「300年前から好きでした! 付き合ってください!!」 作:カンさん
5/1の12時に結果発表あるので、その際に匿名解除と共に完結表記にします
……おまけも書ければ良いな……
※やっぱり0時に匿名解除しました⭐︎
【……】
天の神が六人の勇者に手古摺っているのは、相手の強さ以外にも理由があった。
それは、依り代として使ったかがみが全力で抗っている為。
動きたい時に動けず、想定以上の力を加えられてバランスを崩すなどをして、勇者たちに隙を見せてはそこを徹底的に突かれている。
援軍として呼び寄せた星屑たちも頼りなく、天の神の思い通りに事が進んでいなかった。
──だから、少しだけ顔を出すことにした。
「なに……あれ……!」
初めに気付いたのは、感覚が鋭い夏凜だった。
突如、神樹が作り出した空間の上に、穴が空いた。まるで、炎で無理矢理焼き切ったかのような、痛々しい穴。
そして、その穴の奥から覗くのは──鏡のようなモノ。
赤く燃える──天を照ら火神。
その鏡から、何本もの炎のツタが伸びて──かがみに絡みつく。
「あ……!」
その光景を、勇者たちは見覚えがあった。
かがみの全身を炎で作られた蕾が包み込み──弾ける。
そして、出て来たのはさらに赤黒く変色し、全身を黒い靄で包み込むナニカ。
出て来たのは、人を超越した何かだったが──彼女たちは理解した。
「満……開……!」
──天の神は、今までの戦いを参考にかがみを使って満開を模擬した。
かがみの身に溜め込まれた天の神の祟りを解き放ち、力の上限を無理矢理引き上げる外法の力。そんな事をすれば使用者の命は無いが──天の神が気にする事はなかった。
「■■──ー!」
かがみが獣ような叫び声を上げ、炎の一振りで樹海事勇者たちを薙ぎ払う。
精霊のバリアで衝撃を受け流しながら、彼女たちは直撃を避けた。
「ちょ、あれってもしかして……!」
「私たちと同じ、満開……!?」
犬吠埼姉妹が当然の驚きの言葉を言い放ち──。
「違う……あれは──一つ過去の満開だ!」
園子が、最悪の答えを瞬時に見抜いて叫んだ。
彼女の言葉の意味を理解した東郷が言った。
「まさか──捧げるの!? 天の神に!?」
「なんでよ! あいつ、天の神の事恨んで──」
「──捧げさせているんだよ……天の神が……!」
以前の勇者システムにおける満開は、散華が起きる。
散華が起きれば、勇者たちは何かを失う。
大切な人を見守るための目。夢を叶える為の声。親友の声を聞く為の耳。幸せを感じる味。
それが二度と戻らないと知った時の人の絶望は計り知れない。
だが、かがみと天の神は違う。
かがみは満開をする気は無い。その身を供物に捧げるつもりもない。
しかし、現在彼女の体を使っているのは天の神であり、かがみの意志関係なく──散華を気にする事無く、満開を使わせることができる。
その事を理解した勇者たちは──。
『──ふざけるな!!』
──切れた。
即効で天の神をかがみから引き離し、倒すことを強く
「──満開!」
初めに満開をしたのは風だった。
強化された大剣を叩き付け、相手の攻撃を捌きながら叫ぶ。
「負けるなかがみ!」
風は知っていた。
いつもふざけているかがみだったが、その実勇者部の事を大切に想っていて、勇者部を便利に扱おうとしていた人間を片っ端から排除していた、
かがみは守っていた。その事を風はお礼を言いたかった。
風の大剣と打ち合い、かがみの一度目の満開が終わる、
かがみの中の、土居球子との記憶が失われた。
天の神は次の満開をさせた。
近くに居た風はその時の衝撃で吹き飛ばされる。さらに、天の神は炎の鞭を無数作り出し、それを風に向かって振り下ろす。
それを、満開した樹が強化されたワイヤーで絡めとり引き千切る。
「負けないで、かがみさん……!」
樹は知っていた。かがみが、人の夢を応援する事が好きな事を。
あの相談の後、ネット、専門分野の本、はてには大赦の力も借りて歌に関する情報を集めていた事を。
少し照れ恥ずかしかったが、真剣に考えてくれたという事実が嬉しかった。
