紛らわしくてごめんなさい。
彼女たちはいつも、どんなに恐ろしい化け物でも立ち向かって、笑顔で私たちを助けてくれるんだ。戦いたくないって泣いているだけの私は、プリキュアに全然相応しくない。
私も、ちゃんと自分の力で戦うんだ……
このプリキュアのいない"世界"で、
「爆豪君、私も……ヒーローになりたい。だから、ちゃんと戦いたい!」
プリキュアに変身できる私の"個性"
プリキュアになるために努力した私の力
「スカイローズ・トランスレイト!」
「青いバラは秘密のしるし!ミルキィローズ!」
《やっときたゼー!!ってこいつは……》
《多分使いませんけどって言っていたやつだな、ミルキィローズ》
ミルキィローズはプリキュアよりもずっと基礎的な身体能力が高い。でもその分極端に体力を消耗してしまうし、変身を解いたときの反動が大きすぎる。この変身はまさに諸刃の剣なのだ。でも、爆豪君と対等に戦えるのは
「はぁぁあああ!」
爆豪君の"個性"は汗をかくごとに強くなるって緑谷君が言ってた。私の体力はもうギリギリだから、長く変身を続けることはできない。だから、一番強い
「オセェ!!」
BOOOM
「ぐっ…はあ!」
爆発が当たって痛い……でも、私のパンチは彼の腕に当たった。すぐさま蹴りを入れようとするけれど、避けられる。
彼の腕を捕まえて背負い投げをしたら、爆破で衝撃を和らげて着地され、逆に私がぶん投げられる。
頭を狙う彼の爆破を避けながら、懐に潜り込んでパンチを叩き込む。しかし、同時に前傾姿勢になった私の背中が爆破される。
高く飛び上がって肩を狙うけれど、避けられて横から爆破される。
攻撃は当たるけど、爆破されている分私のダメージの方が大きい。
《ミルキィローズ強え!爆豪と対等にやり合ってるぞ!!》
ものすごい応援と歓声がスタジアムを包み込む。
爆豪君……すごく楽しそう。
「はぁ、はぁ……すごいね、全然敵わないよ……」
「ハッ…ったり前だろうが。ナメんな」
全身痛いし、体力ももう限界を超えている。でも、私も……なぜか口角が上がっているのがわかる。
息を整えて正面から向かい合う。もうこれで最後!手元に
「邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!
___ミルキィローズ・ブリザード!!!」
「
ドーーーーーン
お互いの最大火力がぶつかり合い、大きな爆発がステージを吹き飛ばす。黒い煙とともにものすごい爆風がスタジアムに巻き起こる。
《麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加えたまさに人間榴弾!マジで容赦ねぇな!対してミルキィローズは…》
《…青い薔薇の花びらで花吹雪を起こし、それを大きな氷の青いバラの形にして包み込み凍らせ、一瞬で粉砕する 》
《まさに必殺技と必殺技のぶつかり合いだ!!煙で何も見えねぇ、勝敗の行方は果たして〜!》
「はぁー…」
「はぁ、はぁ……あはは…ぐっ、うぅ……」
爆発の衝撃で壁にめり込ませるとか、変身してなかったら死んじゃってるよ……花びらも全部爆発で吹き飛ばされちゃった……私の全力だったのに、ほんと、強すぎ……
「ミルキィローズさん、場外!爆豪くんの勝利!」
《立っているのは爆豪!!これで決勝は轟対爆豪に決定だァ!》
爆発するような歓声の中、静かに意識が落ちていった___
_______________
「ここは……」
目が覚めたら、ベッドに寝かされていた。気を失って保健室に運び込まれたのだ。火傷で肌がヒリヒリするし、身体中がズキズキと痛んでいるから、まだ治療も行われていないのだろうか。
「おや、目が覚めたね。まったく今年はずいぶんと怪我人が多いね。怪我の治療だけどね、体力が戻るまで待たないといけないから、もう少し時間かかるよ。」
「リカバリーガール先生……はい」
くるくると巻かれる包帯を見ながら爆豪君との戦いを思い出す。
悔しい……全力だったのに、全然敵わなかった。
「一応、応急処置はしたけど体力が戻るまでここに居なさい」
