キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー 作:minmin
というわけで久しぶりの投稿です。まあまだ回してみての調整とか必要なんですけどね。
――日曜日。
僕は制服で休日登校。教室で体操服に着替えて、オールマイト先生に連れられて体育館γに来ていた。
「緑谷少年はまだ授業で使ったことはなかったな!ここが体育館γ――通称トレーニングの台所ランド、略してTDLだ!!」
……なんで態々そんな略称にしたんだ、っていうのはもうこの際置いておこう。だって雄英だし。それより気になるのは。
「一応確認ですけれど、今日は授業とか関係ない私的なお話ですよね?学校の施設を使っても大丈夫なんですか?」
後で校長先生とかに怒られたくはないなあ、なんて思っていたら、意外な答えが返ってきた。
「HAHAHA、大丈夫さ!ちゃんと使用許可申請用紙は書いたし、校長を始め先生方も理解はしてくれているからね!……というのも、私がここの教師になった事情そのものが関わってくるからなんだが」
オールマイト先生が教師になった理由……ただ単に、後進の育成に力を入れ始めたとかそういうことじゃないのか。それが、今日の手合わせに関係してくる?
「まあ、それは後で説明しよう。それじゃあ――始めようか!」
同時、オールマイト先生から放たれる強大な『圧』。具体的に何かオーラを噴出しているわけではない。殺気と言うほどに物騒でもない。トップヒーローとして、多くの人の命と期待を背負い続けてきたからこその――重圧。
「まずは軽くいくぞ!」
言うが早いが一瞬で距離を詰められた。直後に飛んでくる左フックを右腕の盾を掲げて受ける。ドンッという鈍い音と、おやっという顔をする先生。僕もお返しで左ストレートで心臓を狙う。硬い筋肉の感触。しっかり腕で受けられていた。
「……不思議な感触だな。硬いというよりは、柔らかく受け止められた。サポート科が開発したわけではないようだが、一体何でできてるんだい?」
「ヴィヴラニウムという金属です。先生の身体こそ、金属並みに硬いですね」
「鍛えているからね。しかしヴィヴラニウムか――聞いたことがない、なっ!」
放たれた左ストレートを沈んで躱す。そのまま身体を縦にして低空からの左アッパー。受け止められるけど、予想通り。逆回転させて、盾を押し出して上から叩きつけるようにシールドバッシュ。先生は両腕を胸でクロスさせてガード。勢いに逆らわず後方に飛んで距離をとった。
「ええ。ワカンダという国でしか採掘されない希少な金属です、よっ!」
先生に向かって駆け出す――そのまま飛びかかったりはしない。お互いの拳が届く距離で、腰を落とし気味に構えた。『君の実力が見たいんだ』と言われたからには、あまりトリッキーな戦い方ばかりなのもよくないだろう。僕の体勢を見て、先生はニヤリと笑う。
「緑谷少年、そういうところはホントに良い意味で子どもらしくないな!」
「まあ――同年代よりは濃密な人生を過ごしてるので!」
ほぼ同時に拳を繰り出す、躱す、受ける。流す、カウンターを狙う、躱される、また受ける――暫く無言で拳でのコミュニケーションが続いていく。こうして実際に手合わせしてみてわかったことだけど、どうやら先生は本格的に格闘技を習ったことがあるわけではないらしい。経験で圧倒的に劣る僕がこうして渡り合えているのがその証拠だ。
まあ、圧倒的パワーがあるなら格闘技なんて小細工必要ないのかもしれない。どんなに優れた技を持っていても、アリはゾウには勝てない。なんて考えていたら――
「やるな、緑谷少年。じゃあ、ちょっと強くいくぞ!」
嫌な予感がして、両手でしっかり盾を構えて右フックをガードする。直後に衝撃。
――自分の身体が、まるでピンボールみたいに水平に吹っ飛んだ。
「っつ!」
