憑き物が取れたような笑顔だった。
以前に感じられた鬼気迫る感じや寂寥感も薄れていた。涼やかになったというか、険が取れたというか。
色々と変わったのかもしれない。
いや、元に戻ったというべきか。
「では始めようか」
「ええ、よろしくお願いします」
『デュエルッ!』
「私のターン、ドロー。まずは魔法カード《隣の芝刈り》を発動する」
初手芝刈りかぁ。これは面倒なことになりそうだな。
「私のデッキは54枚。キミのデッキは35枚。その差分19枚を墓地に送る」
凄まじい勢いでデッキから墓地にカードが送られる。デュエルディスクを操作して墓地情報を表示すると――。
《ワイト》
《異次元からの埋葬》
《死霊王 ドーハスーラ》
《ワイト夫人》
《ワイトキング》
《リビングデッドの呼び声》
《生者の書-禁断の呪術-》
《ワイトプリンセス》
《アンデッド・ワールド》
《隣の芝刈り》
《ワイトプリンス》
《ワイトメア》
《おろかな埋葬》
《アンデッド・ワールド》
《グローアップ・ブルーム》
《屍界のバンシー》
《身代わりの闇》
《アンデッド・ワールド》
《馬頭鬼》
「……ワイト?」
「……意外か?」
「え? いや、まあ、そうですね。もっと華やかなカードを使うと思ってました」
「華やか、か。確かに《ワイト》にそういったイメージはないな。だが、このカードは私にとっては特別なのだ。初めて、お母さんに貰ったカードだからな」
「お母さん……ですか」
「ああ。母はカードのことなど分からん。感性も独特だ。加えて言うなら、私の家はさほど裕福でもなかった」
サンジェルマンさんは昔を懐かしむように独白を続ける。
「カードは、平等ではない。生まれつき効果が強力なもの、イラストが美しいもの、サポートが貧しいもの、ステータスが貧弱なもの、みんな違っているのだ。そう、カードは差別される為にある。だからこそデュエリストは争い、競い合い、そこに進歩が生まれる。《ワイト》は弱い。最初は誰にも見向きされなかった。だが少しずつ、そう、少しずつ強くなってきたのだ」
なんか、複雑な事情がありそうだな。だが、初めて手にしたカードや、大切な人から貰ったカードが特別だというのは共感できる。
「ふっ、デュエルを続けよう。さて、《アンデッド・ワールド》が3枚全て落ちてしまったのは誤算だったが、効果処理に入る。《ワイトプリンス》の効果でデッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送り、《グローアップ・ブルーム》の効果でこのカードを除外してデッキから《火車》を手札に加える」
《火車》か、確か破壊耐性も対象耐性も無視したデッキバウンス。というかこの墓地は結構ヤバいぞ。悠長にはしてられんな。
「私は《ワイトキング》を召喚。そして墓地の《馬頭鬼》を除外して、墓地の《ワイトキング》を特殊召喚。最初のターンだからな。このくらいでいいだろう。カードを3枚伏せてターンエンドだ」
《ワイトキング》 攻撃力7000
《ワイトキング》 攻撃力7000
サンジェルマン LP4000 手札2 モンスター2 伏せ3
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
なんだこの手札は? オイオイこれじゃ……
「魔法カード《ライトニング・ストーム》を発動。相手の魔法・罠カードを全て破壊する方を選択します」
「させんッ! 《身代わりの闇》を発動だ。それを無効にし、その後デッキから《ワイトプリンス》を墓地に送る。そして《ワイトプリンス》の効果でデッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る」
3枚も伏せたのだから、防御札があるのは当然だろう。ここは通す。《神の宣告》なんかが伏せられていたら厄介だしな。それにしても、ついに攻撃力が10000の大台に乗ったか。
「《幻影騎士団ティアースケイル》を召喚して、効果発動。手札を1枚捨てて、デッキから《幻影騎士団ダスティローブ》を墓地に送ります。そして墓地の《幻影騎士団ダスティローブ》を除外して効果発動。デッキから《幻影騎士団サイレントブーツ》手札に加え、そのまま特殊召喚。レベル3の《幻影騎士団ティアースケイル》と《幻影騎士団サイレントブーツ》でオーバーレイ。来い《幻影騎士団ブレイクソード》!」
大剣を掲げた首なし騎士が黒馬に跨り駆けつける。二体の
「ふむ。サンダー・ドラゴンではないのか」
「まあ、色々とありまして」
本当に色々あった。さて、すんなり着地できたことは僥倖だ。
「ブレイクソードの効果発動。X素材を1つ取り除き、このカード自身と、俺から見て右側の伏せカードを破壊します」
「チェーンして《針虫の巣窟》を発動。デッキの上から5枚を墓地に送る」
