原子操作術で、来たるべき時に備えよう。 作:非対称ジメチルヒドラジン
「原子操作、素材を変形、図面通りに曲げて」
パソコンを見ながら術を唱える。
鋼は機関部に変形し、硬質な樹脂は銃の外形を形作る。
フランス製、FA−MAS自動小銃。
フランス陸軍の正式装備でもある。
そして使用する弾薬は、5.56×45mm弾。
この弾は人体などの軟組織に対しておよそ380-500mmの貫通力を保持し、命中時、弾頭下部の環状溝のあたりで割れ、断片は軟組織の内部を傷つけながら散らばる。
当然防弾チョッキなど無力。確実に貫通する。
公安がどんな装備かは知らないが、これなら確実だ。
「原子操作、激発用火薬、発射薬を精製、弾を作れ」
真鍮と鉛の地金が形を変え、薬莢と弾頭を形作る。
小さく複雑な雷管が形作られ、薬莢下部に接合される。
発射薬が薬莢に入り、
更に上から弾頭が押し込まれ、銃弾が出来上がる。
あっという間に80発。
弾薬は弾倉に収まり、弾倉は銃本体に差し込まれる。
射撃実験だ。
地下空間にベニヤ板の的を置き、狙いを付けて発射。
引き金を引くと小気味のいい破裂音と共に穴が空く。
セレクターをフルオートモードに切り替え、再び発射。
連続する破裂音。
弾倉の弾を半分以上吐き出し、銃は止まる。
立ち込める硝煙の匂い。
ベニヤ板は蜂の巣と化していた。
弾は板を容易に貫き、硬い地下の壁に食い込んだ。
威力は十分。
筆舌に尽くし難い程だ。
それから...光学照準器。
アメリカ製の民間向け光学サイトを取り付ける。
8万5000円。
ネット通販で買った。
アメリカ、イオテック社の正規品。
レプリカでは無い。実物だ。
重量感のある照準器。レンズが破損しても全く問題ない。
電源を入れてサイトを覗き込む。
光の屈折を使って正確に追い続ける。
そう、目標を示し続けるのだ。
性能に満足したところで銃に取り付ける。
接続用レールなど無いので、樹脂を溶かして一体化させる。
銃が少しだけ重くなった。
だが問題ない。これで素早い照準が可能になったから。
射撃初心者でも、ある程度は戦えるはずだ。
それから手榴弾。接近戦では必要不可欠な物だ。
「原子操作、RGD−5破片手榴弾を制作」
ソビエト連邦製。
RGD-5手榴弾はライナー付きの破片手榴弾で、爆発するとおよそ350個の破片をばら撒く。爆薬は110gのTNT。
その殺傷能力は凄まじく、爆心地から半径25m以内の人間を殺傷し、3m以内の人間を確実に死亡させる程だ。
第二次世界大戦から現代に至るまで、主に東側諸国で広く使われている。
外殻、ピンと共に鋼鉄製。
激発装置には4秒の遅延信管を使う。
これは非常に危ないので地下での実験は到底できない。
確実に破片を食らって死ぬからだ。
それに、恐らく地上に音が漏れる。
この段階で怪しまれるのはあまり嬉しく無い。
確かに、この手榴弾は確実に作動する。
それこそ工場で作られた物より確実に。
だから今これの実験をする必要は無い。
4個程作って地下に隠匿しておくのが良いだろう。
それから防御装備。
こちらは拳銃弾を防げたらそれで良い。
警察は二次被害を恐れて高貫徹弾を使わないからだ。
ネット通販で防弾チョッキを購入した。お値段4万円。
そしてこのチョッキ、トカレフ拳銃弾にも耐えるとの事。
それならやーさんに襲われても安心だ。
制作した装備品をまとめる。
G18マシンピストルは内ポケットに忍ばせ、予備の弾倉は3本携帯。防弾チョッキと4個の手榴弾を服の内部に組み込み、違和感を抹消した。
しかしFA−MAS自動小銃は携帯しない。
こちらはホームディフェンスでのみ使用する。
隠し持つには大き過ぎるからだ。
流石に無理がある。
装備を身に着けてから鏡を見る。
違和感は無い。後は善良な市民を装うだけだ。
実家に置いた6億円は既に地下に輸送し終えている。
今のところ外に出る用は無いので心配する必要は無さそうだが、射撃訓練だけは欠かさずにやっておきたい。
マシンピストルも安定して当てれるようになりたい所。
手榴弾は近いうちに、ヤクザ事務所にでも投げこもう。
殺傷能力のチェックだ。
全滅させた暁には現金を全てかっぱらってやろう。
ヤクザ相手なら非難はこちらにはむかないだろうし。
そう考えた俺は射撃技術を磨く為、
射撃訓練をする事にした。