「300年前から好きでした! 付き合ってください!!」   作:カンさん

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お茶でもどうですか結城ちゃん!

「……夢?」

 

 とある日の放課後。かがみは珍しく樹から相談を受けていた。

 

「はい。ちょっと、お姉ちゃんには内緒にしたくて……」

 

 犬吠埼樹。

 讃州中学一年。勇者部所属。勇者部部長犬吠埼風の妹。姉より女子力高い(かがみ視点)。

 そして勇者部内でかがみと樹が一番仲が良くないと言える。

 かと言って、お互いに嫌い合っている訳ではない。

 相手がどういう人間なのかを理解しているし、それでも尚付き合っていきたいと思っている。

 ただ、優先度の差だ。

 樹は姉が一番好きで、かがみは友奈が好き。

 そしてかがみは友奈にベッタリとくっ付き、話しかけられない限り友奈に掛かりっぱなしで、自分から話に行くタイプではない。

 樹も受け身のスタンスであり、その結果他の部員たちと比べて話す機会が減っている。

 

 それでも、相談してくださいと頼れる程度には仲が良く、時間を作って話を聞く程度には相手に興味がある。

 

「夢と言うと……この前の歌関係かな」

「う……鋭いですね……」

「まぁ、あんなに練習したしね。それに樹ちゃんの歌声凄く綺麗で好きだったよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 テストの後もう一度カラオケに言って樹の歌声に魅了された勇者部員。

 

「そして、その事は風先輩には黙っているつもり、と……サプライズ?」

「さ、さぷら~いず……です」

 

 ちょっとぐらっと来たかがみ。

 

「ん、ん゛ん゛……それで? その夢についてどんな相談が?」

「はい……その……ちょっと怖くなっちゃいまして」

「え? ここで?」

「は、はい。音声データを撮ってオーディション受けようと思ったら、途端に緊張しちゃって」

 

 その結果、声優が必死に頑張って声外した状態で歌っているキャラみたいな声になるらしい。その声も声で味があって面白いのでは? とかがみは思ったが言わない事にした。彼女が揶揄って意地悪するのは夏凜か友奈の前に居る東郷だけと決めている。そんなの決めるなと当事者から怒られそうだが。

 ともかく、その話を聞いてかがみの答えは一つだった。

 

「ささっと送っちゃえよ! ヘイユー! ってたきつける事しかできませんね」

「へう」

「まぁ、あれですよ。樹さん悪い方に考えすぎです。だから楽しい事考えましょう」

「楽しい事」

「はい。嬉しい事、好きな事でも良い。この歌を歌っている時の気持ち。誰を想ったのか、何が好きなのか……その想いを『歌』という形で現わせる自分を誇って、たくさんの人に伝えて欲しい」

「想い……好き……」

「口足らずでも良いから、歌う前に思った事をそのまま言うのも良いかもしれない。樹さんなら、ね」

「……はい! やってみます!」

 

 人の夢と書いて儚いとよく言われるが、かがみから見ればそれは人それぞれだ。

 そして樹は芯が強い子だ。

 だから、彼女なら例えどんな障害があろうと乗り越えられると思った。

 だから、応援したいと思った。

 だから、どうか叶って欲しいと思った。

 

「そういえば、かがみさんの夢は何ですか?」

「私? 当然私は300年積み重ねた想いを──」

「あ、もう大丈夫です。何となく分かりました」

「マジで!?」

 

『300年』の単語を聞いて、普段のかがみを思い出して、その先の答えを連想できる程度には樹は彼女の事を理解していた。

 漠然としていない様子のかがみだが、ふと思い出したかのように口を開く。

 

「そういえば樹さんは好きな人いないんですかー?」

「好きな……人ですか?」

「あ、これ居ない反応だわ。想い人居たら絶対に『へう!? わ、私は別に……!!』って反応するもん」

「かがみさんの中の私そんな感じなんですね」

「こんな感じ。だいたい引っ込み思案でイマジナリー風先輩の背中に隠れて『へう……』って可愛らしく鳴いてる」

「イマジナリーって何ですか? 鳴いてるんですか?」

 

