原子操作術で、来たるべき時に備えよう。   作:非対称ジメチルヒドラジン

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第10話

玄関の鍵を開け、ドアを引く。

幸いにも鍵穴は潰れていなかった。

 

だが中には惨状が広がっていた。

埃に傷に大型害虫の死骸。

 

まさにこの世の終わりだった。

 

慌てて家から飛び出す。

虫が苦手な人間からすると卒倒レベルだ。あれは。

 

もう我慢ならん、火炎放射器を持ってこよう。

ナパーム剤を用意したい衝動に駆られたが、何とか抑える。

 

そんなことバレたら洒落にならない。

何か他の方法は無いのか...

 

そうだ、毒ガス戦を仕掛けよう。

神経ガスをばら撒くか....

 

 

いや、それはもはやテロだ。

 

いや待てよ。

原子操作、もしかしたら原子の温度もイジれるかも。

もしそれが可能なら強化版火炎放射器が使える。

 

実験だ。

 

 

 

草の残骸に狙いを定め、原子操作。

 

「水分子の温度を1500度に」

 

ボッ。草は音を立てて発火。

一瞬で燃え尽きる。

 

これはイケる!

 

「水分子の温度を15000度に」

 

ジュッ。

 

草は消滅した。素晴らしい。

この理論で家の中の不届き者を殲滅する。

 

脳内議会、賛成多数により可決。

 

文字通り消し去ってくれるわ。

 

「原子操作、15000度の業火を喰らわせろ!」

 

 

範囲は家の中の不届き者全員。

絶対に逃さない。

 

 

ジュッ。

 

瞬間、壁のツタが跡形もなく消え去る。

あれは完全に巻き添えだ。

 

壁のコケも消え去った。

 

これは期待できそうだ。

ドアを開けると、中には何かが焦げた跡があった。

奴だ。国民的害虫。想像するのも恐ろしい。

 

しかしこの物件が売れなかった理由がよく分かった。

蓋を開けてみればただの地獄だったし。

全く、震えが止まらんわい。

 

権利書が出来次第、さっさと改装しよう。

こんな所になんか住みたくないわ。

 

撤収。

 

帰り際、置土産に大量のバルサンを投入した。

多分全滅したと思うが、一応、だ。

気持ちの問題である。

 

後々頭にきたので、庭の草を焼き払っておいた。

土壌も改良。養分を取り除き不毛の大地にした。

 

これには砂漠もビックリ。

少なくとも10年は草が生えないだろう。

 

ふへへ、ざまあみろ。

全ては俺をビビらせた害虫が悪い。

 

土地の権利書を手に入れた時がお前の最後だ。

可及的速やかに解体してやる。

 

 

 

 

悦に浸りながら廃墟を後にする。

 

 

 

 

時刻は昼過ぎ。

そろそろ飯時だ。

 

学食を食いに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

食堂にて大西と出くわした。

 

「早川くん、最近授業出てないよね」

 

「ちょっと忙しくてね..」

 

「早川君が講義を休むなんて珍しいから気になっただけだよ。それより見たかい昨日のニュース」

 

「ニュース?最近あんまり見てないなぁ、何かあったの?」

 

「インフルエンザの患者が確認されたらしいんだ、今年のはかなり症状が重いって」

 

「えーもうその季節か、マスク買わないと」

 

「アルコールをまた買い溜めないといけないや」

 

 

今年も遂にその季節がやって来たか。

例の術さえあれば防げそうだが、

念の為にマスクは買っておこう。

 

まあいいか。

それより、今後の計画を練ろう。

 

 

今後の計画。

まずは家の改装、引っ越しだ。

 

それから金属資源の確保。

この術は素材が無ければ輝かない。

 

何か適当なペーパーカンパニーをでっち上げよう。

 

法人名義なら、大量のレアメタルを買い付けても怪しまれないだろうし。

 

それが無理なら密輸ルートの確保。

潜水艇ぐらいなら作れるだろう。

複雑な構造計算も、大学のシュミレーションソフトをお借りすれば難なくこなせるだろうし。

 

対潜ソナーが配備されてない場所で行動すれば良し。

だが少なくとも潜水艇での越境は危険だ。

対潜哨戒機にバレてしまう。

 

香港の件も2回目はないかも知れない。

爆雷でも投下されたら即死は必至。

 

 

 

「早川くん、何考えてるの?」

 

「いや、何でもないよ」

 

「そう?てっきり悩みがあるのかと」

 

 

 

「あ、そういえば大西さん」

 

「何?」

 

「大西さんの親御さん、確か廃品回収業者だったよね」

 

「ええ、そうだけど、それがどうかしたの?」

 

「リサイクルされる集積回路を買いたいな、ちょっと試してみたいことがあるんだ」

 

「べ、別に良いけどそれでどうするつもり?」

 

「貴金属の精錬実験だよ」

 

「ああ、そういう事ね、なるほど、それなら協力するわ」

 

「そこでだ、ここに20万円ある、これで買えるだけの廃棄cpuを買って来て欲しい、日時は明後日までに、家の住所を教えるから配送を頼みたい」

 

「20万!?わ、分かったわ、パパにお願いしてみる」

 

「よろしく頼むよ」

 

 

 

これである程度の貴金属、特に金、銀、パラジウムを確保できた。術を使えば精製効率は100%と言っても過言では無いので、基板の貴金属を通常よりたっぷりと手に入れる事ができるはず。

 

現金に変えても良し、貴金属として利用するも良し。

無くても良いが、あるのに越した事はない。

 

 

それと同時進行で、大量のスクラップメタルを調達する。

 

地金である必要は全く無い。

全て術にかけて分離するからだ。

 

アイツらにとってはゴミの山かもしれないが、

俺にとっては宝の山だ。

 

ただ鉄鋼は業者から仕入れる。

鉄はその方が安いし効率が良いからだ。

 

 

ターゲットは非鉄金属。

特に高価な類のものを狙う。

 

だが、まずは鉄の買い付けからだ。

 

鋼鉄の相場は1t辺り約8万円。

仲介業者に金を取られる分も考えると大体10万円。

 

そして今必要な鉄鋼の量は大体10t、

多めに見積もって12t。

 

費用は合計120万円ほど。

さっさと商社に電話しよう。

 

それから輸送車両の確保。

実家の車では一度に運べる量などたかが知れてる。

もっとデカイの、もっとパワフルなのが欲しい。

 

車検を通った安い大型車を買おう。

いや、レンタルでもいい。

 

燃費は不問、力さえあればそれで十分。

こちらもさっさと確保しに行こう。

 

 

 

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