次々と関門を突破した生徒たちがスタジアムに流れ込んでくる。だんだんと集まってきた生徒に紛れて変身を解くき、ふぅと大きく息をつくと同時に、自分が4位という喜びを噛みしめる。
本当は、1位を取れなかったことを悔しがるべきなのかもしれない。でも今の私の気持ちは、自分の努力を形にすることができた。そして何より、プリキュアの力をちゃんと"この世界"の人たちにアピールすることができたという喜びで溢れている。
「大丈夫、私はプリキュアになれる。」
両の手をギュッと握りしめて呟く。
希望のプリキュア『キュアドリーム』に、
情熱のプリキュア『キュアルージュ』に、
弾けるプリキュア『キュアレモネード』に、
安らぎのプリキュア『キュアミント』に、
知性のプリキュア『キュアアクア』に、
"なる"ことが、できる。
_______________
しっかりと休憩して体力が十分に回復したころ、最後の生徒がスタジアムにたどり着き、第一種目が終了した。
「1年ステージ、第一種目もようやく終了ね。それじゃあ結果を御覧なさい!」
ステージに立ったミッドナイト先生が腕を広げると、順位とともにそれぞれの顔が画面に映る。いつの間に撮ったのか、私の顔も名前もしっかりとキュアレモネードで登録されていた。予選通過は、上位43名。A組は全員通過できたようだ。
「それじゃあ、第2種目の発表!」
ムチを振るった先生が第二種目を発表する。第二種目は、チーム対抗の騎馬戦。生徒たちは2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ることができるが、なんと第一種目の結果ごとにポイントが振り分けられるようだ。
ポイントは、43位の5ポイントから順位が上がるごとに5ずつ加点されていく。私は4位だから200ポイントだ。
「そして……1位に与えられるポイントは_____1000万!!」
1000万!?緑谷君からハチマキを奪うことができれば、絶対に次のステージに進めるということだ。みんなの視線がバッと緑谷君に集中する。例えそうだとしても、ギラギラした目が怖いよ……みんな。
この騎馬戦は、それぞれ違うポイントを持った人たちがチームを組み、15分間お互いのポイントを奪い合うというルールらしい。もちろん"個性"の使用も可能だ。さらに、普通の騎馬戦と違ってハチマキをとられても、また騎馬が崩れても10秒以内に騎馬を組み直すことができれば、何度でも参加し直すことができる。そして、最終種目に進出できるのは上位の4チームのみ!
「それじゃ、これよりチーム決めアンド作戦会議時間を設けるわ。時間は同じく15分!交渉タイムスタートよ!」
「ねえ!笑夢っち、一緒に組もうよ!」
「転身!俺と組もうぜ!」
交渉タイムが始まった途端、A組のみんなに囲まれる。何でこんなに大人気なのか分からず驚いていると、私の顔を見た響香ちゃんが呆れた顔で教えてくれる。
「アンタ変身すれば大体どんな"個性"とも相性いいし、何より4位じゃん。何驚いた顔してんの」
「あー、ありがとう。んー……でもごめんね!私、組みたい人がいるの!」
みんなの囲いを抜け出して、周りの様子を観察するように1人離れたところにいる男の子のところに向かう。ルール説明を聞いていたときからずっと、彼を一番最初に誘おうと決めていたのだ。
「あの!私と一緒のチームになりませんか!?」
「え?……何で」
私の言葉に困惑した表情を浮かべている彼は、二週間前にA組の教室の前で、自分が体育祭で活躍してヒーロー科に入ってみせると宣戦布告をした、紫色の髪の毛をした人だ。
「わ、私ね、体育祭のことですっごい悩んでたんだけどね。チャンスを掴もうとしてる貴方の言葉を聞いて、私も自分の夢のためにちゃんと頑張らないとって思えたの!」
「…………」
「私、貴方のことすっごいかっこいいと思った!それで、一緒に頑張りたいと思ったの。こんな理由じゃダメかな……」
「いや、別に……いいけど」
「あ、ありがとう!じゃあさっそく、一緒のチームになってくれる人を探さないと!」
かなり一方的な理由だったけれど、彼は私とチームを組んでくれた。彼の名前は
「ああ、それなら大丈夫」
心操君はにやりと片方の口角を上げて笑うと、ちょっと待っててと言って、みんなの集まっている方に歩いて行ってしまった。様子を見ていると、どうやら尾白君に声をかけているようだ。たしかに尾白君は体の使い方が上手だから、今回ような動作が限定される戦いだと、すごく頼りになると思う。
「尾白君……?」
心操君が尾白君ともう1人、多分B組の人を後ろに連れて戻って来てくれたけれど、2人の様子がおかしい。目が虚で、私が声をかけても反応がない。どうしたんだろうと思い、2人の目の前で手をヒラヒラと動かしていると、心操君に声をかけられる。
「ああ、あんまり強い刺激は与えないでね。"個性"が解けちゃうから」
「心操君の"個性"?」
「そう、俺の"個性"は"洗脳"。俺の言葉に反応したやつを洗脳して、自由に操ることができる」
「へー!すごい"個性"だねぇ。でも、尾白君なら協力してってお願いすれば、一緒のチームになってくれると思うよ?」
心操君の"個性"は人を自由に操ることができる"洗脳"。しかもトリガーは声だけなんて、本当にすごい"個性"だ。つまり心操君は、どんなに暴れている人でも声をかけるだけで、怪我をさせることなく落ち着かせることができるということだ。