カーテンが閉められ1人になった途端、涙が溢れてくる。
"この世界"に
私がプリキュアになってみんなに笑顔を届ける。
だから、私はヒーローになる。それなのに……人を傷つけることが怖かった私は、戦うことを"ここ"に居ない
「ぜ、絶対…ヒーローに、なって……プリキュアと、して……みんなを笑顔に、するんだ…!わたしの…ち、ちからで……戦うんだ…!」
プリキュアになりたい___私の
憧れの人たちに恥ずかしくない、私になるんだ。
もう、逃げたりしない。ちゃんと自分の力と向き合って、
ちゃんと、みんなが呼んでくれた
「そろそろ体力も戻ったね。チューーー…」
ドーーン
「ここまで聞こえるんですね……」
「……次の患者のためにも、早く治すよ」
決勝戦は爆豪君と轟君。優勝がかかっているし、きっとものすごく激しい戦いなのだろう。爆発音を聞きながら、治療を続けた。
_______________
「プリキュア!メタモルフォーゼ!」
「大いなる希望の力、キュアドリーム!」
「今年度雄英体育祭1年の全日程が終了!それではこれより表彰式に移ります!」
色とりどりの花火が打ち上がる中、ミッドナイト先生の司会により表彰式が始まった。
私も3位の表彰台の上に立ってカメラのフラッシュを浴びている。でも、1番みんなの注目を集めているのは、1位の表彰台に縛り付けられている爆豪君だろう。"個性"が使えないよう腕に鉄の拘束具をつけられ、口も塞がれている。
聞けば決勝戦のときに、爆豪君は轟君に炎を使わせようとしたらしい。けれど、結局使わなかった轟君に勝ってしまった。この結果に納得がいかず、暴れているようだ。これ、全国に放送されてるよ?
「3位にはもう1人飯田君がいるんだけどちょっとおうちの事情で早退になっちゃったのでご了承くださいな」
飯田君は私と爆豪君の試合の間に早退してしまったらしい。すごく張り切っていたのに残念だ。一緒に写真撮りたかったな。
「メダル授与よ!今年、一年生にメダルを贈呈する人はもちろんこの人!!」
「私が!メダルを持って「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」きた…のに……」
かぶっちゃった
空からかっこよく登場する予定だったオールマイト先生は、ぷるぷると肩を震わせて着地したままの姿勢で俯いている。これ、全国に放送されてますよ?
気を取り直したオールマイト先生が私の前に立つ。いよいよメダル授与だ。
「君のその姿はキュアドリームだな。変身しても、していなくても、君は君だ!君の頑張りはたくさんの人に届いている。自分の力に自信を持って、ヒーローを目指して欲しい」
「……はい!私は、私の力で
私はキュアドリーム!大いなる希望のプリキュア! ……だから、次は負けません」
メダルを受け取りながら精一杯の笑顔でオールマイト先生に応える。私が憧れたキュアドリームのようにキラキラした笑顔で。どんな困難なことでもちゃんと自分の力で乗り越えて"この世界"で
「辛いとき、苦しいときに笑える君は、きっと強くなる。プロの世界で
私自身の顔と名前を出すべきかすごく迷った。
でも、やっぱり私のヒーローの形はプリキュアだったから。胸を張って、
この姿で表彰台に上ったのは私の決意。
私が
私に続いて轟君もメダルをもらい、オールマイト先生と言葉を交わしている。体育祭の間、彼とは全然話しなかったな。……爆豪君が暴れてるせいで2人の声が全然聞こえないよ。
「さて爆豪少年!……っとこりゃあんまりだ。選手宣誓の伏線回収見事だったな」
「こんな1番なんの価値もねえんだよ!世間が認めても自分が認めてなきゃゴミなんだよ!!」
轟君の後は、爆豪君だ。もう顔がなんか、怖い通り越してすごい。オールマイト先生が口の拘束を外してメダルを渡そうとするけれど、爆豪君はビキビキと目を吊り上げてメダルを拒否している。首輪を嫌がってる犬みたい……。
「メダルは受け取っとけよ。自分の傷として!決して忘れぬよう」
「だからいらねーって!」
押し問答の末メダルは口にひっかけられた。これ、全国に放送されてるけど本当にそれでいいの?
