キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー   作:minmin

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GW最終日に投稿。掃除やらなにやらで潰れたけどまあまあ休めたかな。
皆様も体調に気を付けて無理せずお過ごしくださいませ。


シビル・ウォー / キャプテン・デク・オリジン

 

 ――この男を、自分は殺せない。

 

 雪が積もる白に染まった孤島で、そんなことを思ってしまった。

 

 ヘルムート・ジモ。国連へのテロの首謀者。キャプテン・アメリカの盟友、バッキー・バーンズを操った男。アヴェンジャーズを分裂させた男。尊敬する父の仇だ、今もまだ恨んでいる。この気持ちは、生涯消えることはないのかもしれない。それでも、殺せないと思ってしまったのだ。バーンズが犯人だと思っていた頃には、明確な殺意が渦巻いていたというのに。我ながら勝手なものだ。しかし、1度思ってしまったものはどうしようもない。理屈ではないのだ。

 

 拘束し、捻り上げた右腕に力を込める。ジモの手から拳銃が滑り落ちた。同時にジモの全身から力が抜けていく。自殺は諦めたらしい。ほっと息をついて立ち上がろうとしたその時。

 

 

 衝撃。

 

 

 島が揺れる。地面が震える。堪えきれずジモ諸とも無様に転がってしまった。地震?いや、この島の周囲には、海底火山などはなかったはずだ。そもそも地震が起きない場所を選んで施設を建設したはず。

 地下にある施設の何処かにいるであろう、スティーブ・ロジャースやトニー・スタークの戦闘の影響ではない。規模が大きすぎる。――今度は何だ!?

 

 突如として響く不協和音。何かが悲鳴を上げるような、こすれる様な、割れたような音。同時に、少し離れた空間に孔が開き始めた。徐々に広がりつつある孔の向うは黒く、その先を見通すことはできない。しかし、吹き付ける風から、そこから何かが出てこようとしていることはわかった。

 

「ジモ!これは――これは一体なんだ!何をしたんだ!?」

 

 同じように雪に膝を付くジモに向かって叫ぶも、その顔にあるのは困惑だった。

 

「ち、違う!私じゃない――何が起こっているのか、私にもわからない!」

 

「くっ――!」

 

 偶然?自然現象?ワカンダは科学の国だ。諸外国に対してカモフラージュしているが、その科学技術は世界一だろうという自負がある。シールドですら、ワカンダには追いつけない。しかし、そのワカンダの技術を以ってしても、空間に孔を空けることなどできるだろうか。それだけではなく、明らかに何かを呼び出そうとしている。高度に発達した科学は魔術と見分けがつかないと一般的に言われるが――時間と空間を超えて何かを呼び出すことは、今の科学では難しい。間違いなく、何か超常的な現象が起きている。

 

 孔が広がると共に大きくなる振動と吹き付ける風。ついには孔から雷さえ出始めた。そして閃光。同時に収まる揺れと風。圧倒的な光量に思わず閉じてしまった目を開けた時、そこにいたのは――小柄な、少年だった。肌の色や顔立ちからすると、どうやらアジア系らしい。そのせいか、いっそ幼くも見えてしまう。ただそれにしては、やや緑がかった髪が特徴的だ。……どうやら、彼は自分の意思で此処に来たのではないらしい。一目でそうわかるほどに、彼は戸惑い辺りを見渡している。

 

 その顔が、驚愕に染まった。同時に雪に脚を取られつつ、転びながらも必死に駆け出す少年。その視線の先には、再び銃口を自らのこめかみに向けるジモがいた。まずい!あれでは、少年も間に合わない。咄嗟に手近に転がっていた石を拾って投げる――当たった!

 

 それからの光景は、いつまでたっても記憶から薄れることはないだろう。この、罪の記憶は。

 

 体勢を崩すジモ。滑り落ちる雪と、その先の崖。駆け寄る少年が手を伸ばす。咄嗟に崖を掴もうとするジモの、銃を握ったままの手。少年がジモの手を掴むと同時に轟いた――銃声。呆然とするジモと、純白を赤く染める鮮血。腹部を撃ち抜かれながらも、彼はジモの手を放さなかった。

 

「少年!」

 

 急いで駆け寄り、少年とジモを崖際から引っ張り上げる。ジモは今度こそ死ぬ気はなくなったようで、茫然と座り込んでいる。少年は――まずい。弾は貫通しているだろうとはいえ、撃たれた場所が腹部だ。それに、この場所では満足な治療などできるはずもない上に、シベリアの孤島……医療施設に搬入するまで、持たない……!