「……こっちの方が確実だろ」
「せっかくの体育祭だし、みんなで協力できる方がいいと思うよ。私がお願いしてみるよ!」
同じチームの人とは、気持ちを1つにして一緒に頑張りたいと思う。私の提案を聞いて、心操君はなにか考え込んでいるようだ。
「__そういえば、転身さんの"個性"、聞いてなかったな」
「あ!私のこ___
まるで眠りにつくように、意識が飛んだ。
_______________
ドン
「え……な、何!?」
夢の中から目覚めるように、突然意識が覚醒する。でも、今がどういう状況なのか全くわからない。
「ああ、起きたんだ。結構早かったな、まだ騎馬戦始まってすぐだよ」
「えぇ?あ、心操君!?そうだよ騎馬戦!__始まってる?」
私の下で騎馬を組んでいる心操君が、大混乱な私に状況を説明してくれる。私は心操君の"個性"によって"洗脳"されていたらしい。今は騎馬戦が始まって4分くらいで、私はハチマキが奪われた衝撃で目が覚めたようだ。
「状況はわかったけど、なんで私が騎手なの?」
「君の"個性"がわからなかったから」
本当は心操君が騎手をするつもりだったらしい。でも、騎馬を組もうとしたら身長差のせいで不安定になってしまうし、私を前騎馬にしても吹き飛ばされそうだし、といろいろな問題が出てきてしまったようだ。
そこで心操君は、それなら"洗脳"が解けるのを承知で私を騎手にして、働いてもらおうと思ったのだそう。私の"個性"聞く前に"洗脳"したの心操君じゃない!
ちなみに想定外の騎手交代だったため、チーム名は心操君の名前で登録されていた。何も知らない間に名前バレしなくて本当に良かった!
「もう!私にだって作戦があったんだからね!__よし、ハチマキ取り返しに行こう!ちょっとごめんね」
「え?ちょっと……」
"誰にも気付かれなくなるマント"を生み出して騎馬を覆うようにばさりと被る。ここまでたくさんの人の目があると効果はあまり続かなそうだけど、このマントをかぶっていれば、ぶつかったり触られたりしない限り、私たちに気づくことはできなくなる。
「プリキュア!メタモルフォーゼ!」
「安らぎの緑の大地、キュアミント!」
1000ポイントくらい持つことができれば最終種目に進めるはずだ。そのために、まずはハチマキを取り返さなくちゃ。私たちのハチマキを持って行ったのは、B組の拳道チームらしい。
「行こう!」
「ちょっと待て!ポイントを溜め込んだら狙われる。俺の"個性"があれば、最後に油断したチームからハチマキを奪うことができる。それまで待つべきだ!」
「大丈夫!キュアミントはシールドを張ることができるから、ポイントを手に入れたら守りに徹するつもりよ!」
ステージの端っこでマントに隠れながら心操君と作戦会議を始める。もう!本当ならこういうのはスタート前にしておくべきなのに!もうすぐ後半戦入っちゃうよ。
「……そのシールドは本当に大丈夫なのか?」
「うん!それに心操君も頑張ってくれるんでしょ?一緒なら大丈夫だよ!」
「……わかったよ。__進め」
心操君にキュアミントの力と私の作戦を伝えると、しばらく黙った後、大きなため息をついて賛成してくれた。心操君が指示を出すと騎馬が動き出す。
「ねぇ、やっぱり2人の"洗脳"も解いてあげたほうがいいと思う……。2人ともきっと協力してくれるよ」
「人とぶつかれば解けるし、突っ込むなら関係ねぇだろ」
「でも……」
「俺は、ここを勝ち進んでヒーロー科に行く。そのためなら、どんな手だって使ってやる。俺は……仲良しごっこをするつもりはない」
今も"洗脳"されている尾白君たちを気にしていると、心操君に強い声で返される。彼が"個性"を解くつもりは全くないようだった。もともと、私が彼の夢を応援したいと、一緒にチームを組んでほしいとお願いしたんだ。彼の覚悟を聞いて、私はこれ以上彼のやり方を否定することができなかった。
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緑谷君のハチマキを奪おうとしている、オレンジ色の髪の女の子の騎馬に追いつく。マントをかぶっている私たちには気づいていないようだ。私の作戦なんだから、ちゃんと集中しないと。
「__まっすぐ走ってくれたら、すれ違いざまにまとめてハチマキをもらうね。すぐにマントの効果はなくなるから、近づかれる前に全力で人のいない方に逃げてね」
「ああ。__全力で走れ」
《おおっと!こいつらどこに隠れてたんだ!?いきなり現れたと思ったら、拳道チームのハチマキをまとめてかっさらいやがった……心操チーム!!》
《そしてェ!また服装が変わって目立ちまくってんな!緑のこいつは"キュアミント"だぁ!》
ハチマキを取って急いで離れる。彼女たちは私たちを追いかけようとしていたみたいだけど、上鳴君の無差別な電撃に当てられ、さらに轟君に足元を凍らされて身動きが取れなくなってしまった。勝負とはいえ、踏んだり蹴ったりな彼女たちに罪悪感が……ごめんね……。
「!__心操君!」
「ッチ」
「おうおうおう!騙し討ちなんて、やってくれるじゃねェか!!」
ステージの端の方に逃げてきた私たちを待ち構えていたのは、B組の鉄哲チームだった。とくに騎手の男の子は、私たちのさっきの行動に怒っているようで、拳を握りしめて戦う気満々のようだ。幸い、他に私たちを狙って近づいてくる騎馬は見当たらない。
「心操君、後はよろしくね!
