大いなる希望の力で最高のヒーローに   作:ゆづぽんず

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ドタバタなお昼休みと2人の覚悟

 

《それじゃ1時間ほど昼休憩はさんでから午後の部だぜ!イレイザーヘッド飯行こうぜ》

 

《寝る》

 

プレゼントマイク先生の放送でお昼休憩が伝えられると、スタジアムにいた人たちが一斉に移動を始める。しかし、周りの明るい雰囲気とは正反対の気まずい空気が、私たちの間には流れ続けている。

 

 

「なあ、さっきの騎馬戦で何があったのか教えてくれないか?」

 

「う、うん!もちろんだよ。ご飯食べながらでいいかな」

 

「うん。まだ自己紹介ができていなかったね。僕はB組の庄田二連撃(しょうだ にれんげき)だよ」

 

尾白君の提案から3人でお昼の休憩を一緒に取ることが決まり、自己紹介をしながら食堂に向かう。

私たちお互いの名前も知らないままチームを組んでいたんだ。改めて、心操君の"個性"のすごさを実感する。

 

「転身さん、そんなに食べるのかい!?」

 

「うん、今日はいっぱい頑張ったからお腹空いちゃって」

 

「だとしても4品は頼みすぎじゃないか!?」

 

 

 

「じゃあ、俺たちの記憶が曖昧なのはあいつの"個性"のせいなのか……」

 

3人で端っこの席に座ってしばらく静かにご飯を食べた後、さっきの騎馬戦で何があったのかを一通り説明する。とはいっても私も最初の方は全然記憶がないから、途中からになってしまうけれど。

 

心操君の"個性"を明言するのはやめておいた。だけど2人とも、なんとなく想像はついているみたい。

 

「うん。でも、私はそのことを分かってたのに何もしなかった。心操君にも、あなた達にも……」

 

ごめんなさいと頭を下げる私に、2人は悔しいけれど怒ってはいないと言ってくれる。2人とも、とても優しい人だ。だからこそ、彼らにこんな思いをさせてしまった自分の行動が許せなかった。

 

 

「俺、最終種目は辞退しようと思う」

 

「え!?どうして!!」

 

尾白君の言葉が信じられなくて、思わずテーブルに手をついて席を立ち上がった。バンッと大きな音が響き、周りの人の視線が私たちの座るテーブルに集まる。2人は慌てて私を座らせると、苦しそうな声で理由を話し始める。

 

「たとえあいつの"個性"にかかっていなくても、あのとき何かできたとは思えないんだ。正気に戻った後も、転身さんが頑張ってるのに……俺は何もできなかった」

 

尾白君がテーブルの上で握りしめている拳が震えている。庄田君も黙ったまま俯いてしまった。

 

「友達のために頑張るのは当たり前だよ!そんなこと言ったら仲間なのに何もできなかった私こそ……ヒーローに相応しくない」

 

「それは違うよ。僕たちはお互いを蹴落としてでも、自分をアピールしなければならない。これは、これから僕たちがヒーローとして活躍していくために必要なことだ」

 

「俺のプライドの話だよ。何もしていないのに、あの場には立てない」

 

「そんな……」

 

尾白君はもう自分の気持ちを固めてしまった。そんなことないのに、彼の実力も努力も一緒に頑張ってきた私がちゃんと知っているのに……。庄田君だって、今日のためにいっぱい頑張ってきたはずなのに……2人とも諦めてしまうの?

 

「ずるいとは思うけど、転身さんには最終種目に進んでほしい。君はちゃんと頑張ってたんだから」

 

 

尾白君も庄田も悔しい思いを隠しきれていない、苦しい笑顔を浮かべている。私は、そんな顔見たくないのに……2人にはもっと、夢や希望でキラキラと輝く笑顔でいてほしいのに……

 

 

 

「そんなの……そんなのおかしい!

バンッ

 

「わぁああ!転身さん、抑えて」

 

「あぁあ、視線が……」

 

再びテーブルに強く手をついて立ち上がる。私を座らせようと肩を抑えてくる2人の手を振りほどき、ギュッと掴む。ちゃんと話を聞いてよ!私、怒ってるんだから!

 

「だって、2人とも頑張ってくれたもの!ハチマキを取り返すことができたのは、あなた達が本気で走ってくれたから!攻撃に耐え続けることができたのは、2人がしっかり私を支えてくれたからよ!何にもしてないなんて、そんなことない!あなた達が覚えていなくても、私が覚えているもの!」

 

驚いた顔をしている2人を交互に見ながら私の気持ちを叫ぶ。私はちゃんと覚えている。全力で走った後の2人が息を切らせていたのも、攻撃にふらつく私が倒れないように、ずっと体に力を込めて支えてくれていたのも、覚えているんだ。

 

「私たちが最終種目に進めたのは、一緒に頑張ったからよ!心操君もそう!みんなで力を合わせて頑張ったから、勝つことができたの!」

 

ぼろぼろと涙が溢れる目で2人を睨みつける。

 

みんなで、ヒーローになるんだから!

