キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー   作:minmin

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あけましておめでとうございます。
ヒロアカ本誌のほうがどうやら一区切り付きまして大筋の再構成というか設定が見えてきましたので続きを投稿していきますー。


敵襲撃1

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難してください』

 

 警報音とともに流れるアナウンス。周囲の上級生たちが一瞬でパニックに陥ってしまった。

 

『セキュリティ3ってなんですか?』

 

『校舎内に誰か侵入してきたってことだよ!3年間でこんなの初めてだ!!君らも早く!!』

 

 飯田君の質問に答えるやいなや走り出す上級生。その他の生徒も皆我先にと駆け出している。逆に僕ら1年生の方がまだ冷静なくらいだ。……それでいいのかヒーロー候補生。

 

『飯田君、麗日さん、こっちに!』

 

 近づいてきた飯田君と腕を組むと、心得たように頷いて麗日さんを内側に入れてくれた。僕のフィジカルで踏ん張りつつ、麗日さんが群衆に押しつぶされないように、急ぐ集団のストッパーになるようにゆっくりと進んでいく。

 

『あ、ありがとう……』

 

『委員長として、男として当然のことだ。気にしないでいい。しかし……一体何が侵入したというんだ?……って、あれは只の報道陣じゃないか!』

 

 窓の外を視認したらしい飯田君が叫ぶ。……報道陣?この雄英高校で?妙だ。只の報道陣に雄英のセキュリティが破れるのか?だって、さっき先輩も言ってたじゃないか。3年間でこんなこと初めてだ、って。確実に、マスコミを手引した誰かがいる。となるとこれは……陽動?

 

『飯田君、先生方の様子はどう?』

 

 

『……報道陣への対応で手一杯のようだ。少なくとも、こちらへくる気配や余裕はなさそうだ』

 

『わかった、ならまずは……2人とも、耳を塞いで』

 

『ああ』

 

『ひゃ、ひゃい!』

 

 スゥゥゥゥ、と大きく息を吸い込む。人間が人間として持ちうる最高レベルの肉体というのは、単純な身体能力というだけじゃない。こういうことも当然できる。

 

 

『落ち着いて!!!!!』

 

 僕の出した大声にその場にいた全員がビクッ!!となって固まる。肺活量とか声帯も常人離れしている僕はこんな大声も出せるのだ。

 

『只のマスコミです、落ち着いて行動しましょう!』

 

 もう1度、さっきよりは声量を抑えて叫ぶ。パニックを収めるというよりは萎縮させてしまったようだけどこの際仕方ない。

 

『飯田君、誘導は任せていいかな』

 

『ああ、任された。君はどうするんだ?』

 

 飯田君の言葉を聞きながら、若干の余裕ができたその場でしゃがんでタメを作る。

 

『杞憂ならいいんだけど――確かめたいことがあるん、だっ!』

 

 返事と同時に飛び上がり、呆然と見上げてくる生徒たちの頭上を壁を走って進む。食堂の入り口手前で降りて、そのままトップスピードで廊下を駆け抜ける。これが陽動なら、敵の狙いはおそらく職員室か校長室にある機密情報だろう。教員がマスコミ対応に駆り出されている状況を考えると、本命は職員室だろうか。ひとまずそちらに向かってみよう。

 

 結果として、僕の予想は当たっていたのだけれど。そこにいたのは――完全な、闇。

 

 

 

 ――――――ぁちゃん。

 

 吐き気がする。何度体験しても、目の前で命が喪われていく感覚は慣れるものじゃないし、慣れたくもない。

 

 ――――やちゃん。

 

 勿論、世界中全ての人を救えるだなんて傲慢なことは思っていない。それでも、あの感覚だけは最悪の記憶として今も僕の脳裏に焼き付いている。

 

 ――りやちゃん。

 

 自分の腕の中で、命が崩れ去っていくあの感覚だけは。

 

「緑谷ちゃん!」

 

 身体を揺すられているのを感じてようやく意識が闇から浮上する。……どうやら寝てしまっていたみたいだ。目を開けると、正面に蛙吹――梅雨ちゃんの心配そうな顔があった。距離が近くてちょっと恥ずかしい。

 

「大丈夫かしら?うなされてたみたいだけど」

 

「だ、大丈夫。ちょっと夢見が悪くて……」

 

