宣言された"最下位除籍"に騒つきだす生徒たちに、相澤先生は日本の現状を伝え、三年間の高校生活を全て費やしてヒーローを目指す覚悟を促す。
"ヒーロー"とは、
「"Plus Ultra"さ。全力で乗り越えて、来い」
くいくいと挑発するように人差し指を動かしながら、先生は私たち雄英高校1年A組のスタートを宣言した。
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「あ、あの!さっきのソフトボール投げ凄かったね!ボーンってなったと思ったらバシューってボールが飛んで行ったのびっくりしちゃった! 」
出席番号順に並ぶと、私の前は先ほどソフトボール投げでものすごい記録を出した髪の毛がツンツンしている男の子だった。わちゃわちゃと腕を動かしながら話かける。新しいクラスメイトで話をするのは彼が二人目だ。
「あ"!?話しかけんなモブ!!」
「うぇ!?ご、ごめん。いきなりびっくりしたよね。私は
いきなり後ろから話しかけたせいでびっくりさせてしまったようだ。自己紹介をしてからさっきのソフトボール投げについて質問する。爆発をおこす"個性"なのかな?ヒーローっぽくてカッコいい。こっちを向いてもらえるよう背中をぺしぺし叩きながら話しかける。
「後ろからピーピーうるせーんだよ!!びっくりなんかしてねェわ!」
「えぇ!ごめんね!集中してたの邪魔しちゃったかなと思って。やっぱり50m走もバーンて爆発して走るの?」
びっくりしたわけではないようだ。うるせえ!って言われちゃったけどなんだかんだ質問には答えてくれたからそのまま会話を続ける。せっかく同じクラスになったのだから、みんなと仲良くなりたい!
「次、爆豪、転身」
「はーい!」
「おい!離せクソモブ!!」
どうやって体力テストを攻略していくのか話しかけていたら順番が回ってきてしまった。彼は爆豪くんという名前らしい。彼の手を引っ張りスタート地点まで急ぐ。先生を待たせるわけにはいかないからね。
スタートの合図が出る前に急いでイメージを思い浮かべる。まだ20分くらいしか変身を維持できないという理由から、少しでも体力を温存するためだ。今回は体力テストだから、より高い身体能力を持つプリキュアに変身する。せっかく着替えた体操服はあんまり意味がなかったようだ。
「プリキュア!メタモルフォーゼ!」
「情熱の赤い炎!キュアルージュ」
後ろでみんながザワザワしているし、なんかすんごい声も聞こえてくる。となりの爆豪君もびっくりした顔でこっちを見ているのでやっぱり変身するのはダメだったのかな?
「先生!この格好もわたしの"個性"なんですけど、このままテスト受けて大丈夫ですか?」
「問題ない。早くやれ」
よかった、大丈夫なようだ。プリキュアのイメージがしっかりありすぎるせいで一部だけ表現することが出来ないから体操服で受けろって言われちゃうと何にもできなくなってしまう。これも課題かな?
スタートの合図とともに走り出す。爆豪くんは両手から爆発を繰り返し加速している。私も速く走るための訓練を小さい頃から続けているから足の速さには自身があるけれど全然追いつくことができない。
「ボボボボって手から爆発出すのすっごいね!全然追いつけなかった!」
自分の両手を見つめている爆豪君に追いついて声をかける。
「あ"!?当たり前だコスプレ女!!」
「こ、こすぷれ?___そう言われるとそうかも!私の今の恰好ってキュアルージュのコスプレだ!え?これかなり完成度高いんじゃない!?」
「耳元でぎゃーぎゃー騒ぐんじゃねぇよ!うるせェ!!」
「わー!ごめんね!置いていかないでー」
スタスタと次の競技に移動する爆豪君に急いでついていながら、キュアルージュの説明をする。もう話しかけるな!とも、うるせえ!とも言われないし、やっぱり何だかんだ会話には付き合ってくれるので爆豪君はいい人だと思う。
"個性"を使用できると普通じゃありえない記録が次々と出てくる。
50m走では足がエンジンみたいになっている
握力では腕が沢山ある
反復横跳びでは私が変身したときにすんごい声を出していた
1年A組は"あの"入学試験を突破した人たちなので、みんな自分の"個性"を使うのが上手い。すぐに自分の"個性"をそれぞれの競技に活かして超人的な記録をバンバン出している。もちろん私もプリキュアの力で強化した身体能力で、いつもの私よりも何倍も高い記録を出している。
すごい記録が出ると会話のきっかけにもなるので、たくさんの人と自己紹介をすることができた。峰田君にはなんかすんごい目で見られたけど「スパッツっていいよな!」と褒めてくれたので、ありがとうと言っておいた。
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「せい!」
軽い掛け声とともにふわふわと浮かび上がったボールは遥か彼方までふらふらと飛んで行ってしまった。出た記録は「
「
みんなの歓声に照れながら帰ってくる女の子にわちゃわちゃと話しかける。ものを浮かせるってことは、自分も浮かべることができるのかな?魔法の絨毯とかもできるかもしれない!
