「っ……!! はあっ、はあっ……これ、夢なの……?」
力の暴走が原因で20年と言う長い期間封印され、パチュリーや姉様2人のお陰で無事に封印を解かれてから3ヵ月経った日の夕方、私はとある夢のお陰で涙まで流しながら目を覚ました。
その夢とは、見渡す限り一面銀世界の謎の空間で、死んだはずのエルと会話を交わすと言うものである。
しかもその会話の内容が、レミリア姉様やフラン姉様たちがしてくれた様に、ほんの僅かな時間でも構わないから私にもお墓参りをして欲しいと言う内容だった。
そんな事をしても意味などないとは分かっていながらも、エルが死んでしまってもう居ないと言う事実を改めて突きつけられるのが嫌で嫌で仕方なく、3ヵ月もの間どうしてもお参り出来なかった。
(お墓参りしなきゃ……約束だもの)
これが、私の深層心理から来る虚像のエルだったのか、それとも魂だけとなったエルが私の夢に現れたのか、はたまた別の理由は分からない。
まあ、いずれにせよこんな夢を見たからには、もうそろそろお墓参りに行く勇気を振り絞らなければならないだろう。現実ではないとは言え、エルから頭を下げられてお願いされたのだから。
「えっと、おはよ……あれ、リーシェさま? 泣いてるし、汗びっしょりだけど、大丈夫ー?」
などと考えながらベッドから身を起こし、汗で気持ち悪くなった寝間着から普段着に着替えようとしたその時、この部屋の扉が勢い良く開く音と同時に、鮮やかな赤色の髪をしたメイドの妖精さんが入ってきたのを目にした。
恐らく無意識だろうけど、ノックもせず、私が何をしてるのかを気にせず豪快に元気良く入ってくるその姿が、小さかった頃のエルそっくりだったから、思わず固まってしまった。少し前まで夢を見ていた余韻があるものだから、その頃の思い出が甦ってきて、更に涙が出てくる始末である。
「大丈夫、乗り越えるから……!」
「リーシェさま、何かおかしいよ。本当に大丈夫なの……?」
「うん! 妖精さん、本当に大丈夫だから、今の忘れて!」
「首につけてるそれが、光ってるのに?」
「えっ……」
明らかに様子がおかしい訳だから心配されるのだけど、何を思ったのか、赤髪の妖精さんに脈絡もなくそんな事を口走ってしまい、困惑させてしまった。
で、更に焦った私は本当に大丈夫であると必死にアピールしたものの、どう考えても汗でぐっしょりな状態で泣きながら言っても、説得力など皆無である。
そして、妖精さんに指摘されて、
(はぁ……姉様たちをこれ以上心配させたくないって言うのに……)
館の皆に対してもそうだけど、ただでさえ今の私は姉様2人に余計な心配をかけている状態である。寝起きで首飾りが強く光っていると聞けば、それだけで何をしていたとしても血相を変えて駆けつけてくれる位、心配を思い切り追加でかけてしまう事だろう。
「ごめん、妖精さん!!」
「えっ……ちょっと、リーシェさま!?」
だから、今更何を言っているのかとは思うけど、せめてこれ以上の心配の上乗せは阻止しようと決意し、夢の中のエルのお願いでもあるお墓参りを実行に移すために、庭の方へと急いで走っていった。
道中、今の自分が寝間着である上に汗をかいたままだと思い出したけど、エルのお墓参りに比べればさしたる問題でもないから、今は取り敢えず考えない事に決める。
「あっ、エルのお墓……っ!」
運が良いのか悪いのか、赤髪の妖精さんと数人のメイドさん以外とすれ違う事もなく中庭へと出た私は、エルのお墓があると言う大木の根元へと真っ先に向かうも、すぐにお参りをする事が出来なかった。
実物を視認した瞬間、思考に
「ふぅっ、ふぅ……うぅぁぁ……ぅ」
封印期間込みで100年以上生きてきて、一二を争うと言っても良い程の猛烈な苦痛である。首飾りのお陰で暴走する事はないとは言え、気を抜けばすぐにでも気絶してしまいそうだ。
しかし、夢の中のエルと少しだけでもお墓参りをすると言う約束をしていたから、気絶などする訳にはいかない。当然、諦めると言う選択肢もなく、私はそのまま収まるまで耐え抜く方を選んだ。
「や、やっと収まってきたぁ……」
永遠とも感じる時間を耐えに耐え、気絶せずに頑張っていると、ようやく思考にかかる靄が晴れてきたのを実感出来た。同時に、立っているのも辛くなる程の猛烈な頭痛も嘘の様に収まり、首飾りから放たれる光も暗闇でようやく分かる程度にまで落ち着いたのを確認する。
(パチュリーの首飾りって凄いなぁ。けど、暴走を抑えるのがこんなにも辛いなんて……)
波鎮めの首飾りの強力な効果を身をもって体験する事になったけれど、本当に凄いと言わざるを得ないと思う。私の暴走魔力と感情を抑える際に気絶しかねない苦痛を味わう欠点はあるものの、抑えきった後に身体に何も不快感が残らず、心がかなり落ち着かされると言う意味では、かなりの強みだ。
今更思ったけれど、これの名前が
「リーシェお嬢様、気づくのが遅れて大変申し訳ありません! もう大丈夫なのですか!?」
などと考えながら立ち上がってお墓参りをしようとした時、明らかに慌てていると分かる美鈴が私の方へと駆け寄るのが目に入ったため、一旦その場に留まる事に決めた。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。