丁度デュエルが終了したところで、響が能天気な挨拶をかまして登場した。
「はぁ~い、響ちゃん。元気してたかしら?」
「はい、カリオストロさんもお元気そうで」
「たった今面白いものが見れたからね」
プレラーティが舌打ちして視線を逸らす。さすがの響も察したのか、渇いた笑いを漏らした。
「見てなさい、プレラーティ。今から貴女の仇を取ってあげるから。相手は違うけどね」
「ふんっ。おまえもやられてしまえ!」
「相変わらずいけずねぇ。じゃあ響ちゃん、始めましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
『デュエルッ!』
「あーしのターン、ドローっと。まずはフィールドね。《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《ドラゴニックD》を手札に加えて、そのまま発動よ」
《ドラゴニック
フィールド魔法
(1):フィールドの「真竜」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
アドバンス召喚した「真竜」モンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。
(3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
このカード以外の自分の手札・フィールドのカード1枚を選んで破壊し、
デッキから「真竜」カード1枚を手札に加える。
「永続魔法《補給部隊》を発動して、《ドラゴニックD》の第3の効果を発動するわよ。手札の《ベビケラサウルス》を破壊して、デッキから《真竜皇リトスアジムD》を手札に加えるわ。そして破壊された《ベビケラサウルス》の効果で、デッキから2体目の《ベビケラサウルス》を特殊召喚。続けて《魂喰いオヴィラプター》を通常召喚して効果発動。デッキから《究極伝導恐獣》を手札に加える。そしてオヴィラプターの第2の効果で、フィールドの《ベビケラサウルス》を破壊して、墓地の《ベビケラサウルス》を特殊召喚。《補給部隊》の効果で1枚ドローして、破壊された《ベビケラサウルス》の効果発動。デッキから3体目の《ベビケラサウルス》を特殊召喚よ」
ベビケラサウルスには同名以外だとか、同名ターン1などという制限はない。3枚体制でガンガン回してるな。
「さあいくわよ。フィールドの《ベビケラサウルス》2体を破壊して《真竜皇リトスアジムD》を特殊召喚よ!」
《真竜皇リトスアジム
効果モンスター
星9/地属性/幻竜族/攻2500/守2300
「真竜皇リトスアジムD」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。
このカード以外の手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、
地属性モンスターを含むモンスター2体を破壊し、このカードを手札から特殊召喚し、
地属性モンスター2体を破壊した場合、
相手のエクストラデッキを確認してその中からモンスターを3種類まで選んで除外できる。
(2):このカードが効果で破壊された場合に発動できる。
自分の墓地から地属性以外の幻竜族モンスター1体を選んで特殊召喚する。
「《真竜皇リトスアジムD》の効果発動。なんと、相手のEXデッキを確認してその中からモンスターを3種類まで選んで除外できるのよ」
「ええっ!? じょ、除外ですか!?」
響が慄いて声を上げる。ガーンだな。出鼻をくじかれた。カリオストロさんは、デュエルディスクをチェックしながら感嘆の吐息を漏らしている。
「凄いわねぇ、15枚全部違うヒーローなんて。じゃあ《E・HERO アブソルートZero》、《E・HERO サンライザー》、《M・HERO ダーク・ロウ》を除外するわね」
「うう、わたしのヒーローたちが……」
「続けて破壊された2体の《ベビケラサウルス》の効果発動。デッキから《幻創のミセラサウルス》と《ジャイアント・レックス》を特殊召喚。そしてレベル4の《魂喰いオヴィラプター》と《ジャイアント・レックス》でオーバーレイ。現れなさい、《エヴォルカイザー・ラギア》!」
《エヴォルカイザー・ラギア》
ランク4/炎属性/ドラゴン族/攻2400/守2000
恐竜族レベル4モンスター×2
(1):このカードのX素材を2つ取り除き、以下の効果を発動できる。
●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを召喚・特殊召喚する際に発動できる。
それを無効にし、そのモンスターを破壊する。
「あーしはカードを1枚伏せてターンエンドよ」
カリオストロ LP4000 手札3 モンスター3 伏せ1
――――――――――――
「わたしのターン、ドロー! 《E・HERO ソリッドマン》を召喚。効果で《E・HERO ブレイズマン》を特殊召喚して、その効果でデッキから《融合》を手札に加えます」
通したか。止めるべきは融合だと判断してるんだろうな。
「そして手札を1枚捨てて《超融合》を発動します!」
「超……融合? まあいいわ。ラギアの効果を発動――できないッ!?」
「このカードの発動に対して、他のカードは発動できません。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と《エヴォルカイザー・ラギア》を融合。来て! 紅蓮の勇者《E・HERO ノヴァマスター》!」
これで厄介なラギアはいなくなったが、フィールド魔法の効果でパワーアップしているリトスアジムDには届かない。
