キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー   作:minmin

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※今回はジャンプ+、マーベルコラボ掲載の「インタビュー・ウィズ・ヒーローズ」のネタバレが入ります。未読の方でネタバレを気にする方はブラウザバックをどうぞ。


インタビュー・ウィズ・キャプテン・デク

 

 

『やあボーイ。今日も元気にヒーローしてるか?』

 

 日中は常時耳に付けている通信機から陽気な声が流れてくる。随分とご機嫌なようだ。まあ、今日は美女と仕事だとかなんとか言ってた気がするからそのせいだろう。

 

 

「調子は悪くないですよスタークさん。今は子どもと握手してます」

 

 道路に飛び出して車に轢かれそうになっていた男の子の背中を軽く叩いて母親の元へ送り出してやる。お母さんは涙を流しながら我が子を抱きしめていた。

 

「お母さん!もうお子さんから目を離しちゃダメですよ!……それで、緊急事態ですか?確か今日は美女のインタビューとか言ってましたし」

 

『確かにその通りだが……なんでそこで美女云々が出てくるんだ?』

 

「そりゃ、緊急事態でもなきゃ貴方が美女より僕への連絡を優先するなんてありえないでしょ」

 

 軽口を言いつつバイクに跨る。特注してもらった、ロジャースさんが使っていたものと同じタイプのバイクだ。

 

「それはその通りだが……僕への敬意が足りない気がするぞ?まあいい、フライデー、説明してやれ」

 

『はい。デク様、お久しぶりです。本日未明、脱獄事件が発生していたことが判明しました。現在も逃走中の脱獄犯は、イーヴォ・ザイドラー。元ヒドラの幹部だった男です』

 

「やあ、久しぶりだねフライデー。ヒドラ、ね」

 

 ヒドラ。それは僕にとって体験するのは初めてであると同時に、縁深い言葉でもある。キャプテンの名を冠する僕にとっては。

 

『ザイドラーは部下を使って、ニューヨークの2箇所のビルに人質を取って立て籠もらせています』

 

「要求はもしかしてお仲間の釈放、とか?」

 

『ご明察です、デク様』

 

「月並みな要求を言ってみただけだよ。でもありがとうフライデー」

 

『どういたしまして』

 

『おい、僕と話してるときとなんだか対応が違うのは気のせいか?兎も角、僕はザイドラーを追う。片方には蜘蛛の坊やを向かわせるから、もう片方に向かってくれ。初めての本格的な事件への単独行動だ……いけるか?』

 

「了解!」

 

 勢いよく返事をしてエンジンをかける。今まではピーターみたいに自主的に、自警団のような一般の犯罪者相手の活動だけだった。ヒドラのような本格的な敵組織は初めてだ。気を引き締めつつニューヨークの道を走り出した。

 

 

 

 ――ニューヨーク某所。

 

「フライデー。隣のビルから飛び移れそうな場所とか、外から入れそうな通気孔とかある?」

 

『少々お待ちください……北側の3Fに内部に通じる通気孔があるようです』

 

「了解、侵入したらナビゲート頼めるかな」

 

『かしこまりました』

 

 現場のビルから少し離れた場所にバイクを止めてから走る。駐車禁止は……検挙されないように祈っておこう。緊急事態だし、ごめんなさい。

 

『へえ、考えたな。キャ……あー、彼なら正面から乗り込んでるところだ』

 

 フライデーが教えてくれたビルの北側に向かって走っていると、スタークさんが感心したといった様子で声を掛けてくる。

 

「僕が『彼』ほど知られていれば敵も警戒してこちらに注意を引けたかもしれませんが……そうではないですし。それに、マスクを被っててもアジア系だからかなんとなく『幼い』って思われることが多くて。なめられて激昂させちゃったらまずいです、からっ!」

 

 目的の通気孔を発見。周囲に見張りがいないのを確認してから、1階の窓に足をかけて一気に飛び上がる。逆の足を2階の窓にかけて再び飛んで、右手を通気口の縁に引っ掛けた。そのまま腕1本で体を持ち上げて、左手で無理やり蓋を外すとそのまま中に体を滑り込ませる。

 

