アマチュアとはいえ、世界大会優勝というのは思いのほか注目を集めた。テレビでも取り上げられたし、雑誌の取材も何件か来ていたな。
もてはやされるのは気分の良いものだったのか、響は律義にインタビューに答えていた。
そのお祭り騒ぎも、大体二週間程度で落ち着いた。
いつもの日常。いつもの昼休み。今日の俺は観戦だ。
戦うのは響と未来。
『デュエルッ!』
「私のターン、ドロー。《成金ゴブリン》を発動。響に1000ポイントのライフをプレゼントして1枚ドロー」
「ありがとう、未来」
「どういたしまして。続けてもう1枚の《成金ゴブリン》を発動。響に1000ポイントのライフをプレゼントして1枚ドロー」
「またまたありがとう、未来」
立花響 LP4000 → 6000
「またまたどういたしまして。永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動。その効果で手札の《大天使クリスティア》を特殊召喚。カードを1枚伏せてターンエンドよ」
《大天使クリスティア》
星8/光属性/天使族/攻2800/守2300
(1):自分の墓地の天使族モンスターが4体のみの場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードの(1)の方法で特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動する。
その天使族モンスターを手札に加える。
(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
お互いにモンスターを特殊召喚できない。
(4):フィールドの表側表示のこのカードが墓地へ送られる場合、
墓地へは行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。
先攻1ターン目に特殊召喚を封じるクリスティアか。響にはかなり厳しいカードだな。だが、こんなのはいつものことだ。響だって対策はしているだろう。
小日向未来 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「わたしのターン、ドローッ! 《E・HERO エアーマン》を召喚して効果発動。デッキから《E・HERO シャドー・ミスト》を手札に加える。速攻魔法《月の書》を発動。クリスティアを裏側守備表示にするよ」
……通ったか。だがクリティアは破壊されてもデッキの一番上に戻る効果を持っている。このターンで決めるか、盤面を作るか、あるいはヴァルハラを破壊しないとまた繰り返しだ。
「魔法カード《融合》を発動。手札の《E・HERO シャドー・ミスト》と《E・HERO オーシャン》を融合。来て、絶対零度の支配者《E・HERO アブソルートZero》! 墓地に送られたシャドー・ミストの効果で、《E・HERO ブレイズマン》を手札に加える。続けて《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO アブソルートZero》と《E・HERO エアーマン》を融合。来て、暴風の先導者《E・HERO Great TORNADO》! この瞬間、ゼロの効果が発動するよ。フリージング・クラッシュッ!」
なるほど、クリスティアを裏側表示のまま破壊したのか。これならクリスティアは墓地に送られる。
「続けて墓地の《置換融合》の効果発動。このカードを除外して、ゼロをエクストラデッキに戻す。その後1枚ドロー。バトルッ! グレイト・トルネードで攻撃、スーパーセルッ!」
小日向未来 LP4000 → 1200
「わたしはカードを1枚伏せてターンエンドだよ」
立花響 LP6000 手札2 モンスター1 伏せ1
小日向未来 LP1200 手札3 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「私のターン、ドロー。うーん、かなりライフを削られちゃったなぁ。まずはヴァルハラの効果で《光天使セプター》を特殊召喚」
《
星4/光属性/天使族/攻1800/守 400
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「光天使セプター」以外の「光天使」モンスター1体を手札に加える。
(2):フィールドのこのカードを含むモンスター3体以上を素材として
X召喚したモンスターは以下の効果を得る。
●このX召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローできる。
「そして手札のスローネを効果で特殊召喚するよ」
《光天使スローネ》
星4/光属性/天使族/攻 800/守2000
このカードをX召喚の素材とする場合、
モンスター3体以上を素材としたX召喚にしか使用できない。
(1):自分が「光天使」モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、自分はデッキから1枚ドローする。
