとばかり叩かれることになってしまった。
「ふむ、兎を追っていたら獅子に出くわしたか。こんな早期に出会うとはな。これも運命だというのならば、この運命、派手に歓迎しよう」
少女を追ってきたように現れた女性は、いきなりデュエルディスクを構えた。この人も俺を知っているようだが。
「スターチップは七つか。ならば三賭けでいいな」
「あ、はい。じゃあそれで」
断る理由もないので、素直に了承する。その時――
「気を付けてください。レイアのデッキは……」
「ちょっと待ったッ!」
思いのほか大きく響いた俺の声に、少女は身体をびくつかせる。
「あー、気持ちはありがたいけどさ、デュエルの前に相手のデッキをばらすのはやめてくれ。マナー的にもよろしくない」
「ご、ごめんなさい」
「いや、気持ちは受け取っておくさ。えーと……」
「あ、ボクはエルフナインといいます」
「そうか。ありがとな、エルフナイン」
俺がそう言うと、沈んでいた表情がいくらか和らいだ。
「そろそろいいか?」
「ええ、始めましょう」
『デュエルッ!』
「私のターン、ドロー。《
《
星8/地属性/機械族/攻1000/守1800
「アンティーク・ギア」モンスター×2
「古代の機械魔神」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードは他のカードの効果を受けない。
(2):自分メインフェイズに発動できる。相手に1000ダメージを与える。
(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「アンティーク・ギア」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
「古代の機械魔神の効果発動。相手に1000ダメージを与える」
音羽遊蓮 LP4000 → 3400 → 2400
どんどんライフが削られる。ライフ4000では細かなバーンもバカにできない。時間をかけるのはマズい。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
レイア LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。手札のこのカードを捨て、同名カードをデッキから手札に加える。続けて《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨て、墓地の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚する。そして雷電龍をリリースして《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚」
《超雷龍-サンダー・ドラゴン》
星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400
「サンダー・ドラゴン」+雷族モンスター
このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。
●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、
融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター1体をリリースした場合に
EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分の墓地の雷族モンスター1体を除外できる。
「さらに《サファイアドラゴン》を通常召喚して、バトル。サファイアドラゴンで古代の機械魔神を攻撃」
「リバースカードオープン《デモンズ・チェーン》を発動。対象は《超雷龍-サンダー・ドラゴン》だ」
超雷龍が悪魔の鎖に繋がれる。サファイアドラゴンの攻撃は続行され、その爪撃によって機械仕掛けの魔神が崩れ去った。
「古代の機械魔神が破壊されたことで効果が発動する。デッキから《古代の機械飛竜》を特殊召喚し、効果発動。デッキから「アンティーク・ギア」カードを手札に加える」
サーチ効果は封じたかったのだが、徒労に終わってしまった。
「私は《
「メインフェイズ2に、俺はフィールドの超雷龍と手札の雷電龍を除外して、EXデッキから《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚。カードを2枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP2400 手札1 モンスター2 伏せ2
レイア LP4000 手札5 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。再び《古代の機械猟犬》を召喚。効果で600のダメージを与える」
音羽遊蓮 LP2400 → 1800
「古代の機械猟犬の効果で融合を行う。フィールドの《古代の機械猟犬》と手札の《古代の機械箱》、《古代の機械巨人》を融合。派手に来い! 《古代の機械究極巨人》!」
《古代の機械究極巨人》
星10/地属性/機械族/攻4400/守3400
「古代の機械巨人」+「アンティーク・ギア」モンスター×2
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
(1):このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
(3):このカードが破壊された場合、
自分の墓地の「古代の機械巨人」1体を対象として発動できる。
そのモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する。
「バトル。古代の――」
「おっと、バトルフェイズ突入時に《崩界の守護竜》を発動。サファイアドラゴンをリリースし、《古代の機械究極巨人》と《古代の機械飛竜》を破壊する」
「古代の機械究極巨人が破壊されたことで効果が発動する。墓地の古代の機械巨人を特殊召喚する」
《
星8/地属性/機械族/攻3000/守3000
このカードは特殊召喚できない。
(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
守備力3200の雷神龍がいるのに、攻撃表示で特殊召喚した?
「特殊召喚成功時に《ダメージ・ダイエット》を発動。このターンに俺が受ける全てのダメージは半分になる」
「……ほう。バトルを続行する。古代の機械巨人で雷神龍を攻撃、そして手札から速攻魔法《リミッター解除》を発動。古代の機械巨人の攻撃力は倍になる」
《古代の機械巨人》 攻撃力3000 → 6000
「派手に喰らえ! アルティメット・パウンド!」
音羽遊蓮 LP1800 → 400
「私はこれでターンエンドだ。エンドフェイズに古代の機械巨人は破壊される」
レイア LP4000 手札2 モンスター0 伏せ0
音羽遊蓮 LP 400 手札1 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。俺は墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外して、このモンスターを特殊召喚する」
「光と闇、その召喚条件は、まさか……」
エルフナインが驚嘆の声を漏らす。だが期待には応えられないかもしれない。エルフナインが想像しているのは「あっち」のほうだろう。
「墓地の雷鳥龍と雷電龍を除外。迅雷の如く
《雷劫龍-サンダー・ドラゴン》
星8/闇属性/雷族/攻2800/守 0
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地から光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外した場合に特殊召喚できる。
(1):1ターンに1度、モンスターの効果が手札で発動した場合に発動する。
このカードの攻撃力はターン終了時まで300アップする。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、
自分の墓地からカード1枚を除外して発動できる。
デッキから雷族モンスター1体を手札に加える。
(3):相手エンドフェイズに、
除外されている自分のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードをデッキの一番上または一番下に戻す。
「除外した雷電龍の効果発動。デッキから《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。そして手札に加わった雷獣龍を捨てて効果発動。除外されている雷鳥龍を手札に加える。手札でモンスター効果が発動したことで雷劫龍の攻撃力が300アップ」
《雷劫龍-サンダー・ドラゴン》 攻撃力2800 → 3100
「手札の雷鳥龍の効果発動。このカードを捨てて、墓地の雷獣龍を特殊召喚する」
《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》
星6/闇属性/雷族/攻2400/守 0
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、
「雷獣龍-サンダー・ドラゴン」以外の「サンダー・ドラゴン」カード1枚を選んで手札に加える。
(2):このカードが除外された場合またはフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「サンダー・ドラゴン」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに持ち主の手札に戻る。
「バトル。雷獣龍と雷劫龍でダイレクトアタック」
レイア LP4000 →1600 → 0
「――クッ、ここまで……か」
「ふぅ、なかなかスリリングなデュエルでしたよ。お姉さん……ん?」
レイアと呼ばれた女性は膝をついたままピクリとも動かない。
「機能を停止したんだと思います。しばらくすれば回収されるでしょう。レイアは、キャロルの作った決闘人形ですから」
「……デュエル……ドール?」
うわぁ、なんだか凄いことを聞いちゃった気がする。
「お願いします。ボクと一緒にキャロルを……キャロルを止めてください!」