幻魔事変と呼ばれた一連の騒動から数ヵ月が経った。幻魔のカードは厳重に封印されたと聞いている。詳細は知らされなかったが、容易に手は出せない場所とのことだ。
マリアさんの罪は、正直判断が難しいところだった。デュエルの強要とデュエルエナジーの強奪。被害者の記憶も曖昧ということもあって、結局はうやむやとなった。本人は裁きを望んでいたが、司令の独断に近い形で、監視の意味も兼ねてS.O.N.G.の所属となるということで落ち着いた。
マリアさんが日本で居を構えるにあたって、一つの要望があった。家族を呼び寄せたいと。実は彼女は孤児院の出で、そこで一緒に育った実妹と、仲の良かった年少のふたりの計三人を呼ぶことを希望し、司令はそれを了承した。
俺は変わらずバイトを続けている。そして、響も了子さんにスカウトされて、ここでバイトをしている。響もなかなかレアなデュエルエナジーを持っているらしい。
デュエルエナジーについては、未だによく分かっていない。司令も言っていたが、いわゆる未知のエネルギーというやつだ。了子さんはなんとかそれを論文にまとめて発表したいと躍起になっている。なので、サンプルは多い方がいいのだろう。
さて、今日もバイトの時間だ。今日の相手はマリアさんが連れてきた年少のふたり組のひとり、月読調という少女だ。
「がんばるデスよ、調! ガッツデス、ガッツ!」
「うん。任せて、切ちゃん」
ふんす、といった感じで調が拳を握る。では、お手並み拝見といきましょう。
『デュエルッ!』
「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・ティルル》を召喚して、効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・パルラ》を手札に加え、そのまま墓地に送る」
《ドラゴンメイド・ティルル》
星3/炎属性/ドラゴン族/攻 500/守1700
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ドラゴンメイド・ティルル」以外の「ドラゴンメイド」モンスター1体を手札に加える。
その後、手札から「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで墓地へ送る。
(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
自分の手札・墓地からレベル8の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
「魔法カード《ドラゴンメイドのお心づくし》を発動。墓地のパルラを守備表示で特殊召喚して、《ドラゴンメイド・ルフト》をデッキから墓地に送る。続けてパルラの効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・フランメ》を墓地に送る」
《ドラゴンメイド・パルラ》
星3/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1700
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ドラゴンメイド・パルラ」以外の「ドラゴンメイド」カード1枚を墓地へ送る。
(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
自分の手札・墓地からレベル8の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
月読調 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
相手はドラゴンメイドか、墓地に戦闘形態がばっちり揃ってる。迂闊にバトルフェイズには入れないな。
「魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキから《サファイアドラゴン》を墓地に送り、続けて《巨神竜フェルグラント》を墓地に送る。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《崩界の守護竜》を発動。パルラをリリースして、セットモンスターと、私から見て右側の伏せカードを破壊。……やっぱり仮面竜だった。そのモンスターは面倒。続けて《戦線復帰》を発動。パルラを守備表示で特殊召喚。効果で《ドラゴンメイド・エルデ》を墓地に送る」
ガンガン動いてくるな。物静かで穏やかなイメージだったんだが、意外と攻めるタイプか?
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター0 伏せ1
月読調 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・チェイム》を召喚して、効果発動。デッキから《ドラゴンメイドのお出迎え》を手札に加える」
《ドラゴンメイド・チェイム》
星4/闇属性/ドラゴン族/攻 500/守1800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ドラゴンメイド」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
自分の手札・墓地からレベル7以上の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
「永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》を発動。ふたつめの効果で、墓地の《ドラゴンメイドのお心づくし》を手札に加える」
《ドラゴンメイドのお出迎え》
永続魔法
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、
自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターの数×100アップする。
(2):自分フィールドに「ドラゴンメイド」モンスターが2体以上存在する場合、
自分の墓地の「ドラゴンメイドのお出迎え」以外の「ドラゴンメイド」カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
(3):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。
このターン、自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターは相手の効果の対象にならない。
「魔法カード《おろかな副葬》を発動。デッキから2枚目の《ドラゴンメイドのお出迎え》を墓地に送る。これでこのターン、私のドラゴンメイドたちは相手の効果の対象にならない」
殺意たけぇ! このターンで決めるつもりか。
「バトルフェイズに突入。突入時にティルルとパルラとチェイムの効果発動。この3枚を手札に戻し、墓地からフランメとルフトとエルデを特殊召喚」
《ドラゴンメイド・フランメ》
星8/炎属性/ドラゴン族/攻2700/守1700
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨て、
自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2000アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、
このカードは効果では破壊されない。
(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
手札からレベル3の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。
《ドラゴンメイド・ルフト》
星8/風属性/ドラゴン族/攻2700/守1700
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、その表側表示モンスターはフィールドで発動する効果を発動できない。
(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、
このカードは効果では破壊されない。
(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
手札からレベル3の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。
《ドラゴンメイド・エルデ》
星7/地属性/ドラゴン族/攻2600/守1600
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
手札からレベル4以下の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、