 

「どうして。どうして助けようとしたんだ。そのまま死なせればよかったんだ。見ず知らずの男のことなど、見捨てればよかったんだ……」

 

 相変わらず茫然と呟くジモの目には、何も映っていなかった。その空虚な呟きに、少年が反応する。弱弱しく、しかし、確かな熱を持って。

 

『何故……何故って、それは……貴方が、助けを求める顔をしていたから……!諦めちゃ、ダメです。生きることを、諦めないで……っ!ごふっ!』

 

 言葉はわからない。聞きなじみのない異国の言語での、途切れ途切れの弱弱しい言葉。当たり前だ。――けれども。その言葉に込められた熱は、確かに、私とジモの心に届いていた。虚ろだったジモの目に火が灯る。この少年を、死なせてはならない!

 

「……下の施設に、零れていない血清が幾らかあったはずだ」

 

 ジモが少年の腹部を抑えて止血しつつ呟いた。

 

「血清……超人血清か!」

 

「ああ、バッキ―・バーンズと同じ、ウィンター・ソルジャーを作る為の血清。この施設は粗方破壊したが、1人で大雑把に壊して回った。その時、容器だけ破壊されて、幾らか零れずに残ったものがあったはずだ。スティーブ・ロジャースに投与されたオリジナルには及ばないだろうが、それでこの少年の治癒能力を強化できれば……!」

 

 ――助かるかもしれない。

 

「私が取りにいこう。止血は任せた。……死なないでくれ」

 

 最後の言葉は2人に向けて。ジモと眼を合わせた後、すぐさま走り出した。

 

 

 

 

 

 ――遠くから、声が聞こえる。

 

『……ル低下!出血量が多く、危険です』

 

『……までh……分かか……わない!』

 

 僕は、このまま死ぬんだろうか。あの男の人は無事だろうか。

 

『……血を……かない……』

 

『……テンの……を!?そr……影響が……』

 

 思い出すのは、僕を助けようとしてくれたかっちゃんの顔と――母さん、父さんの顔。親不孝な息子、で……ごめん…………なさ………………い…………

 

 

 ……………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 ――夢を視た。何の力もない、それどころか病弱で、人よりも劣る青年が、ヒーローを志す夢を。

 

 綺麗ごとではない戦争を視た。恩人の死も、人に操られる理不尽も、人の命を奪う経験も。不器用な恋心も、友の死も。そして、自らの命を犠牲にしてでも他を救う、その精神を。そして、何よりも心に残った、彼のオリジンを。

 

『――完璧でなくとも、善良な君のままで』

 

 ――眩しい。

 

 最初に感じたのは、光。瞼越しに光を感じ、ゆっくりと眼を開ける。真っ白な天井。これは――ベッドに、寝ていたのか。戸惑いながら上体を起こす。入院の時に着るような、ガウンみたいな青い服。白に統一された部屋に、腕に繋がれた点滴のチューブ。

 病院、か。助かった……のか。そこまで考えた所で、違和感に気づいた。僕の腕、こんなに太かったっけ?ベッドの横に置いてあったスリッパを履いて、恐る恐る立ち上がる。やっぱりおかしい。いつもより目線が高い。まさか、入院中に背が伸びるほど意識不明だった?というか、此処は、この病院は、何処なんだ?

 戸惑ってばかりいると、突然音もなく離れた場所にあった扉が開く。入って来たのは――黒人の女の子だった。外国の人の年齢はよくわからないとは言われるけど、僕とそんなに歳は違わない気がする。少なくとも10代……だと思う。ぼんやりと見つめていると、彼女はにっこりと笑って、流ちょうな日本語で喋り出した。

 

「よかった、目が覚めたのね。みどりたにでく君……でいいのかしら?」

 

 これが、僕のオリジン。この世界での、キャプテン・デクの始まりだった。

 

 

 




オリジンは暫く続く予定です。といっても次回は個性把握テストに戻りますが。
……この形式読みにくいですかね?不評なら同じ世界の話が続く形式にしようかな、とも思ってます。
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