目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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壁を乗り越えたリーシェ

「あ、うん。さっきまでは凄く苦しかったけど、もう大丈夫だよ。頭痛も収まったし、思考にかかる(もや)も消えたから」

「そうでしたか。苦しそうな呻き声と記憶に新しい気の膨れ上がり……いえ、リーシェお嬢様の場合は魔力ですね。それを感じたので万が一の時は私が何とかしようかとも思いましたが……大丈夫な様で良かったです!」

 

 エルのお墓参りをしようとして実物を見た瞬間に苦しみ悶え、首飾りのお陰で何とか収まるまで耐えきった私は、こんな様子を見て駆けつけてくれた美鈴の心配を解消させるため、もう大丈夫であるとアピールをした。

 

 そのためにやっている事は、説得力皆無だった赤髪の妖精さんの時と殆んど変わらない訳だけど、今の私は首飾りの効果によって魔力の暴走や感情の高ぶりを強力に抑えられている状態だ。

 

 加えて、眩しい位に光り輝いていた首飾りの宝石部分も、今ではその輝きが暗闇でやっと分かる程度にまで抑えられている。お陰で美鈴にも信用してもらい、安心させる事が出来たのは良かったと言えるだろう。

 

「心配かけてごめんね、美鈴。そして、駆けつけてくれてありがとう。私を想ってくれてる事が分かって、凄く嬉しかった」

 

 そう思うと同時に、私は血相を変えて駆け寄ってきてくれた美鈴に対して、心配をかけた事に対する謝罪とお礼の言葉を述べた。この場合、相手の心の内がどうであろうと謝罪とお礼をするのは当然の事だけど、これ程までに想われているのだから、尚更心がこもる。

 

「いえ、あれだけ苦しそうにしてれば、当然ですよ」

「そうなのかな? 私がレミリア姉様の妹だって事を抜きにしても、かなり素晴らしいって言える位の行動だと思うけど……」

 

 結果、私の謝罪とお礼に気を良くしてくれたみたいで、笑みを浮かべてくれた。その際に『あの程度なら当然ですよ』と言っていたけど、どう考えてもあれは当然の事だと言って片付けて良い行動ではないだろうから、やんわりと否定はしておく。

 

「……それにしても何故、今まで『あの時を思い出して苦しくなるから』と言って拒んでいたエルさんのお墓参りを、寝間着のまましようと思ったのかは分かりませんが……えっと、私もお供しても良いですか?」

「美鈴が、私と一緒にお墓参り?」

「はい。勿論、強制ではないので嫌なら嫌と言って下さいね」

「ううん、そんな事はないよ。一緒にお墓参りしよう」

 

 そんな感じの、何とも言えない穏やかな雰囲気で会話を交わしていたところ、美鈴が途中で一呼吸置いてから、私と一緒にエルのお墓参りをしても良いかと訊ねてきた。

 一瞬、どうしてそうお願いしてきたのだろうと疑問に思ったけど、お願い自体を断る理由もないし、そもそも断ろうとすら微塵も思わなかったため、これを了承した。

 

(エル、約束通り来たよ。あの時は凄く悲しくて辛かったから言えなかったけど……61年間、楽しい思い出を沢山与えてくれてありがとう。結局、大したお返しも出来なくてごめんね。大好きだよ……!)

 

 で、美鈴と一緒にエルのお墓の前に立って目を瞑り、天国へと旅立った彼女に対して黙祷を捧げ始めたものの、心境は全く穏やかではなかった。改めてエルとはもう2度と会う事は出来ないと、変え様のない事実を突きつけられたためだ。

 

 呼吸が苦しくなり、勝手に大量の涙が溢れ、今すぐにでも叫び泣きたいと言う抑え難い衝動に駆られる。たった1分足らずと言う短い時間が、まるで永遠とも思える長い時間に思えてきてならなかった。

 しかし、ここで叫び泣いてしまったり、逃げたりしてしまえば全てが台無しになってしまう。そうならないために、せめてこの間だけでも、私はこの衝動に耐えなければならない。

 

「リーシェお嬢様。もう、大丈夫ですよ」

「っ! うぅぁぁ……エル、エルぅ……!!」

 

 およそ1分、色々と言えずにいた感謝の言葉などを心の中で述べた黙祷を終えた後、美鈴がもう大丈夫だと語りかけてきた上に私の背丈に合わせてしゃがみ、割れ物を扱うかの如く包み込んでくれたものだから、堰を切ったように溜め込んでいた感情が溢れ出してきた。

 

 そして、私は美鈴に抱かれて大泣きしながら、これからの館の皆との関係については言うまでもないけど、特に今居る人間のメイドさんとの関係を今まで以上に大切にしていこうと誓った。言いたい事は言っておこうと誓った。死んでしまった後に、ああすればよかったこうすればよかったと、後悔をしたくないから。

 

「こんな所に居たのね、リーシェ! 様子がおかしかったって聞いたけど、貴女大丈夫なの!?」

「寝間着のまま美鈴とお墓参り……リーシェ、一体何があったの? 首飾りが光ってたとも聞いたけど、大丈夫なの?」

「あっ……」

 

 色々な考えが頭を巡りつつ、溜め込んでいた感情を解放してスッキリし、さて館に戻って着替えとお風呂を済ませようかと思い始めたその時、今度はレミリア姉様とフラン姉様が赤髪の妖精さんから聞いたのか、慌てた様子で私に大丈夫なのかと問いかけをしてきたのを聞いた。

 

「ふふっ……レミリア姉様、フラン姉様。私なら、大丈夫だよ。()()()()()()()

「……ええ、どうやらそうみたいね。安心したわ」

「そっか。まあ、大丈夫なら良いけど、何があったのかは聞かせてくれる?」

「勿論だよ、フラン姉様」

 

 ただ、今の私は心の壁を乗り越えてエルのお墓参りを済ませ、非常に清々しい気分である。なので、その気持ちを満面の笑みと言う形で表し、大丈夫である事を強く示す。

 すると、首飾りも沈黙を保っている事から姉様2人は私の言う事を全面的に信じてくれて、明らかにホッとした表情を見せてくれた。

 

 その後、フラン姉様から一体何があったのかと改めて訊ねられたため、今日起きてから今に至るまでの経緯を、事細かに説明を始めた。心の壁を乗り越えたからなのか、説明している時に一切辛いと思う事はなかったため、つっかかる事なく全てを話し終える。

 

「なるほど、夢の中でお墓参りの約束をしたのね。凄いじゃないの。辛かったでしょうに……約束を果たしたから、きっとエルも喜んでくれてると思うわ」

「確かにね! 辛い現実を乗り越えてまでしたんだから、喜ばないはずがないよ! それにしてもリーシェ、良く乗り越えたね! 凄いよ!」

 

 そうして説明を終えると、姉様2人は良くやったと言わんばかりに私を褒めてくれた。随分と苦労はしたけど、死んでしまったエルが喜んでくれたと思えば、この苦労はないも同然だ。

 

「さて、館の中に戻りましょう。結構汗とかで汚れているみたいだから、リーシェはお風呂に入ってきなさい」

「うん、分かった」

 

 こうして、最大の目的であるエルのお墓参りを、心の壁を乗り越えて達成する事が出来た私は、レミリア姉様とそんな会話を交わしながら3人一緒に館の中へと戻っていった。

 




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