放課後、いつものようにS.O.N.G.のデュエル場に行くと、いつもは水魚のように仲の良いふたりが口論をしていた。
「やっぱりあのコンボは反則。一度目はウケるかもしれないけど、二度目からは興ざめ。切ちゃんもプロを目指すなら、あのコンボは封印すべき、そうすべき」
これは《真紅眼融合》からの《黒炎弾》のことだろう。確かにライフ4000であのコンボは反則と言えなくもない。
調がプロ云々言っているのは、ほとんどのリーグで効果ダメージが付随効果ではなく、主目的なバーンカードは禁止されているからだ。
プロデュエルは興行なんだから、勝つことだけに囚われていては、プロとして大成しない。
要するに、空気読めってことだな。
「だったら調はシュトラールとハスキーを抜いて欲しいデス。あれだって反則級デスよ」
「さすがに1:2交換はありえない。なら切ちゃんも真紅眼融合と黒炎弾を抜いて欲しい」
「いやいや、真紅眼融合まで抜くのはキツいデスよ。じゃあ黒炎弾とシュトラールの1:1交換で手を打つデス」
「ハスキーとシュトラールはふたつでひとつ。表裏一体、知行合一、内剛外柔、同一人物。決して離れることのない私と切ちゃんみたいなもの。それを引き裂くなんて悪魔の所業。切ちゃんだって私と離れたくないでしょ?」
「し、調ぇー。そこまでわたしのことを……嬉しいデスッ!」
感極まった様子で切歌が調に抱きつく。確かにハスキーとシュトラールは同一人物だが。それにハスキーもシュトラールもぶっ壊れってほどのカードじゃないだろ。
「――ハッ!? ダメデスよ。そんなこと言っても折れるわけにはいかないデス!」
「むぅ。なら黒炎弾は使っていい。でも対象にできるのは本物のレッドアイズだけ」
偽物のレッドアイズとかあるのか、とツッコミたかったが、なんとか抑えた。
「その辺りが妥協ラインデスかねぇ。おろ? 遊蓮さん来てたデスか」
ようやくこちらに気付いたふたりが視線を向けてくる。
「ああ、これからやるんだろ? 見学させてもらうよ」
「ヌルフフフ、いいデスよ。わたしの雄姿をとくと拝むがいいデスッ! さあ、始めるデスよ、調!」
「うん。いくよ、切ちゃん!」
『デュエルッ!』
「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動デス。デッキから《真紅眼の黒炎竜》を墓地に送り、《
《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3500/守2000
レベル7「レッドアイズ」モンスター+レベル6ドラゴン族モンスター
(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。
手札・デッキから「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送り、
そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。
(2):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、
自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「流星竜メテオ・ブラック・ドラゴンの効果発動デス。デッキから《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を墓地に送り、調に1400のダメージを与えるデス!」
月読調 LP4000 → 2600
「さらにモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンドデス」
暁切歌 LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1
――――――――――――
「私のターン、ドロー。魔法カード《トレード・イン》を発動。《ドラゴンメイド・ルフト》を捨てて、2枚ドロー。《ドラゴンメイド・チェイム》を召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお召し替え》を手札に加える。そして発動。フィールドの《ドラゴンメイド・チェイム》と手札の《ドラゴンメイド・エルデ》を融合。光輝燦然と現れよ、羽ばたけ、《ドラゴンメイド・シュトラール》!」
《ドラゴンメイド・シュトラール》
星10/光属性/ドラゴン族/攻3500/守2000
「ドラゴンメイド」モンスター+レベル5以上のドラゴン族モンスター
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分・相手のスタンバイフェイズに発動できる。
自分の手札・墓地からレベル9以下の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
(2):相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
このカードを持ち主のEXデッキに戻し、EXデッキから「ドラゴンメイド・ハスキー」1体を特殊召喚する。
光と闇、2体の竜が睨み合う。いきなりエースのぶつかり合いか。
「続けて永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》を発動。効果は色々あるけど、今適用できるのはひとつ。自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターの数×100アップする」
わずか100だが、これで相手を一方的に破壊できる。相撃ちとは大違いだ。
「バトル。シュトラールでメテオ・ブラック・ドラゴンに攻撃、アブソリュート・プレシャス・バースト!」
シュトラールの口腔から放たれた閃光波によって、流星竜が崩れ去る。だがその魂は受け継がれていく。
「破壊されたメテオ・ブラック・ドラゴンの効果で、墓地の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚するデス」
黒炎竜じゃなくて、通常のレッドアイズか。もしかして初手であのカードを引いてたのか?