「それに、正面からいって無理やり制圧できても、ビル自体の被害が酷くなりそうでしょ。こっちのほうが幾らかマシです。この前ピーターに、通れそうな通気孔の見分け方とか、進み方とか教えてもらいましたし」

 

 フライデーのナビゲートに従いながら通気孔を這って進む。狭い場所をくぐり抜け、配管を避けながら外に出ることなく下の階に降りていく。ピーターにいきなり連れ出された時は勘弁してくれと思ったけど、人生何が役立つかわからないものだ。慣れていないと通るだけでも時間がかかったかもしれない。

 

『ヒーローというよりは泥棒か敵みたいじゃないか?それは』

 

「言わないでください、自覚はあるんですから……ここか」

 

 通気孔の蓋の格子越しに立て籠もり犯たちを見下ろして確認する。1、2、3……4……内部に4人。フライデーによると、ビルの外にも人質を1人ずつ連れて警察に要求を告げているのが3人いるらしい。

 

『気をつけろよ。今確認したボスのトレーラーの中にはエイリアン製の武器がギッシリだ。まず間違いなく部下も同じ物を持ってるだろう』

 

 エイリアン製。以前ピーターが止めたっていう、チタウリってやつらが使ってた武器とかのことだろうか。確かに、見たことがないような形の銃を持っている。

 

「その武器、僕の盾より強いんですか?」

 

 左腕に付けた盾を撫でながら聞く。僕の盾。昔、スタークさんの父親ハワード・スターク氏が合金で作ったキャプテン・アメリカを象徴する盾ではなく、ワカンダの技術を用いて作られた、純ヴィブラニウム製の僕だけの盾だ。その衝撃吸収性はキャプテンのそれをも上回る。

 

『そりゃあり得ないだろう。だが、油断するなよ』

 

 銃を持った男が動く。人質たちを睨みつけながら周囲を回って……3、2、1、今!

 

「わかり、ました――行きます!」

 

 ありったけの力と、全体重をかけて格子状の蓋を思いっきり踏み抜く!

 

「ぐはっ!!」

 

「な、なん――!?」

 

 ドンピシャだ。着地した僕の下で潰れたカエルのようになった男が悲鳴を上げて沈黙する。突然の出来事に混乱している男に向かって盾を投げる。気絶。跳ね返ってきた盾をキャッチしてそのまま構え、ようやく銃を撃ってきたところを反射する。足に命中。うずくまったところを盾で払って3人目。振り向きざまに最後の1人にむかって盾を投げる。……ふぅ、なんとかなったみたいだ。

 

 混乱しながらも自分たちが助かったことを徐々に理解して歓声を上げようとする人質たちに向けて、人差し指を立てて鼻と口に当てる。

 

「静かに。今から、外の残りを片付けてくるから。すぐに済むよ、落ち着いて」

 

「あ、ありがとう。それで、ええと、君は一体……」

 

 これだけ大きな事件だ。もしかしたらこれは、僕という存在が多くの人に知られるきっかけなのかもしれない。そう考えると。

 

「僕は――」

 

 

 

 

 

「さあよく見てろ!!ヒドラを侮るとどうなるか――グァッ!!?」

 

 要求に応じない警察に業を煮やして人質に突きつけられた銃が何かに叩き落される。

 

「クソッ!!一体何なんだ!!?」

 

「……ヒドラも落ちるところまで落ちたんだな。僕が聞いた70年前の話より、卑劣で姑息だ」

 

 振り返るとそこにいたのは、合衆国民なら誰もが知るヒーロー……によく似た姿をした男だった。声からしてまだ若い、いや、幼いと言ってもいいだろう。決定的に違うのは、跳ね返ってきたところをキャッチした盾だった。キャプテン・アメリカのそれとは、全く異なる見た目をしている。

 

「てめぇ、なにもん、だ…………」

 

 そこまで言いかけて気づく。仲間が、全員倒れ伏している。いつの間に――!?

