「300年前から好きでした! 付き合ってください!!」 作:カンさん
「結城ちゃんペロペロ! 結城ちゃんきゅいきゅい! にゅおおおおおおお! 結城ちゃん可愛いよおおおおおおおおおお!! 目に入れても痛くないくらい可愛い! 寧ろ自分の目玉を結城ちゃんにしたいくらいに可愛い! 顔が好み! 凄く好み! この顔好きになったら300年間は他の顔なんてもう土偶! 土偶みたいなものだよ! 全人類結城ちゃんの顔に整形しても良いくらいには顔が好み! ──待てよ。そんな事したら結城ちゃんの顔がみんなと同じになる……? つまり消滅してるようなもの……? ヤダヤダ! 結城ちゃんの顔に価値が無くなるのはイヤだ! 結城ちゃんの顔が無くなるのはイヤだ! 夜な夜な結城ちゃんの顔を思い浮かべて興奮する時に『ひょっとしてその結城ちゃんの顔はあなたの想像上の産物なのでは?』と囁かれるなんてイヤだ! 結城ちゃんの顔の良さを他の人と差別化して価値を確立させたい! だから結城ちゃんの顔は結城ちゃんのものおおおおおおおおお!! ペロペロしたいけど汚したくないからペロペロしたくないいいいいいいい!!!! 結城ちゃんんんんんん結婚してええええええええ!!!」
「え……嫌だ……」
「この様に、私は気兼ねなく結城ちゃんと話せるくらいに仲が良いです。この高みまで頑張ってくださいね三好夏凜さん」
「どこが気兼ねなくよ! 完全に引かれてるじゃない! そもそもそこまで行ったらただの変態じゃない馬鹿ぁ!」
「あれー?」
とある日の夕方。
上里かがみは勇者部全員からドン引きされ、転校生であり勇者部新人部員である三好夏凜に突っ込まれていた。
何故こんな事になったのか。それは、数日前に遡る。
◆
「三好さんと仲良くしたい?」
「うん。ちょっとツンツンしてるから……」
とある日の休日。
友奈の家でグダグダしていたかがみは、友奈から相談を受けていた。
それは、最近転校してきた三好夏凜について。
「あー……確かに素っ気無いよね。水泳の授業でみんなに凄いって褒められていたのに、全然反応してなかった」
見学していた時の事を思い出して、かがみは言った。
完璧に見えるが影で凄い努力し、それを褒められても気にしてない素振りを見せる。それは照れからではなく、どうするべきか分からない戸惑いから来るもの。
新しい環境に慣れず警戒している子猫。それがかがみの中における三好夏凜像だ。
「んー……ああいう子はガンガンこっちから話しかけて行けば良いと思うよ」
「そうなのかな?」
「うん。ああいうツンデレは押しに弱い」
「ちょっと目付きイヤらしいよかがみちゃん」
「樹さんにも『え? かがみさんってこういう話得意ですよね?』って河辺のエロ本押し付けられてばかりですが何か?」
ちなみにその本は既に焼却済みである。
「歓迎会開いて無理やり参加させて褒めちぎればこっちのもんよ」
「んー……あ! そういえば!」
「どうしたん?」
「夏凜ちゃんね、確か……」
友奈の話によると、夏凜の誕生日が今度の日曜日あり、さらに勇者部に幼稚園から折り紙教室の依頼が来ているとの事。
それを聞いたかがみは利用しない手はないと判断し。
「それじゃあ、早速風先輩に言おう!」
「うん!」
という訳で夏凜を巻き込んで幼稚園で折り紙教室+彼女の誕生日会兼歓迎会を開こうとした……のだが。
「いやー、ごめんなさい。私が場所伝えていなかったばかりに」
かがみの連絡不十分により、一人寂しい思いをしてしまった夏凜。
部室に行っても誰も居らず、現地集合と気づいた時には既に時間に遅れ。
誰に聞かせる訳でもない言い訳を自分に暗示しながら訓練し──友奈たちがきた。
「も、もういいわよ……過ぎた事なんだし……」
初めは戸惑っていた夏凜だったが、祝われる事は嬉しいのか徐々に肩の力を抜いていた。
普段ではかがみとはほとんど会話しないのだが、気づけば隣同士で話を弾ませている。
「その割に熱心に練習して──」
「見るな馬鹿!」
そして割とお互いに遠慮が無く、それを見た友奈が一言。
「なんだか、夏凛ちゃんとかがみちゃんが一番仲が良いね」
「そ、そんな訳無いじゃない!」
その言葉に顔を真っ赤にして夏凜が否定し。
かがみは絶望した。
「ゆ、結城ちゃん? 別に私は浮気するつもりじゃ──」
「え? 何の事?」
(っ──ここでこの反応……結城ちゃん凄く怒っている!?)
※かがみの勘違いです。
(どうすれば良いの? 別にそう言う目で見ていない三好さんを立ち直れないくらいに振れば……? いや、優しい結城ちゃんの事だ『あの子の事を幸せにして!』って言うのも知れない。ならば、私はどうすればいい? どうすればこの深き愛を伝えられる──愛を、伝える)
※この間、コンマ二秒。
「結城ちゃん。そして三好さん。──ご唱和ください、我の愛を」
そして、冒頭に戻る。
◆
「夏凜ちゃん、楽しんでくれてたね」
「そだねー。私の結城ちゃんへの愛は理解してくれなかったけど」
「上里さん……自重してください」
「お前には言われたくないぞメガロポリスゥ!」
「またあなたは……!」
「まあまあ二人とも」
いつものようにじゃれ合う二人を、友奈はいいタイミングで止める。
時間はもう夕方。当たりも暗くなり、ちょっと騒ぐと注意される時間帯だ。
防犯の意味も込めて、三人は揃って帰宅している。家が近い、というのもあるが。
東郷との唸り合いを終えたかがみは、今思い出したと言わんばかりに口を開いた。
「そういえば、完成型勇者って何の事だろ」
「「!!」」
「あの自信満々感は完成されてるけど……勇者部だからかね? 転校前の学校でも勇者部ってあったのかな?」
勇者部の中で、かがみだけは勇者ではない。
部長である風は彼女に勇者の存在を黙っているように全員に言い、そして戦いに巻き込みたくない皆はそれに同意した。
だからこそ、誤魔化すための言葉を吐く。
「さ、さぁなんだろうねー?」
「こ、国防と何か関係あるのかも」
「東郷さんじゃあるまいし」
「ぐっ」
東郷、必死に己を抑える。
「それに、初めは、妙に私に対して腰が低かったんだよね」
上里の名を聞いたから──だが、この事を知るのは風のみであり、二人は上手く答えられなかった。
わたわたしている二人を見てかがみは言った。
「まっ、なんでもいいんだけどね」
しかしかがみはあっさりと引き下がり、それに二人は見えないところでホッと息を吐き──。
「──あの子たち、ちゃんと仕事してるんだ」
誰かの声が、人知れず木霊した。