 

 

 

__いたいっ!」

 

 

 

「食堂で騒ぐな」

 

「んも〜相澤君、邪魔しないの!せっかくいいところだったのに〜!」

 

突然後ろからゴンと何かが頭に当たる。びっくりして振り向くと、相澤先生が私のすぐ後ろにくたびれた様子で立っていた。私が叫んでいるのを見た人が、先生たちを呼んだらしい。

 

今の衝撃は、相澤先生が包帯でぐるぐる巻きになっている腕で私を小突いたからだった。マスク(仮面)に気をつけつつ、涙でべしょべしょになった顔を急いで拭う。いつの間にか、食堂中の視線が私たちに集まっていた。

 

「とりあえず、場所移動するからついて来い」

 

「いいわね〜これぞ青春!」

 

「へいへい、オーディエンスは散った散った!しっかり飯食えよー」

 

 

_______________

 

 

とりあえず人がいない場所に、と連れてこられたのは先生たちが実況を行なっていた放送室だった。ここは大きな窓からスタジアム一面を見下ろすことができる特等席だ。外の景色に釘付けになっていると相澤先生に名前を呼ばれ、慌てて視線を前に戻す。ちゃんと話は聞いてますよ!

 

頭を抱える相澤先生の肩を、プレゼントマイク先生が労うように叩いている。

 

「で、何があった」

 

 

3人で心操君のこと、騎馬戦のこと、食堂でのことを順番に話す。

 

食堂の話をし始めた途端、ミッドナイト先生のテンションがみるみる上がり、最後の方では感激してハアハアと大興奮していた。先生は、前に生徒たちの青春が大好きって言っていたけど……これって青春なの?

 

「はぁ……で、お前たちはどうしたいんだ?」

 

「お、俺は……もちろん出場したいです。でも……皆が力を出し合って争ってきた場なのに……こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて、俺には出来ません」

 

「僕もです。実力如何以前に……何もしていない者が上がるのは、体育祭の趣旨に相反すると思います」

 

「そんな!そんなことないです先生!2人とも頑張ってくれました。次に進むことができたのは、2人が居てくれたからです!」

 

相澤先生の質問に、"出場はしたいけれどする資格がない"と答える2人。私はそんな2人の言葉を遮るように間に入り、先生の捕縛布をぐいぐい引っ張って2人の頑張りを主張する。

 

その間プレゼントマイク先生は私と相澤先生のやりとりを見て爆笑し、ミッドナイト先生は恍惚とした様子でヨダレを垂らしていた。

 

 

「わかったから転身は落ち着け、引っ張るな。ミッドナイト先生、一年ステージの采配はあなたでしょう。どうするんです?」

 

しがみつく私をグイッと遠ざけた相澤先生は、笑い続けているプレゼントマイク先生に鋭い蹴りを一発入れた後、完全に自分の世界に入ってしまったミッドナイト先生を呼び戻す。包帯で全然見えないけれど、多分先生は今最高に疲れ切った顔をしている。

 

 

「そういう青臭い話はサァ……好み!でも、女の子泣かせたのはダメね!つまり、あんた達はちゃんと実力で本戦に進みたいんでしょ!いいわ、あんた達には他よりも高い壁を用意してあげる!」

 

緊張する私たちに、ビシッとムチを突きつけたミッドナイト先生は最高に輝いた顔をしていた。

 

 

_______________

 

 

「あ!笑夢ちゃんよかった!ほら、急いで着替えないと!」

 

すぐに午後の部が始まるから戻るように言われ、急いで控え室に向かうと、なぜかチアガール姿のみんなに囲まれる。

 

「ええ!?なんでみんな、そんな恰好してるの?」

 

「峰田さんと上鳴さんが、相澤先生から午後は全員この服装で応援合戦するように伝言をいただいたと」

 

「うーん?さっきまで一緒にいたけど、そんなこと言われなかったよ?」

 

頭を傾げつつも百ちゃんから渡されたチアガールの衣装に着替える。疲れてたみたいだし、言い忘れちゃったのかな……?1人1人にぴったりなサイズの衣装が用意されているし……。

 

「笑夢っち、さっきの食堂のこと……大丈夫?」

 

着替えていると、三奈ちゃんが小さい声で大丈夫?と言葉をかけてくれる。食堂で泣いてしまったことでみんなに心配をかけてしまったようだ。あれは感情が溢れちゃっただけで、ちゃんと話しもできたしもう大丈夫だと伝えると、それなら良かったと安心してくれた。