そのドローしたカードが「光天使」モンスターだった場合、
そのモンスターを特殊召喚できる。
「スローネの効果で1枚ドロー。セプターの効果でスローネを加えて、そのまま特殊召喚。2体目のスローネの効果で更に1枚ドロー。レベル4のスローネ2体とセプターでオーバーレイネットワークを構築。光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて降臨せよ! 《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》!」
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》
ランク4/光属性/天使族/攻2500/守2000
光属性レベル4モンスター×3
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力を半分にし、その効果を無効にする。
フィールド上のこのカードが破壊される場合、
代わりにこのカードのエクシーズ素材を全て取り除く事ができる。
この効果を適用したターン、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。
「セプターのふたつめの効果で、伏せカードを破壊して1枚ドロー」
「甘いよ、未来。チェーンして《強化蘇生》を発動。《E・HERO シャドー・ミスト》を守備表示で特殊召喚。効果で《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ」
「やるね、響。私はグローリアス・ヘイローのX素材を1つ取り除き、グレイト・トルネードの攻撃力を半分にし、その効果を無効にする。ライトニング・ジャッジメント!」
《E・HERO Great TORNADO》 攻撃力2800 → 1400
グローリアス・ヘイローの放った光の矢を受けて、グレイト・トルネードが弱体化する。
やっぱセプスロってスゲーな。サーチして3ドローして1破壊とか、最後までアドたっぷりだもん、キラやば。
ちなみに、この世界のデュエリストは意識が高いのか、拘りが強いのか、『出張』という概念があまりない。特にプロの世界はそれが顕著で、あまりにも自分のデッキイメージとかけ離れたカードは、どんな強カードであっても入れない。プロのデュエルはエンターテインメントでなければならないからだ。
大人の事情を言うならば、プロとは職業デュエリストであり、スターでもあり、この世界では大きな経済でもある。スポンサーがいて、ファンがいる。そういった人たちを見てデュエルを始めた子供たちは、やはり自分のデッキにも拘りを持つようになるわけだ。
「《コーリング・ノヴァ》を通常召喚して、バトル。コーリング・ノヴァでグレイト・トルネードを攻撃」
攻撃力はどちらも同じ、上手いな。
「戦闘で破壊され墓地に送られたことで、コーリン・ノヴァの効果発動。デッキから2体目のコーリング・ノヴァを特殊召喚。そのままシャドー・ミスト攻撃。続けてグローリアス・ヘイローでダイレクトアタック。ライトニング・クラスター!」
立花響 LP6000 → 3500
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
小日向未来 LP1200 手札3 モンスター2 伏せ2
立花響 LP3500 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「わたしのターン、ドローッ! 《E・HERO ブレイズマン》を召喚して効果発動。デッキから《融合》を手札に加える。続けて《
再び水のヒーローが降臨した。だが、そのヒーローもすぐに退場させられるとは思わなかっただろう。
「速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動。ゼロを墓地に送り、《M・HERO アシッド》を特殊召喚。いくよッ! アシッド・レインとフリージング・クラッシュのダブルアタックだッ!」
「チェーンして《天罰》を発動。手札を1枚捨てて、アシッドの効果を無効にして破壊するわ」
「――ッ! でもゼロの効果は発動するよ」
「コーリング・ノヴァは破壊されるけど、グローリアス・ヘイローはX素材を全て取り除くことで破壊を無効にできる」
「う~、わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《戦線復帰》を発動。墓地のセプターを守備表示で特殊召喚。効果で《光天使スローネ》を手札に加えるわ」
立花響 LP3500 手札1 モンスター0 伏せ1
小日向未来 LP1200 手札3 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。魔法カード《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》を手札に加えて、そのまま発動」