「さァ!今回は彼等だった!しかし、皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!」
表彰台から降りたオールマイト先生が手を差し伸べて語りかける。全ての生徒たちの頑張りを讃える。
「競い!高め合い!更に先へと昇っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」
No.1ヒーローのからの言葉を噛みしめる。私たちが次のヒーローなんだと、胸を張って笑顔で、雄英体育祭を見ている全国の人たちに届ける。
「てな感じで最後に一言!皆さん、ご唱和下さい!せーのっ!」
「おつかれさまでした~!」
「「「プルスウルトラ!!……え?」」」
「そこはプルスウルトラでしょ!?オールマイト!」
「ああいや……疲れたろうなと思って……」
雄英体育祭の表彰式は最後の最後までぐだぐだになってしまった。これも全部、全国に放送されちゃうんだなあ……。
制服に着替えて
「おつかれ。っつうことで明日あさっては休校だ」
相澤先生から、今後の予定が伝えられる。体育祭を観戦してくれた、プロヒーローたちからの指名は休み明けに発表されるようだ。
…待って!?私の行動ってプロヒーローたちからどう見られてるんだろう!?騎馬戦あたりからいろいろありすぎて、指名をもらうためのアピールとか全く考えてなかった!
プリキュアの変身全部見せてない……。なにより、キュアドリームに変身したの表彰式だけじゃない!ドリームの魅力、全然アピールできてない!
「どうしよう。私、全然アピールできてない」
「いや、アンタは目立ちまくってたよ」
「いろんな意味で大活躍だったぜ」
そうかな、大丈夫かな?いや、正直目立ってた自覚はあるけど……。将来有望性?みたいなアピールが全然できてなかった気がする!しかも、試合中むちゃくちゃ泣いちゃったし!……私の号泣テレビに流れるの?
「うわーーー!恥ずかしい!」
「今日は居残り禁止だ、早く帰れよ。そんじゃおつかれ。転身はこの後職員室。」
「そんなー!?」
「失礼しまーす…」
そろそろと扉をあけて職員室に入ると、あちこちから電話の呼び出し音が聞こえ、先生たちが忙しそうに対応している。邪魔にならないように急いで相澤先生の席に行くと、先生の机の上の電話もひっきりなしに鳴っていた。取らなくて良いのだろうか?
「お前が原因だ。プロヒーローたちからお前の名前を教えろという問い合わせが殺到している」
「ぇえ!?」
「……ヒーローたちへの公表は構わないな」
「は、はい!よろしくお願いします!」
私のせいだった。私のわがままのせいで先生たちが大変なことに……問い合わせって何!?怖い!とっさに返事しちゃったけど大丈夫なの!?質問しても休み明けまで待てとしか返ってこない。
「……本題だ。転身、お前は本気でヒーローになる気があるか」
「?も、もちろんです!私はヒーローになります」
「……なら、今日みたいな行動はとるな。準決勝で変身しなかった場合、見込みなしとして俺はお前を除籍していた」
「はい。…って、え?除籍って……」
「お前はヒーロー志望として、常に見られていることを自覚しろ。お前のこだわりがヒーローとして相応しくない場合、俺は容赦なくお前を除籍するからな」
除籍って、合理的虚偽ってやつじゃなかったんだ。
先生も私が戦うことから逃げていたことを気づいていたんだろう。そして、爆豪君との戦いが最終ラインだった。また、これからも私の行動は先生たちに判断され続けるのだろう。それを意識付けてくれる先生はとっても優しい。
「……はい!ありがとうございます」
ふわふわした気持ちで学校を出る。早く家に帰らないと。今日は応援のためにパパが会社を休んでくれてるし、ママもご馳走を用意しておくって言ってた。早く2人に会いたい。だんだんとと早足になっていき、家に着く頃には息が切れるほど全力で走っていた。
「はぁ、はぁ……ただいま!」
転身笑夢
雄英体育祭 結果:3位
体育祭編終了です。
番外編を考えているので、次回の投稿は少し時間がかかるかもです。