 気恥ずかしさから顔を逸らす麗日さんがジト目でこちらを睨んでいた。なんでさ。

 

「ケッ。居眠りたぁ余裕だなぁクソデク」

 

 かっちゃんが吐き捨てるように言う。うん、これは完全に僕が悪い。バスでの移動中とはいえ授業中に居眠りをしちゃうとは反省だ。

 あの日――マスコミが学校に入り込んだ日、職員室前で黒い霧のようなものに包まれた人物を見てから、どうしても『あちらの世界』での出来事を思い出してしまってうまく寝付けないようになってしまった。ようやく眠れても、皆が崩れ去っていく夢を見てしまってすぐ飛び起きることになる。とはいえ詳しくは話せないのでクラスの皆には内容はよく覚えてないけど悪い夢を見るから最近あまり眠れてないんだ、ごめん、とだけ説明することにした。

 

「へぇ。緑谷でもそんなことあるんだな」

 

 切島君が驚いたように言う。

 

「いや、僕は身体能力が人より高いだけの普通の無個性だからね?」

 

「「「「「いや、普通ではない(だろ)(でしょ)(ですわ)」」」」」

 

 り、理不尽……助けを求めて梅雨ちゃんに視線を向けると、にっこりと微笑んでくれた。

 

「ごめんね緑谷ちゃん。私、思ったことをなんでも言っちゃうの」

 

 ガッデム。ツユートス、お前もか。

 

 その後話題はプロヒーローやその人気のことに移り、梅雨ちゃんの「かっちゃんは人気でなさそう」と上鳴君の「かっちゃんの性格はクソを下水で煮込んだようなもの」発言でオチがついていた。寝起きのぼんやりとした頭でそれを聞きつつ僕が感じていたのは、夢のせいだけじゃない、言いようのない不安だった。

 

 

 

 

「――君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」

 

 嘘の災害や事故ルーム、略してUSJ(いいのかなこれ?)で、スペースヒーロー「13号」から語られた救助訓練前のお小言は、深く考えさせられる内容だった。スタークさんやピーターならこの話を聞いてどう思っただろう。アヴェンジャーズが分裂、解散することになった「シビル・ウォー」のきっかけになったのはスタークさんが発端の「ウルトロン事件」だったし、ピーターにいたっては……僕も一緒に行動していたから、身につまされる思いだ。

 

 なんてことを考えていると。

 

「一かたまりになって動くな!13号!!生徒を守れ!」

 

 相澤先生の大声が響く。同時に遥か下方で発生した黒い霧に僕の心臓が大きくはねる。そして、次いで闇から現れた全身に人の手を付けた男を目視したとき、時間が止まった。実際にはそんなことはなかったろう。けれど、そうとしか思えないくらいの衝撃を僕は受けていた。

 

 

  あれは、ダメだ。

 

 

 理屈じゃない。しかし確信だ。あれは、今ここでなんとかしておかないと絶対にまずい――!

 

「……ールマイトが……るはず……」

 

「……象徴……いないなんて……」

 

 敵が何かを言っているが無視して階段を飛び降りる。

 

「おいバカ緑谷!戻れ!」

 

 相澤先生が戻れと言っているが止まらない。もう止まれない。いや、駆け落ちる。下まで一気に、転倒するより早く手と脚を送り込み、更に加速する!

 

「なんだぁ……ガキがいきがって、自殺した――」

 

 何か言いかけた異形系の個性持ちを勢いのまま蹴り飛ばし、そのまま手男に肉薄する――!

 

「子どもを殺せば来るのかな?」

 

 こちらに悪意に満ちた笑みを向ける手男に、裏拳の要領で右腕に付けた盾を叩きつける。衝撃。しかし、軽い。手男の周囲に黒い霧が集まって加勢しているようだ。けれど、ダメージが通ってないわけじゃないようで、手男は盾に右手を当てたまま顔を歪めている。

 

「おおおぉぉぉっ!」

 

 そのまま力を込めて強引に右腕を振り抜く。衝撃のままお互い距離を取った。盾を構え直して――違和感。オールマイトカラーの塗装が、全部剥げている?

 

「痛ってぇな。しかも塗装だけかよ。なんで崩れてねぇんだ?その盾」

 

 これが、僕と死柄木弔との出会いだった。

 

 

 

 




個人的にはこのタイミングでピースサインを流してヒロアカ世界編のオープニングとしたいところですね
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