「続けて《融合》を発動。手札の《E・HERO オーシャン》とフィールドの《E・HERO ソリッドマン》を融合。来て、大地の王者《E・HERO ガイア》!」
なるほどな。攻撃力を上げつつ、下げる戦法か。ってこれ、この前俺がやられたやつじゃねぇか。
「ソリッドマンの効果でオーシャンを守備表示で特殊召喚。続けてガイアの効果発動。《真竜皇リトスアジムD》の攻撃力を半分にして、その数値分ガイアの攻撃力をアップする! ガイア・フォース!」
《真竜皇リトスアジムD》 攻撃力2800 → 1400
《E・HERO ガイア》 攻撃力2200 → 3600
「バトルです! ガイアでリトスアジムDに攻撃、コンチネンタルハンマー!」
カリオストロ LP4000 → 1800
巨岩のような拳が真竜皇に突き刺さる。その一撃で巨体は崩れ落ちた。
「《補給部隊》の効果で1枚ドローするわ」
「続けてノヴァマスターでミセラサウルスを攻撃、クリムゾン・シュート! 戦闘で相手モンスターを破壊したことで、1枚ドロー!」
「あっさりひっくり返されちゃったわね」
「わたしはカードを1枚伏せてターンエンドです」
立花響 LP4000 手札1 モンスター3 伏せ1
カリオストロ LP1800 手札4 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「あーしのターン、ドロー。《ダイナレスラー・パンクラトプス》を特殊召喚。このカードは相手フィールドのモンスターの数が、自分フィールドのモンスターより多い場合、手札から特殊召喚できるのよ。そしてこのカード自身をリリースして伏せカードを破壊」
「チェーンして《和睦の使者》を発動。これでこのターン、わたしのモンスターは戦闘では破壊されず、わたしが受ける戦闘ダメージは0になる」
和睦の使者は、俺のデッキにも入っている優秀な防御カードだが、この状況では効果も半減だな。
「へぇ~、じゃ、あーしは墓地の《ジャイアント・レックス》と《ベビケラサウルス》を除外して、手札から《究極伝導恐獣》を特殊召喚。そして除外された《ジャイアント・レックス》を自身の効果でフィールドに特殊召喚」
《
星10/光属性/恐竜族/攻3500/守3200
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の恐竜族モンスター2体を除外した場合に特殊召喚できる。
(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。
自分の手札・フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、
相手フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする。
(2):このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。
(3):このカードが守備表示モンスターを攻撃したダメージステップ開始時に発動できる。
相手に1000ダメージを与え、その守備表示モンスターを墓地へ送る。
「《究極伝導恐獣》の効果発動よ。フィールドの《ジャイアント・レックス》を破壊して、貴女のモンスターを全て裏側守備表示にする。《補給部隊》の効果で1枚ドローして、バトルよ! 《究極伝導恐獣》は全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる。そしてダメージステップ開始時に、相手に1000ダメージを与え、その守備表示モンスターを墓地へ送る。これは戦闘破壊でも戦闘ダメージでもないわ。セットモンスター3体に攻撃、アルティメット・クルエルティ・ファング!」
裏側守備表示にされたヒーローたちが、反攻もできずに蹂躙される。
立花響 LP4000 → 1000
「――グッ、まだです。わたしはまだ戦えるッ!」
「そうこなくちゃね。あーしはカードを1枚伏せてターンエンドよ」
カリオストロ LP1800 手札3 モンスター1 伏せ2
立花響 LP1000 手札1 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《HEROの遺産》を発動します。墓地の《E・HERO ノヴァマスター》と《E・HERO ガイア》をEXデッキに戻して、3枚ドロー。《ヒーローアライブ》を発動。ライフを半分払い、デッキから《E・HERO シャドー・ミスト》を特殊召喚して、効果でデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えます」
立花響 LP1000 → 500
「続けて《融合回収》を発動。墓地の《融合》と《E・HERO ソリッドマン》を手札に加えて、ソリッドマンを召喚。効果で《E・HERO エアーマン》を特殊召喚して効果発動。魔法・罠カードを選んで破壊する効果を選択します」
「なら2枚とも発動するわ。《戦線復帰》で《魂喰いオヴィラプター》を守備表示で特殊召喚。《生存本能》で墓地の《ジャイアント・レックス》と《ベビケラサウルス》2体の計3体を除外して1200のライフを回復」
カリオストロ LP1800 → 3000
「じゃあわたしは《補給部隊》とフィールド魔法を破壊します」
「特殊召喚したオヴィラプターの効果で、デッキから《盾航戦車ステゴサイバー》を墓地に送るわ。そして除外された《ジャイアント・レックス》をフィールドに守備表示で特殊召喚」
