キャロルが別れ際に言った台詞『改めて礼はする』、あれは社交辞令だと思っていたのだが、キャロルはエルフナインと共に、律義にも菓子折りを持って挨拶に来た。
「カードの方が良かったか?」
と、冗談交じりに言われたが、それは彼女なりの
エルフナイン曰く、キャロルには凄絶な過去があり、一時は冗談ではなく世界を分解しようと目論んでいたとのこと。だが破滅の光が心の裡から消え去った時、同時に負の感情も薄れたらしい。今では正しい意味で世界を識ろうとしているようだ。
デュエルエナジーの可能性に気付いたのは随分前からで、それを錬金術と組み合わせることで、エネルギーに転用することを可能としたのだとか。
レイアさんたち
なんだか理解の及ばない領域になってきたな。
歓談しているうちに遊びに来た響が合流して、どこから聞きつけたのか、了子さんの指令で緒川さんが迎えに来て、S.O.N.G.で歓迎会を開くことになった。
了子さんはその筋では有名らしく、キャロルも名前は知っていた。
で、ふたりはデュエルエナジーについて盛り上がり、親睦も兼ねて対抗戦を開催することになった。
招集された四人の決闘人形が並び立つ。
「初戦はガリィを出す。そちらは誰を選ぶ?」
「なら私でいいかしら? そのコとは因縁もあるしね」
名乗りを上げたのはマリアさんだ。そういえば、あの大会で一悶着あったと言ってたな。
確か、キャロル(破滅の光)の命令で目立たずにデュエルエナジーを収集するはずだったが、ガリィはちょっと吸い取り過ぎたようで、相手がぶっ倒れる事態になった。それを異変に思った司令が、マリアさんを調査に向かわせた、と。
「ふん。二度も遅れはとらないわよ」
『デュエルッ!』
「アタシのターン、ドロー。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドよ」
「あら、息巻いてたわりには、おとなしいのね」
「アタシは元来おとなしい性格なんですよぉ」
「……あなたのお仲間は、そう思ってはいないようだけど」
キャロルを含めた全員が苦笑いか呆れ顔だ。
ガリィ LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「マイターン、ドロー。《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ディスクガイ》を捨てて、2枚ドロー。そして《フュージョン・デステニー》を発動。デッキから《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ダッシュガイ》、《D-HERO ドローガイ》を墓地に送り、融合召喚。来なさい、《D-HERO ドミネイトガイ》!」
《D-HERO ドミネイトガイ》
星10/闇属性/戦士族/攻2900/守2600
「D-HERO」モンスター×3
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。
自分または相手のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
(3):融合召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、
自分の墓地のレベル9以下の「D-HERO」モンスター3体を対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。
そのモンスターを特殊召喚する。
「おおー、あれがマリアの新しいエースデスか! カッコイイデス!」
「1ターン目にエースを呼び出すなんて、やっぱりマリアは凄い」
フュージョン・デステニーで特殊召喚したモンスターは次のターンのエンドフェイズに破壊されるというデメリットがある。だがドミネイトガイなら後続のモンスターを呼び出せる。墓地に送ったモンスターも墓地効果を持ったものばかりだ。抜け目ないな。
「ドミネイトガイのひとつめの効果を発動するわ。私のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。続けて《D-HERO ディバインガイ》を通常召喚。バトルよ。ドミネイトガイで伏せモンスターを攻撃、ドミネイト・クラッシュ!」
「セットしたモンスターは《グレイドル・イーグル》よ。アンタのエース、いっただっきまーす」
《グレイドル・イーグル》
星3/水属性/水族/攻1500/守 500
(1):自分のモンスターゾーンのこのカードが
戦闘またはモンスターの効果で破壊され墓地へ送られた場合、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備する。
(2):このカードの効果でこのカードが装備されている場合、
装備モンスターのコントロールを得る。
このカードがフィールドから離れた時に装備モンスターは破壊される
ガリィのデッキはグレイドルか。また厄介なデッキだな。