《ワン・フォー・ワン》
《ワイトメア》
《生者の書-禁断の呪術-》
《馬頭鬼》
《ワイトプリンセス》
これで《ワイトキング》の攻撃力は12000か。《禁じられた聖杯》などの効果無効じゃなくてよかった。《エフェクト・ヴェーラー》も飛んでこなかったようだ。
「ブレイクソードの効果で、墓地の《幻影騎士団サイレントブーツ》と《幻影騎士団ティアースケイル》のレベルを1つ上げて特殊召喚します。そしてこの2体でオーバーレイ。愚鈍なる力に抗う反逆の牙、来い《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」
漆黒の翼を翻し、独特の牙を持つ黒竜が飛び立つ。
「ダーク・リベリオンの効果発動。X素材を2つ取り除き、《ワイトキング》の攻撃力を半分にし、その数値分攻撃力をアップする。トリーズン・ディスチャージ!」
《ワイトキング》 攻撃力12000 → 6000
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力2500 → 8500
「8500まで攻撃力を上げるとは……。だがその程度ではッ!」
「当然まだ続きます。墓地の《幻影騎士団サイレントブーツ》の効果発動。このカードを除外して、デッキから《RUM-幻影騎士団ラウンチ》を手札に加えます。そして《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を対象に発動。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 反逆の歌よ、響け《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!!」
《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》
ランク5/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
レベル5モンスター×3
(1):このカードが「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を0にし、その元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする。
●相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
その後、自分の墓地のXモンスター1体を選んで特殊召喚できる。
「《RUM-幻影騎士団ラウンチ》はそのままX素材になります。そしてダーク・レクイエムの効果発動。X素材を1つ取り除き、もう1体の《ワイトキング》の攻撃力を0にし、元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする。レクイエム・サルベーション!」
《ワイトキング》 攻撃力12000 → 0
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力3000 → 15000
「攻撃力……15000だとッ!?」
「バトルフェイズに入ります。《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》で攻撃力が0になった《ワイトキング》に攻撃、鎮魂のディザスター・ディスオベイ!!」
「《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動だ。そのドラゴンを破壊する!」
「ライフを半分払い、手札からカウンター罠《レッド・リブート》を発動。ミラーフォースの発動を無効にして、そのままセットします。その後、相手はデッキから罠カードをセットできますが、どうしますか?」
「……では《パワー・ウォール》をセットしよう」
サンジェルマンさんの表情は暗い。無意味だということは分かっているのだろう。
ステンドグラスにも似た翼から無数の閃光が走り、ワイトキングは消滅した。
サンジェルマン LP4000 → 0
「やられたよ。まさか1ターンキルをされるとはな」
「いえ、あの攻撃が通ると大体1キルになるので」
なんせ相手の攻撃力を0にした上で、攻撃力を加算するのだ。素の攻撃力が3000だから、相手の攻撃力が1000以上ならそれでゲームエンドになる。
「真っ向から叩き伏せられるとは思わなかった。まあ、面白いデュエルだったよ」
微妙な苦笑を浮かべて、サンジェルマンさんは右手を差し出した。
それを見て、俺も笑みが零れる。
最初の出会いは最悪に近い形だったが、少しは距離が縮まったようだ。