キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー   作:minmin

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ヒロアカ世界の話でしたがまたまた時系列メチャクチャのお話が入ります。
今後どのようなタイミングで入っていくのかは作者にもわかりません(白目


マルチバース

 

 

 ――落ちる。

 

 落ちる、落ちる。いや、墜ちていく。どこまで墜ちても、周りは代わり映えしない真っ暗闇。正確には時々稲光のようなものを感じるけれども、僕が今どういう状況なのかが自分でも曖昧になるくらいになにもない。一体どこまでいくんだろうか。これがドクターの開けた穴の中だということが僕をより一層不安にさせる。至高の魔術師としての『ドクター・ストレンジ』は信頼しているけれども、スティーブン・ストレンジという個人の人間性はあんまり信用できていない。……本人に言ったらもの凄い皮肉の嵐が帰ってきそうだけれども。

 

 グルグルと回転しながら、想像しかしたことのない無重力状態ってこんなものなんだろうかと益体もないことを考える。いい加減墜ちるのにも飽きてきたところで――先の方に、懐かしい光景が見えてきた。

 

「あれは…………!」

 

 何年経とうともひと目でわかる、僕の生まれ育った街の景色。僕は、ようやく元の世界に戻れ――

 

「……え?」

 

 懐かしの景色に手を伸ばしたところで、空間に浮かんだその日本の町並みにノイズが走っていく。前時代のブラウン管テレビの不調のように、映る人や建物が滅茶苦茶に歪んでいる。

 

「一体何が、ってうわ!」

 

 直後、僕自身もその謎のノイズに襲われる。自分というスマホに正規品ではない充電ケーブルを差し込んだかのような、本来は異なるものに無理やり適合させられていくかのような感覚。これは――僕が、世界を移動する際にも感じたものだ。

 どうしていいかもわからない、どうしようもない緊急事態の中、僕は身体と頭の中をぐるぐる回転させることしかできない。そんな状況が数秒続いた後、僕は突然急カーブして世界へと放り出された。

 

 

 

 

「わわわっ!」

 

 前触れもなく空中に放り出された瞬間、無重力状態から一転して僕の身体は即座に世界の物理法則に従い始める。地球って律儀だね!

 内心でニュートンさん(全然関係ない)に悪態をつきながらも、できるだけ勢いを殺しつつやたらと硬い地面の上をゴロゴロと転がっていく。……反射的に受け身を取る訓練を嫌というほどやっておいてよかった。どうやら下はアスファルトみたいだ。とりあえず地球っぽくて安心する。

 

「痛ててて……」

 

 起き上がりつつ自分の身体を点検する。怪我は?ない。傷にならないくらいには擦ったけれども、血は出ていない。消毒はしたほうがいいな。服も破れてないし、盾もある。

 周囲を警戒しつつ状況を確認する。薄暗いけれども、明かりはある。なんだかぼんやりした緑色で、非常用みたいな感じだ。それが等間隔で並んでいる。上下左右、全部コンクリートで、明らかな人工の空間。……もしかして、ここって地下?

 音は……聞こえる。少なくとも2つ以上の何かが、こちらに近づいてきている。此処がどういう場所なのかわからない以上、まずは身を隠して様子を見たいところだけど。隠れる場所なんてどこにもないなあ。はあ、とため息をついて下をもう一度見ると、等間隔で真っ直ぐ伸びている2本の鉄の線が目に入った。…………これってもしかして?

 

 

 ――直後にさっきの物音とは反対側からやってきた光と振動と、懐かしいガタゴトプアーという車両の音。

 

「やっぱりそうだよねえ!」

 

 悲鳴を上げつつ咄嗟に全力で盾を真上に投擲する。いつものバウンド目的の加減した投げ方ではなく、超人的筋力をフル稼働させた一撃は思ったとおりに天井に半ばまでめり込んでくれた。それを確認してからすぐさま盾めがけてジャンプする。盾を掴んで、コンクリートの僅かな凹凸に足の先を引っ掛けて天井にへばりつく。

 

「「ふぅ……」」

 

 安堵のため息を吐くと、それが誰かと重なった。驚いて顔を上げると、今どきのファッションをしたティーンだろう黒人の男の子が、僕と同じく天井に張り付いたまま呆然とこちらを見つめていた。僕と違うのは、彼がどう見ても素手の指先を天井に当てだだけで張り付いているということ。その蜘蛛のようなスタイルは、僕が見慣れたそれと一致して――

 

「スパイダーマン?」

 

 思わず呟いた言葉に彼が目を見開く。どうやら当たりだったらしい。と思っていたら、後ろを振り返って焦りだした。そういえば、物音は複数だった!

