他の話と比べて今話は長めとなっています
(フラン、間に合ってくれるかしら……)
うちの館のパーティー会場で開催された、沢山の吸血鬼が一同に会する定例会議にフランと一緒に参加した私は、途中から話し合いにいまいち集中しきれないでいた。理由としては、コルベルシア家の長男『ロフルス』がいつの間にか居なくなっている事に、ふと気づいたからだ。
これが、例えばレイブン家の兄弟2人やルーテ夫人とかであれば信用があるから、私もさほど気にはしなかっただろう。しかし、会議が始まるや否や、何故かリーシェが居ない事に不満を漏らして騒いでいたコルベルシア家の奴らともなれば、話は別である。
故に、万が一の事態を想定してフランを途中で退席させ、リーシェの部屋へと向かわせた訳だけど、既に相当な時間が経っていた。自身と父親に心酔し、かつ短気なロフルスが狡猾な手段でリーシェを誘い出してしまっているかもしれないと思うと、不安でしょうがなかった。願わくは、2人が相対する前にフランが止めて欲しいけど……
「ふむ。自分と夫人が悪目立ちする事で長男から目を逸らさせ、この場から脱出させるとは、コルベルシア伯爵も考えた様で」
「全くですわ。それにしても、精神が不安定な彼女をここに連れてきて、一体何がしたいのでしょうね? レミリア、何かこうだってものはあります?」
「ええ、勿論あるわよ。考えるだけで虫酸が走る様なものがね」
「そう……やはりあるのですね。ちなみに、レミリアと同じかは分かりませんが、私も予想は幾つかありますわ」
頭の中で祈っていると、コルベルシア家がリーシェを何故それ程定例会議の場に連れてきたがっているのか、私と同じ様に疑問に思っているルーテ夫人から、ピンと来る様な予想はないのかと小声で訊ねられた。
当然、アイツらがリーシェを連れてきて何をしようとしているかなんて、今挙げようと思えば3つは挙げられるので、ルーテ夫人からの問いに肯定の意を示した。
そして、すぐ後にルーテ夫人も予想が幾つかあると言ってきたので、一応聞いておこうかと思い立ったものの、その前に豪快に扉を開け、大声で呼び掛けてきたフランが見せびらかしてきたものが衝撃的過ぎたため、聞きそびれてしまう。
「お姉様、見て!!
「「「……うわぁ」」」
何故ならそれが、詳しくどうとは言わないけど色々と悲惨な事になっているロフルスだったからである。
しかも、もはや名前すら呼ばずにコレ呼ばわりしている上に、とても大怪我をしている人物に対する扱いとは思えない扱い方をしていた。見せつけた後にその辺に投げ捨てるとは、相当堪えたのだろう。
(間に合わなかった……か)
そして、これによってリーシェとロフルスが既に相対してしまった事が確定した。まあ、この場に連れてこられなかっただけマシであるけど、復活するとは言え妖精が1人殺されかけたのだから、最悪と言っても良い。
「フランドール……き、貴様ぁぁぁ!!」
「ふふっ、やる気な訳ね……なら、こっちも全力全開で行くよ!」
で、そこから更に不運は続き、自分の息子がボコボコにされた上にゴミ扱いされて激昂したコルベルシア伯爵と夫人、その長女である『サティー』の3人が一斉にフランを殺そうと襲いかかってしまった。こうなってしまえばもう、会議を続行するどころか戦闘を避ける事すら不可能である。
「最悪よ、もう! レイブン伯爵、申し訳ないけど一緒に戦ってもらえるかしら? ルーテ夫人は皆の退避誘導を、ミドナとネイビスは地下の大図書館に居るパチェにここへ来る様に伝えてくれる? 勿論、事が済んだ後のお礼は弾むわよ!」
対して、フランはそんな3人の襲撃を『フォーオブアカインド』と『狂気の啓示』を使用して分身を込めた4人の全力で迎え撃つ事を選択し、戦闘が始まってしまう。
本当なら内々に事を収めるべきなのだけど、相手は腐っても上位吸血鬼一家である。そんな存在を自分とフランの2人だけで収めるのは難しいと判断したため、何かと付き合いの長いレイブン家の皆にも協力を要請した。
同時に、事が済んだ後のお礼に何かをすると言う約束を対価として提供するとも伝え、スカーレット家のみが利益を得る事のない様にするのも忘れない。
「そうですねぇ……では、私たちの身が危なくなった時の救援と、これからも今までと同じ付き合いをお願いすると言うのはどうでしょう? ルーテも、それで良いでしょうか?」