周囲の景色が一変、讃美歌でも聞こえてきそうな荘厳な教会へと姿を変えた。
「ソリッドビジョンじゃなくて、いつか本物の教会で祝福されたいね」
「? そうだね!」
あれは意味が分かってないな。とりあえず返事をしとこうって顔だ。未来もほほを赤らめるな。
「……こほん。リチューアル・チャーチのふたつめの効果を発動するわ。墓地の《神の居城-ヴァルハラ》、《テラ・フォーミング》、《成金ゴブリン》2枚をデッキに戻して墓地のスローネを特殊召喚。効果で手札のスローネを特殊召喚して1枚ドロー。レベル4のスローネ2体とセプターでオーバーレイネットワークを構築。光の使いよ、今、再び、輝きの衣をまといて降臨せよ! 《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》!」
ヴァルハラ? ああ、天罰の時に捨てたカードか。
未来のフィールドに2体のグローリアス・ヘイローが並ぶ。
当然だが未来のデッキにはグローリアス・ヘイローが3枚入っている。つまり一貫性があるってことだ。一貫性があるってことは美しいってことだ。
光天使3体が集まって《ヴェルズ・ウロボロス》が出てきたら観客は戸惑うだろう。プロの世界ならブーイングが起こるかもしれない。
「セプターの効果で伏せカードを破壊して、1枚ドロー」
「チェーンして《
《E・HERO エスクリダオ》
星8/闇属性/戦士族/攻2500/守2000
「E・HERO」と名のついたモンスター+闇属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する
「E・HERO」と名のついたモンスターの数×100ポイントアップする。
勢いよく呼び出したが、守備表示だ。グローリアス・ヘイローの効果を考えれば当然ともいえるが。
「私は《ジェルエンデュオ》を通常召喚して、バトルよ。グローリアス・ヘイローでエスクリダオを攻撃」
黄金に輝く天使の放った光の槍に、漆黒の英雄が砕け散った。
「続けてジェルエンデュオと2体目のグローリアス・ヘイローでダイレクトアタック!」
これは、決まったか?
「まだだよ未来。わたしには、これがあるッ!」
響に向かっていったジェルエンデュオが、閃光に包まれて消え去った。そこには響を守護するように、ひとりの剣士が仁王立ちしていた。
《護封剣の剣士》
星8/光属性/戦士族/攻 0/守2400
(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
その後、特殊召喚したこのカードの守備力がその攻撃モンスターの攻撃力より高い場合、
その攻撃モンスターを破壊する。
(2):フィールドのこのカードを素材としてX召喚したモンスターは以下の効果を得る。
●このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。
「なら、グローリアス・ヘイローで護封剣の剣士を攻撃。ライトニング・クラスター!」
光の槍が護封剣の加護を撃ち抜く。
「私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」
小日向未来 LP1200 手札2 モンスター2 伏せ1
立花響 LP3500 手札0 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「わたしのターン、ドローッ! 魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《E・HERO オーシャン》、《E・HERO Great TORNADO》、《E・HERO アブソルートZero》、《M・HERO アシッド》、《護封剣の剣士》をデッキに戻してシャッフル、その後2枚ドロー。来たッ! わたしは《ミラクル・フュージョン》を発動。墓地の《E・HERO エスクリダオ》と《E・HERO エアーマン》を除外して融合。もう一度お願いッ! 《E・HERO Great TORNADO》!」
再度、風のヒーローが疾駆する。グローリアス・ヘイローの攻撃力は半減している。
「グレイト・トルネードでグローリアス・ヘイローに攻撃、スーパーセルッ!!」
小日向未来 LP1200 → 0
デュエルデスクから試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。景色が荘厳な教会から、いつものデュエル場へと戻る。
「あーあ、負けちゃったかぁ」
「あははっ、今回はわたしの勝ちだね」
「でも通算成績ではまだ私が勝ち越してるんだよ」
「えぇー、そうだったかなぁ」
最初の頃の響は負けまくってたからな。さすがに泣きそうになると未来は響にばれないように上手く負けてあげてたみたいだけど。
「そうだよー。私の393勝315敗だよ」