キャプテン・デク / ザ・ロンリー・アベンジャー 作:minmin
短めなので勢いで投稿しちゃったけど、今度こそシナリオ書くのでちょっと空くと思います。
目覚めてから暫くは兎に角忙しかった。勿論ワカンダの人たちは僕の健康を気遣ってはくれたけれども、それより優先すべきことは確かにある。目覚めてすぐの事情聴取の結果、個性関連の話でどうやら僕が全く別の世界から来たことが判明したところ、直様各種医療検査が行われた。この場合最優先で調べなくてはならないのが、僕が僕の世界独自の病原菌やその他を体内に保持していなかどうからしい。もしも、保持していたらこちらの世界では抗体が全く存在しない――つまり、甚大な被害が出てしまうとのことだった。結果としては問題なかったのだけど、かなり緊張した。
検疫的な検査が終わってからも僕は相変わらず忙しかった。アレルギー有無や、世界を移動したことによる副作用がないかどうか。僕の命を繋いだ薬――超人血清という薬らしい――や、輸血してくれた血液が特殊だったことによる影響の確認。実を言うと、既に影響は出ていると自覚はしていた。だって明らかに目線が前より高いし、腕も足も太くなってる。因みにそのことをティ・チャラさんに言うと(陛下って呼んだら、まだ王じゃないしやめてくれと言われた。そういうのいいからって)こんな感想が返ってきた。
『なんというか……アンバランスだな。幼い顔に強靭な肉体が付いている』
『幼いって……いや、まだ15歳ですけれど……』
『……すまない、デク。正直、もう少し下だと思っていた』
日本人は外国の人からよく幼く見られるとは聞くけれども。シュリさんもオコエさんも、そんなに驚いた顔しなくても。
難しい諸々の検査が終わると、ようやく身体を動かすことができた。運動できる部屋に移動して、指示に従ってリハビリを開始する。……施設内を移動する際、ワカンダの技術に驚いてあんぐりと口を開けてしまったのは、元の世界の人たちには内緒だ。
シュリさんと、その護衛のウカビさんの指示に従って、走ったり、重いものを持ち上げたり、飛んだり跳ねたりしていく。元の僕からは、というより人間では考えられないような記録がポンポン出ていく。まだ僕自身が自分の身体の使い方に慣れていないのにこれだ。僕のその様子を察したのか、横で見ていたウカビさんがアドバイスをくれると記録は更に伸びていった。
暫くそんな日々が続いて、体もほぼ全快し、僕が自分の身体能力とワカンダの食事に慣れた頃――国王陛下に謁見することになった。
『俺はエリック――いや、よそう。ウンジャダカ、だ。ティ・チャラの従兄弟で、ワカンダの王だ』
聞こえてきたのは、耳に付けた小型翻訳機で変換された日本語の機械音声。運動室で座り込んで休憩していた僕に話しかけてきたのは、ドレッドヘアー?の、どこかティ・チャラさんに似た人だった。って、国王陛下!?慌てて立ち上がって、両腕を胸の前でクロスさせる。初期のマジシャン・オブ・ブラックカオスのポーズ。
「し、失礼しました!緑や、じゃなかった。デク・ミドリヤです!」
慌てる僕がおかしかったのか、少し笑ってウンジャダカさんは手を振った。
「ああ、畏まらなくていいし、イズクでいい。俺は、客人を木偶の坊呼ばわりはしない。日本語もわかるからな」
聞こえてきたのは流暢な日本語だった。戸惑う僕にウンジャダカさんはそのまま続ける。
「俺は以前にアメリカの特殊部隊にいてな。日米同盟の関係で、軍関連には日本人や日系人が結構いる。――白人に差別される者同士、仲良くさせてもらったよ」
「それは――」
言葉が出なかった。肌の色よりも大きな違い、個性というものが発言する「超常」起きるまで、人種差別は深刻な問題だった。中学でも、歴史の授業で学んでいる。
「イズク、お前の事情はウカビから聞いている。全世界の凡そ8割が『個性』を持つ世界。お前のような若い世代はほぼ全員が強弱は別にして『個性』を持つ。そういう世界で、お前は無個性だそうだな」
「は……い」
言葉と共に、苦い記憶が蘇る。無個性と診断された時の記憶。謝る母さん。かっちゃんに、虐められた時の記憶。
「俺は戦った」
「え?」
俯き気味だった顔を上げる。ウンジャダカさんは、真剣な瞳で僕をみつめていた。
「俺は戦った。黒人の社会的地位の向上という、父の悲願を果たす為に。力を蓄え、牙を研ぎ、戦って――ティ・チャラから、王位を勝ち取った」
勝ち取った?疑問に思っていると、ウンジャダカさんの後ろに控えていたウカビさんが解説してくれた。ティ・チャラさんとの王位を賭けた決闘に勝利したのがウンジャダカさんということらしい。ティ・チャラさんが言っていた「まだ王じゃない」というのは、そういうことだったんだろうか。
「俺はワカンダの国是を変え――ワカンダの技術を使って、世界の黒人たちを助けていくつもりだ。ワカンダを、世界を変える為に俺は戦う。……イズク、お前はどうする?」
僕はどうする、って……僕は、僕、は……
「『無個性』のお前が元の世界でどのような扱いを受けていたかは想像がつく。人なんざどんな世界でも同じだ。お前に関しては、俺もティ・チャラと同じく元の世界に戻れるように努力するが――お前は、このままでいいのか?このまま、諦めるのか?」
「……たく、ない……!僕は、ヒーローを、諦めたくない!」
僕が喉の奥から、心から絞り出した言葉を聞いて、ウンジャダカさんはニヤッと笑った。
「なら戦え。鍛え、磨いて――元の世界に戻った時、強くなったお前を見せつけてやれ」
「――はい!」
その後、ウンジャダカさんが組手をしてくれた。ウカビさんもだ。この世界に来て初めて、心の底から笑えた気がした。とてもとても、楽しかった。楽しかったんだ。この時は、これが最後になるんて思いもしなかった。もっと語り合いたいことが沢山あったと今でも後悔している。僕が聞いたウンジャダカさんの最後の言葉は――
「ウカビ!イズクにヴィブラニウムで盾を作ってやってくれ。形状やサイズは……スティーブ・ロジャースのものと同じでいいだろう。キャプテン・イズク。……ちょっと微妙か?」
エリックにとってデクはある意味で仲間に見えたのではなかろうかという話。
あとエンドゲーム1でデク君が言ってた陛下とはエリックのことだったり。
ひょっとしたらブラックパンサー2が入るかも。その時は1に変更します。