平均文字数よりもかなり長めの話になっています
「嘘でしょ、リーシェ!? しっかりしてよ……ああもう! こんな時に邪魔ねぇ!!」
「あがっ……」
あの後、知らぬ間に自身へと向けられていたコルベルシア伯爵の全力と言える攻撃を、見るに堪えない状態になりながらも防いで猛烈な反撃を喰らわせ、限界に達して倒れたリーシェを肩に抱えながら、私は襲い来る邪魔者を排除し続けていた。
痛みなどで苦しみながら、うわ言の様に私の名前を呼ぶ傷だらけかつ血まみれのリーシェを見て、本当なら今すぐにでも館の中に連れて行って治療してあげたいのだけど、未だに残る沢山の敵に阻まれて館に戻る事が出来ずにいた。
パチェに頼もうにも、リーシェの離脱によって自身を守る事に精一杯となっているため出来ず、美鈴にも同様の理由で出来なかった。
フランに至っては、リーシェのこの姿を見てしまったからか、怒りよりも先に混乱してしまい、自分の身を守るのも難しい状況に追い込まれてしまったため、頼めないでいる。
これだけを見れば絶望的だけど、分身3人によって本体のフランは今のところは無事と言うのが、不幸中の幸いと言えるだろう。ただ、このままではリーシェの命が失われてしまう状況が改善されなければ、最悪なのは変わらない。
「ぐっ……ふはははは! 流石に至近距離でアレはまずいと思ったが、どうやら限界の様だな!」
「あれだけ喰らって、何で生きてる!!」
「単純な事だ、レミリア。俺を殺すには、
これで、
リーシェの奥義魔法が、今まで放った攻撃やさっきの防御魔法に力を使いすぎて威力がそれなりに下がっていたとは言え、超至近距離でまともに喰らえば普通は無事では済まないはずなのに……本当、私を挑発する余裕がある位なんて、アイツの耐久力は冗談じゃない。
「さてと、このままでも
「アレ……なっ!?」
などと考えながら襲い来る敵を排除していると、アイツが私とリーシェを殺すために
どう考えても、この魔法攻撃は喰らったらまずい事が明らかであるため、咄嗟に防御魔法を展開して襲い来る鎖を弾いた。
フランは分身3人よる防御で粉砕、美鈴は周りの敵を気功で弾き飛ばした後に全身に強力な気によるバリアを張って弾き、パチェは火と光の複合属性と思われる多重結界を展開して触れた敵ごと鎖を消滅させたため、館の皆には犠牲者は出ずに済んだ。どうやら、これの物理・魔法攻撃力自体は飛び抜けたものではなかった様だ。
しかし、本来なら味方である吸血鬼、それも私たちとの戦闘で死にかけている吸血鬼はこれを防御する事が出来ず、この鎖によって貫かれてしまった。
味方ごと巻き込む攻撃とは、アイツは一体何を考えているのかと思ったけど、それはすぐに分かる事となる。
「『吸命術
「そう言う事か! くっ、間に合って!!」
何故なら、アイツが魔法の詠唱を終わらせた瞬間、鎖で貫かれた吸血鬼数人から魔力などの生命維持に必要なものを吸い始めたからだ。
当然、私はせっかくリーシェが身体を張って与えてくれたダメージを回復させては堪らないと、出せる力をかなりの割合で込め、紫電を纏わせたグングニルを魔力吸収中のアイツに投げつけた。
「……そう上手くは行かないわよね!」
「当然だ。吸収中は無防備なのだから、バリア位は張るさ。しかし、紅魔の天使と言い貴様と言い、子供の癖に大人と殺り合えるとは……亡きスカーレット伯爵は、とんでもない奴を残したものだ」
「そりゃどうも! 全く嬉しくないけど!」
しかし、私の投げたグングニルはアイツに当たる直前、吸収した力も回している強力無比なバリアに阻まれ、弾かれそうになってしまう。故に、グングニルに遠隔で力を更に加え、穂先を食い込ませて何とかバリアを破って回復を阻止しようとするも……
「しかし、残念だったなぁ!! レミリア・スカーレット!!」
「手こずり過ぎたか……!」
残念ながら、奴の発動していた魔法が完成してしまい、今まで与えていたダメージの殆んどが回復されてしまった。少し後に、バリアを破砕して脇腹をえぐらせるダメージを与えたものの、すぐに回復されてしまい、意味ない攻撃と化してしまう。
魔法の餌食となった吸血鬼は死んでしまった様であるが、敵が数人減った程度では全く気休めにもならなかった。
(……まずい!!)