天の神が炎の鞭を生成するよりも早くワイヤーで切り刻み続けた結果、満開の力が尽きる方が早かった。
かがみの中で、伊予島杏との記憶が失われた。
「せーの!」
これ以上満開させない為に、樹はワイヤーでかがみを縛り、風は大剣を大きく振り被ってぶっ叩こうとした。
姉妹が息を揃えての速攻コンビネーション。
しかし、直撃すると同時に天の神の満開が間に合う。
地面へと堕ちながら満開し、樹海に激突すると同時に全方位に炎を撒き散らそうとして──。
「させ──」
「──ない!」
夏凜、東郷、園子が一気に満開し、炎を撒き散らす事すら赦さない。
風の一撃が重かったのか、すぐに満開が解け……しかし、すぐに満開をして空を飛ぶ。
郡千景の記憶を失った。それに構わず目の前の勇者を殺そうと炎の爪を振り下ろす。
その行動が、天の神の所業が、彼女たちの逆鱗に触れる。
「いい加減に──しろォ!」
夏凜は、他の勇者部と比べてかがみの事について詳しくない。
しかし、悪い人では無い事を知っている。
居なくなったら悲しむ人が居るのを知っている。
……もっと一緒に遊びたいという気持ちがあった事を知った。
東郷は彼女の事をよく理解していた。
友奈の事が好きで、彼女を取り合って喧嘩をする事がそこそこ好きだった、
二人の時、彼女が自分を褒めた時嬉しかった。
……世界を滅ぼそうとして、その選択を受け入れると言われた時は悲しかった。
本当は、彼女にその事について怒って欲しかった。そして謝りたかった。300年想ったこの世界を壊そうとして、ごめんなさい、と。
園子は彼女の事を全く知らない。
教えて貰ったが、一緒に過ごした事がないのだ。
しかし、仲良くなれると確信していた。
乃木と上里だから……ではない。
園子が園子で、かがみがかがみだからだ。
初めは理解の及ばない正体不明。しかし実態は寂しんぼでヘタレで優しい人だった。
それだけが分かれば、友達になれると信じていた。
満開が解ける。乃木若葉と上里ひなたの記憶が消える。
度重なる満開と勇者たちの満開による攻撃により、天の神自身にダメージがフィードバックし始めた。
満開によるとかがみとの同調率、心身支配の侵攻が此処に来て裏目に出始めた。
さらに、散華する度に、記憶を失う度に、天の神の中に居るかがみが強く抵抗する。
──このままではマズい。
そう考えた天の神は──空へと逃げた。
当然その後を空を飛べる東郷と園子が追いかけようとするが、星屑たちが立ち塞がる。
「そこを……」
「どきなさい!」
息を揃えて星屑たちを一掃する二人。
すぐさま追いかけようとして──間に合わなかった事を理解した。
かがみは、既に天の神の本体である鏡の中に取り込まれてしまっていた。
どうやら、そこで彼女の御姿を作り変え、完全な自分にとっての依り代にしようしているらしい。
誰にも邪魔されたくないのか、勇者たちの精霊バリアのような透明な壁が彼女たちを阻む。
満開ゲージもすぐに限界が来た。天の神との戦いは、予想以上に規模が大きかったようだ。
地面に降り立つ東郷と園子の周りに皆が集まり、天に囚われたかがみを見る。
「どうする?」
「私が行きます」
風の問いにすぐに答えたのは友奈だった。
彼女は強く強く拳を握り締めて、真っすぐ天を、かがみを見つめていた。
その姿に東郷は何か言おうとして、それを辞めて一言。
「友奈ちゃん」
「……」
「いってらっしゃい」
「──うん!」
他の皆も異存は無かった。
風と樹、夏凛の満開が解け、入れ替わるように友奈が満開する。
しかし、その満開はいつもものソレと違っていた。
「……牛鬼?」
牛鬼が、突如彼女の前に現れ、そっと手を伸ばす。
友奈がその手を握ると、牛鬼の体が光り──。
──私の分まで、■■くん……ううん。かがみちゃんを助けてあげて。
自分と同じ顔で、同じ声の、しかし別の勇者の言葉が聞こえた気がした。
そして、牛鬼から流れ込んで来る感情に──友奈は涙を流す。
それを振り切るように──空へと飛んだ!
