原子操作術で、来たるべき時に備えよう。   作:非対称ジメチルヒドラジン

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第14話

市内のとある建物の前に来た。

ここはいわゆるヤクザ事務所。

こわーいおじさんたちが集う場所だ。

 

襲撃前、事前に監視カメラの類のものを全て洗い出した。

近くの店の監視カメラの他に、県警の隠しカメラも特定。

 

それらの死角から侵入し、事務所を襲撃する。

ゴミ共には死んでもらうのだ。

その為にこの3日間、技術を磨いてきた。

 

物陰から、まずは見張りのチンピラを始末。

 

ピュンッ!

 

消音ピストルで頭を撃ち抜く。

チンピラは頭から血を流し倒れる。

 

一発で即死だ。

 

 

異変に気づかれる前にすぐ行動。

ピンを抜き、2階の窓に手榴弾を投げ入れる。

 

パリイッ!

 

鋼鉄の悪魔はガラスを叩き割り、部屋に転がり込む。

 

瞬間。激しい轟音。

 

辺りに、ガラスの破片が降り注ぐ。

1階の窓も粉々に割れた。

 

更に2発の手榴弾を投げ込む。

立て続けに爆発音。

 

更に金品収奪。

 

「原子操作、金地金をすべて回収」

 

割れた窓から金インゴットが吸い出される。

1,000gの棒が4本。日本円換算で2000万相当だ。

 

「原子操作、諭吉を回収」

 

更に札束が吸い出される。

100万の束が23個。合計2300万円だ。

 

へへへ、随分と溜め込んでんじゃねぇか。

 

それらをリュックにしまい、その場から走り去る。

裏路地へと駆け込んだら、覆面を外す。

 

誰にも目撃されていないから正直覆面は必要なかったが、それでも用心するに越したことはない。

 

黒服を脱ぎ、原子操作で分解。粉にしてドブに捨てる。

覆面も同じように。

 

 

後は電車で家まで帰るだけだ。よくやった。

ニュースで死亡人数の告知が出るだろう。

 

果たして何人殺れたか、気になるところだ。

 

金地金も手に入った事だし、これは儲けものだ。

ヤクザ事務所爆破はかなり儲かる。

 

不穏分子も潰れて一石二鳥だ。

 

 

 

 

暫くするとパトカーのサイレン音が聞こえてきた。

ここからかなり遠い。とにかく、さっさと退散だ。

 

裏路地を走り抜け、バスに乗り換える。

中に人はほとんど乗っていなかった。

 

「次は、警察学校前、次は、警察学校前です、お降りの方はお手元のボタンを押してください」

 

車内アナウンスが流れる中、バックを確認。

 

分捕った金地金は合計で4kg。

更に現金2300万円。

 

顔の緩みを何とか抑えながら、俺は降車ボタンを押す。

 

プシューッ。

 

折りたたみドアが開く。

「ご乗車ありがとうございましたー」

 

バス停に降り、走り出す。

警察には十分注意したまえ。

 

何せこんな大金を持ち歩いているんだから。

怪しまれるに違いない。

 

まだ慣れない路地を迷いながら進み、

数分かけて一軒の家を見つけ出す。

 

 

マイホーム。

生還した、完全犯罪だ。

 

証拠の類の物は一切無い。

残したのは銃弾と、3発の炸裂した手榴弾のみ。

 

特定は不可能だ。

 

興奮醒ぬまま、玄関ドアを解錠し家に入る。

尾行も無し。

 

素晴らしい。完全犯罪だ。

まあ後は戦利品の整理と行こう。

 

地下へと潜り、リュックを開ける。

 

ガチャガチャと音を立てながら金地金を取り出す。

 

1,000gの金塊が4枚。

三菱マテリアルの刻印付き。

 

それに現金2300万。

 

こちらは札束置き場に転がしておく。

金塊は資材置き場に。

 

 

ネットニュースを確認。

速報が入っていた。

[名古屋県内で爆破事件、暴力団組員4人死亡、2人重体]

 

やった。やはり手榴弾の殺傷能力は一流だった。

 

思わずガッツポーズ。

 

今は午後の1時。

目的は達成した事だし、飯でも食いに行こうか。

 

高級焼肉店にでも行ってみよう。

市内に良い店があったはず。

 

前では到底手が出ない価格設定だったが、今となっては端金。

ヤクザから掻払った札束を財布に突っ込み、家を出る。

 

 

ビル群までバスで移動する。

確かここの28階だったはず。

 

高級料亭には今まで縁がなかったが、それも今日までだ。

金を十二分に使わせてもらう。

 

 

エレベーターに乗り、28階を指定。

 

ポーン。

一瞬だけ重力が強くなり、エレベーターは急上昇。

 

 

