原子操作術で、来たるべき時に備えよう。   作:非対称ジメチルヒドラジン

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第11話

防護服を身に纏い、草を掻き分けゴミ山を漁る。

辺りには大量の家電製品が棄てられていた。

かなり古そうだった。

 

 

「原子操作、鉛を分離、引き寄せろ」

 

黒い粉塵が舞い上がり、やがて1つの塊となった。

粉塵の発生源は勿論ゴミ山の中。

 

恐らく鉛バッテリーでも捨ててあったんだろう。

にしてもこの量は凄い。軽く100kgはありそうだ。

 

ここ一帯の鉛は全て回収したか。

次行こう。

 

「原子操作、硫黄原子を回収」

 

粉塵が惹かれ合い、1つの黄色い塊が形作られる。

どうやら鉛バッテリーに使われていた硫酸が更に分離され、硫黄になったみたいだ。こちらも車の荷台に積み込む。

 

「ネオジム、クロム、ニッケルを回収」

 

今度は一気に3つを回収。

いずれも銀白色の重金属。

特にネオジムは近年価格が高騰している。

 

一瞬で3種類の金属塊が出来上がった。

クロム、ニッケル、ネオジムの順に量が採れたので、

こちらも荷台に詰め込む。

 

次。

 

「銅を回収」

 

瞬間。

想像を絶する量の粉塵が吹き上げられた。

恐らく電熱線やケーブルに使われていた分だろう。

 

嵐が収束すると、巨大な銅塊が姿を表した。

 

とても持ち帰れる量ではない。

荷台に詰めるだけ詰め込んだが、もう限界だ。

 

一度置きに帰ろう。いや、その前に。

 

 

「金、パラジウム、プラチナを回収」

 

貴金属類を頂く。

 

だが期待よりその量は少なかった。

合計して大体20グラム程。

くだらない。

 

とにかく、めぼしい物は全て持ち帰る。

どうせお前らは使わんだろうし。

 

銅を全て運び切るには4往復くらい必要だろうな。

 

権利書の発行まであと3日程。

それまでに出来る事は全てやろう。

 

鉄鋼も明日には届くはずだし。改築の日が待ち遠しい。

建材のコンクリート砕石は既に調達済み。

敷地内に野ざらしで放置している。

 

家の改築は真夜中、暗闇に紛れて実行する。

暗視装置でも使わない限りバレないだろう。

 

それから防弾ガラス。

アメリカからの直輸入。大体全部で80万ぐらいしたはず。

大体あと一週間ぐらいで届くはず。続報を待とう。

 

 

 

プルルルッ!プルルルッ!

突然電話が鳴る。

発信元は大西だった。

 

「はい」

 

「早川さんでございましょうか?」

 

中年成人男性の声がした。恐らく大西の父親だ。

 

「はい早川です」

 

「こちら大西廃品回収です、ご要望の品物を用意出来ましたので今からそちらへ伺ってもよろしいでしょうか?」

 

注文は通ったみたいだ。これは好都合。

 

「私の我儘を聞き入れて下さったのですか!?」

 

「我儘なんてそんなとんでもない!良いビジネスチャンスです、こちらもそれにあやからせていただく次第ですよ、それではまた後でお会いしましょう」

 

「ええ、有難うございます、それではまた後で」

 

ツーッ、ツーッ。

電話が切れる。

 

これはラッキー。

取り敢えずマンションに帰ろう。

貴金属が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

マンションの入り口に、スーツを着た中年の男が立っていた。

その近くには見慣れない車と、作業服を着た若者が居た。

 

「初めまして、早川と申します」

 

声を掛ける。

「こちらこそ初めまして、いつも娘がお世話になっております」

 

さっき電話越しに聞いた声だ。

 

「いえいえこちらこそ、今日はよろしくお願いします」

 

「はい、それでは本題に入りましょう、20万円相当の廃棄cpuをお持ちしました、こちらです」

 

ビジネスバッグから電子機器か姿を表す。

 

 

「こちらが廃棄cpuのサンプルになります、大体1kgで7000円辺が相場です、品質はこちらで保証しましょう」

 

cpu、パソコンの心臓部だ。

恐らくこれからリサイクル業者に出す予定だった物を、急遽こちらに回してくれたのだろう。有り難い。

 

「分かりました、相場の価格で買いましょう」

 

「1kg7000円で取引ですね、有難うございます、それではこちらの書類にサインをお願いします」

 

一枚の紙とペンを渡され、契約書にサインをする。

「...はいOKです」

 

「有難うございます、それでは従業員に持ってこさせますので、もう暫くお待ち下さい」

 

 

段ボール箱が車内より運び出され、台車の上に置かれる。

 

台車はエントランスまで運ばれ、エレベーターに載せられ6階まで輸送され、最後には部屋に運び込まれる。

 

「お忙しい中有難うございました」

 

「いえいえこちらこそ、それでは失礼します」

作業員が帰っていく。

 

玄関ドアを締めてから中身を確認する。

 

大体40kgくらい。

段ボールを開けると、中にはびっしりと廃棄cpuが敷き詰められていた。

 

貴金属の匂いがプンプンする。

やった。さあ原子操作。

 

「原子操作、金、銀、パラジウムを分離」

 

集積回路の板が、まるで入浴剤のように散り散りになり、やがてそれぞれ金属塊を形成する。

 

測りで測ると金は400g、銀は1,800g、パラジウムは80g程集まっていた。

 

スクラップの仕入れ値は20万円。

金の相場は100gで大体60万。

 

金だけでも大儲けだ。

元が取れたという次元ではない。

 

だがこれは大切に仕舞っておく。

現金は腐るほどあるのだ。

 

 

 

 

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