ざざぁん
ざざぁん
なんの音だろう、一定の間隔で聞こえてくるこの音は。
心音にも似た、それでいて少しもうるさくないこの音は。
体の感覚が少しずつだが戻ってくる。
足元が冷たい。
口の中は、鉄と塩が混ざった訳の分からない味がする。
体を起こすことは出来ないが、重い瞼を開き、何とか辺りを見渡す。
「う…み?」
それは、果てしなく続く海、そしてどこまでも白い砂浜だった。
何が起きたか理解できない。なにか思い出そうとするも、靄がかかったみたいに何も思い出せない。
辛うじて自分の名前が水橋パルスィであるということと、自分が住んでいる幻想郷に海がないことは思い出せた。
「じゃあここは一体…」
体が冷える、意識がまたも朦朧としてきた。
このまま意識を失えば間違いなく死ぬ。
そう思いつつも、無常にも瞼は重しのようにのしかかってくる。
あぁ、きっと私はここで死ぬんだ。
最後に海を見れただけ良しとするか…
ざざぁん…
ざざぁん…
やがて波は引き、何者かに抱き抱えられた。
彼女を抱き抱えた女性は、おおよそ人間とは思えない速度で砂浜を走り抜ける。
レンガで作られた建物の扉を勢いよく開け、医務室のベッドに彼女を寝かせる。
女性は医務室の棚という棚を漁り、走り回り、時にはすっ転びながらも懸命に看病を続けた。
その甲斐もあってか、彼女の顔色はみるみる良くなっていった。
綺麗な金色の髪の毛、エルフ耳、色白な肌。
よく見ると、いや、よく見なくても美少女。顔がいい。
頭を撫でながら、女性はうとうとして、やがて眠ってしまった。
寝息だけが聞こえてくる医務室。
しかし、その静寂も長く続くことはなかった…
知らない天井だ、なんか人型のシミがある、怖っ。
え、なんで私は布団で寝てるの?なんか足元重いし怖っ。
思い出せる最新の記憶は、砂浜で寝てたことだ。
あのまま命果てるはずだった私をここまで連れてきたのは一体誰なのか。
幸い体を起こす事くらいはできそうだ、時間をかけて上半身を起こす。
恐る恐る足元を見ると、女性が頭を私の足に乗せているようだった。
すぅすぅと寝息を立てている。
弓道着のようなものを着て、髪を横に結うようにしている女性。
私は彼女に命を救われたのだろう、起きたらお礼を言わなければ。
体の至るところに包帯が巻かれている。
不器用なのか、めちゃくちゃな巻き方になっているところから必死さが伝わってくる。
私が動いたことに気がついたのか、女性が目を覚ます。
女性はこちらを見るなり、真顔でこう言った。
「おはようございます、提督」
海を舐めるな