キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー   作:minmin

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水古戦場お疲れ様でした!リリィは過労死寸前なの!
という訳で(どういう訳だよ)今回は時間が一気に飛んで入試編です。一味違うキャラたちの活躍を魅せていけたら嬉しいな。


雄英高校入試

 

 

 意識が浮上する。

 

 肉体も精神も、休める時に休ませる。例え眠れなくても、目を閉じてゆっくりと呼吸するだけでも効果はある。キャプテンも、バーンズさんも、ティ・チャラ陛下も皆言葉は違えど同じことを教えてくれた。ヒーローっていうよりは軍人の心構えだな、なんて当時は思ったりもしたけれど、冷静に考えると内2人は元職業軍人だった。それに陛下も国王であるまえに戦士、という考えの人だったし。

 

「居眠りかよ。余裕だなクソナード。あァ?」

 

 かっちゃんが相変わらずヒーロー志望とは思えない形相で僕を睨む。

 

「余裕、か。まあ筆記試験は悪くなかったと思うよ」

 

 内心は違うことを考えていたけれど、取り敢えずそうかっちゃんに返事をしておく。てめえ最近調子乗ってんなァ……!なんて聞こえるけれど気にしない。

 

 まあ、実際筆記は問題なかったと思う。理、数、英は満点のはずだ。あちらの世界に行ってから、オーバーテクノロジーの塊みたいな国でそれなりに暮らしてたし、シュリさんが勉強教えてくれたし。それに、一般的な科学技術もこちらの世界より上だった。主にシールドとかスタークさんの影響で。

 

 ちなみにスタークさんもたまに色々講義をしてくれたけどあまり身についていない。だってあの人、周囲が皆自分と同じレベルの人間だって前提で話す人だし、ついてこれない人は知らないって人だし。それでニヤニヤしながら言うんだ。

 

『ああすまない。僕としたことが、自分が周囲とは違う天才だってことを忘れていたよ。それで?どこから説明しようか?』

 

 そう、考えていたのはスタークさんのことだ。トニー・スターク。アヴェンジャーズのビッグ・スリー。偉大なるアイアンマン。

 人が本当に死ぬのは、人に忘れられた時だ、という言葉がある。そういう意味では、彼があちらの世界で本当に死ぬことはないのかもしれない。けれど、この世界でトニー・スタークという偉大なヒーローを覚えているのは僕だけだ。だから――あれだけ絶望的な戦いであっても、彼のことを、顔を、言葉を、振る舞いを。ハッキリ思い出せたことが嬉しかったんだ。

 

 感慨に耽りながら、講師であるプロヒーロー、プレゼント・マイクの解説に耳を傾ける。AからGまでの7箇所での模擬市街地演習。演習時間は10分。短いな。というか高校なのにどれだけ土地持ってるんだ雄英。

 

「受験番号連番なのに演習会場が別だね。同じ学校の生徒同士で協力させないためかな」

 

「チッ、てめェを潰せねえじゃねえか。つーか見んな殺すぞ」

 

「……前から思ってたけど、ヒーロー志望として潰すとか殺すとかはどうなの?かっちゃん」

 

 解説は続く。仮想敵、ポイント制。行動不能ってことは、身動き取れなくするだけでいいのかな。まあそうしないと戦闘に適した個性しか合格できなくなる。救助や支援に特化した個性だってあるだろうし。うん?仮想敵を3種多数配置?

 

「質問よろしいでしょうか!?プリントには4種の敵が~~」

 

 と思ってたら如何にも真面目そうな眼鏡君が質問してくれた……って縮れ毛の君って僕のこと?

 

「先程からボソボソと……気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!」

 

 物見遊山、か。まあ他の受験者より若干意識が低いのは否定はしない。折角だから環境の良い所がいいからと受験したけど、別に雄英じゃないとヒーローになれないわけじゃない。それにそもそも、ヒーローは授業を受けてなるものでも、免許、資格を取得してなるものでもない。僕はそう思っている。そういう意味では、彼の言うことも間違いじゃない。けれど――

 

「ごめん、不快にさせてしまったのなら謝るよ。だから君も笑って許してくれないかな。大分ヒーローらしからぬ顔になってるよ?」

 

「なっ……!?」

 

 ついつい煽るような言い方になってしまったのは、英語を覚える為に四六時中兎に角会話してたピーターの影響だ、間違いない。とはいえ彼も自覚はあったようで、怒りを沈めて着席してくれた。

 

『オーケーオーケー、受験番号7111君ナイスなお便りサンキューな!4種目の敵は~~』

 

 その後の解説によると、どうやら最後の敵は0ポイントのステージギミック、お邪魔虫のようなものらしい。各会場に1体……嫌な予感がする。こういう予感、よく当たるんだよな僕の場合。

 

 

 

 

 演習会場に移動すると、予想以上の規模の模擬市街地が拡がっていた。どうなってるんだ雄英。本当に高校なの?

