レース場の観客席にはスーツ姿の企業関係者がまばらに席を取っていた。今から行われるのはライディングデュエルの最終調整を兼ねたプレゼンテーションだ。
翼さんの対戦相手には光栄にも俺が選ばれた。奏さんは本番までのとっておきらしい。
目の前に広げたデッキに潜む、緑色のカードたち。そのカード名の頭には、見慣れぬ文字が記されている。すなわち――
「そろそろ始まるぞ、音羽。デッキを眺めるのもいいが、スタートの準備はできているか?」
ヘッドセットから弾んだ声が聞こえてきた。随分とご機嫌なようで。
「大丈夫ですよ、翼さん」
「ならばいい。そういえば、音羽もデッキを新調したと聞いている。互いにお披露目だな」
「そうなりますね。まあ、ライディングデュエルといえばシンクロですから」
「その理屈はよく分からないが――」
『はいはい、おふたりさん。そろそろ始めてちょうだい』
こちらもご機嫌な調子で、了子さんがスタートを促してくる。デッキをセットして、俺と翼さんは頷き合う。
『スピード・ワールド、セット・オン! ライディングデュエル、アクセラレーション!!』
まさしくロケットスタート。バイクの性能は同じはずだが、目の前の車体は躊躇なくアクセル全開フルスロットルで第一コーナーに突っ込んでいった。
「先攻はもらう。私のターン、ドロー!」
翼さんが流麗な仕草でカードを引く。ちなみに、先攻1ターン目はスピードカウンターは溜まらない。
「《ドラグニティ-クーゼ》を通常召喚。そしてクーゼを墓地に送り、手札の《ドラグニティアームズ-ミスティル》を特殊召喚」
翼さんが選んだのはドラグニティか。《竜の渓谷》も《調和の宝札》もなしは厳しいと思うが。
「ミスティルの効果で、墓地のクーゼを装備する」
「申し訳ありませんが、止めさせてもらいますよ。手札の《エフェクト・ヴェーラー》を捨てて、その効果を無効にします」
「むっ、なら仕方ないわね。カードを1枚伏せてターンエンドよ」
風鳴翼 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
音羽遊蓮 SC0 → 1
風鳴翼 SC0 → 1
「手札の《TG ストライカー》を特殊召喚。このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できます。そしてレベル4以下のモンスターが特殊召喚された時に、このカードは特殊召喚できます。《TG ワーウルフ》を特殊召喚。レベル3の《TG ワーウルフ》にレベル2の《TG ストライカー》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG ワンダー・マジシャン》!」
《
星5/光属性/魔法使い族/攻1900/守 0
チューナー+チューナー以外の「TG」モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した場合、
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
そのカードを破壊する。
(2):相手メインフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材としてS召喚する。
(3):フィールドのこのカードが破壊された場合に発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。
「ワンダー・マジシャンの効果発動。伏せカードを破壊します」
「《デモンズ・チェーン》を発動。ワンダー・マジシャンの効果は無効よ」
掲げたロッドは悪魔の鎖に絡め捕られ、そのまま小柄な魔術師をも拘束する。
「ならば《TG ドリル・フィッシュ》を特殊召喚して、バトルフェイズに入ります」
「攻撃力100のモンスターでバトルを!? いや、そのモンスターは――」
「そう、こいつは相手フィールドにモンスターがいてもダイレクトアタックができます。いけ、ドリル・フィッシュ!」
ドリルのような嘴を持つ魚影が滑空し、翼さんを射抜く。
風鳴翼 LP4000 → 3900
「ドリル・フィッシュの効果でミスティルを破壊! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」
音羽遊蓮 LP4000 手札0 モンスター2 伏せ2
風鳴翼 LP3900 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
風鳴翼 SC1 → 2
音羽遊蓮 SC1 → 2
「《ドラグニティ-ドゥクス》を召喚し、墓地の《ドラグニティ-クーゼ》を装備。そしてクーゼを自身の効果で特殊召喚」
レベル6シンクロ……いや違う。クーゼの効果は――。
「レベル4のドゥクスにレベル4扱いとしたクーゼをチューニング。風を裂き、旋風となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-バルーチャ》!」
《ドラグニティナイト-バルーチャ》
星8/風属性/ドラゴン族/攻2000/守1200
ドラゴン族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時、
自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスターを任意の数だけ対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(2):このカードの攻撃力は、このカードに装備された「ドラグニティ」カードの数×300アップする。
「バルーチャの効果でクーゼを装備し、クーゼを再度特殊召喚。レベル8のバルーチャにレベル2のクーゼをチューニング。風を裂き、天風となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-アスカロン》!」
《ドラグニティナイト-アスカロン》
星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守3200