「えへへ、ありがとう。笑夢ちゃんの変身もびっくりしたよ!コスチュームすっごい可愛い!私は
「ありがとう!私の"個性"は、想像したものを生み出すことができる"具現化"だよ。この恰好は私の憧れのヒーローのもので、キャアルージュっていうの!」
「へー、聞いたことないなぁ?どんなヒーローなの?」
お茶子ちゃんにプリキュアの魅力を話していると、私の番になったようで先生から名前を呼ばれる。頑張れ!と応援してくれたお茶子ちゃんに手を振って位置につき、ボールを受け取った。
「やああぁああ!!」
ブワッ
思いっきりボールを空に向かって投げると大きく砂埃が舞い上がる。記録は589.7m!これならクラスの中でも上位の成績だと思う。やっぱりプリキュアは握力も強いのかもしれない。プリキュアのイメージをまとめ直しながらみんなのところに戻る。可愛い服の女の子が600m近い記録を出したギャップに驚いている人がちらほらいるのが面白い。お茶子ちゃんも、すごいすごいと褒めてくれた。
私の次に投げる、もさもさした髪のそばかすの子が位置に着く。みんなが"個性"を使用して記録を伸ばす中、彼だけは使用しないままテストに挑んでいる。体力テストに向かない"個性"なのかな?
私が爆豪君に話しかけている時にものすごい顔をしていたのも気になるので、ぜひ話をしてみたいところだが、ずっとぶつぶつと独り言を言いながら集中しているようなので話しかけることはできていなかった。
「
隣に立っている飯田君が腕を組みながら呟く。彼は緑谷君というらしい。真っ青な顔をしてだらだらと冷や汗をかいている。このまま結果を出すことができないと彼は除籍処分となって、せっかく入学できた雄英高校でヒーローを目指すことができなくなってしまう。
「大丈夫かな?」
「大丈夫も何もねェよ。無個性のザコだぞ!」
「えぇ!?」
「無個性!?彼が入試時に何を成したのか知らんのか!?」
飯田くんのつぶやきを聞いて思わず心配の言葉をこぼした私に、反対側にいた爆豪君が、総人口の8割が"個性"を持つ社会の中で、彼は"個性"を持たない"無個性"であると言い放った。驚く私を挟んで、飯田君が私とはちょっと異なる驚いた様子で爆豪君に疑問を返す。
爆豪君が苛立たしげに「はぁ?」と飯田君の言葉に返すと同時に、緑谷君が腕を振りかぶりボールを投げた。
記録は、46m
ますます顔を青ざめさせる緑谷君に相澤先生が近づいていく。なんだかさっきまでとは雰囲気が全然違っていて、ゴゴゴゴゴっというオーラが見える気がする。自分の"個性"を話す先生に対して、緑谷君がそうか!と先生のヒーロー名を叫んだ。
先生は視ただけで相手の"個性"を消すことができる、抹消ヒーロー《イレイザー・ヘッド》というヒーローなのだそう。
正直私はプリキュア以外には興味がないため全然わからない。周りのみんなの反応を見ても、メディアにあまり出ないアングラ系と呼ばれるヒーローらしく、知っている人は少なそうだ。
先生は"個性"を発動させたまま、緑谷君と話し合っている。何かアドバイスでも与えているのだろうか?