大地を揺るがす乙女の怒り、受けてみなさい!
___プリキュア!ミントプロテクション!」
私たちの騎馬をすっぽりと包むようにシールドを張る。本当はもう少しハチマキを集めてから守りに入るつもりだったけれど、しょうがない。ぶつかってくる騎馬をシールドで受け止めた。
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「え?……なに?」
「ううー……あ!尾白君、あなたも!よかった、気がついたんだね……ぐっ……」
「ええ?どういう状況なんだこれ?」
シールドに与えられる衝撃によって、2人とも"洗脳"が解けたようだ。混乱したようにキョロキョロと周りを見回している。いきなり時間が飛んでびっくりするよね、その気持ちすっごいわかる。混乱している2人に状況を説明しながら、歯を食いしばって相手の攻撃に耐える。
鉄哲チームはなんとかシールドを壊そうと、もう5分以上攻撃を続けている。女の子の髪が巻きつき、ぎゅうぎゅうと締め付けられたり、ガンガンと拳で殴られたりしてるけど、キュアミントのシールドは絶対に壊れないんだから!時間は、もうすぐ3分を切る。
「……あんたら本当にヒーロー科?全然勝負にならねぇじゃん」
「ぁあ"!?___」
次に進むためにはポイントが足りない。でも、下手に動くとハチマキを取られてしまう。どうするべきなのか迷っていると、ずっと黙っていた心操君が、鉄哲チームの人たちに向かって挑発するように話しかけた。騎手の人が目を釣り上げて大きな声で反応するが、すぐに視線が虚になり、動きを止めてしまう。心操君の"個性"が発動したのだ。
《そろそろ時間だぁ!カウントダウンスタート!》
「今だ!」
「ぁぁあああ!!」
心操君の合図で、巻きついている茨を弾き飛ばすようにシールドを消し、動きが止まった騎手の人がおでこに巻いているハチマキを取った瞬間___
《タイムア〜〜ップ!!第二種目・騎馬戦終了!》
「転身、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ……ありがとう尾白君。大丈夫……」
制限時間の15分が経過し、第二種目が終了した。騎馬から降ろしてもらい、息を整えていると尾白君が背中をさすってくれる。シールドを保ち続けるだけならばともかく、攻撃を受け続けるという状況に思った以上の体力を消耗してしまったようだ。
《んじゃあ早速!上位4チームを見てみよか!
1位、轟チーム
2位、心操チーム
3位、爆豪チーム
4位、緑谷チーム
以上の4組が最終種目へ進出だァ!!》
私たちは無事に最終種目に進めたようだ。大きな拍手と歓声に包まれる。でも、笑顔で顔を上げることができない。結局私は、2人の"洗脳"が自然と解けるまで何もできなかった。心操君の自分の力を示して、体育祭を勝ち進むという本気の覚悟を知ってしまったから。でも、尾白君たちだって同じくらい本気で取り組んでいたんだ。
戸惑った顔をしている2人の目を見ることができず俯く私に、心操君は肩を叩いてご苦労様と声をかけると、そのままスタジアムを出て行ってしまった。
転身笑夢
第二種目「騎馬戦」結果:2位
騎馬戦は"洗脳"で大混乱!?みんなで協力はできないのかな……。心操君の夢を応援したいけど、これで本当に良かったの?キュアドリームなら、どんな選択をしたんだろう……。
騎馬戦終了です。
うーん、やっぱりキャラクターを動かすのは難しいです。
笑夢ちゃんは心操チームに参加してもらったので、青山君は峰田チームにいたということで、、