【……!】
それを見た天の神が迎撃しようと、友奈を撃ち落とそうとして──。
──野暮な事すんなよカミサマ。人の恋路邪魔したんだ。しっかりと蹴られときな。
赤い勇者を筆頭に、無数の魂が天の神の行動を膨大した。
それは、天の神が軽んじた人の力。
かがみがその身に宿し、天の神を討つための火種にしようとした想いの純粋な部分。
恨みではない。生きて、未来を進む者を慈しむ綺麗な心。
それが、天の神を尽く否定し──満開した友奈の拳が、天の神に届く。
「勇者ぁぁぁああああああああああ!!!」
悪足掻きにかがみを盾にしようとし──。
──愚か者。
誰かの鋭い声が天の神の操り糸を一刀両断し、かがみは横にぶれ──。
「パァァァァァァアアアアアアンチッ!!!!」
見事、友奈の拳は天の神を打ち砕いた。
粉々になっていく天を見届ける事無く、友奈は必死に愛しい人を探す。
「かがみちゃん!」
天の神を打ち砕いた事に寄り、世界の理に変化が起きていた。
しばらくすれば、四国の外は人がかつて住んでいた世界へと元に戻るだろう。
樹海化も解け始めている。天の神との戦いで、随分と寿命を削らされたようで、感じる力は弱かった。
しかし、それ以上に友奈は──かがみを取り戻せた事が嬉しかった。
「かがみちゃん……!」
「ゆう……な、ちゃん……?」
樹海の中へと堕ちていく中、友奈の腕の中でかがみは朧げな意識の中、彼女の名前を呼んでいた。
◆
それからの顛末は、こうだ。
神樹様の結界のおかげで、四国の中に居る人たちは外の世界の事を知らない。しかし、それも時間の問題だ。
神樹様の寿命は残りわずかで、大赦はその寿命が続いている間に何としても外の世界の事を調べ上げ、人類存亡の為の最善手を打っていかなくてはならない。……非人道的な事は無しで。
何でも、天の神の理が支配されていた時から、外の世界を調査していた【防人】が、今後は中心となって開拓、調査を進めていくらしい。
勇者部は、風先輩が卒業し、次の部長は樹ちゃんが選ばれた。
私から見ても妥当だと思う。
とりあえず国防芸人である東郷さんにならなくて良かったと思っている。
そのっちやにぼっしーは……二人の事詳しく無いから良く分からん。
でも、これからは楽しくなると思うな。
「……ほんと、夢みたい」
「なにが?」
「こうして、皆と一緒に居られる事」
「私は……ずっとそんな未来を見てたから、全然気にしていないなー」
「ははは、結城ちゃんは相変わらず──」
「友奈」
「……」
「友奈って、呼んでよ」
そう言われて、私は言い淀む。
しかし、それも無理もない。
彼女の事を【友奈】と呼ぶ事は、私にとって重要な意味を持つ。
何故ならば──。
「いや、そんな勿体ぶらないでよ。ただ単に恥ずかしいだけでしょ?」
「~~~~~!!!」
自分の顔が赤く染まるのが良く分かる。
だって、仕方ないじゃん。好きな子の下の名前呼ぶの、恥ずかしいじゃん。
いつかの時代の、いつかの俺の時は当たり前だったけど──目の前の友奈ちゃんは、特別だ。
「う、その……」
「つーん」
まずい、つーん状態になった。
こうなると彼女は頑固になる……!
「その」
「つーん」
「あーうー」
「つーん」
「ゆ……友奈」
「~~~ああ、もう! かがみちゃんは可愛いんだから~~!」
そう言って、友奈ちゃんは私に抱き着いて来た。
って、近い近い近い! 良い匂いというか温かいというかそうじゃなくて!
「そんな嫁入り前の女子がはしたない!」
「東郷さんみたいな事言ってる……」
あのメガロポリスと一緒にするな!
くそ……あの後人が言い返せないのを良い事に言いたい放題言いやがって……!
……それはみんなだった気がする。
「でも、それは事実で──」
「ふーん……だったら、これでどう?」
「え?」
私と友奈の影が──重なった。
一秒? 十秒? 一分? いや、どれくらい経ったのかなんて、全く分からなかった。
それほどの衝撃が目の前で起きていた。
重なった影が離れ、私は友奈ちゃんと同じくらい真っ赤な顔をして言葉を失っていた。
でも、友奈ちゃんは、私よりほんのちょっぴり勇気があるから、次の言葉を言えた。
「結婚してください、かがみちゃん」
「──」
その告白に、私が何て答えるか──それは、きっと、300年前から決まっていた。