 イマジナリーはイマジナリーだし、良く鳴いてる。

 

「便利ですよイマジナリー、迷った時は大抵肯定させて自信をつける事ができます。

 今日のご飯どうしようかな? と参ったイマジナリー風先輩が『女子力!』とうどんレシピ教えてくれるし、宿題に詰まったらイマジナリーメガロポリスが『国防!』と無理矢理問題を解いてくれます」

「再現度低いですね」

「再現度はどうでもいいのです。楽しいかどうかです、実際の人物が何言おうと関係ないのです。ちなみに私の中の最近のトレンドはイマジナリーぐんちゃんです」

「誰ですかその人」

「私の親友です」

「寂しくないですか?」

「ちょっとね。ぐーんぐーん」

「……それは?」

「鳴き声。語呂が良い。ぐーんぐーん」

「……」

「ぐーんぐーん」

「……」

「ぐーんぐーん」

「……ぐ、ぐーんぐーん……?」

「ぐんちゃん知らない癖にぐーんぐーんするな!!」

「かがみさん疲れているんですか?」

 

 ここで怒るのではなく心配する所に、樹の性格の良さが現れていた。

 満足するまでぐーんぐーんできたかがみは、改めて樹に言う。

 

「まぁ、樹ちゃんはイマジナリーに頼らなくても、リアルの皆を頼ればいい。でも、頼らなくても強いって、本当に思う」

「そ、そうですか」

「だから頑張れ! 応援している!」

「はい!」

 

 

 ◆

 

 

「夢ねぇ……」

「どうしたの? かがみちゃん」

 

 樹に相談されて数日後。

 勇者部の依頼で来た川辺のゴミ掃除をしながら、ふとかがみは思い出した。

 手に持った『夢のGカップ祭り!』とかかれているR18の本があり、思い出した理由が割と最低だった。

 チラつかせて友奈の顔が赤くなるのを楽しもうとして、笑顔の上に浮かんだ彼女の怒りに日和って燃えるゴミ袋に千切って捨ててから樹との会話を話した。

 真面目に相談に受けていた事を聞いて友奈は嬉しそうに笑みを浮かべ、途中ふざけている事を知って困った顔をしつつ、かがみが抱いている疑問を尋ねた。

 

「それで、何か気になる事があるの?」

「いやね。樹ちゃんにあっさりと私の夢を当てられて何でだろー? とちょっと不思議に思って」

「何でって……」

 

 そんなの普段のかがみを見れば分かる、と伝えようとして。

 その夢に関係があるであろうことを友奈は直前になって思い出して。

 それを本人に直接言うのは何だかとても恥ずかしくなって。

 

「……自分で考えてっ」

「えー? そこまで言ったんならおーしーえーてーよー」

「もう! かがみちゃんのイジワル!」

「なんで!?」

 

 心底驚いた顔をするかがみに、友奈は「仕方無いな」とため息を吐く。

 こうしておちょくって友奈の反応を楽しむのは、かがみの十八番だ。

 それに乗っかるのは少し癪なので話題を変える事にした。

 

「ねえ、私のイマジナリーもあるの?」

「どうしたの急に」

「いや……普段からそんな愉快な事しているって聞いたら気になりますというか何というか……」

「イマジナリー結城ちゃんか……たいていツッコミの時に勇者パンチしますね」

「私ツッコミ役なの?」

「そして闇堕ちしたイマジナリーメガロポリスを救います」

「東郷さん闇堕ちしているの!?」

「そりゃあの性格だからしますよ。思い込んで二、三回は世界壊しそう。それにあの体だからエロ堕ちもする」

「エ……! もう! かがみちゃんそういうのいけないよ!」

「はいはーい……どうでも良いけど、メガロポリスで東郷さんって分かるんだね結城ちゃん」

「あ」

 

 純粋無垢な女の子の目から見て東郷の体はエロい。

 それを指摘された友奈はしばらく、東郷本人に制裁されるまでかがみからセクハラされたとか。

 

 今日も勇者部は平和である。

 

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