「ドラグニティ」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の墓地の「ドラグニティ」モンスター1体を除外し、
相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを除外する。
(2):S召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。
EXデッキから攻撃力3000以下の「ドラグニティ」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。
「アスカロンの効果発動。墓地のドゥクスを除外してワンダー・マジシャンを除外する」
「チェーンして《捨て身の宝札》を発動。デッキからカードを2枚ドローします」
アスカロンの咆哮を受けてワンダー・マジシャンが次元の彼方に消え去る。
「バトルよ、アスカロンでドリル・フィッシュに攻撃、天ノ逆鱗!」
音羽遊蓮 LP4000 → 800
ほぼダイレクトアタックに近い攻撃を受け、ライフが一気に持っていかれる。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
風鳴翼 LP3900 手札2 モンスター1 伏せ1
音羽遊蓮 LP 800 手札2 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
音羽遊蓮 SC2 → 3
風鳴翼 SC2 → 3
「《Sp-エンジェルバトン》を発動。カードを2枚ドローし、1枚を墓地に送る。伏せていた《戦線復帰》を発動。今墓地に送った《TG スクリュー・サーペント》を特殊召喚。その効果で墓地の《TG ドリル・フィッシュ》を特殊召喚。レベル1の《TG ドリル・フィッシュ》にレベル4の《TG スクリュー・サーペント》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG ハイパー・ライブラリアン》!」
《TG ハイパー・ライブラリアン》
星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、
このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。
このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、
自分はデッキから1枚ドローする。
「続けて《TG サイバー・マジシャン》を通常召喚。サイバー・マジシャンは「TG」と名のついたシンクロモンスターのシンクロ素材とする場合、手札の「TG」と名のついたモンスターを他のチューナー以外のシンクロ素材とする事ができる。手札のレベル4《TG ラッシュ・ライノ》にレベル1の《TG サイバー・マジシャン》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG スター・ガーディアン》!」
《TG スター・ガーディアン》
星5/光属性/戦士族/攻 100/守2200
チューナー+チューナー以外の「TG」モンスター1体以上
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地の「TG」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
手札から「TG」モンスター1体を特殊召喚する。
(3):相手メインフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
「スター・ガーディアンの効果で墓地の《TG サイバー・マジシャン》を手札に加え、ハイパー・ライブラリアンの効果で1枚ドロー。続けてスター・ガーディアンの第2の効果で《TG サイバー・マジシャン》を特殊召喚。手札のレベル1《TG ブースター・ラプトル》にレベル1の《TG サイバー・マジシャン》をチューニング。リミッター解放、レベル2、カモンッ! 《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》!」
現れたのは巨大なトンボ。それがレシプロ機のように上昇し旋回する。
「ハイパー・ライブラリアンの効果で1枚ドロー。そしてレベル2の《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》とレベル5の《TG ハイパー・ライブラリアン》にレベル5の《TG スター・ガーディアン》をチューニング。リミッター解放、レベルマックス! レギュレーターオープン・オールクリアー! 無限の力よ、時空を突き破り、未知なる世界を開け! GO! デルタアクセル! カモンッ! 《TG ハルバード・キャノン》!!」
《TG ハルバード・キャノン》
星12/地属性/機械族/攻4000/守4000
Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター2体以上
このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。
(1):1ターンに1度、自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。
このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、それを無効にし、そのモンスターを破壊する。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた時、
自分の墓地の「TG」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「バトル! ハルバード・キャノンでアスカロンを攻撃、ボルティック・キャノン!」
風鳴翼 LP3900 → 3200
「破壊されたアスカロンの効果発動。EXデッキから2体目のバルーチャをシンクロ召喚扱いで特殊召喚。効果で墓地のクーゼを装備するわ」
……1体だけ?
