キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー 作:minmin
最近はCoCのシナリオの方に力を入れてしまっているのでおまたせしてごめんなさい!
――常人10人分はあろうかという威力の拳を盾をかかげて受ける。
受ける。躱す。また受ける。逸らす、躱すいなす受けるまた躱す。反射神経と身体能力を総動員して脳無の攻撃を捌き続ける。今の所僕は無傷だ。確かに身体能力は凄い。僕以上かもしれないし、オールマイトに匹敵するのかもしれないが――それだけじゃ、僕の守りは崩せない。
「ふっ!」
大振りな右の打ち下ろしを躱して、左手の盾を顎に思いっきり打ち付ける。違和感。結構な力を込めて打ち込んだのに、反動が殆どない。これは……
「無駄だよ、『ショック吸収』だからな。オールマイトの本気にも耐えられるように調整してある」
素の力でこれ……その上でショック吸収か。厄介だな。ただ、それならそれでやりようはある!
右拳を地面に付いたまま、左手で殴ろうとしてくる脳無。確かに速いし、強い。まともにくらったらひとたまりもないだろう。けれど、荒い!
迫ってくる拳をしゃがんで躱し、両腕で抱え込むように極太の腕をしっかり捉える。そのまま勢いをつけて股の間に滑り込んだ。背後に出ながら、力と体重をかけて全力で肘を極める。バチン!と嫌な音がしたのを聴くと同時に慌てて跳んで転がり避ける。一瞬前まで僕の頭があったところを、猛スピードで脳無の足が通り過ぎていった。危なかったけれど――これで、左腕は潰した。
サノスは強かった。圧倒的なパワーだけじゃなく、実戦で、戦場で磨かれた確かな戦闘技術があった。この脳無とやらにはそれがない。本能のままに暴れているというよりは……気のせいだろうか、一見して自我が存在しないような容姿と振る舞いなのに、その動きにどこか素人っぽさを感じる。と、そんなことを考えつつ、左腕が捻れたまま暴れまわる脳無の攻撃を捌き続けていると、端から大声が聞こえた。
「あああああああっ!!!!ほんっっっとうになんなんだよお前!!お前みたいなのがいるなんて聞いてないぞさっさとやられちまえよ!!!!なんだよぉおもおおお!!!!」
イレイザーヘッドを相手取りながら、ガリガリと頭を掻きむしりつつ手男が絶叫する。好都合だ。そのまま苛ついて、僕らに集中してくれればいい。根比べなら負けないし、必ず応援が来る。
「なんだ、まだ眠れてなかったのかい。君って枕が変わると眠れないタイプ?それともママかパパが横にいないとだめなのかな。迎えに来てもらってお家でおねんねするかい?」
「――ぶっ殺す。脳無、もう治っただろう?さっさとそいつを殺せ」
何かが逆鱗に触れたのか、スッと冷たくなった瞳で僕を睨みつけてくる。イレイザーヘッドがやりすぎだ馬鹿という視線を送ってきていた。あのトニー・スターク直伝、且つピーターの軽口の影響を存分に受けた僕の挑発はどうやら効きすぎてしまったらしい。それにしても、もう治っただろう、だって?
嫌な予感を覚えつつ脳無の方を見ると、折角壊したはずの左肘が、べこべことかいう音を立てつつ綺麗に戻りつつあった。おいおいまじか。
「ちっ……悪い、緑谷。なるべく妨害はしてたんだが、かなりの修復速度だ。少しの間視線を逸しただけで完全に回復された。意味がないとは言わんが、俺の個性で治癒を妨げるのは非合理的だな」
どうやらイレイザーヘッドはとっくに気づいていて、僕の知らぬ間にアシストまでしてくれていたらしい。……まだまだだな、僕も。そんな僕を見て手男がにやにや笑った。
「『超再生』……腕がもげようが足がちぎれようが、体が半分になろうがすぐに元通りだ。お前らの半端な攻撃なんか無意味なんだよ」
さてどうしたものか。僕の体力も無限じゃない、どうにかして脳無を無力化する方法を考えないと、と思っていたら手男の後ろに黒い靄が発生した。――僕をスカイダイビングさせてくれたアイツだ。ここで増援は……ちょっとまずい。
「黒霧。13号はやったのか」
「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして……1名逃げられました」
イレイザーヘッドと視線を交わす。誰かはわからないが、これで外部に危機は伝わったはずだ。そう遠くないうちに応援が来る。だというのに、手男――死柄木弔は不気味な笑みを浮かべたままだった。
「ああ、なんでかな、黒霧。ゲームオーバーだよ。さすがに何十人のプロ相手じゃ敵わない。引くしかない。俺たちは、平和の象徴を、オールマイトを殺しに来たはずなのにさ、なんでかな――」
敵が、嗤う。
「――そんなことより、今すぐ目の前のこいつを壊してやりたくて仕方ないんだ」
未熟で、巨悪と言うには程遠い。けれども、間違いなくこの世界で最も醜悪な敵が発芽した瞬間だった。
「行け、脳無。――押さえろ」
死柄木の言葉と同時に脳無が文字通り「飛び上がって」襲いかかってくる。攻撃するというよりは、押さえろという命令通り捉えるための動きだ。しかも、さっきまでより速い!
「くっ!」
死柄木と黒霧を警戒しつつ、動き回って兎に角避ける。雑に殴ってくるだけならいくらでもやりようはあった。けれども今度は、ただ僕の動きを止められればそれでいいというように、体全体でのしかかるように迫ってくる。明らかに事前に想定された動き。何かある――捕まったらまずい!
避ける。避ける。走る、避ける、転がる。少しずつ速さを増しているようにも感じる脳無のチャージを避け続ける。まだ十数秒しか経っていないだろうに、一気に危機的状況になってしまった。そしてその状況を黙って見つめている死柄木と黒霧が返って不気味に感じる。
このままではジリ貧だ。それに恐らく――
「イレイザーヘッド!」
「緑谷!馬鹿野郎、この……」
僕より先に体力が尽きてよろめいた相澤先生を突き飛ばす。無理もない、むしろ個性の効果もなしにここまでよく動いて――がっ、ぐっ……
体の前に盾を割り込ませて空間を作る。完璧に抑え込まれたら、体格差を考えると脱出は絶望的だ。関節を極めにくるような知恵はなさそうなのは助かるけど気休めでしかない。
「詰みだな。黒霧――やれ」
次の瞬間、下半身だけが浮遊する感覚に襲われる。見ると、腰から下が黒い靄に飲まれていた。
「がっ――」
踏ん張りが効かなくなったせいで頭を掴まれ地面に押さえつけられる。これは――ちょっと、まずい、かな……
「そのワープゲート。途中で閉じるとどうなるかなあぁあ?楽しみだろう?」
死柄木が、まるで『悪』を体現したかのような顔でニヤニヤと嗤う。思い浮かんだのは、ウォンさんが開いたゲートと、ちぎれるサノスの部下の腕。そして――最後までらしくあった、鉄の男。だから僕も、精一杯の言葉を返すことにした。
「ああ、まったくだね。できれば下はスミソニアン博物館に飾ってくれると嬉しいかな。肉体美には自身があるんだ――ほら、いかにもアメリカのケツって感じだろ?」
僕の答えに、死柄木がつまらなそうな顔をする。
「……ふん、まあいい。黒霧、や――」
――――その瞬間。
衝撃。そして、轟音。弾け飛ぶ扉から現れたのは、平和の象徴。
「もう大丈夫……私が来た!」
次で一応一段落付く予定です。
皆もCoC7版で遊びませんかー?シナリオ公開とかもしてますので!(なお品質は保証しない