破壊されたグレイドル・イーグルの怨念がドミネイトガイに取り憑き、ガリィのフィールドへと移動する。
「くっ、だがドミネイトガイの効果で1枚ドロー。カードを1枚伏せてターンエンド」
マリア LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1
ガリィ LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「アタシのターン、ドロー」
「スタンバイフェイズにドローガイを守備表示で特殊召喚。効果によってお互いに1枚ドロー」
「《グレイドル・コブラ》を通常召喚。そしてバトルよ。グレイドル・コブラでディバインガイを攻撃」
グレイドル・コブラの攻撃力は1000。ディバインガイには及ばない。当然のように破壊される。
ガリィ LP4000 → 3400
「さぁて、またまたいただきまぁす」
グレイドル・コブラの怨念に取り憑かれ、ディバインガイの瞳が怪しく光る。
「さあ行きな! ディバインガイでドローガイを攻撃。続けてドミネイトガイでダイレクトアタック!」
マリア LP4000 → 1100
「フフッ。どうかしら、自分のエースに裏切られた気分は。メインフェイズ2に永続魔法《グレイドル・インパクト》を発動。で、どうせ破壊されるんだから、アタシが破壊してあげるわ。《デストラクト・ポーション》を発動。ドミネイトガイを破壊して、その攻撃力分のライフを回復する」
ガリィ LP3400 → 6300
「ドミネイトガイが破壊されたことにより効果発動。私は墓地から《D-HERO ダッシュガイ》、《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ディスクガイ》を特殊召喚するわ。ディスクガイの効果で2枚ドロー」
「アタシはこれでターンエンド。そしてエンドフェイズにグレイドル・インパクトの効果でデッキから《グレイドル・アリゲーター》を手札に加えるわ」
ガリィ LP6300 手札4 モンスター1 伏せ1
マリア LP1100 手札7 モンスター3 伏せ1
――――――――――――
「マイターン、ドロー。《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ドゥームガイ》を捨てて、2枚ドロー。そして《融合》を発動。フィールドの《D-HERO ディアボリックガイ》と《D-HERO ディスクガイ》を融合。来なさい、《D-HERO デッドリーガイ》!」
《D-HERO デッドリーガイ》
星6/闇属性/戦士族/攻2000/守2600
「D-HERO」モンスター+闇属性の効果モンスター
「D-HERO デッドリーガイ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。
手札・デッキから「D-HERO」モンスター1体を墓地へ送り、
自分フィールドの全ての「D-HERO」モンスターの攻撃力はターン終了時まで、
自分の墓地の「D-HERO」モンスターの数×200アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「魔法カード《
《D-HERO ディストピアガイ》
星8/闇属性/戦士族/攻2800/守2400
「D-HERO」モンスター×2
「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、
フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「ディストピアガイの効果発動。墓地のドゥームガイの攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パーム!」
ガリィ LP6300 → 5300
「《D-HERO ドリルガイ》を通常召喚して、デッドリーガイの効果発動。手札の《D-HERO ディスクガイ》を捨てて、デッキから《D-HERO ディバインガイ》を墓地に送る。私のフィールドの全ての「D-HERO」モンスターの攻撃力は1200アップする。」
《D-HERO ドリルガイ》 攻撃力1600 → 2800
《D-HERO デッドリーガイ》 攻撃力2000 → 3200
《D-HERO ディストピアガイ》攻撃力2800 → 4000
「ディストピアガイの攻撃力が変化したことで効果発動。あなたの伏せカードを破壊する」
「チェーンして《スケープ・ゴート》を発動。ざぁんねんでしたねぇ」
「ならバトルよ。デッドリーガイでディバインガイを攻撃、デッドリー・シュート!」
ガリィ LP5300 → 3700
「続けてドリルガイで羊トークンを攻撃、ドリルガイは貫通効果を持っている。喰らいなさい! ドリル・プレッシャー!」
ガリィ LP3700 → 900
「最後にディストピアガイで羊トークンを攻撃、ディストピア・ブロー!」
容赦のない一撃で羊トークンが砕け散る。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