 彼の視線を追うと、現れたのはいかにも怪しいフードとマントのおそらく男。大柄な体躯に見合った大きな鉤爪が両手に付いている。勿論作りものだ。どっちかっていうとメカメカしい。天井に張り付いた手が離れず焦る少年、駆け出す鉤爪男。僕が取るべき行動は――

 

「ふんっ!」

 

 気合と共に盾を引っこ抜いて落下、身体を捻って着地する。立ち上がりざまに此方へ向かってくる鉤爪男に向かって盾を投擲する。ギィィン!と地下で反響する鈍い音。真っ直ぐ跳ね返ってきた盾をキャッチしつつ構えると。鉤爪男は驚いた様子でご自慢の爪を眺めていた。しっかりガードしたようだけど、少しだけ爪が歪んでいる。どうやらヴィヴラニウムほど頑丈じゃないらしい。

 背後からドスンという落下音と、それから慌てて立ち上がる音がした。身体能力や頑丈さも向上しているのかもしれない。ますますスパイダーマンだ。

 

「行って!僕は心配しなくていいから」

 

 振り返らないまま英語で叫ぶと、少しの躊躇いの後駆け出して行った。因みに鉤爪男にも伝わっているようで、わかっちゃいたけど日本じゃないことにちょっとしたショックを受ける。

 

「おっと。行かせないよ」

 

 少年を追いかけようとした男を牽制する。それを見た男は一度首を鳴らして――襲いかかってきた!

 渾身の力を込めて振り下ろされる両の鉤爪を盾で正面から受け止める。重い。どうやら鉤爪だけじゃなくほぼ全身にパワードスーツみたいなものを付けているようで、それでパワーをブーストしているようだ。けど。

 

「アイアンマンほどじゃない!」

 

 盾で下から跳ね上げて、がら空きになった胴体に蹴りを入れる。吹き飛ばされるも、男は踏ん張った。再度の突進。片手での攻撃を盾で受けると、時間差でもう1本の腕が襲ってきた。手首を掴んで受け止める。力を込めて腕をひねり上げていくと、驚いている気配が伝わってきた。どうやら自分の力が生身の人間に負けていることが信じられないようだ。

 

「(やっぱりアイアンマンほどじゃない。スタークさんならリパルサーで吹き飛ばされてるし、格闘技術もトレースされてるはずだ!)」

 

 盾で片腕をパリィして大きく拡げさせる。開いた体の内側に潜り込んで、右腕を掴んで一本背負いで投げ飛ばす!それなりに力を込めて地面に叩きつけると、大きく息を吐いて咳き込みながらゴロゴロと転がっていた。

 油断はしない。あの装甲でどれくらいダメージが軽減されるかわからなし、まだ何か隠しているギミックがあるかもしれない。盾を構えたまま横たわったまま動かない相手を見つめていると、諦めたように急にムクリと立ち上がった。……やっぱり誘いだったらしい。僕の方をじっと眺めた後、鉤爪でお決まりの首を切る動作をし――そのまま反対側の闇に消えていった。

 

「……ふう」

 

 盾を背中に背負い直して息を吐く。少し先にホームだろう明かりが見えた。取り敢えずそこに行ってみよう。

 

 

 

 駅の改札を飛び越えて(申し訳ないけどどうしようもなかった)外に出ると、予想通りというか外れてほしかったというか、夜のアメリカンな町並みが広がっていた。僕の故郷とは似ても似つかない眺めにため息しか出ない。さてこれからどうしようかと辺りを見渡すと、さっきの少年が何かブツブツ言いながらグルグル回って歩いている。……もしかして、1人逃げ出すのが躊躇われたんだろうか。もしそうなら、彼には――ヒーローの素質がある。

 

「やあ、大丈夫だった?」

 

「え?あ、はいイヤ気にしないでなんでもないんです――ってうわぁ!」

 

 近づいて声をかけると、少年は文字通り2mは『跳び上がって』驚いた。凄い身体能力だ。思わずでこれなら、ピーターにも匹敵するかもしれない。

 

「あ、アイツは……?大丈夫だったんですか?」

 

 恐る恐る、という感じで聞いてくる少年。安心させるために敢えて軽く笑顔でいう。

 

「ああ、ちょっと戦ったら諦めたのか逃げて行ったよ。君はアレに追われてたみたいだけど、一体何があったんだい?ええと――」

 

 そこで言いよどむ。しまった、まだ名前も聞いてなかった。

 

「あ、ええと、マイルス・モラレスです。貴方は?」

 

「僕はイズク。イズク・ミドリヤ。呼びにくかったら『デク』でもいいよ。キャプテン・デク――そうも呼ばれてる」

 

 

 




という訳でスパイダーバースに寄り道するデク君でした。
つ、次こそはUSJ行くから!
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