目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話もレミリア視点です


戦いの爪痕

「と言う訳で、皆! 各自そう言う方向で動く様に! 以上よ!!」

「「「了解!!」」」

 

 コルベルシア伯爵の苛烈な侵攻を、満身創痍になりながらも防ぎきって戦いを終わらせた後、パチェの主導で私たちはプライベート部屋を使い、リーシェとフランの治療に取りかかっていた。

 

 本来なら、比較的動ける余裕のある私や美鈴もゆっくり休みたいところではあったけれど、大怪我をしたリーシェと魔力を使いきって動けないフランが心配で休めそうになかったから、パチェやこあ、美鈴に呼んできてもらった、地下室に避難していたメイドたちの中の数人と一緒に動いている。

 

 そして、戦場となって悲惨な有り様となってしまった紅魔館の庭は、生き残りの吸血鬼が居なくなった事を確認してから、グロテスクな光景に強い耐性のあるメイドたちや美鈴にやってもらう事が決まった。本当、館の皆には感謝でしかない。

 

「それにしても、パチュリー様。ちょっとこれ、リーシェ様の怪我の様相が惨すぎません? 傷だらけで血濡れなのもさる事ながら、少し触れるだけでも凄い声を出す位痛がるなんて……正直、自分まで痛くなってくる様で、見てられないです」

「うん。リーシェさま、全身傷だらけで息も荒いし、涙まで浮かべてて凄く辛そう。だから、私も同じ」

「パチュリーさま。リーシェさま、今は辛くて泣いてるけど、また笑ってくれるかな?」

「心配しなくても大丈夫よ。怪我と魔力の消費が酷いから、時間はかかるだろうけどね」

 

 そんな中、パチェの指示を聞いて色々と動いていたこあが、治療中のリーシェの様子から、悲痛な面持ちで見ていられないと口にしたのが聞こえてきた。愉快な妖精5人組の子たちも、それに同調している。

 

(……ごめんなさい、リーシェ)

 

 動けないフランのお世話をしながら、時折辛そうに声をあげるリーシェと、その様子を見て心を痛めている皆を見ていると、どうしても罪悪感が沸いて出てきてしまう。

 私がもう少ししっかりしていれば、適切な判断が下せていれば、身体の弱いリーシェがこんなにも痛くて辛い思いをさせなくても良かったのではないかと、そう言う考えが浮かんできていたためである。

 

 特に、コルベルシア伯爵(アイツ)の姿と気配が見えたり感じたりしていない事に疑問を抱きこそすれ、()()()()()()()()()()()()が、後悔してもしきれなかった。

 あの乱戦下、それだけに気を遣う訳にもいかなかったとは言え、私の最大の失態と言えるだろう。

 

「お姉様。そんなに過剰に思い詰めないで、元気出して!」

「フラン……?」

「だって、リーシェはお姉様の事が大好きだからこそ、笑顔かつ元気で居て欲しいと思ったから、ああやって辛く苦しい思いをしてまで守ってくれた訳じゃん。そんな中、お姉様自身が沈んでる様だと、ここまで身を呈して守ってくれたリーシェが可哀想だと思うの。だから、もう一度言うけど……お姉様。過剰に思い詰めないで、元気出して!」

 

 そんな感じで考え事をしながらフランのお世話をしていると、不意に過剰に思い詰めたりせずに元気を出してと、笑顔で2回も同じ事を笑顔で言われた。

 

 言われてみれば、確かにその通りだ。リーシェは私が笑顔で居れば嬉しそうにしてくれて、逆に落ち込んでいたり辛い事があった時には、自分を投げ出してまで助けてくれる様な子なのだから、今回の行動の根底にもそれがあるのは明白だろう。

 

 となれば、私が守られた結果リーシェが傷ついた事に対して、大きく落ち込んだりするのは良くない。だから私は、フランの言った通り元気で居ようとは思ったけれど、やはり完全には元気になれないでいた。

 

 理由は、回復魔法や魔力の提供を受けつつ、腕や脚などの負傷が酷い箇所に包帯を巻かれて動かない様に固定する作業時の、リーシェがあげる痛みによって苦しそうなうめき声が、どうしても心に響いてくるからである。

 せめて辛く苦しい痛みだけでもどうにかしてあげたいけど、私ではどうにも出来ないから、本当にもどかしかった。

 

「パチュリー様。リーシェ様の感じる痛み、今すぐどうにかなりませんか? 見てるだけでこっちも辛くて、見てられないです」

「うーん……申し訳ないけど、無理ね。これでも副作用が出ない程度に痛覚遮断の魔法を使ってるから。他に良い方法があるかもしれないけど、何せこう言った系統の魔法を使うのは数える程しかないし……危急存亡なこの現状では、回復魔法をかけつつ魔力を与え続けて、ある程度治癒してくれるのを待つしかないわ」

「……」

 

 この思いは、リーシェの治療に当たっているパチェたちも同じである様で、ありとあらゆる方法を使ってどうにかしようとしてくれている事からも、それが読み取れた。

 

「パチェ! 魔力が足りないなら、私が残りは提供するわ!」

「えっ? レミィ、貴女も相当魔力を消費しているのだから、残しておかないと――」

「それ以上は何も言わないで。私はリーシェの苦しみが和らいだり消えたりしてくれれば、死にさえしなければ構わないから!」

 

 だから、パチェが魔力を与え続けてある程度治癒してくれるのを待つしかないと言ったのを聞いた時、誰かから何かを言われる前にリーシェに提供しようと思い立った瞬間、身体が動いていた。

 まだ戦闘をしようと思えば出来る位には魔力があるのだから、その分を回せば少しは治癒速度が早まるだろう。勿論、私の身体に恒久的な影響が出ない程度にではあるけれど。

 

(ぐっ……! 辛いけど、今度は私が身体を張る番よ!!)

 

 出来る限り痛みを与えない様にリーシェの身体に優しく手をかざし、早速私に残った魔力を移し替え始めた。当然、身体に負担のかかるそんな事をすれば、私自身が辛く苦しい思いをする羽目になる。正直言えば、今すぐにでも止めたいと思っていた。

 

 しかし、私の残り魔力が3分の2程移っていったところで、リーシェの歪んでいた表情が少しずつ和らいでいき、身体に刻まれていた傷も治り始めると言う変化が現れてきたため、その思いは霧散する事となった。恐らく私が吸血鬼かつ、リーシェと血を分けた姉妹であるため、魔力の相性か何かが抜群だから、こう言った急激な変化として現れたのだろう。

 勿論、パチェたちの魔力提供を含むあらゆる尽力がなければ、私の残り魔力程度では、ここまでの変化を起こせなかっただろうから、感謝でしかない。

 

(ふぅ……ふぅ……これで、何とかなるかしら……ね!)

 

 そうして魔力を提供し始めてある程度の時間が経ち、かなりリーシェの苦しみを取り除く事に成功したタイミングで、とうとう限界がやってきたらしい。急にふらついたと思ったら、そのまま私の意識が闇に沈んでいくのを感じた。




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