 

「ガッ!!?」

 

 次の瞬間には、衝撃と暗闇。薄れゆく意識の中で最後に聞いたのは。

 

「―― I am , captain deku 」

 

 塀の中に連れて行かれる男が知るよしもない、1夜にしてアメリカ全土に広がることになる台詞だった。

 

 

 

 

 

「……ふう」

 

 僕を遠巻きに眺めている市民の皆にはわからないよう、そっと息を吐く。内心はかなり緊張していたけれど、見栄を張るのもヒーローの仕事の1つだ。

 

『あー、ボーイ。ちょっといいか?』

 

 ん?スタークさん?さっき敵のボスを捕まえるって言ってたけど、何かあったんだろうか。

 

『別に手こずってるわけじゃないんだが、やっこさんがどうやらハルクの親戚か何かだったらしくてね。ちょっと肉体派の人は手伝ってもらえないかな?いや、別に僕1人でもどうにかなるんだけどちょーっと面倒だからね』

 

「……了解。すぐに向かいます」

 

 もう1度ため息を吐きつつ盾を背負って駆け出す。最後に、振り返って軽く手を振っておいた。

 

 ちなみに、駐車違反は大丈夫だった。

 

 

 

 バイクで走っていると、途中で空中に見慣れた姿を発見する。まるで重力などないかのように楽しげに空中を舞う赤い姿。僕の親友だ。向こうも僕を見つけたのか、スイングの位置を低くして近づいてくる。

 

 

「――やあデク!」

 

 

「そっちも終わったの?」

 

 

「僕の方は!」

 

 

「怪我人も出なかったよ!」

 

 スイングで一番下に来る度に話しかけてくるから跡切れ跡切れだ。正直、ちょっと面倒くさい。けれども、お陰で浮ついていた心が落ち着いてきた。前方に横転したトレーラーを確認する。

 

「うん、こっちも同じだよ。スタークさんは……あれだね」

 

 薬か何かでも使ったのか、明らかに常人を超えた体躯の筋肉モリモリマッチョマンの変態が空を飛ぶアイアンマンに手当たり次第にそこらのものを拾って投げつけている。スタークさんは……周囲に被害を出さないことに専念してるみたいだ。アイアンマン・スーツには捕獲用のギミックも色々搭載されているらしいけど、基本が火力に振った兵器が多いのでタフな生身に暴れられると確かに困るだろう。

 

「ピーター、僕が下から行く。君は先に上から頼むよ」

 

「了解!」

 

 返事と同時にピーターが先行し、空に向かって投げつけているトレーラーの破片をウェブでキャッチ、そのまま顔面にぶち当てた。怯んでよろめく大男。僕の役目は――ここ!

 

 バイクをドリフトさせながらジャンプして、パルクールの要領でトレーラーを飛び越える。受け身を取りつつ転がりながら、よろめく男の膝に思いっきり盾を打ち付けた。悲鳴を上げる大男。怒りに任せて拳を振り下ろしてくるけれど、膝立ちで盾を構えて受け止める。その直後に、背後からアイアンマンのリパルサーの1撃が直撃して――最後に、スパイダーマンの代名詞、ウェブでぐるぐる巻にされて捕獲完了だ。

 

 

「は、ははは……俺がいない間に、ハロゥインの日付が変わっちまったらしい。こんなコスプレ野郎どもにやられるとはな……なんなんだよお前等は」

 

「よく覚えておけ。僕たちは――アベンジャーズだ」

 

 

 

 

 

 これが、僕とピーターの、アベンジャーズとしての初仕事だった。そしてその場を去る前に、スタークさんのインタビューをしていたひとたちに僕たちも質問されてしまった。キャプテンとの関係は濁したけれど――

 

 

『ヒーローになって良かったと思うことは?』

 

『……力を貰う前は、自分の身すら守ることができませんでした。力を持っている人を羨んでいました。でも、本質はそこじゃないんです。誰かが助けを求める顔をしていた時、僕は体が勝手に動いているでしょう。力の有る無しは結果にすぎない。だから――』

 

 この言葉が、多くの嘗ての僕に届きますように。

 

『皆、諦めないで。誰かを救おうとする君は、誰よりもヒーローなんだから』

 

 

 

 

 




キャプテン・デクのアベンジャーズとしての初仕事でした。この経験があるのでデクは脳無に対してもある程度冷静に対応できていたりします。
次回はまたヒロアカ世界の続きの予定です。
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