倒れそうになるのをかろうじて堪える。まだ半分も出しちゃいないって顔してるのにこれか!幕之内一歩のパンチをもらったボクサーも、こんな気持だったんだろうか。
「よく踏ん張った!ほら、どんどんいくぞ!」
ムンッ!っという声とともに突き出される右拳、そして轟音。咄嗟に盾を正面に構えて踏ん張る。だというのに、1mくらいはそのまま後退させられてしまった。生身の人間がパンチで風を撃ち出せるなんて冗談じゃない。サノスだってこんなことできなかったぞ。
さて、どうするか。わかっちゃいたけど、オールマイトが本気を出したら僕なんて本当は一瞬でやられてしまうんだろう。ただ、これは僕の実力を確認する手合わせなわけで、勝つ必要なんて全くない。ないんだけど。
「ここで諦めるのはヒーローじゃないし……なにより。キャプテンという名に対する恥だよね」
勝機は……一応、あるにはある。ガードはされたけど確かに感じた、筋肉のあの感触。オールマイト先生の『個性』は正確には不明のままだけど、強力な増強系であることは確かだ。ただ、あのパワーを繰り出せるレベルまで筋力を物理的に高めているんじゃなくて、特殊強化の部類なんだろう。そうでなければ、人間のままの筋力では拳で風を撃ち出すなんてことはできない。キャプテンや僕でもできないんだし。
それにさっきの肉体の感触。感じたのはあくまで鍛え上げられた筋肉の硬さだった。何か特殊な力で覆われているとか、防御力までパワーと同じレベルまで増強されているわけじゃない。なら、胸を貸してやるんだと余裕を持っている今ならまだ。
「作戦タイムは終わったかな?」
「……ええ、ありがとうございます」
気にするな!と両腕を腰に当て、胸を張ってHAHAHA!と高笑いする先生。さて、ちょっとくらい冷や汗をかいてくれるかな。
「それじゃあ――いきますよ!」
「ああ、さあ来い!」
走り出す。先生は再び風圧を繰り出す気だ。盾を真正面に構え、姿勢を低くする。
ゴウッ!という音とともに襲ってくる空気の塊。それに合わせて盾を斜めにそらし、その下に潜り込んだ。
「ぐっ……!」
身体に負荷がかかる。けれど――上にそらせたぞ!一転飛び上がって、空中から斜め下に向かって盾を投擲する。その間に、走れ、走れ!
姿勢を低くしたまま走り続ける。態々飛び上がったのは、オールマイトの巨躯の脇腹の辺りに狙いをつけるため。何故か少しそちらを庇うように戦っていたし、No.1ヒーロー、平和の象徴、オールマイト。胸を貸し、実力を測るための手合わせなら――必ず受け止めるはずだ。……ビンゴ。これで、盾の下は死角になる。
スライディングで下に滑り込んで、そのまま右膝に蹴りを入れる。流石に倒れたりはしないけれど、若干ぐらついたところを――右で股間にアッパー!……硬い感触。どうやらしっかり対策はしていたらしい。直後、明らかに手加減された蹴りによって吹き飛ばされた。受け身を取りながらゴロゴロと転がる僕。……ここまで、かな。勢いが止まったところで、ゆっくりと立ち上がる。
「や、やるじゃ……ないか……み、みどr……や少年……」
右手1本で盾を受け止めたまま、若干震えながら仁王立ちしているオールマイト。いや、先生。防具があったとはいえ、僕の筋力で殴った股間は、それなりの衝撃があったらしい。……少し熱くなりすぎちゃったな、反省しないと。
「ありがとうございます。先生も――って、え?」
思わず呆然と立ち尽くす。だってそこには、オールマイト先生とは似ても似つかない、盾を支えきれず座り込むガリガリの男性がいたからだ。
「……まぁ、丁度良いと言えば丁度良いか。この姿が、今回の本題だよ、緑谷少年」
けれどもその人は、正しくNo.1ヒーローそのままの目つきで、そう言った。
次の話はもうプロットできてるので近いうちに更新すると思います。そのままこの直後の話になる予定です。