目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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憤慨する天使

「リーシェさま、1日お部屋からトイレ以外で出てはいけないって、つまらなくないの?」

 

 苦しみ悶えつつも、心の壁を乗り越えた時から何だかんだで5年経った今日、私は自室を訪れ一緒に過ごしている赤髪の妖精さんからかなり心配されていた。何故なら今日、レミリア姉様とフラン姉様からしつこい位に部屋から出るなと念を押され、トイレ以外は如何なる場合でも部屋の外に出れない事が決まったためだ。

 

 本来なら、姉様2人と一緒に館で行われる、吸血鬼一家が集まって情報交換などを行う『定例会議』に私も初めて参加するはずだった。

 しかし、それは傲慢無礼かつ閉鎖的で有名らしいコルベルシア家と言う、フラン姉様が『殺してやりたい位憎い奴ら』とまで言い切り、レミリア姉様が『絶対に会わせたくない』とまで言い切る上位吸血鬼一家が来る事が急に決定したため、中止となった。

 

 何でそこまでキツく評価するのかと姉様2人に聞いてみたら、どうやら私の事を聞くに堪えない悪口などでこき下ろし、挙げ句の果てに姉様2人や館の皆を見下す発言を連呼したりしたためとの事。

 

 もし、私がその場に居たとすれば、自分はいくら他人から酷い悪口を言われたって、精々うるさい奴らだとしか思わない。しかし、大好きな姉様2人や家族同然の館の皆を悪く言っているのを聞けば、気分が非常に悪くなるのは確実と言えるだろう。

 

 そう考えるとフラン姉様が殺してやりたい程憎いと思うのも、レミリア姉様が私を絶対に会わせたくないと思うのも、良く理解出来た。それと同時に、私だったら反射的に手が出てしまうだろうそんな状況に耐え忍んだ、姉様2人は本当に凄いなと改めて思った。

 

「暇潰しに出来る事もあるし、年単位で幽閉されてた時に比べれば、1日なんて全然大した事ないよ。それより、赤髪の妖精さんの方こそ大丈夫なの? いつも動き回ってるのに、部屋でじっとしてるの辛くない?」

 

 頭の中でそんな事を思い浮かべながら、赤髪の妖精さんからの問いかけに1日程度なら大した事などないと答えた後、むしろ赤髪の妖精さんの方こそ大丈夫なのかと聞き返した。寝ている時や食事時以外でじっとしている所を、ほぼ見た事がないためだ。

 ちなみに、休みの日は私や姉様2人以外だと大体、愉快な妖精5人組で賑やかにしているか、他の妖精や人間のメイドさんにちょっかいを出して遊んでいたりしている。

 

「別に平気だよー! だって、リーシェさま()遊んでくれるんだもん! あっ、遊んでくれるなら何でも大丈夫だよー」

「あぁ……うん。なら良かったけど」

 

 すると、赤髪の妖精さんは即座に私の問いに対し、元気良く平気だと答えてくれた。純粋で嘘などつかない彼女の事だから、きっと本当に平気なのだろう。

 まあ、それには私が彼女と遊ぶ事を了承する前提があってこそみたいだけど、その程度なら何ら難しい事ではない。

 

(とは言え部屋の中で出来る事って言ったら限られてるし、何して遊ぼうか……ん?)

 

 なので、部屋の中でも赤髪の妖精さんに楽しんでもらえる様な遊びをどうしようかと真剣に考え始め、少し経ったその時、微かに部屋の外が騒がしくなっているのが聞こえてきた。それも、メイドさんたちが楽しく騒いでいると言うよりは、()()()()()()()()()()()と言う例えがしっくり来る感じである。

 

「こわいよぉ、痛いよぉ、うわぁぁぁん……!!」

「えっ、黄髪(おうはつ)の妖精さん……?」

 

