(どうにかして母様のお葬式に出れないの……?)
父様に激怒され、自室に閉じ込められてから今日でちょうど3日経った私は、どうにかして部屋の扉にかけられた結界を破壊か消滅させようと、試行錯誤を繰り返していた。何故なら、姉様たちがお母様のお葬式を行っていると、わざわざ伝えに来てくれたからである。
それを聞いた時は、またあの時のように込み上げる笑いに耐えきれずにやってしまったけど、姉様たちは何も言わずに私が落ち着くまでじっと待っててくれたのは本当に安心したし、嬉しかった。
同時に、扉にかけられた結界を壊せなくてごめんなさいと、本当に申し訳なさそうに謝ってきたのを聞いて、何だか凄く申し訳ない気持ちになった。だから、そんなのは姉様たちは気にしなくても良いと言って、気に病まないように気を遣った。
そして、お葬式の時間が迫っていたため、名残惜しかったけど姉様たちまで出れなくなったらそれこそ
(うーん……不味い……どうしよう……!!)
早くしないとお葬式が終わってしまい、母様を見送れなくなってしまう。しかし、手段はあっても、この結界を破壊したり消滅させる力も技術もないと言う事実が、私をどんどん焦らせていく。
どうにかならないかと部屋にある魔導書を漁り、私でもこの結界を破壊か消滅させる魔法が載っていないか隅から隅まで時間をかけて調べたものの、この部屋にあるのは防御か回避系の魔法か雷属性の攻撃魔法が載っている魔導書しかない。
まあ、破壊出来そうな魔法が無い訳ではないけど、そのどれもが私の技術では見ながらですら扱えない高度な物ばかりである。今までずっと、こう言った技術を練習してこなかった事を悔やむが、後の祭りである。
とは言え、お葬式への参加をまだ諦めきれないため、何度も何度も魔導書を読み返し、結界をどうにかする魔法を探していた。すると、とある魔導書の最後のページに『破壊の対価』と言う名前の、術者の魔力や妖力を対価に魔法障壁を取り除くこの魔法が載っているのを見つけた。難しい事はなく、それを使おうかと考えたものの、私では命と引き換えになりそうだったため却下した。
そうして手詰まりとなった事に対し、更に焦りが募っていき……
(……)
最終的に思い付いたのは、母様にもらった弓と適正のある雷属性魔法を組み合わせた攻撃を扉に当て、結界ごと物理的に破壊すると言う方法であった。
これが成功すれば、棺桶に入った母様を見てお葬式に参加する事は可能となるが、その後どうなるかが分かったものではない。失敗したり諦めたりすれば、少なくとも私の安全は保障されるだろうけど、母様のお葬式には参加する事が出来なくなる。進めば超地獄、退いても地獄と言う最悪の状況ではあったが……
(どうせどっちを選んでも地獄なら、やって地獄を見た方がまだマシだ!!)
やらないで後悔するよりは、やって後悔した方がマシだと思った私は、このまま実行する事に決めた。
まずは収納した母様の弓を魔方陣から取り出し、同時に専用の矢を取り出す魔法を使い、ありったけの雷の力を込めた矢を取り出した。そうして次にその矢を弓につがえ、もう一度限界まで力を込めて放つ構えを取る。この技は負担が大きすぎるため、今の私が命を失わないように使用するのは2回が限界である上、1回しか全力を出す事は出来ない。
つまり、2回当てて壊せなければお葬式には参加出来ないのは勿論の事、1回目の全力を当てて結界が無傷であっても同じだと言う事であるため、辛くても気合いが入った。
「あぁぁぁぁーー!!」
そして、全力で放った光の矢は扉を守る結界に当たり、雷を伴った爆発を起こした。予想以上の激しい轟音と稲光に思わず耳を塞いで目を閉じ、加えて全力で使った反動で力が抜けて思わず座り込んでしまった。
(結界は……え!?)
ある程度時間が経った後、閉じていた目を開けて扉にかけられた結界の様子を見た時、とても驚いた。何故なら、父様がかけた多重結界にヒビが入っていたからだ。しかし、力が抜けてしまった私にはもう、この耐久力の下がった結界ですら壊せる魔法を使う事は出来なかった。
(これで、母様のお葬式には――)
もう無理だ。これで母様のお葬式には参加出来ず、その上これだけの騒ぎを起こしてしまったのだから、きっと苛烈な罰を受ける事だろう。そう思っていた時、扉が結界ごと爆発四散した。
「っ! リーシェ!」
「フラン姉様……? どうして――」
あまりにも突然の出来事に固まっていると、フラン姉様が扉の前に立っていた。恐らく……と言うか確実にこの騒ぎを聞き付けて来たのだろう。
そんな事を思っていると、フラン姉様が私を背負って部屋を出て、沢山の吸血鬼たちがお葬式をやっている会場まで連れていってくれた。何も言ってないのに背負ってくれたのは、私が動けなくて辛いのを感じ取ってくれたからだろうか。
そうして会場についた途端、かなりの数の吸血鬼たちの視線がフラン姉様……と言うよりは、私に向けられた。相変わらず容姿について何か言ってくる人も居たけれど、その辺りは別に環境音みたいなものだから、気にもならなかった。
「フラン、お前……」
「……」
視線を全部無視しつつ母様の棺桶のところまで連れてかれた時、汚いゴミ屑を見るような目で、父様から見られた。あの時、しばらく顔を見たくないと言っていたから、そう言う態度を彼が取るのは仕方ない。また無理やり部屋に戻されたり、私を連れてきたフラン姉様に何か起こったりしないだけ、十分マシである。
その後はフラン姉様や、私を心配してくれていた心優しい数人のメイドさんやレミリア姉様たちに周りの視線や嫌がらせから守られながら、母様のお葬式を何事もなく乗り切る事が出来た。ただ、終わる直前は何故か込み上げる笑いを死ぬ気で抑えるので精一杯だったから、お別れの言葉が言えなかったのは本当に悔しかったけど、参加出来ただけ十分だと、私は思った。
こうして色々な事があったものの、お葬式に参加して母様を見送り、悲しみと謎の喜びと言う相反する感情を抱いたまま、この1日を終えた。
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