「魔法カード《融合》発動。フィールドの《E・HERO ソリッドマン》と
《E・HERO シャドー・ミスト》を融合。もう一度お願い、《E・HERO ガイア》!」
本日二度目のガイア・フォース。《究極伝導恐獣》はパワーを吸い取られて、肩を落とした。
《究極伝導恐獣》 攻撃力3500 → 1750
《E・HERO ガイア》 攻撃力2200 → 3950
「ソリッドマンの効果で、墓地のブレイズマンを守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《置換融合》を手札に加えます。そして――」
「むっ、メインフェイズ終了時に《究極伝導恐獣》の効果発動! フィールドの《魂喰いオヴィラプター》を破壊して、相手フィールドのモンスターを全て裏側守備表示にするわ!」
「ならフェイズ移行は中止してメインフェイズを続けます。《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO エアーマン》を融合。来て、暴風の先導者《E・HERO Great TORNADO》!」
竜巻の中から風の英雄が悠然と姿を現す。吹き荒れる暴風に恐竜たちが騒ぎ出した。
《究極伝導恐獣》 攻撃力1750 → 875
《ジャイアント・レックス》守備力1200 → 600
「バトル! グレイトトルネードで《究極伝導恐獣》を攻撃、スーパーセル!」
「ダメージ計算時に、墓地の《盾航戦車ステゴサイバー》の効果発動。ライフを1000払い、このカードを特殊召喚する。そして、この戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になるわ」
カリオストロ LP3000 → 2000
「まだまだッ! 手札から《融合解除》を発動。グレイトトルネードをEXデッキに戻し、墓地から《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO エアーマン》を特殊召喚。エアーマンの効果でデッキから《E・HERO リキッドマン》を手札に加える。ブレイズマンでジャイアント・レックスを攻撃!」
炎の一撃を浴びて、ジャイアント・レックスは地に倒れた。
「続けて《マスク・チェンジ》を発動! ブレイズマンを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO 剛火》を特殊召喚して、《盾航戦車ステゴサイバー》を攻撃!」
「自身の効果で特殊召喚した《盾航戦車ステゴサイバー》はフィールドから離れた場合、除外されるわ」
「最後にエアーマンでダイレクトアタック! エアーシューター!」
カリオストロ LP2000 → 200
「わたしはこれでターンエンドです」
立花響 LP 500 手札1 モンスター3 伏せ0
カリオストロ LP 200 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「あーしのターン、ドロー。さあ、とっておきを見せてあげるわ。墓地の《幻創のミセラサウルス》の効果発動。このカードと《究極伝導恐獣》、《ダイナレスラー・パンクラトプス》、《魂喰いオヴィラプター》の計4枚を除外して効果発動。除外した枚数と同じレベルの恐竜族をデッキから特殊召喚するわ。来なさいな、《ディノインフィニティ》!」
呼び出されたのは先の恐獣に比べれば、随分と小ぶりなサイズの恐竜だ。
「ディノインフィニティの攻撃力は除外されている恐竜族モンスターの数×1000ポイントになるわ。つまり――」
その小ぶりな恐竜のオーラがどんどんと増大していく。
「《幻創のミセラサウルス》と《魂喰いオヴィラプター》で2000パワー! 《究極伝導恐獣》と《ダイナレスラー・パンクラトプス》のジャンプが加わって4000パワー! そして《盾航戦車ステゴサイバー》と《ベビケラサウルス》3体分の回転を加えて、貴女のヒーローを上回る8000パワーよ!!」
「は、8000!?」
「さあいくわよ! ディノインフィニティで剛火を攻撃、インフィニティ・ファング!」
圧倒的な攻撃力を持つ恐竜が、猛烈な勢いで剛火に襲い掛かる。
「ようやくあの時の借りを返せるってわけよ。利子つけて熨斗つけて、存分に受け取ってちょうだいなッ!」
「――くっ、うわぁぁぁ!!」
立花響 LP500 → 0
「よしッ! リベンジ完了! 良いデュエルだったわ、響ちゃん」
「うう~、はい。負けちゃったけど、楽しいデュエルでした!」
差し出された手を取り、響は笑顔で答えた。
恐竜族ってのはダイナミックなわりに、なんとなく地味なカテゴリーだと思っていたが、結構おもしろそうだな。
「
カリオストロさんはニコニコ顔、プレラーティさんは仏頂面、見事に明暗わかれたな。
「終わったようだな」
「ん? サンジェルマン? いつからいたワケダ?」
「つい先ほどだ。櫻井女史から連絡を受けてな。いや、休暇中の行動にとやかくいうつもりはない。ただ、な。こういうことなら、私にも一声ほしかったというか……」
「――フッ、どうやら気を回し過ぎたというワケダ」
「アハハハッ。サンジェルマンったら、意外とオチャメさんなのねぇ。ということは、お目当てはあの子かしら?」
三人の視線が一斉にこちらへと向く。まあ、リベンジが名目ならば、そうなるだろうな。
「キミには以前、恥ずかしいところを見せてしまったな」
騙されて利用されていたわけだからな。本人にとっては黒歴史ってところか。
「キミに再戦を申し込む。受けてもらえるか?」
「いいでしょう。受けて立ちますよ」