目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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紅魔館防衛戦(前編)

「来たわね、リーシェ。話は聞いているとは思うけど……」

「うん、遂にここに来るんだよね。それも、コルベルシア伯爵込みで300~400人もの敵が」

 

 偵察悪魔部隊の総括役を担う悪魔さんから、とてつもない量の敵の大群が攻めてくる事を聞いた私は、迎撃態勢を整えるためにレミリア姉様たちが待っていた庭へと行き、戦闘前の会話を交わしていた。

 

 当たり前だけど、そこで敵が来るのを待ち構えていた皆の表情は険しかった。

 まあ、今回の攻撃で私たちが相対する敵の数は多ければ400人、伯爵も居る上に中位吸血鬼以上が揃っている。この数だけでも最高で差が80倍と言う、かなりまずい状況だ。

 しかも、これを防ぎきれなければ私たちはおろか、館の皆まで地獄を見る事になるのだから、無理もない。

 

「ええ。私たちは5人しか居ないのに相手は多くて400人……80倍も差があるとか、冗談じゃないわ。まあ、負けるつもりなんて一切ないけど」

「本当だよね……だからさ、リーシェには凄く負担をかける事になるけど、出来るだけ紅魔館に敵が近づく前に減らしてくれると、私たちが助かるからお願いね」

「リーシェ、私からもお願いするわ」

「勿論だよ。レミリア姉様、フラン姉様。皆のために私、頑張る!」

 

 だから、レミリア姉様とフラン姉様から、敵が館に近づく前に少しでも多く撃ち落として数を減らしてくれと、頭を下げられながらお願いされたけれど、言われるまでもない。私は最初から、そのつもりなのだから。

 

(とは言うものの、400は多いなぁ……)

 

 しかし、そうは言っても最低で300、最高で400は多すぎる。私の能力探知限界数である60の約5倍~7倍の敵を、今現在の最大探知距離かつ切り札魔法『サジタリウスの裂矢(れつや)』の最大射程の半径約20㎞圏内に入ってからここに来るまで、一体どれだけ減らせるだろうか。

 

 それに、必死に改良に改良を重ねたとは言え、切り札魔法は既存の魔力消費量が多い魔法である『雷拡(らいかく)の矢』と『誘導陣術(インディクションサークル)』を元にしている。そのせいか、奥義魔法の1つである『雷天(らいてん)矢弾(やだん)』よりも、消費する魔力が少し多くなってしまった。

 

 故に、あまり撃ちすぎると皆は守れても自分の命まで失う恐れがあり、姉様2人や館の皆が悲しんでしまう。それに加え、撃ち漏らした敵との戦闘をしなければならない可能性を考えると、切り札魔法の発動は最大でも5発が限度である。

 それに、どれだけ急ごうとも15~20秒に1発しか放てない関係上、相手との距離などの要素によっては、もっと少なくなるかもしれない。

 

「じゃあ、始めるよ……集中するから、出来れば話しかけないでね」

「ええ、分かったわ」

「分かったよ! お願いね、リーシェ!」

 

 そんな事を考えながら、皆に能力を使って探知をし始めると伝え、早速能力を負担がかかりすぎない限度にまで使い、私を中心として半径約20㎞圏内に居る存在の中で、紅魔館に近づく存在に焦点を当てて探知を開始した。

 同時に弓を構え、切り札となる魔法をいつでも放てる様に詠唱を行い、生成した破裂する雷の矢の1発目をつがえる。

 

(冗談でしょ!? 何この速さ……って驚いてる場合じゃない!!)

 

 待つ事およそ10分、敵の先鋒らしき反応が能力の探知圏内に入ったところで、私は一瞬だけ驚いてしまった。何故なら、40人の吸血鬼が空を飛んでいる速度が、音速とほぼ同じだったと能力によって判明してしまったからだ。

 

 距離20㎞で音速と同等程度なると、敵に対処出来る時間は1分程度しかない。つまり、切り札となる魔法を放てるのは色々な要素を鑑みて、どれだけ多くても3発と言う事になってしまった。

 

「皆を守るためなら、私はいくらでも……食らえぇぇ!!」

 

 しかし、だからと言ってやらない訳にはいかない。なので私は全力で叫びつつ、運良く密集してくれている敵に向けて、既につがえていた矢を音速の約2倍の速度で放った。

 そして、間髪入れずに2発目の破裂する雷の矢を生成し、再び現れた20人の吸血鬼の方へと同じ速度で放つ。

 

(くっ、2発だけでもやはりキツい……けど!)

 

 結果は、相手が運良く密集してくれていたお陰か、今の2発で合計40人の吸血鬼を、撃破ないし大幅な弱体化をさせる事に成功した。が、今ので対処出来なかった敵と探知に引っ掛かった新たな敵が40人増え、またしても合計60人となってしまう。

 

 なので、最後の1発を落ち着きつつも手早く16秒で生成し、驚異度の高い紅魔館に近づいてきた敵に向けて盛大に放った。これについては、先程の2発で警戒して散開されてしまったお陰か、撃破か大幅な弱体化出来たのは少なくなって15人となった。

 

「皆、もうそろそろ敵が見えてくるから近接戦闘の準備をお願い!!」

「分かったわ……フラン、美鈴! リーシェとパチェは後衛の要よ! 絶対に守りきりなさい!」

「うん、勿論だよ! お姉様!」

「当然です! お任せ下さい!!」

 

 3発の切り札魔法を放ち終えた時点で、敵の到達まで残り20秒程となったため、私は皆にそろそろ近接戦闘の準備をする様に呼びかけた。

 同時に、自身は驚異度の高い敵の未来位置を能力で得たあらゆる情報から予測しながら『神弓(しんきゅう)イチイバル』と『雷拡の矢』を略詠唱で発動させ、見えるか見えないかと言う距離まで迫り来る敵へと攻撃を仕掛ける。

 

 ここまで、コルベルシア伯爵の姿が()()()()()()()()のがとても気にはなるけれど、未だに沢山の敵が紅魔館へと近づいてきるこの状況下、探しに行く余裕などない。私は頭の隅でそう考えながら、敵の迎撃を続けた。

 

「見えたっ! 皆、絶対に守りきるわよ!!」

「「「了解!!」」」

 

 そうして、遠目に見える位の距離まで近づかれたところで、レミリア姉様の掛け声によって皆が全力を解放したため、私も防御魔法の『戦女神の護衣(アイギスベール)』と『神々の目(ゴッドアイ)』を発動させた上で、雷弓を構えて再び矢を放った。




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