 こんな事は今までの記憶に一切なかった。故に、一体何があったのかと気になった私は、ひとまず赤髪の妖精さんとの会話を中断し、部屋の周囲の様子を確認しようと椅子から立ち上がった瞬間、思い切り開いた扉から入ってきた大泣き状態の黄髪の妖精さんに飛び付かれた。

 

 愉快な妖精5人組の中で最も明るく騒がしい彼女の、明らかに異常としか思えない泣き方と怯え方に驚いていると、背中に攻撃を当てられた痕があるのに気づいた。本人ではない私でも痛みが分かってしまう程の、とても痛々しそうな傷痕だった。

 

 何らかの、黄髪の妖精さんにとってまずい事態が起こった事は分かったものの、どんな事態が起こったのかが全く読み込めず困惑したものの、それはすぐに解決される事となる。

 

「ほう。お前、リーシェ・スカーレットだな?」

「……そうだけど」

「なら話は早い、俺の父の元に一緒に来てもらおうか。後、そこの黄色の妖精を……裁くから渡せ」

「は?」

 

 何故なら、その後すぐにここへとやって来て、私に自身の父親のところに来いと偉そうにいきなり言いに来た同年代と思われる吸血鬼から、黄髪の妖精さんを裁くから渡せと言われたからだ。

 

 どう言う経緯でこうなったのかは分からないけど、これによって彼女は私の目の前に居る吸血鬼に攻撃を受け、危機を感じで何とかここへ逃げてきたと言う事態が起こったと、私はようやく理解した。

 

(許さない……けど)

 

 つまり、()()()は妖精さんを痛めつけ、あわよくば裁こう(殺そう)とした訳だ。

 訳の分からない発言と他人に対する酷すぎる態度、姉様2人に迫る強さなどから、もしかしたら姉様たちが言っていたコルベルシア家の誰かかも知れないけど、そんなのはどうでも良い。

 相手がどんな存在であろうと、私にとって大切な館の皆を1人でも痛めつけたのであれば等しく敵なのだから、対処しなければならない訳だし。

 

「おい。弓を構えるとはどう言うつもりだ? まさかとは思うが、俺に逆らうつもりか?」

「一応聞くけど、何で黄髪の妖精さんを裁こうとする?」

「……俺の服を水で濡らしたからだ。どうせ復活するのだから、問題はあるまい」

「ふざけているのか、お前……っ!」

 

 しかし、相手の言い分も一応は聞いておこうかとすんでの所で思い立ったため、弓は構えたままで私の目の前に居る吸血鬼に対し、どうしてこんな事をしたのかと質問を投げ掛けてみた。

 ただ、返って来た答えが『服を水で塗らされた』から、罰として裁こうと言うものだったから、心が怒りの炎で燃えていってるのを実感した。

 

 服を濡らされたのが事実なのであれば、妖精さんに落ち度がないとは言わないけど、たかがその程度で痛めつける程の罰を与えるのは、明らかに常軌を逸した行動だ。しかも、どうせ復活するのだからと発言したと言う事は、少なくとも1度は消滅するまでいたぶるつもりだったのだろう。

 

 ふざけるな。確かに妖精さんは殺されても復活するから実質不死であるけど、どんな記憶でも消えないし、精神構造や痛みの感覚とかも人間たちとそっくりなのだ。もし何度も繰り返しいたぶれば、確実に妖精さんの精神が崩壊して人形の様になってしまうではないか。そんな未来など、私は絶対にごめん被る。

 

「アハハっ! 貴方、やっぱりここに居たんだねぇ!!」

 

 相手が私の大切な館の皆を酷い理由で傷つけるのなら、私もアイツを傷つけて最悪殺してしまう事も厭わない。責任は私が全て取ろう。そう覚悟を決め、本気で奥義魔法の準備に入ろうとしたものの、それは全身からどす黒いオーラを纏い、理性が吹き飛んでいそうな感じが漂うフラン姉様の登場により、必要がなくなる事となった。

 




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