ポーン。

「ドアが開きます」

 

 

目の前に、シックな空間が広がる。

 

如何にもな雰囲気。

客の身なりも作法も上流階級のそれだ。

見晴らしが良いのもポイントが高い。

 

従業員に席に通される。

 

外の見える席に着席。

 

[当店は黒毛和牛のA5ランクの素材のみを使用。

上品で深みがある繊細さにこだわっております。]

 

お品書きにはそう書かれていた。

 

 

 

「ご注文はお決まりでしょうか」

 

「それでは、この"厳選赤身と厚切りステーキ"をお願いします」

 

「かしこまりました、お飲み物はどうされますか?」

 

「緑茶をお願いします」

 

「かしこまりました、少々お待ち下さい」

 

 

 

合計12,500円だ。

目玉が飛び出るほどの値段。

それはそれは美味しい物が食えるのだろう。

 

 

 

プルルルッ!プルルルッ!

 

電話だ。発信者は不明。

 

「はいはい」

 

「早川か?俺だよ、高校で同じ組の」

 

「誰だ?」

 

「野沢だよ、ほら思い出してくれよ、よく遊んだよな」

 

「あー野沢ね、思い出したわ」

 

よく分からんやつから電話が掛かってきた。

こう言うのは大体相場が決まっている。

 

「それでさ、分け入って願いがあるんだけど」

 

「ちょっと金貸してくんね?実は昨日FXで大負けしちゃってさ」

 

普通の人間ならここで電話を切るだろう。

だが俺は違う。その負けた額を聞いてメシウマするのだ。

 

「ふーん、それで幾ら負けたの?」

 

満面の笑みで額を聞く。

人の不幸は蜜の味。とても美味しい話だ。

聞かない訳には行かない。

 

「800万だよ、高額レバレッジかけてたらロスカされちゃってさ...」

 

「ふーん、俺には払えない額だわ、じゃあの」

 

「ちょっと待ってくれよ!頼む!半分!半分でも良いから貸してくれ!!必ず返すから!!」

 

 

 

正直800万くらいなら一瞬で出せるが、俺はそんなに甘くない。他人にただでくれてやる金など無いのだ。

 

1円たりとも渡さない。貧乏根性が炸裂する。

 

「で?誓約書でも書くの?」

更に揺さぶる。

 

 

「は?俺を信じてないのかよ!」

 

ほら来た、踏み倒す気満々だ。

だがもう少し遊ばせてもらう。

 

 

 

「書けないならそれまでだ、俺だって貧乏だし」

 

「お前の親にでも金を借りてくれよ、なあ野沢」

 

 

ツーッ。ツーッ。ツーッ。

 

電話が切れた。

チェーっ。面白くねぇなぁ。

 

もっと遊び甲斐があったのに。

もっと足掻いて楽しませてほしかった。

 

非常に残念だ。

 

 

そんなことをしている内に肉が届いた。

焼肉定食。白御飯付き。

 

 

野沢が800万の借金ね、メモメモ。

飯の前に楽しみができてよかった。

これは飯が進む。

 

 

「ヒッヒッヒッ!」

 

悪魔の様な笑い声を必死に抑えて俺は、

出された肉を焼くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たて続けに電話。

今度は市原からだ。

 

「おー市原どうした?」

 

「おいやべぇよ、日本円の暴落が起きてるぞ」

 

電話越しにも興奮が伝わってくる。

 

「日本円が?一体何があったんだ?」

 

「分からない、だけど今円の売り注文が殺到してる」

 

「為替取引か?」

 

「そうだよ、笑いが止まらねぇよ」

 

「600,00ドル買注文した瞬間にドルの価値が爆上がりしたんだ、まだ暴騰が止まらない、大儲けだ、一生遊んで暮らせるぞ」

 

「いくら儲かったんだ?」

 

「4,000,000ドル以上だよ、まだ増え続けてる、お前にもちょっと分けてやろうか?」

 

「いや、俺はいいわ、俺も十分儲かった」

 

「お前も為替やってたのか?」

 

「いや、マカオでたまたま大儲けしてな」

 

「マジか!ってヤバイヤバイ!また跳ね上がった!ちょっと切るわ!」

 

ツーッ。ツーッ。

 

為替市場はいま大波に飲まれているらしい。

日本円暴落、あまり嬉しいニュースでは無いな。

 

だがハイパーインフレが起こらない限りは大丈夫。

なんたってこっちには6億円があるのだ。

日銀もそこらへんは頑張ってくれるだろう。

 

そう楽観的に考え、俺は支払いを済ませる。

 

「またのお越しをお待ちしております」

 

 

 

金は余ってるし、ついでに衣服も買うことにしよう。

下階のデパートにでも寄って行こうか。

 

 

 

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