マリア LP1100 手札4 モンスター3 伏せ2
ガリィ LP 900 手札4 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「アタシのターン、ドロー」
「スタンバイフェイズにデッドリーガイの効果発動。手札の《D-HERO ディシジョンガイ》を捨てて、デッキから《D-HERO ダイヤモンドガイ》を墓地に送る。攻撃力が変化したディストピアガイの効果で《グレイドル・インパクト》を破壊するわ」
グレイドル・アリゲーターとのコンボを警戒したのか。ガリィのライフは僅かに900。自爆特攻も難しくなった。手札次第だが、一気に苦しくなったな。
「ふぅん、やってくれるじゃないの。アタシは《グレイドル・スライムJr.》を召喚。効果で墓地から《グレイドル・イーグル》を特殊召喚。その後、手札の《グレイドル・アリゲーター》を特殊召喚」
レベル2チューナーとレベル3が2体か。トークンと合わせてレベル10までいけるな。ああ、水属性縛りがあるのか。なら主なルートは2つかな。
「アタシはレベル3の《グレイドル・イーグル》とレベル3の《グレイドル・アリゲーター》にレベル2の《グレイドル・スライムJr.》をチューニング。深淵に潜みし暴龍よ、鎖錠を破り、浮上せよ! シンクロ召喚! 踊れ、《グレイドル・ドラゴン》!」
《グレイドル・ドラゴン》
星8/水属性/水族/攻3000/守2000
水族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「グレイドル・ドラゴン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがS召喚に成功した時、
そのS素材とした水属性モンスターの数まで相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、
このカード以外の自分の墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
「グレイドル・ドラゴンの効果発動。アンタのフィールドのモンスターを3体、すべて破壊する」
「リバースカードオープン《D-フュージョン》。フィールドの《D-HERO ディストピアガイ》と《D-HERO ドリルガイ》を融合。来なさい、《D-HERO ダスクユートピアガイ》!」
《D-HERO ダスクユートピアガイ》
星10/闇属性/戦士族/攻3000/守3000
「D-HERO」融合モンスター+「D-HERO」モンスター
(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。
自分の手札・フィールドから、
融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
(2):1ターンに1度、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターは戦闘・効果では破壊されず、
そのモンスターの戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「ダスクユートピアガイの効果発動。融合召喚が成功――」
「効果は使わせないわよ! 手札から速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動。そいつの攻撃力を400アップして、効果を無効にする!」
それを聞いて、マリアさんは多少ならずも驚いたようだ。普通ならデッドリーガイが効果を発した時、あるいはディストピアガイが効果を発した時に使ってもおかしくはない。
「くっ、ならばチェーンしてダスクユートピアガイのふたつめの効果を発動。対象はグレイドル・ドラゴン」
「はんッ! アンタとやるのは二度目だからね。あれが見せ札だってのは感づいてたわよ。続けて速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動。羊トークンをリリースして、そいつのコントロールを得る!」
ガリィがソリッドビジョンのゲームコントローラーにコマンドを入力する。そこから伸びたコードがダスクユートピアガイに接続された。
「バトルよ。ダスクユートピアガイでダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン《ガード・ブロック》。この戦闘によって発生する戦闘ダメージは0になり、カードを1枚ドローする」
「チッ! 魔法カード《アドバンスドロー》を発動。《D-HERO ダスクユートピアガイ》をリリースして、2枚ドロー。カードを2枚伏せてターンエンドよ」
ガリィ LP 900 手札0 モンスター2 伏せ2