このカードは効果では破壊されない。
(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
手札からレベル2の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。
「バトル。エルデ、ルフト、フランメでダイレクトアタック」
「攻撃宣言時に《神風のバリア -エア・フォース-》を発動。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て持ち主の手札に戻す」
強烈な風に煽られて、3体のドラゴンが調の手札へと戻っていく。
「――ッ! 私はカードを2枚伏せてターンエンド」
月読調 LP4000 手札6 モンスター0 伏せ2
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。魔法カード《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローし、《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。除外した雷獣龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚する。続けて手札の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから同名カードを手札に加える。条件を満たしたことで、フィールドの雷源龍をリリースして、EXデッキから《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚できる」
《超雷龍-サンダー・ドラゴン》
星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400
「サンダー・ドラゴン」+雷族モンスター
このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。
●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、
融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター1体をリリースした場合に
EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分の墓地の雷族モンスター1体を除外できる。
「墓地に送られた《雷源龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。デッキから同名カードを手札に加える。そして――」
「メインフェイズ終了時にエルデの効果発動。このカードを手札から捨てて、手札のパルラを特殊召喚する。パルラの効果でデッキから3枚目の《ドラゴンメイドのお出迎え》を墓地に送る」
このままバトルフェイズに入れば、ルフトが出てくる。調の手札にはフランメがいるから攻撃すれば返り討ちだ。
……もう少し様子を見るか。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1
月読調 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
調は手札を眺めて考えている。超雷龍の効果はドラゴンメイドには結構刺さるからな。
「《ドラゴンメイド・パルラ》を召喚。効果でデッキからルフトを墓地に送る。バトルフェイズに移行。バトルフェイズ突入時に、2体のパルラを手札に戻して、手札と墓地からルフトを特殊召喚する。お出迎えの効果で攻撃力アップ」
《ドラゴンメイド・ルフト》 攻撃力 2700 → 2900
「ルフトで超雷龍に攻撃。フランメを手札から捨てて、攻撃力2000アップ。シュトゥルムヴィント!」
「墓地の雷電龍を除外して、超雷龍の破壊を無効にする」
「でもダメージは受けてもらう」
音羽遊蓮 LP4000 → 1700
「除外された雷電龍の効果でデッキから《雷龍融合》を手札に加える」
「この瞬間《強烈なはたき落とし》を発動。雷龍融合は捨ててもらう」
手にした雷龍融合がソリッドビジョンのハエたたきで、文字通りはたき落とされる。
「……2体目のルフトでは、攻撃しない」
雷源龍の効果で返り討ちにしようと思ったが、どうやら読まれたらしい。ま、手札にあるのはバレてるし、さすがに気付くか。
「バトルフェイズ終了時に、2体のルフトを手札に戻して、パルラとティルルを守備表示で特殊召喚する。メインフェイズ2にお出迎えの効果発動。墓地のフランメを手札に加えて、ターンエンド」
月読調 LP4000 手札5 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP1700 手札3 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《強化蘇生》を発動。墓地の仮面竜を蘇生する。《レスキューラビット》を召喚して効果発動。このカードを除外して、デッキから《アレキサンドライドラゴン》2体を特殊召喚する」
強化蘇生の効果で仮面竜のレベルは1つ上がっている。これで条件はクリア。
「アレキサンドライドラゴン2体と仮面竜でオーバーレイ。雷雲を突き抜け飛来せよ、ランク4《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》!」
《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》
ランク4/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2000
レベル4モンスター×3
1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このカードのエクシーズ素材を3つ取り除く事で、
このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
●このカードのエクシーズ素材を5つ取り除く事で、
相手フィールド上のカードを全て破壊する。
「サンダー・スパーク・ドラゴンの効果発動。X素材を3つ取り除き、このカード以外の表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。デストロイ・スパーク!」
稲妻がほとばしり、己以外の全てをモンスターを薙ぎ払う。2体のパルラは吹き飛んだが、隣にいる超雷龍は平然としていた。
「墓地の雷源龍を除外して、超雷龍の破壊を無効にする。効果でデッキから同名カードを手札に加えて、バトルだ。サンダー・スパーク・ドラゴンと超雷龍-サンダー・ドラゴンでダイレクトアタック!」
月読調 LP4000 → 0
デュエルデスクから試合終了を告げるブザーが鳴り響く。
調は小さく溜め息を吐いて、こちらにペコリとお辞儀した。
「調ぇー。惜しかったデスッ! あとひと押しだったデスよッ!」
「うん。でもやっぱり色々足りない。シュトラールとかハスキーとか欲しい」
「それは、仕方ないデスよ。わたしたちのお小遣いじゃ厳しいデス……」
見る見るうちにふたりの表情が暗くなった。やはりどこも世知辛いな。
「まあ、限られた資金で色々と考えてデッキを組むのも楽しいもんだ。デュエリストとしての腕の見せ所だな」
「あ、それマリアも言ってました」
「わたしはお金もカードもいっぱい欲しいデスけどね。まあそれはそれとして、調のかたきを討たせてもらうデスッ!」
今度は切歌か。ま、つきあってやるか。
『デュエルッ!』
~十分後~
「――ありえないデェェェスッ!!」
暁切歌 LP4000 → 0
「やっぱりこうなった。切ちゃん大丈夫?」
「ちょっと待つデスよッ! 色々とおかしいデスッ!」
「まあ、発動したミラーフォースにサイクロン撃ってきた時点でおかしいとは思ったが……」
「そうデスよッ! なんで無効にできないデスかッ!?」
子供を叱るな来た道だ、とはよく言ったものだ。懐かしい勘違いだなぁ。
「サイクロンは破壊するだけで、発動と効果を無効にするわけじゃないぞ」
「……? でも孤児院のお姉さんとデュエルしたときは無効にできたデスよ?」
「そんなわけないだろ。デュエルディスクが弾く……いや、テーブルデュエルか」
デュエルディスクもそう安いものじゃないからな。室内向きでもないし。しかしそのお姉さんもちゃんと教えてやれよ。それは優しさとは違うぞ。
「とにかく、休憩室にデュエル関連の本はたくさんあっただろ? それを読め」
「本を読んでもいまいちしっくりこないんデスよ」
切歌はどう見ても感覚でデュエルするタイプだからな。理屈を押し込まれても身につかないんだろう。それよりは数をこなして、分からないことはその場で訊いたほうが上達するかもしれない。
「ま、何事も勉強だな」
とりあえずそう言って締めくくった。