目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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衝突の兆し

「クレイナ、体調はどう?」

「体調ですか? そうですね……」

 

 コルベルシア家と対立しながらも、殆んど何も起きず平和に7年が経ったある日、私はクレイナの部屋へと訪れ、他愛もない会話を交わしながら体調がどうかと質問していた。

 70歳を過ぎ、足腰の不調などでメイドの仕事が辛くなってきたと言う理由で、一線を退いたからだ。

 

 1番最初に本人からその話を聞いたレミリア姉様は、凄くヒヤッとしたらしい。すぐにメイドの仕事を辞めさせると、似た理由で一線を退いた元メイドさん3人が居る4人部屋へと移動させた。

 そして今に至るまで、他の3人と並行して毎日の食事や体調管理の補助などを行い、妖精メイドさんたちを筆頭に皆で気を遣いつつ、読書や同室の住人さんを含めた館の誰かとの会話をしながらのんびり過ごしてもらっている。

 

「相変わらず、館の皆さんのお陰で絶好調です。足腰も完全ではありませんが、良くなってきている感じですね」

「そっか……ふふっ、良かった! 貴女が元気で居てくれるだけで、とっても嬉しい!」

 

 私も後からその話を聞いた時、エルが死んじゃった時の事を思い出したせいで、本当に胸が痛くなった覚えがある。想像したくもないのに、いつの間にか目の前から居なくなっている事まで想像してしまう。

 

 だから、私が訊ねる度にクレイナ本人の口から、相変わらず体調はすこぶる良くて、足腰も良くなってきていると聞けば、生きている中でもトップクラスに幸せな気持ちになる。勿論、体調が良くないと聞けば逆の思いを抱くのだけど。

 

「あっ、それと遅くなって本当にごめん。クレイナ、お誕生日おめでとう。プレゼントとして、堂々と誇れる様なものが中々出来なかったから」

「あらまあ、今年は3姉妹と私が一緒の絵なのですね。それに、こんなに心を込めたお手紙をくれるだなんて……本当、毎年ありがとうございます」

 

 そして、クレイナの体調が良いと確認出来た後は、ようやく用意する事が出来た誕生日プレゼントを、5日遅れた事を謝りながら渡した。本当なら、姉様たちと一緒にお祝いしながら渡したかったけれど、クレイナ本人が笑って喜んでくれたから良しとしよう。

 

 ちなみに、レミリア姉様は手紙とパチュリーに教わりながら作ったネックレス、フラン姉様は愉快な妖精メイド5人組から教えてもらったお菓子と手紙である。

 

「どういたしまして。クレイナとは種族も何もかも違うけど、家族と同等なんだから当たり前だよ!」

「家族、何だか良い響きです――」

 

 そんな感じで楽しく会話を交わしていた私だったけど、10分もしない内にその一時は終わりを告げる事となった。

 何故なら、レミリア姉様の依頼でパチュリーが召喚して一時契約し、定期的に来てコルベルシア家周辺を偵察してくれる3つの部隊を統括する役目を担う悪魔さんが、ノックもなしにドアを壊れんばかりの勢いで開け、酷く狼狽した様子で入ってきたからである。

 

「リーシェ様、お楽しみの所申し訳ありません! 火急のお知らせがある故に、こんな失礼を致しましたぁ!!」

「その慌て様……うん、良いよ。貴方が慌ててるって事は相当な事態だって察しているから、続けて」

「了解です! 実は……」

 

 普段は冷静沈着かつ丁寧で、偵察の仕事も報告も淡々とこなしている悪魔さんがこれ程狼狽し、かつレミリア姉様ではなく私に報告しているとなると、もう嫌な予感しかしない。

 ただ、聞かない訳にもいかないため、申し訳なさそうにしている彼に話の続きを促してみたところ、やはり予感通りであった事が分かってしまい、複雑な感情を抱いた。

 

(遂に動き始めたか……!)

 

 その当たってしまった予感とは、コルベルシア家とその傘下が本格侵攻に動き始めたと言うものであった。

 彼曰く、およそ攻撃に向かう1000近くの中位吸血鬼を含めた軍団の内、私たちの方へと向かってくるのは伯爵を含めた推定300~400人もの大軍らしい。

 

 しかも、念のための援軍を要請しようにも、私たちに味方してくれると言ってくれたレイブン家やその傘下の方にも軍勢が割り当てられているとの事だ。当然、そんな状況の中援軍の要請など出来る訳ないから、かなり悪い状況と言えるけど、備えられるだけまだマシだろう。

 

「レミリア姉様とフラン姉様、パチュリーに美鈴はこの事は知っているの?」

「今、()()()()()悪魔たちが各々伝えに行っておりますので、大丈夫です。恐らく、中庭で皆さんお待ちかと思われます」

「生き残った……えっと、なんかごめんね。ありがとう」

「いえ、そう言う危機があると言うのは契約の際に明記されてましたし、しっかりそれに見合う対価はもらいましたので……それでは、また後程」

 

 更に、悪魔さんとの会話を交わしていく内に、偵察部隊の仲間たちの中に倒されたなどの理由で、犠牲になってしまった仲間が存在した事が判明した。

 私たちにとって彼らは赤の他人だけれど、契約の縛りがあるとは言え、私たちのために身を削って頑張ってくれている彼らに犠牲者が出てしまったと聞けば、何だか申し訳ない。当然、心を込めたお礼の一言はかけたけど……

 

(ふぅ。今度は、私が皆のために身を削る番……絶対に、誰も死なせず守りきってみせる!!)

 

 そうして私は、会話を交わし終えた後にこの部屋を去っていった悪魔さんを見送り、心の中で何がなんでも犠牲者の1人も出させず館の皆を守りきろうと固く決意をし、クレイナに行ってくると一言かけてから、姉様たちが待っていると言う中庭へと向かっていった。




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