調は効果を通したようだな。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
月読調 LP2600 手札1 モンスター1 伏せ2
暁切歌 LP3900 手札3 モンスター2 伏せ1
――――――――――――
「わたしのターン、ドローデス!」
「スタンバイフェイズにシュトラールの効果発動。墓地の《ドラゴンメイド・チェイム》を守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお心づくし》を手札に加える」
「ここで満を持して《黒炎弾》を発動デス! フィールドの《真紅眼の黒竜》を対象に、元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるデス!」
「やっぱり握ってたんだね。でもさすがにそれは通せない。シュトラールの効果発動。その発動を無効にして破壊する。そしてハスキーと交代」
撃ちだされた黒炎弾は、シュトラールの咆哮によって霧散した。シュトラールは白光に包まれ、メイド服を着た人間形態へと戻る。
「それは想定内デスよ。リバースカードオープン《レッドアイズ・スピリッツ》。墓地の《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を特殊召喚して効果発動デス。墓地の《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》を特殊召喚するデスよ」
状況は悪くなったが、調が逸ったとも言いづらいんだよな。黒炎弾を喰らった後で《
「そして《アタック・ゲイナー》を通常召喚デス!」
「チュ、チューナー!?」
調が驚きの声を上げる。ということは、調も知らない新カードか。たぶん出てくるのは、エルフナインに1キルされて落ち込んでた時に貰っていたカードだな。
「レベル7の《真紅眼の黒竜》にレベル1の《アタック・ゲイナー》をチューニング。王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいいデス! シンクロ召喚! 荒ぶる魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!」
《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードのカード名は、
フィールド・墓地に存在する限り「レッド・デーモンズ・ドラゴン」として扱う。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
このカード以外の、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ
特殊召喚された効果モンスターを全て破壊する。
その後、この効果で破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与える。
「アタック・ゲイナーの効果で、ハスキーの攻撃力を1000ポイントダウンデス! そしてレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果発動。このカード以外の、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚された効果モンスターを全て破壊するデス。アブソリュート・パワー・フレイム!」
「その効果にチェーンして速攻魔法《ドラゴンメイドのお見送り》を発動。手札から《ドラゴンメイド・ティルル》を守備表示で特殊召喚し、ハスキーをEXデッキに戻す。この効果で特殊召喚したモンスターは次のターンの終了時まで、戦闘・効果では破壊されない」
ハスキーとティルルがハイタッチを交わして交代する。淡い光に包まれたティルルは炎の中でも平然としていた。
「そしてこの効果で破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与えるデスよ」
月読調 LP2600 → 1600
「――くぅ、ティルルの効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・パルラ》を手札に加え、そのまま墓地に送る」
「むむ、じゃあわたしはこれでターンエンドデス」
暁切歌 LP3900 手札2 モンスター3 伏せ0
月読調 LP1600 手札1 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・ナサリー》を召喚。効果で墓地の《ドラゴンメイド・チェイム》を特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお召し替え》を手札に加える。続けてリバースカード《戦線復帰》を発動。墓地の《ドラゴンメイド・パルラ》を守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイド・ラドリー》を墓地に送る。魔法カード《ドラゴンメイドのお心づくし》を発動。墓地の《ドラゴンメイド・ラドリー》を特殊召喚。その後、ラドリーと同じ属性でレベルが違う《ドラゴンメイド・フルス》をデッキから墓地に送る。そしてラドリーの効果発動。デッキの上からカードを3枚墓地に送る」
ラドリーが小走りに調に近づき、デッキから3枚のカードを墓地に投げる。が、その扱いが乱暴だったのか、カードはもっと丁寧に扱いなさい、とチェイムから叱責されているようだ。墓地に送られたカードの中にはフランメの姿もあった。
調に
「永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》の効果発動。墓地の《ドラゴンメイド・フランメ》を手札に加える。そして《ドラゴンメイドのお召し替え》を発動。フィールドの《ドラゴンメイド・チェイム》と手札の《ドラゴンメイド・フランメ》を融合。現れよ、光風霽月たる竜家令、《ドラゴンメイド・ハスキー》!」
《ドラゴンメイド・ハスキー》
星9/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
「ドラゴンメイド」モンスター+ドラゴン族モンスター
(1):自分・相手のスタンバイフェイズに、
このカード以外の自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターよりレベルが1つ高い、またはレベルが1つ低い
「ドラゴンメイド」モンスター1体を自分の手札・墓地から選んで守備表示で特殊召喚する。
(2):このカード以外の自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスターが自分の手札に戻った時、
相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
まさしく淑女然とした佇まいで、メイドたちの長が再度、姿を現した。
「バトルフェイズ。ドラゴンメイドたちは真の姿へと変貌を遂げる」
手札を全て使い切った調は、司令官よろしく5人のメイドたちに号令をかける。
「ナサリーを手札に戻し、墓地からエルデを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を破壊」
ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな薄紅色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、悪魔竜は地に落ちた。
「パルラを手札に戻し、墓地からルフトを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》を破壊」
ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな若葉色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、流星竜が崩れ去る。
「メテオ・ブラック・ドラゴンの効果で、墓地の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚するデス」
無駄な抵抗と分かりつつも、切歌は後続のモンスターを呼び出した。ドラゴンメイドたちの蹂躙は続く。
「ティルルを手札に戻し、墓地からフランメを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《真紅眼の黒竜》を破壊」
ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな深紅色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、飛び立ったばかりの黒竜は撃ち落とされた。
「ラドリーを手札に戻し、墓地からフルスを特殊召喚。そしてハスキーの効果でセットモンスターを破壊」
ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな淡藤色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、防御態勢の飛竜は砕かれた。
4体の巨竜と、それを指揮する家令によって、布陣は一息に破壊された。
「……切ちゃん。切ちゃんは強かった。でもそれは間違った強さなの。あんなお手軽抹殺コンボは、生み出すべきじゃなかった」
「いや、別にわたしが生み出したワケじゃ……」
切歌が冷や汗をかいて言いよどむ。
果たして悪いのは《黒炎弾》か、それとも《真紅眼融合》か、或いは《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》か。
《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》は間違いなく悪い。
「エルデ、ルフト、フランメ、フルス、ハスキーでダイレクトアタック! 正義執行! アブソリュート・アル・フェニックス!」
いつの間にか『悪』にされた切歌に向かって、ドラゴンメイドたちが襲い掛かる。四属性のブレスに加え、ハスキーの手より放たれた閃光波を喰らって、切歌は無残にも爆散した。
暁切歌 LP3900 → 0
「――ありえないデェェェスッ!!」
切歌の悲鳴がこだまする。完全にオーバーキルだな。よほどにあのコンボが許せなかったらしい。
まあ、気持ちはわかる。