そわそわしながら待っていると話が終わったらしい。ボールを持った緑谷君が位置に着く。ブツブツと何かをつぶやいた後、覚悟を決めた顔で1回目と同じように振りかぶった2回目の挑戦で、彼はついに"個性"を使用した超人的な記録を出した。
「SMAAAAAASH!!!」
「先生……!まだ……動けます」
ようやく出た緑谷君のヒーローらしい記録に喜びの声と、彼の指が腫れ上がっていることに対する心配の声が上がる。自分の体を壊してしまうほど強力なパワーなんて、それをわかっていて使用できるのがすごいと思う一方で、"個性"の調節が下手なのかな?という疑問が浮かぶ。
お茶子ちゃんとやったー!と盛り上がっていると、なぜかブチギレた爆豪君が飛び出していってしまった。
デクてめェ!と両手から爆発を起こしながら緑谷君に向かって行く爆豪君を止めたのは、またしても"個性"を発動させた相澤先生だった。一瞬で爆豪君を炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器で捕縛した先生は、俺はドライアイだから何度も"個性"使わすなと告げる。
すごく強力な"個性"なのになんだかもったいない。
二人の異様な様子と相澤先生の突然のカミングアウトにポカンと口を開けた生徒たちは、"個性"を解いた先生の次準備しろという言葉に慌てて体力テストを再開させた。
「指、大丈夫?」
流石に手を握りしめて怒りのオーラを発する爆豪君に話しかけることはできず、戻ってきた緑谷君に声をかける。
「うぇ!?だ、だいじょうぶだよ!!」
ぶわっと汗をかいて顔を赤くする緑谷君はどう見ても大丈夫じゃない。でも彼はこのまま体力テストを続けるみたいだ。お茶子ちゃんも心配して、保健室に行ったほうがいいと進めているが、テストが終わるまでは行く気はなさそうだ。残りのテストは持久走、上体起こし、長座体前屈の3つだからもう"個性"を使うつもりはないのかな?
「さっきのすごかったねぇ。スーパーパワーが出せるところとか、私の"個性"と似てるところあるし、何かアドバイスできるところがあるかもしれないから、気軽に話しかけてね。」
「!__ありがとう!」
お互いに自己紹介をして握手する。もちろん腫れていない左手でね!彼は
「転身さんの"個性"は、変身することで超パワーを使うことができるものなのか!それだと体は全くの別物として扱われてダメージとかは…ブツブツ……
「緑谷くん?おーい」
「わあぁあ!ご、ごめん!」
緑谷君はブツブツと私の"個性"の分析を始めたと思うと完全に自分の世界に入ってしまった。"個性"が好きなのかな?自分の"個性"を他の人に分析してもらうなんてなかなかないことだから凄く興味があるけれど、そろそろ持久走が始まりそうだから声をかける。思ったよりも元気そうだ。
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「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。」
順位が並んだ画面が浮かび上がる。私は7位。結構いいところまで行くことができたと思う。けれど持久走で体力を使い果たしてしまった結果、上体起こしと長座体前屈に"個性"を使用できなかったから、最後まで"個性"を使えていればもう少し上に行けたかもしれない。
あと、評価の基準は記録よりも"どれだけ自分の"個性"を使いこなすことができているか"だと思う。私の順位は、自分の限界を見極められなかった結果なのだろう。やっぱり体力を増やすことが一番の課題だなぁ。
最下位は緑谷君だ。青ざめた彼に誰も声をかけることができない。
「ちなみに除籍はウソな。君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」
どよんと暗くなった雰囲気の中でニッカリと笑顔を浮かべて、先生が衝撃発言を述べた。
「「「はぁーーー!!?」」」
「あんなのウソに決まっているじゃない…・ちょっと考えればわかりますわ」
驚く私たちに対して、さまざまな道具を生み出しトータル成績一位を取った
「私全然気づかなかったよ!爆豪君は気づいてた!?」
「ったりめーだろ、タコ」
爆豪君も気づいていたらしい。あと彼は罵倒のレパートリーが独特で面白い。ざわざわと生徒たちが盛り上がる中、くたびれた顔に戻った相澤先生は解散を言い渡し校舎へ戻っていった。
はちゃめちゃな高校生活がスタート!除籍処分が嘘で本当に良かった!みんなともっと仲良くなれるように頑張ろう!!
なんとか体力テスト終了。
出席番号とか全く意識してなかったので爆豪→転身→緑谷の並びに気づいて焦った。
コミュ力が高すぎておしゃべり始めてしまうと文字数が大変なことになるので、出来るだけ背景でわちゃわちゃさせています。体力テストの間でクラス全員に声をかけたということで。
次回、戦闘訓練。