「私は、それで問題ないですわ。レミリア、是非ともよろしく頼みますよ」
「ええ、その位なら勿論よ! 本当、感謝するわ!」
結果、レイブン家の皆は私の頼みを自分たちが危なくなった時の無理ない範囲での救援と、これからも今まで通りに付き合いを続けていく事を対価として受けてくれる事が決まった。
当然、これ程の好条件を受けないつもりなどないためこれを了承し、私はグングニルを握りしめ、フランの分身に夢中なサティーめがけて一直線に向かい、攻撃を仕掛けた。
「ぐぁっ……レミリアか……! あんたもロフルスを半殺しにしてくれたフランドールと同罪だ! 罰を与えてやる!」
「そうか。だが、アイツがフランに半殺しにされたのは、うちの館の住人と私の可愛い妹に手を出したからだ。お前、ましてや他のコルベルシア家の奴らに私たちが罰を与えられる謂われなどない!」
良い感じで不意打ちが決まり、それなりに大きなダメージを与えたからか、元から激昂していたサティーは更に怒りのボルテージを上げ、私に罰を与えてやると意気込み始めた。
しかし、元はといえばロフルスが黄髪の妖精やリーシェに、色々とやらかしてくれたお陰の出来事であるのに、罰を与えてやると言うのは、全くもって片腹痛い。
なので、サティーと槍で打ち合いをしながら、ハッキリとお前たちに罰を与えられる謂われなどないと言ってやったところ、とんでもない事を言ってのけたため、驚きのあまり動きが止まった隙を突かれて弾き飛ばされてしまった。
「レミリア、あんたの言うその住人とは妖精の事だろう?
「……」
それは、死んでも復活する妖精ごときでガタガタ言うなと言う、明らかに常識が欠如しているとしか思えない発言である。自分を慕ってくれる仲間を想う気持ちが誰よりも強いリーシェが聞いたら、絶対に即殺を決意しそうなだけに、本当にこの場に連れて来なくて良かったと、改めて思った。
「もう良い、終わりにしよう。私はもう、今はお前の声すら聞いていたくない……覚悟はしておけ」
「何を言って――」
同時に、ただでさえ彼女は相対したくない1人であるのに、今の発言で声すら不愉快で1秒も聞きたくない程の存在へと昇華したため、私は速攻でサティーとの戦闘を終える事を決意し、行動に移った。
まずは、私の魔力で作り上げた紅い鎖で対象をがんじがらめにして拘束する魔法を使用、動けなくしたところで次にこれでもかと猛烈な勢いで弾幕を叩き込む。会議場が悲惨な事になるのも構わず、とにかく抵抗が出来なくなって無力化されるまでひたすら打ち続けた。
「調子に、乗るなぁぁ!!」
「ちっ、しぶとい奴だ……ならば」
しかし、鎖が破壊される程の弾幕でも倒しきる事は出来なかったらしく、息を上げながらも反撃に槍を投げてきたため弾幕を中断、私はすかさずそれをグングニルで薙ぎ払って破壊した後に『
リーシェからプレゼントされた魔導書に書いてあった魔法であったけど、実戦でもその威力は遺憾なく発揮出来た様で、本当に良かったと思う。
「レミィ! 待たせたわね……全員、光属性魔法を放つから今すぐそこから離れなさい!」
「よし……レイブン伯爵、フラン! 今すぐソイツらから離れて!」
「「了解!」」
そして、この最高のタイミングでミドナとネイビスに呼ばれて来たパチェが登場し、光属性魔法を放つからこの場から離れろと警告をしてきたため、私はそれを叫んで復唱し、分身以外のフランとレイブン伯爵に離れる様に促した。
「さあ、覚悟しなさい……『
「なんだとぉ……ぁぁぁ!!」
こうして、満を持してパチェの『
流石に本物の太陽光には劣る様ではあるけど、魔法としてはかなり強力な部類に入るだろう。吸血鬼にとっては天敵の太陽光を模した光を放てる魔法を使えるとは、流石私の親友だと思った。
「……パチェ! もうそろそろ大丈夫よ!」
「ふぅ、分かったわ」
太陽光を模した白く眩い魔法の光を浴びせかけてから1分、フランの分身による攻撃や拘束などのサポートもあって、コルベルシア伯爵と夫人の力が大幅に削がれたのを感じ取った私は、パチェに指示を出して魔法を解除してもらい、念のためにミゼラブルフェイトで拘束して抵抗出来ない様にした。
こうして、皆の協力もあってこれ以上事態を大きくさせずに沈静化させる事に成功した。
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