キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー 作:minmin
予告通り戦闘訓練その後です。次回はちょっとどっちのユニバースにするか迷い中です。
「戻るぞ爆豪少年。講評の時間だ」
吐き気をこらえる麗日さんを飯田君と2人で介抱しつつ降りてくると、荒い息で呆然と立ち尽くすかっちゃんにオールマイト先生が声をかけるところだった。
「勝ったにせよ負けたにせよ、振り返ってこそ経験ってのは活きるんだ」
今回は勝てた。けれどそれは、かっちゃんが僕を狙って暴走するという前提の上での作戦が上手くいったからだ。僕の中ではほぼ確実なことだったけれども、訓練としても、ヒーローとしてもあまり良くはないやり方だったかもしれない。同年代としては間違いなくトップクラスの個性と才能を持つかっちゃんが冷静に行動していた場合、僕たちが勝てたという保証はないのだ。
……今僕がかっちゃんに声をかけるのは逆効果だろう。それに、僕はかっちゃんを信じているし――かっちゃんによく似た人を僕は知っているから、あまり心配はしていない。天才であり、それが故の欠点があり、仲間とぶつかり合い。それでも最後まで気高いヒーローだった鉄の男を。
「今戦のベストは緑谷少年だな。次点で飯田少年だ」
モニタールームに帰ってくると早速オールマイト先生の講評が始まった。麗日さんの吐き気は治まったようだけれど、かっちゃんは相変わらず無言のまま俯き気味だ。
「次点は勝った方のお茶子ちゃんじゃないのかしら?」
顎に指を当てつつ疑問の声を上げる……えーと、確か蛙吹さん、だったっけ。
「ふむ、ならば皆に聞いてみようか。麗日少女の減点ポイントが分かる人!!?」
「ハイ、オールマイト先生。当然ですが、中盤の気の緩みですわ」
ハキハキと答える八百万さん。飯田君と同じくいかにもな優等生みたいだ。
「その通り!訓練とはいえ……いや、ヒーローを目指す訓練だからこそ、敵を前にして笑っている余裕などはないからね。核を想定しているならば尚更だ。そういう意味で、それをしっかり意識して動けていた飯田少年が次点となる」
ジーンと感動した様子で僅かに震えている飯田君。嬉しさを堪えきれないみたいだ。
「後は……麗日少女はもう少し自分の意見を出してもよかったな。ただこれに関しては、緑谷少年の策とリーダーシップが良すぎた結果ということもあるが」
「はぁい……」
落ち込んだ様子で返事をする麗日さん。大活躍してくれたし、麗日さんがいなければあんなにスムーズに勝てなかったわけで。僕としては心苦しい。後でもう一度個人的にお礼を言っておこう。そんなことを考えていると、かっちゃんがゆっくりと顔を上げた。
「…………デク」
「なんだい?かっちゃん」
「…………全部、お前の作戦か」
正直、少し意外だった。あのかっちゃんが、自分から皆の前で自らの敗北の話をしようとするなんて。
「……まあ、そうだね。僕がかっちゃんを挑発して引きつけて、その間に麗日さんに上に向かってもらう。最終的に僕が飯田君を妨害して、その隙に核を確保してもらうって基本方針かな。後は――最悪の想定として、飯田君が核を守りきれないと判断した時に、核を攻撃して自爆する可能性は考えてた。その場合は申し訳ないけど、麗日さんに突貫してでも止めてくれってお願いしてたね」
「…………」
黙り込むかっちゃん。すると、今度は横から声が上がった。
「妨害するっつっても、よくあんな方法でやったな。もし核に当たったら終わりだろ?」
聞いてきたのは轟君だった。こっちも正直意外だ。彼は割と寡黙な印象だったから。
「壁の硬さなんかは下の階でも確認できたからね。間取りと障害物の有無がわかれば、核に当てないように飯田君だけを狙うのはわけないさ」
「……ああ。ちょくちょく通信してたのは、麗日がお前に室内の状況を伝えてたからか」
