原子操作術で、来たるべき時に備えよう。   作:非対称ジメチルヒドラジン

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第3話

あれから一週間経った。

ここはマカオ。

カジノが盛んな中国の特別行政区だ。

 

 

俺はあれから軍資金を用意するために奔走した。

だが最終的には50万円を用意した。

これで一発ドカンとかける。

 

そして俺は"ルーレット"に目をつけた。

ボールを操作すれば出る目を自由に操れるからだ。

 

ルールに則れば最高倍率は36倍、ここに大金を一点掛けすれば、文字通り元手を36倍に増やすことができる。単純計算で行くと、50万✕36=1800万だ。

これなら楽して億万長者になれる。

 

意を決して、俺はカジノ店に足を踏み入れる。

 

 

予想通り中は喧騒に包まれていた。

英語や中国語が飛び交っていてとても騒がしい。

だがかえって好都合。絶好のイカサマ日和だ。

 

 

 

 

ディーラーがベルを鳴らす。

各人が自由にチップをテーブルの上に配置していく。

ディーラーがルーレット台を回し、

台にボールが投入される。

 

そう、ここはルーレットの会場。

マカオの有名財閥経営のカジノホテルだ。

ここの最低ベッド数は日本円換算で約10,000円。

小手調べに、10,000円分のチップを購入した。

 

ディーラーの掛け声とともにベットタイムが始まる。

 

俺は18のマスにチップを掛けた。

 

 

 

チリンチリン♪

 

高速でルーレットが回転し、ボールが投入される。

 

ボールの軌道がふらつき始めたら、狙い目のマスに重なった瞬間強い力をかけ静止させる。

  

カランカランカラン♪

大当たりを知らせるベルが鳴る。

 

あっという間に36万円分の勝ち。

 

だがこれからが本番だ。

50万円相当のカジノチップを購入し、勝負続行。

 

偽札チェックを受けてから、大量のチップを受け取る。

 

次に俺が賭けたのは16番。

当たれば36倍、はずれれば全て没収。

 

50万円がかかった大勝負が始まった。

 

 

 

ディーラーがルーレットを回す。

 

 

直ぐに、ボールは16番に引き寄せられ、そのまま落下。

 

あたりから猛烈な歓声が上がる。

約1800万円分の勝利。

 

あっという間だった。

30秒もしない間に1800万を獲得したのだ。

かなりの大金なので金銭感覚が狂いそうだ。

 

だがこんな楽な稼ぎ方が他にあるだろうか?

 

このままもう一発行きたいところだが、

しかし俺はかなり怪しまれている。

 

続きは他の店でやろう。

 

そう考えた俺は、

札束をバックに詰め込み、カジノを後にする。

 

 

 

 

 

 

2軒目の犠牲者となるのは、近くの大型カジノ店だ。

さっきの店から歩いて10分くらいの場所にある。

繁盛している所悪いが、死んでもらおう。

 

 

札束でパンパンに膨れたバッグを背負い、全力で走る。

 

さっきから嫌な視線が向けられている。

スリや強盗にだけは会いたくない。

 

そして俺は逃げるようにその店に駆け込んだ。

 

 

 

 

陽気な音楽。

 

雰囲気は富裕層向けだった。

さっきまでの嫌な視線もピタリと止んだ。

 

ここなら大金をかけても怪しまれないだろう。

バックの中の札束を全て取り出し、チップに変換する。

 

1800万円相当の香港ドル紙幣。

それだけの価値にふさわしいチップが渡される。

 

300万円相当のチップが6枚。

紫の高級感溢れる高額チップだ。

 

チップを受け取り、一度深呼吸してからルーレット会場へと足を進める。

 

途中、事の重大さに怯え、緊張で手が震える。

 

だが焦るな。呼吸を整えて。必ずやれる筈だ。

 

この能力を信じろ。そうだ。全てを託せ。

 

 

 

 

 

ディーラーの掛け声と共に、

ベットタイムがスタートする。

 

陽気な音楽が更に焦りを加速させる。

 

手の震えが止まらない。

駄目だ、一回パスだ。一度落ち着こう。

 

手に握られたチップを離さない。

これ一つで300万だ。全部で1800万。

 

だが焦るな。全てうまく行く。

 

チリンチリン♪

 

ルーレットが回転し、ボールは31の穴に落下。

ボールの挙動も前のとほとんど変わらない。

 

「ベットタイムでーす!」

 

掛け声と共に、8番のマスにチップを積み上げる。

驚く周囲。馬鹿馬鹿しいと言う奴もいた。

 

確かにそれはそうだ。

俺がかけたのは最も確率が低いマス。

当選確率は36分の1。

 

確かに、普通なら馬鹿馬鹿しいと思うだろう。

普通なら金をドブに捨てているようなものだ。

 

だが俺は違う。そう、俺にはこの能力があるのだ。

 

チリンチリン♪

 

ルーレットが回る。狙うは8番ホールのみだ。

十分減速したボールが8番の上に来た瞬間、

力をかけ、金を騙し取る。

 

 

一周、また一周とボールが回転する。

もう止まる。そう確信した俺はボールに力を加えた。

 

下向きのモーメント。ボールの軌道を曲げる。

 

 

 

コトッ。

 

ボールは落下した。

 

8番ホールに。

 

 

 

 

 

「ヒューーッ!」「ブラボー!」

 

 

チリンチリンチリンチリン♪

 

辺りに歓声が巻き上がる。

ディーラーも客もみんな騒ぎ出す。

大当たりだ。ここ一番の大当たりだ。

 

1800万の36倍、6億4800万の大当たりだ。

 

張り詰めた緊張が、一気に緩んだ。

 

掛けに負けた人間も、負けを忘れて大騒ぎ。

 

ハイタッチに胴上げ。辺りは混沌と化した。

 

 

 

 

 

 

裏方から、巨大な"塊"が運ばれてくる。

台車に乗ったそれは、よく見ると一つ一つが札束だった。

 

意識が遠くなるような量だ。

 

客がパシャパシャと写真を撮っている。

フラッシュで目がチカチカする。

 

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