マリア LP1100 手札4 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「マイターン、ドロー。《死者蘇生》を発動。墓地の《D-HERO ディストピアガイ》を特殊召喚して効果発動。墓地のドリルガイの攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パーム!」
「チェーンして《デストラクト・ポーション》を発動。《グレイドル・ドラゴン》を破壊して、ライフを3000回復。その後、グレイドル・ドラゴンの効果で、墓地の《グレイドル・イーグル》を守備表示で特殊召喚するわ」
ガリィ LP 900 → 3900 → 2300
「続けて魔法カード《オーバー・デステニー》を発動。墓地のドミネイトガイを対象に、そのモンスターのレベルの半分以下のレベルを持つ「D-HERO」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。私はデッキから《D-HERO ドリルガイ》を特殊召喚。そしてバトル。ドリルガイで羊トークンを攻撃、ドリル・プレッシャー!」
ガリィ LP2300 → 700
「私はカードを1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズにドリルガイは破壊されるわ」
「エンドフェイズに《リミット・リバース》を発動。《グレイドル・コブラ》を特殊召喚」
マリア LP1100 手札2 モンスター1 伏せ1
ガリィ LP 700 手札0 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「アタシのターン、ドロー」
「スタンバイフェイズの《D-タクティクス》を発動。フィールドの全ての「HERO」モンスターの攻撃力は400アップする。そしてディストピアガイの効果で《グレイドル・コブラ》を破壊する。ノーブルジャスティス!」
ガリィが小さく歯噛みする。目論見を潰されたからだろう。暗黒世界の英雄を一瞥し、改めてドローしたカードに視線を向ける。そして、口角を上げた。
「魔法カード《サルベージ》を発動。墓地の《グレイドル・スライムJr.》と《グレイドル・アリゲーター》を手札に加える。さあ、これがラストターンよ。《グレイドル・スライムJr.》を召喚。効果で墓地から《グレイドル・コブラ》を特殊召喚。その後手札の《グレイドル・アリゲーター》を特殊召喚」
レベル2チューナーとレベル3が3体。対応レベルは5、8、11か。って、レベル11の水シンクロなんていたかな?
「アタシはレベル3の《グレイドル・コブラ》とレベル3の《グレイドル・アリゲーター》にレベル2の《グレイドル・スライムJr.》をチューニング。深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めよ! シンクロ召喚! 踊れ、《白闘気白鯨》!」
《
星8/水属性/魚族/攻2800/守2000
水属性チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。
(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。
(3):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
(4):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、
このカード以外の自分の墓地の水属性モンスター1体を除外して発動できる。
このカードをチューナー扱いで特殊召喚する。
ガリィの頭上を飛び越え、白き巨体が跳ねた。その巨体から発せられる白き闘気が、暗黒世界の英雄を圧殺せんと放射される。
「白闘気白鯨の効果発動。《D-HERO ディストピアガイ》を破壊。そして、これがラストアタックだ! 喰らいなッ! ピアッシング・スノーライト!」
白き巨体が宙を舞う。質量さえ錯覚させるような圧迫感と共に、その身体ごとぶつかってくる。その咆哮を真正面から受け止め、マリアさんは流麗な仕草で手札のカードを引き抜いた。
「……本当に、紙一重といったところね。私は手札の《D-HERO ダイナマイトガイ》を捨てて効果発動。この戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になり、お互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける」
「なん……だと……!?」
ガリィの表情が一転。愉悦が驚愕に歪み、諦念へと変わる。
マリアさんの手札から飛び出た破壊の力を内包した英雄が、フィールドの中央で爆散した。
ガリィ LP 700 → 0
マリア LP1100 → 100
「――クッ、このアタシが二度までも……。うぇぇ~ん。マスター、負けちゃいましたぁ」
「ああ、負けるだろうとは思っていた」
「ちょっ、マスター! それってば酷すぎません? 断固抗議します。抗議です抗議ぃ~」
「えぇい、すがりつくな! 次はおまえだ、ファラ。行け!」
「仰せのままに、マスター」