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」
「エンドフェイズに《逢魔ノ刻》を発動。アスカロンを特殊召喚」
――ッ!? そういうことか。
音羽遊蓮 LP 800 手札0 モンスター1 伏せ2
風鳴翼 LP3200 手札2 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
風鳴翼 SC3 → 4
音羽遊蓮 SC3 → 4
スピードカウンターが4つ溜まった。俺のライフは800。翼さんがSpを持っていたら俺の負けだ。
「アスカロンの効果発動。墓地のバルーチャを除外して、ハルバード・キャノンを除外する」
破壊ではなく除外ってところがキツいな。
「いくわよッ! バルーチャでダイレクトアタック!」
「《和睦の使者》を発動。このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。まあ、モンスターはいませんけどね」
「ふっ、なら私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」
「エンドフェイズに《TGX3-DX2》を発動します。墓地の《TG ハイパー・ライブラリアン》、《TG ワンダー・マジシャン》、《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》をEXデッキに戻して、カードを2枚ドロー」
風鳴翼 LP3200 手札2 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP 800 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
音羽遊蓮 SC4 → 5
風鳴翼 SC4 → 5
「《Sp-シンクロ・リターン》を発動。このカードはスピードカウンターが5つ以上ある時に発動できる。除外されているシンクロモンスター1体を特殊召喚します」
「除外されているシンクロモンスター? まさか……」
「俺が選択するのは《ドラグニティナイト-バルーチャ》です」
「私のモンスターをッ!」
「続けて《Sp-デッド・シンクロン》を発動。墓地の《TG ドリル・フィッシュ》と《TG サイバー・マジシャン》を除外して、EXデッキから《フォーミュラ・シンクロン》をシンクロ召喚扱いで特殊召喚します。その効果によって1枚ドロー。この2体はエンドフェイズに除外されてしまいますが……」
「シンクロ素材にすれば関係ないということか」
「その通りです。レベル8の《ドラグニティナイト-バルーチャ》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。
《シューティング・スター・ドラゴン・
星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守2500
Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのモンスターを対象とするモンスターの効果が発動した時、
自分の墓地からチューナー1体を除外して発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
(2):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
その攻撃を無効にする。
(3):相手ターンに、このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのSモンスター2体をリリースして発動できる。
このカードを特殊召喚する。
「さらに《Sp-ハーフ・シーズ》を発動。アスカロンの攻撃力を半分にして、その数値分ライフを回復します」
《ドラグニティナイト-アスカロン》 攻撃力3300 → 1650
音羽遊蓮 LP 800 → 2450
「バトル! シューティング・スター・ドラゴン・TG-EXでバルーチャを攻撃、シューティング・ミラージュ!」
「迂闊だな、音羽。私はバルーチャを対象に永続罠《追走の翼》を発動!」
「ゲッ、そのカードは!」
「どうやら心得ているようね。ダメージステップ開始時にそのドラゴンを破壊する」
光の翼を得たバルーチャがさらに上空へと舞い上がり、白亜の竜を背部から貫く。
「そして破壊したモンスターの攻撃力を、ターン終了時まで加算する」
「くっ、俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP2450 手札0 モンスター0 伏せ1
風鳴翼 LP3200 手札2 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
風鳴翼 SC5 → 6
音羽遊蓮 SC5 → 6
俺が伏せたカードは《波紋のバリア-ウェーブ・フォース-》。これでこのターンは凌げるはず。次のドロー次第で勝機はある。
「私が引いたカードは《Sp-ハイスピード・クラッシュ》。このカードはスピードカウンターが2つ以上ある時に発動できる。私のフィールドの《ドラグニティ-クーゼ》とあなたの伏せカードを破壊するわ」
巻き起こった旋風が、フィールド上の2枚のカードを破壊する。フラグ回収が早すぎるッ!
「やはり起死回生の一手を伏せていたわね。バトルよ、バルーチャでダイレクトアタック!」
音羽遊蓮 LP2450 → 450
「続けてアスカロンでダイレクトアタック! 受けなさいッ! 神槍の一撃をッ!」
アスカロンが一本の槍となって飛来する。俺にそれを防ぐ術は残されていなかった。
これが絶望か。
音羽遊蓮 LP 450 → 0
ライフが0になり、バイクから白煙が上がる。まあ、演出の一環だ。実際に故障したわけじゃない。
白旗ならぬ白煙を上げて、無事にデュエルは終了した。
勝敗はともかくとして、一回も前に出られなかったのはちょっと悔しかったかな。