 

やっぱり、みんなでヒーローになりたいなぁ

 

 

 

 

《さぁ昼休憩も終わっていよいよ最終種目発表!とその前に予選落ちのみんなに朗報だ!あくまで体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!》

 

プレゼントマイク先生の実況で午後の部の開始が伝えられる。本場アメリカから呼んだというチアリーダーの人たちが華やかな応援の声を届け、スタジアムの盛り上がりは最高潮だ。

 

《……何やってんだ?》

 

《どうしたA組!?何のサービスだそりゃ!?》

 

そんな中、どよよんと重い空気を背負うのは峰田君たちに騙されたのを理解した1年A組の女子生徒たちだ。B組や他のクラスの女の子で、チアガールの衣装を着ている子は1人も見当たらない。

ちゃんと黄色のポンポンも用意したのに……。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私……衣装まで創造で作って……」

 

「これ百ちゃんが作ってくれたの!?」

 

やけにぴったりだと思った衣装は、百ちゃんが"個性"で作ってくれたものだった。

そりゃそうだよ!なんで気づかなかったんだ私!私たちが衝撃を受けている間もどんどん司会は進行していく。

 

 

《みんな楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!1対1の()()()()()だ~!!……だが、ここでちょっとルール変更だ》

 

 

バトル?それってつまり……

 

 

 

「昼休みの間、2人の生徒から辞退の申し出があったわ!」

 

考え込みそうになったところを、ピシャンとムチを鳴らしてステージのまんなかにたったミッドナイト先生の声に引き戻される。

 

周りを見ると、みんな先生の発表にとても驚いているようだった。チラチラと私や尾白君や庄田君を見ている人たちは、多分食堂での私たちのやり取りを聞いていたのだろう。だんだんとざわめきが広がっていく中、ギュッと祈るように手を組んで先生の話に集中する。

 

「でも、彼らが本戦に勝ち上がったのは事実!そこで……2人の選手追加を宣言します!!尾白君、庄田君、そして追加の2名で予選を行い、勝った2人に本戦に進んでもらう。これなら文句ないでしょ?」

 

バッとムチを振り上げ、ウインクをしたミッドナイト先生はとっても楽しそうだった。なんと先生たちは、4人の生徒にもう一度最終種目に挑戦するチャンスを与えてくれたのだ。ありがとうございます!と2人の声がスタジアムに響き、歓声が上がる。

 

よかった……ホッと息を吐いて握りしめていた両手の力を抜いていく。2人とも、希望に満ち溢れる笑顔を浮かべてキラキラと輝いている。食堂で見た笑顔とは全然違う、彼らの本当の笑顔だ。

 

 

 

「追加の2名は騎馬戦5位の鉄哲チームからね」

 

「ウォォオオオオ!!よっしゃあ!」

 

鉄哲チームの4人は話し合いを行った結果、騎手をしていた鉄哲徹鐵(てつてつ てつてつ)君と、蔦のような髪の毛の塩崎茨(しおさき いばら)さんが参加することになった。

 

 

「というわけで鉄哲君と塩崎さんが参加で18名!予選は先に行うとして……抽選の結果、組はこうなりました」

 

予選A:庄田 対 塩崎

予選B:尾白 対 鉄哲

 

第1戦:心操 対 緑谷

第2戦:瀬呂 対 轟

第3戦:上鳴 対 A

第4戦:飯田 対 発目

 

第5戦:常闇 対 芦戸

第6戦:____ 対 八百万

第7戦:切島 対 B

第8戦:麗日 対 爆豪

 

 

《第6戦の空白はあの匿名希望のリスナーだ!次の変身も期待してるぜー!?》

 

《贔屓すんな》

 

 

「転身さん、お互い頑張りましょう!精一杯やらせていただきますわ」

 

「えっと……」

 

第1戦の対戦相手になった百ちゃんが声をかけてくれるけれど、ちゃんと返事を返すことができない。どうしよう……尾白君たちのことでいっぱいいっぱいだったけれど、最終種目は1対1のバトル。言うまでもなく、"個性"を使用して戦う真剣勝負だ。それってつまり、友達と戦うってこと……?

 

 

 

 

一難去ってまた一難!?尾白君と庄田君は笑顔になってくれたけど、今度は私の笑顔が大ピンチ?みんなを助けるためのプリキュアの力で友達とは戦えないよ……

 

 




笑夢ちゃんが暴れまわった結果、番組の放送時間が2試合分伸びました。


嫌がる猫ちゃんに元気なわんちゃんがじゃれついてるのって、すごいかわいいですよね。
べつに他意はないです。

次回からトーナメントバトルです。
プリキュアタブーをどう乗り越えるか……頑張ります!
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