 周囲を確認しながら身体を解していく。持ち込み自由と言うだけあって、装備だのコスチュームだの、個性に合わせた道具を持ち込んでいる人も結構いる。腕が複数あるような異形型の個性の人も。因みにさっきの眼鏡君も同じ会場だった。彼はオーソドックスなスポーツウェアスタイル。腰につけたドリンクホルダーが印象的だ。……マラソンランナーみたいだな。

 アヴェンジャーズのコスチュームは、家に飾ってある。もう替えが効かないものだからこれ以上傷ませたくなかったし、もう僕はアヴェンジャーズじゃない。という訳で今の僕は作業着をベースに盾を着脱しやすいようアレコレ調整してもらった服を着ている。マスクは付けてない。キャプテンのことは尊敬してるけど、マスクは、うん。

 

 ――と、その時。

 

『ハイスタートー!どうしたあ!?実践じゃカウントなんざされねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』

 

 プレゼント・マイクの声が会場中に響き渡る。一瞬の後、受験者が一斉に走り出した。なるほど、思ったより実践的ではあるんだな、雄英は。

 ほぼ同時にスタートした集団から抜け出したのは、僕と眼鏡君の2人。よく見ると、脚にマフラーのようなものが付いている。どうやら移動補助系の個性みたいだ。トップスピードに到達する前に、前方に1の数字が描かれたロボットを2体発見。丁度左右に位置が離れている。勢いを殺さず飛び上がって――僕と眼鏡君の蹴りが、同時にそれぞれの仮想敵をぶち抜いた。着地して、お互い顔を見合わせて笑う。

 

「――良い蹴りだ」

 

「君もね!」

 

 どうやら彼は本当に只の生真面目君だったらしい。僕の方から少し動きを合わせるだけで、何も言わずとも背中をフォローするように動いてくれた。そこからは単純作業だ。現れる仮想敵を千切っては投げ、千切っては投げ。危なそうな受験者を見かけると、たまに盾も投げ。体勢を崩す程度に加減したから、ポイントの横取りにはなってないと思う……多分。

 途中で僕が投げた盾に、空中でレーザーが当たって反射したのは驚いた。お臍からレーザーを出した彼も驚いてたみたいだけど、それからは僕を積極的に使いだした。中々良い根性してる人が集まってるな。こちらからも盾を構えて手招きする。その間は、眼鏡君が背中を守ってくれていた。

 

 

              そんなこんなであっという間に5分弱が経過して。 

 

           突如現れた0ポイント敵が、色々と吹き飛ばしてくれました。

 

 

「……デカすぎない?全長、ビルを軽く超えてるんだけど……高校入試で使うものじゃなくない?」

 

 いやまあ、リヴァイアサンみたいにチタウリを発射しないだけマシかもしれないけれど。

 一斉に逃げ出す受験者たち。仕方ない。いくら個性持ちとはいえ、中学生程度がどうこうできる相手じゃない。けれど――僕には、見えてしまった。うずくまり、助けを必要とする女の子の姿が。

 

「君は、逃げないのかい?」

 

 隣に来た眼鏡君が声を掛けてくる。

 

「ヒーローだからね。君こそ逃げないの?眼鏡君」

 

 そう言うと眉間にシワが寄る。わかりやすいな君。

 

「ぼ……俺は眼鏡君じゃない。飯田天哉って立派な名前があるんだ。次からはそう呼んでくれたまえ」

 

「そして僕は青山優雅。ヨロシク!」

 

「……よろしく、飯田君、青山君。僕は緑谷出久」

 

 突然横から顔を出すレーザー君改青山君。さて、時間がない。あの子を助けないと。

 

「作戦は?」

 

「チームワークさ。あのデカブツ相手にはパワーが足りないから、一点集中でいこう。飯田君、君、助走をつけてから狙った場所にジャンプできるかい?」

 

 

「ああ。数センチ単位とまではいかないが」

 

 なら、多少ずれても僕の方で合わせられる。となると。

 

「青山君。レーザーの射程距離はどうかな?ここからあの仮想敵まで」

 

「距離は問題ないよ。ただ、1秒以上射出し続けると腹痛で動けなくなるんだけどね」

 

 よし、それなら――

 

「じゃあ、今から作戦を説明するよ。まず飯田君が――」

 

 即席ヤング・アヴェンジャーズ、結成だ。

 

 

 

 

 不思議な男だ。前方で特徴的なラウンド・シールドを構える緑谷出久という、同い年とは思えない少年を見て思う。最初は不真面目そうに見えたのに。協力するとも、何も言われていないのに、いつの間にか惹き付けられている。きっと青山君も同じような気持ちなんだろう。オレンジジュースを飲みつつそんなことを考える。さあ、行くぞ、飯田天哉。彼の期待に、応えてみせろ。

 

 個性を発動させる。エンジンを燃やす。走り出して――飛び上がる!

 

 緑谷君が下に潜り込み、盾を掲げる。その上に着地すると、次の瞬間、強烈な力で押し上げられた。179cmという、大柄な部類の僕の身体が軽々と宙を舞う。凄いパワーだ。No.1ヒーロー、オールマイトには及ばないが、十分強力な増強型の個性だろう。

 思考は一瞬。臆しそうになるが、堪えて大型敵の腹部に取り付く。それを確認して、緑谷君の盾が直撃。直ぐ横の装甲が割れた。

 

「――お。おおおおぉぉぉっ!」

 

 渾身の力を込めて装甲を引き剥がす。その内部には緑谷君の予想通り、制御を司るであろうコアらしきものがあった。

 

「青山君!」

 

 同時に、レーザーがコアを破壊する。やはり内部はそこまでの強度ではなかったようだ。これも緑谷君の予想通り。急停止する仮想敵。反動で宙へ投げ出されるが――

 

「ナイスファイト」

 

 緑谷君が受け止めてくれる。あの高さから落下した人間を生身で受け止めても平然としている。……凄い男だな、君は。

 直後に流れる終了のアナウンス。こうして、僕らの入試は終了した。

 

 

 




改めて見ると飯田君最初期はかなーり印象悪かったよね、原作。
次回はまた時間を遡ってMCU側のお話になる予定。暫くは交互になるんじゃないかな。
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