「そういうこと。麗日さんの個性対策を考えると、飯田君が障害物を排除しておく可能性は高いと思ってたからね。まあもし盾の投擲が難しい場合は――同じフロアの別の部屋から、壁を突進でぶち抜いて奇襲するつもりだったよ」
「「「「「はぁっ!!!???」」」」」
クラスの殆どが一斉に叫ぶ。いや、そこまで驚かなくても……皆、個性把握テストの記録知ってるでしょ。
「知ってるけど改めて言われると驚く」「本当に無個性?常時発動増強型とか、異形型とかじゃなくて?」「才能マンっつーか肉体マンだな」「肉体マン……ガチムチ……」
ちょっと待って誰最後の人。というか皆一斉に喋りすぎ……さっきのオールマイト先生の気持ちがちょっとわかった気がする。ただ、そのオールマイト先生が僕を暫く無言で見つめていたのが、妙に気になった。
――放課後。
改めての自己紹介を兼ねてクラスの皆で訓練の反省会をする。ただ全員じゃなかった。切島君、砂藤君、芦戸さん、あす……梅雨ちゃんのように積極的にコミュニケーションを取ってくれる人もいれば、八百万さんのように予定がある人や、轟君のように無言で帰る人もいる。かっちゃんは……皆は引き止めたけど、直ぐに帰るみたいだ。ちょっとだけ抜けると断って後を追う。
「かっちゃん!」
「……なんだよデク。笑いにでもきたか?」
校舎から出た所で声をかける。かっちゃんは立ち止まりはしたけれど、振り返らなかった。
「そんなことはしないよ。ただ、騙してた訳じゃないとは言っておこうと思って」
「あぁ?」
かっちゃんが振り返る。その目は、予想していたよりも静かだった。
「僕の力は本当に個性じゃないけれど――突然、降って湧いたように手に入れたのは確かなんだ」
「……はっ、なんだよそりゃ。ドーピングでもしたってか?」
言葉に詰まる。正にその通りなんだけれど……正直に言うわけにはいかない。
「まぁ、そんなところ。でも――僕はそれを恥じないし、謝りもしないよ、かっちゃん」
言葉が口から勝手に溢れ出す。予め用意していた穏便な説明が吹っ飛んでいく。それでも止まらない、止められない。だって、かっちゃんだから。
「突然手に入れた力でも。受け継いだものでも、借りものでも。全部ひっくるめて、今の僕の力だから。だからこれからも、この力で君に勝つ!だって――だってかっちゃんは、ずっと勝ちたかった、僕の憧れだから!」
拳を前に突き出して宣言する。こんなつもりじゃなかったんだけど、僕たちは、これでよかった。ここから始まるんだ。
「…………上等だ」
かっちゃんが天を仰ぐ。
「こっからだ!!俺は……こっから、ここで一番になってやる!!お前にも!!氷の奴にも、ポニーテールの奴にも負けねえ!!もう二度とだ!!絶対に、負けねえからな!!!」
『――いいか、デク。絶望に打ちひしがれることも、強大な力を前に心折れることもあるかもしれない。それでも、何度でも立ち上がるのがヒーローだ』
……キャプテンの言葉が蘇る。その目に溢れる涙をこぼさないように、天に向かって吠えるかっちゃんの姿は、間違いなくヒーローだった。
そのまま校門を潜っていくかっちゃんを見送る僕に、背後から声が届く。
「見事に立ち直ったなあ……私の出る幕なんてなかった。教師って難しい……」
「……覗き見ですか?趣味が悪いですよ、オールマイト先生」
振り返ると、オールマイト先生が若干息を切らせながら立っていた。
「HAHAHA!!生徒の自主性を重んじるのも教師の仕事ということにしておいてくれたまえ。それに、爆豪少年の様子を見に来たのはそうだが、緑谷少年には人に聞かれたくない内緒話があってね」
内緒話?No.1ヒーローが、イチ生徒に個人的に?……なんだか嫌な予感がする。
「そう身構えなくていい。ちょっとした運動のお誘いさ、緑谷少年。……私と戦ってくれないか?」
これからCoCのセッションの予定が幾つかと、CoCのシナリオ書き始めるのでちょっと間隔空くかもしれません。気長にお待ちくださいませ。(待ってる人はいるのか