名乗りを上げたエルフナインを眺めながら、キャロルは感慨深げに口を開く。
「そういえば、最近は頻繁にデッキ調整をしているらしいな」
「そ、そうかもしれませんね」
「そういえば、以前に宝物庫の鍵を借りに来たことがあったな」
「ちょっと探し物があったので……」
エルフナインは俯いてモジモジし始めた。どうも力関係はキャロルが上らしいな。
「まあ、いい。せっかくだ、誰か相手を頼めるか?」
「はい、はい! じゃあわたしが相手するデスよ!」
切歌が元気よく手を上げる。じわじわと迫り来る気圧はたじろぐほどだ。みんなのデュエルを見て興奮したのだろう。
「いいか? エルフナイン」
「は、はい。よろしくお願いします、切歌さん」
「遠慮は無用デスよ! 全力でかかってこいデス!」
「はい、では」
『デュエルッ!』
「先攻はわたしデスね、ドロー」
切歌の顔が愉悦に歪む。あのにやけ顔は見たことがある。
これは親睦も兼ねたデュエル会だ。切歌はその辺ちゃんと分かってるのだろうか?
大声を出すわけにもいかないので、必死にアイコンタクトで伝える。あ、ダメだ。あいつ全然気付いてねぇ。
「わたしは魔法カード《
「あ、手札から《灰流うらら》を捨てて、その効果を無効にします」
「……へ?」
切歌の愉悦顔が一瞬にして固まる。灰流うららか、珍しいカードが飛び出してきたな。
「随分と高ぇカード使ってんな、あの嬢ちゃん」
奏さんが感心したように軽口をこぼす。アイドルの稼ぎがあっても、あのレベルのカードは珍しいのだろう。
「ええ、【Sランク】のカードですからね。俺もプロのデュエル以外では初めて見ましたよ」
そういえばキャロルのデッキにもひっそりと《幽鬼うさぎ》や《エフェクト・ヴェーラー》が入ってたな。まあクェーサーだのシフルだのも、かなり値の張るカードだが。
手札誘発系のカードはデュエルの勝敗を左右するといっても過言ではないくらいに強力なカードだ。奇襲性が高く、相手の意表を突きやすい。それゆえにレアだ。プロならともかく、一般のデュエリストはそこに金をかけるなら、デッキ全体の完成度を上げる方に金を使うだろう。
サンダー・ドラゴンなんかも一式揃えるとなったら、結構な金額になる。俺は運よく主要パーツを入手できたが、そうでなければ組もうとは思わなかっただろうな。
「えーと、じゃあわたしは《レッドアイズ・インサイト》を発動デス。デッキから《真紅眼の黒炎竜》を墓地に送り、《レッドアイズ・スピリッツ》を手札に加えるデス。続けて《伝説の黒石》を召喚……ってあれ?」
デュエルディスクから警告音が発せられ、切歌は疑問を抱く。その答えは対戦相手から返ってきた。
「切歌さん、《真紅眼融合》を発動したターンは他の召喚・特殊召喚はできませんよ」
「へ? でも《真紅眼融合》は無効にされたデスよ?」
「《灰流うらら》は効果を無効にするだけで、発動を無効にするわけではないので」
「や、ややこし、いや知ってたんデスけどね! じゃあ、わたしはカードを2枚伏せてターンエンドデス」
召喚はできなくとも召喚権はあるからモンスターのセットはできる。手頃なカードがなかったのか、それともうっかりしたのか、さてどっちだろうか。
暁切歌 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ2
――――――――――――
「ボクのターン、ドローします。ボクは魔法カード《コール・リゾネーター》を発動。デッキから《クリムゾン・リゾネーター》を手札に加えます。そしてこのカードはボクのフィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できます。《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚」
音叉を持った炎の小悪魔が、エルフナインのフィールドに出現する。
「続けて《スカーレッド・ファミリア》を通常召喚。レベル4の《スカーレッド・ファミリア》にレベル2の《クリムゾン・リゾネーター》をチューニング。来て下さい!《レッド・ライジング・ドラゴン》!」
《レッド・ライジング・ドラゴン》
星6/闇属性/ドラゴン族/攻2100/守1600
悪魔族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時、
自分の墓地の「リゾネーター」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果を発動するターン、
自分はドラゴン族・闇属性Sモンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない。
(2):墓地のこのカードを除外し、
自分の墓地のレベル1の「リゾネーター」モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスター2体を特殊召喚する。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「レッド・ライジング・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、墓地の「リゾネーター」モンスターを特殊召喚できます。《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚。そしてボクのフィールドには、このカード以外のモンスターがドラゴン族・闇属性Sモンスターが1体のみなので効果を発動できます。デッキから《チェーン・リゾネーター》と《レッド・リゾネーター》を特殊召喚。レッド・リゾネーターの特殊召喚時の効果で、レッド・ライジング・ドラゴンの攻撃力分のライフを回復します」
音叉を持った小悪魔たちが、エルフナインを周囲を跳ね回る。その内の1体がエルフナインに音叉を向けて、癒しを与えた。
エルフナイン LP4000 → 6100
「ボクは手札の《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚。このカードはフィールドにSモンスターがいる時、手札から特殊召喚できます。レベル6の《レッド・ライジング・ドラゴン》にレベル2の《クリムゾン・リゾネーター》をチューニング。顕現しなさい《琰魔竜 レッド・デーモン》!」
赤黒い肌と翼を持つ悪魔竜が飛び立つ。
「レッド・デーモンは進化します! レベル8の《琰魔竜 レッド・デーモン》にレベル2の《レッド・リゾネーター》をチューニング。炎と共にその身を
切歌がおろおろしだしたな。伏せカード2枚の内、1枚はレッドアイズ・スピリッツだろうが、ここまで動かれたということは、もう1枚も妨害系ではなさそうだ。
「これでラストです。レベル10の《琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル》にレベル1の《チェーン・リゾネーター》とレベル1の《シンクローン・リゾネーター》をダブルチューニング。孤高の絶対破壊神よ! 神域より舞い降り終焉をもたらせ! シンクロ召喚! 《琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ》!!」
《琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ》
星12/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守3500
チューナー2体+チューナー以外のドラゴン族・闇属性Sモンスター1体
(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。
このターン相手はフィールドで発動する効果を発動できない。
この発動に対して、相手はカードの効果を発動できない。
(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊した場合に発動する。
そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
(3):このカードが相手によって破壊された場合、
自分の墓地のレベル8以下のドラゴン族・闇属性Sモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「レッド・デーモン・カラミティの効果発動。このターン相手はフィールドで発動する効果を発動できません。そしてこの発動に対して、相手はチェーンを組むこともできません」
「な、なんデスとぉ!?」
「ついでに墓地に送られた《シンクローン・リゾネーター》の効果を発動しますね。墓地の《クリムゾン・リゾネーター》を手札に加えて、バトルフェイズに入ります。レッド・デーモン・カラミティでダイレクトアタック!」
「ここで《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デス! 《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デスッ! 《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デーーースッ!」
「発動できません! おとなしくやられちゃってください!
炎を纏った竜王が飛翔する。生み出された巨大なエネルギー球が切歌に直撃し、大爆砕を引き起こした。
暁切歌 LP4000 → 0
「――ありえないデェェェスッ!!」
デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。
このデュエルを一言でまとめるなら、1ターンキルをしようと思ったら、1ターンキルをされたでござる、ってところか。
ご愁傷様です。
というわけで、キャロル編終了です。
拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
また番外編でも書くかもしれませんが、読んでいただければ幸いです。