そして、回復を済ませたアイツがこちらを向いて不敵な笑みを浮かべた瞬間、私がリーシェごと斬られてしまう
(くっ! 危なかったわ……)
刹那、私の左腕を僅かに掠めたアイツの黒い剣が、地面へと振り下ろされた光景が目に入る。
小規模であるけど、振り下ろされた地面にクレーターが出来ていた程の威力、もしも回避する方向を間違えていたり出来なかったりしたらと思うと、本当に心の底から身震いした。
「ちっ! 紅魔の天使も大概だが、疲労が見え見えな貴様に何故攻撃がまともに当たらん!?」
「お前なんかに教える訳、ないでしょ!!」
その後も、運命を操る能力を最大限に活用して攻撃の来る位置を予知し、時折掠めた痛みに耐えながらも抱えているリーシェへの攻撃や、致命傷だけは何とか全て避けていた。
ただ、奴の言う通り今の私はかなり疲れている。このままでは、少し先の未来が予知出来てもその内身体が追い付かなくなり、最悪の未来がやって来てしまうだろう。
とは言え、動きを止めてしまう訳にもいかず、攻撃に気を割けば回避しきれずに最悪の未来が早くやって来てしまう状態だ。なので、どうにかしてこの状況を突破するための案を出さなければいけないのだけど、こういう時に限って何も思い付かず、焦ってしまう。
「はぁ、はぁ……レミィ、随分待たせたわね!『
「なっ、力が抜け……があぁぁぁ!!」
しかし、リーシェを抱えながら身体を動かすのが辛くなってきたタイミングで、パチェが息を上げながらも自分を襲う敵の大半を始末するか瀕死状態にまで追い込み、私の援護に2つの魔法を使ってくれた事によって、何とか窮地を脱する事に成功した。
奴の身体を透過した光の波紋が力を半分以下にまで抑え込み、上空に展開された太陽を模した魔法陣から照射された眩い光が、防御魔法を貫通して少しずつ奴の身体を焼いて灰にしていく。
ついでに巻き込まれた敵の吸血鬼に至っては、光を浴びてからものの10秒程度で灰と化して消滅していた。弱っていたと言うのもあるけど恐らく、弱っていなくてもそう長くない内に消滅していった事だろう。
「……舐めるなよ、貴様ら――」
「フラン、今よ! 貴女の秘奥義を、憎き敵にお見舞いしてやりなさい!! レミィ、美鈴! 万が一に備えて、早く私の後ろに避難して!」
「「了解!!」」
そんな中でも、必死に太陽光の檻から抜け出して攻撃を仕掛けようとしてきた奴だったけど、パチェがフランに秘奥義を見舞ってやれと呼び掛けた事によって、無駄な努力として終わる事となった。
「ふぅ……私のリーシェを痛め付けて殺そうとするお前なんか……壊れろ、壊れろ、壊れて消えちゃえ!! 『禁星 燃え爆ぜる星』!」
「何だこれは……! 押さえつけられ……ぬあぁぁぁぁ!!」
何故なら、フランが使った秘奥義が、空中に現れた緋色の炎が迸る大きめの炎塊へ触れた対象を謎の力で押し込みつつ、強い圧力と高熱を加えると言う、対象への殺傷力が非常に高いものであったからだ。そう言えば、ついこの間パチェの協力で凄い強い魔法が出来たって喜んでたけど、恐らくこれがそうなのだろう。
もしも、アイツが万全な状況であれば突破された可能性も少なからずあるだろう。しかし、回復してから今までの戦闘に力を使い、パチェの魔法2つによって大きく力を削がれた上でこの奥義を喰らってしまえば、逃れる事は不可能だったらしい。
まずは、フランに蹴り上げられて中心へと押し込まれる十数秒の段階で、アイツのかけていた防御魔法障壁が耐えきれずに破砕され、その直後に猛烈な火炎と圧力が直接身体にかかり始めた。秘奥義とだけあって、威力は凄まじい事が良く分かる。
そして、この魔法自身に備わる吸引力も結構あるらしく、発動時に運悪く超至近距離に居た吸血鬼たちもどんどん巻き込んでいっているみたいだけど……うん。練習の際は、威力を大幅に抑えていたのだろう。
「おい、早くフランドールを止めろ!! コルベルシア様が死ぬ!」
「あ? 本物と同じ強さの分身が3人も居ると言うのに、どうやって止めろと言うんだ! それに、あの七曜の魔女が後ろから援護射撃をしてくるんだぞ!?」
「と言うか、いっその事――」
この光景を目にした残存吸血鬼は、パチェの背後に避難した私たちを無視してフランを止めに行こうと向かっていったものの、魔力を消費しすぎた彼らでは相手にならず、フランの分身3人に物言わぬ血溜まりとされてしまった。
ならばやけくそとこちらに向かってきた吸血鬼は、そもそも張られた光の結界を突破出来ずに灰と化すか、魔法で撃ち抜かれて殺されるかしていると状況である。
「はぁっ、はぁっ、そろそろ終わりだよ……きゅっとして、ドカーン!!」
そして最終的には、アイツが全て飲み込まれて見えなくなった後、炎塊の位置を更に上昇させたフランが能力を使う時みたいに、空中の炎塊に向けて右手をぎゅっとする仕草をして、それを急激な拡散に転じさせ、猛烈な音と爆炎と爆風を伴う大爆発を起こさせた事で、私たちの方へと来ていた敵は、空を見上げて唖然としてしまった。
力を大幅に削いだ上で奥義を喰らわせたのだから、きっとこれで大丈夫なはずだけど、念のために周囲の気配を探ってみる。
「気配も何も、感じない……か」
結果、アイツの気配がそれを機に全く感じられなくなったため、本当に倒す事が出来たと私は判断した。
皆ボロボロになってしまったけど、何とか誰も死なずに済んだのは本当に良かった。後は、1番辛い思いをしているリーシェを治療し、笑顔を見せてもらえれば完璧である。
こうして、満身創痍ながらも紅魔館を守りきる事に成功した私たちは、急いで危険な状態となってしまったリーシェの治療をするため、もはや脅威ではなくなった残党吸血鬼を無視し、疲れきって動けないフランを美鈴が急いで抱えてから、館の中へと全員で駆け込む。
その後、パチェに扉を含めた全ての箇所に光の結界を張ってもらって侵入出来ないようにしてから、私たちは急いで安心して治療が出来る部屋へと向かって行った。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。