シンフォギア世界とデュエルモンスターズ   作:乾燥海藻類

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閑話-太陽

小日向未来は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の男を成敗せねばならぬと決意した。未来には男心はわからぬ。未来は、立花響の親友である。ピアノを弾き、カードと戯れて暮らしてきた。けれども友の心の機微に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明、未来は街を出発し、海を越え、三日ほど離れた名もなき孤島にやって来た。

デュエル大会である。友に押し切られた形とはいえ、興味がないといえば嘘になる。それに聊かばかりの自信もあった。友人に鍛えられたデュエルタクティクスは同年代でも高い方だという自負もある。

アマチュアとはいえ、世界大会だ。レベルが高いことは知れた。それでも予選を通過し、親友と共に本戦へと駒を進めることができたのは望外の喜びでもあった。

やがて本戦出場者が出揃った時、彼女はようやく違和感に気付いた。

共に参加した友人、音羽遊蓮の姿が見えない。

彼のデュエルの業前(ワザマエ)は、未来も認めるところである。にもかかわらず、だ。自分と親友がここにいるのに、彼の姿がないというのは、不自然ですらあった。

よほどに相手が悪かったのか、あるいは引きが悪かったのか。カードゲームである以上、ある程度の運が絡むのは仕方のないことではあるが、それでも彼の予選敗退という事実は衝撃的であった。

そして自分以上にショックを受けているのが、隣にいる親友である。

パッと見ではそうでもないが、空元気なのが未来にはわかった。親友のそんな姿を見ていると、またしてもあの男に怒りを覚えてしまう。

未来はすぐさま自身の携帯端末を取り出した。だが、繋がらない。電源が入っていないか電波の届かない場所……などという無機質なアナウンスが流れてくるだけだった。響のバイト先のS.O.N.G.という組織なら、何か知っているかもと思い至ったが、誰の連絡先も知らない事に肩を落とす。

あの時、マリアと連絡先を交換しなかったことを、未来は今さらながらに悔やんだ。響ならば連絡先は知っているだろうが、もし、万が一、例えば、彼が崖から海に転落し、サメに喰われて命を落としたなどということがあったのなら、この心優しい親友は壊れてしまうかもしれない。

自分の想像力が存外に豊かだったことに鳥肌を感じ、未来は響と一緒に(とこ)へと就いた。

 

 

 

 

 

明けて翌日、ロビーの大型モニターに本戦のトーナメント表が映し出されていた。

まず、自分と響の名前が反対側に表示されていることに安堵した。両者が決勝まで残らないと、対戦することはない。

そして、自分の名前が最初に表示されていることに嘆息する。

とりあえず二人は朝食をとった。響がおかわりをしないことに、未来は若干の不安を抱いたが、語り合う時間もなく、自分の名前がアナウンスされる。

親友の力ない激励を受け、未来はデュエルフィールドに場所を移した。

未来の対戦相手は、大人びた女性だった。

翡翠色の衣装に身を包み、どことなくフラメンコを連想させるような女性デュエリストは【ガスタ】使いだった。

フィールドにクリスティアとアルテミスを維持しつつ、カウンター罠で相手の起点を潰す。重要なのはマストカウンターを見極めることだ。

友人の言葉を思い起こしながら、未来は終始有利にデュエルを進め、そのまま勝利を手中に収めた。

親友も危なげなく初戦を勝利で飾ったことに胸をなでおろし、二回戦に臨む。

相手はデュエルアカデミアの生徒だった。鮮やかなブルーの制服に袖を通し、意気揚々と登壇する。相手が年下の女子だとわかっても、侮ることの無い姿勢に、未来は素直に敬意を抱いた。

手札が悪かったというのは、単なる言い訳だろう。

相手の後攻1ターン目。ハーピィの羽根帚で魔法・罠ゾーンを一掃され、パワー・ボンドからのサイバー・エンド・ドラゴン。そしてリミッター解除。

戦闘破壊耐性を持つジェルエンデュオでも、攻撃力16000の、しかも貫通効果を持つサイバー・エンド・ドラゴンの前では無力だった。

二回戦敗退とはいえ、プレイングミスで負けたわけではない。十分に納得できる結果だった。

結局、その日の全ての工程が終了するまで、遊蓮は姿を見せなかった。

夕方、未来が彼と出会ったのは偶然だった。意気消沈している親友のために、何か甘いものでも買いに行こうと思い立ち、その帰りの出来事だった。

彼は一切悪びれた風もなく、どうだと言わんばかりに全てのピースが埋まった腕輪を見せてきた。

未来は怒りを通り越して、呆れてしまった。一発二発ひっぱたきたいところではあったが、目の前の男に傷を負わせれば、響はまたしても落ち込むだろうと、未来は必死に自制した。

努めて冷静に、平静を装い、未来は現状を説明した。彼は一瞬混乱したものの、心当たりがあるのか、小さく溜め息を吐いて納得した。

とりあえず、彼を一刻も早く響の元へ連れていかねばならない。未来は遊蓮の腕を掴み、勢いに任せて歩を進めた。

響の反応は一目瞭然だった。精神の均衡を破って、決壊したダムのように滂沱の涙を流す。それでも笑顔は戻っていた。

そして彼女が口にした言葉は、未来には到底看過できるものではなかったが、頑なに否定できるような空気ではないことは、持ち前の勘の良さで察した。

友人とは言え、男と同衾するというのは、未来にとっては慮外千万であったが、響を挟んで向こう側というのなら妥協できるラインであると、不承不承了承した。

自分には出来ない事が、彼には出来る。

なら、彼に出来ない事を、自分はやらなければならない。

そう決意し、未来は小さく拳を握った。

鼻先が触れてしまうほどの距離で寝息を立てる見慣れた顔。やはり彼女は泣いているよりも、笑っているほうがずっといい。

未来は響のほほを指でなぞり、くすくすと笑った。

 

 

 

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