「レミリアさん、久しぶりですねぇ」
「ええ、久しぶりね。そう言えば、貴方も8年前のコルベルシア家襲撃事件のあの日から、同じ感じで苦労が増えたらしいじゃないの」
コルベルシア伯爵とその傘下の紅魔館襲撃から8年経った今日、何事もなくのんびり平和に過ごしていた時、私とフランは一家総出でやって来たレイブン伯爵たちと相対し、8年前の事について話していた。何気に、直接会って話したりするのは、あの日以来初めてである。
まあ、それもお互いにコルベルシア家とその傘下から襲撃を受けつつも撃退し、それ以降仕事が忙しくなった事、加えて館同士の距離がかなり遠い事も含めたありとあらゆる要因が重なった訳だから、仕方のない事だろう。
「確かにコルベルシア家と傘下の襲撃以来、我々一家に振りかかる苦労は増えたと言えば増えましたが、大丈夫です。リーシェさん関連の話で苦労していると思われる、レミリアさん程ではないでしょうからねぇ」
「あの話……ってまさか、
なんて事を考えながらレイブン伯爵と話していた時、その会話の中であった
それは、リーシェが見えない距離からの誘導攻撃で大きく数と士気を削り、見える距離に近づいても非常に正確な弓捌きで淡々と敵を処理していた姿から、生き残りに恐れられて『
加えて、全力の隠蔽魔法を使ったコルベルシア伯爵の不意打ちすら見切って防ぎきり、消耗しきっている状態でも強力な攻撃が可能と、生き残りの吸血鬼たちを通して知らしめた事が、拡散に拍車をかけていた。
「はい。加えて、レミリアさん自身は勿論の事、フランさんや美鈴さん……ああそう、パチュリーさんにも『
私の問いかけに、レイブン伯爵は肯定の意を示した。この事からやはり、彼の言う話は私の記憶通りの事柄であった様だ。
本来ならこれだけであれば、別に特筆した事はなかった。問題なのは、リーシェの話がきっかけとなり、私たちの事が多くの吸血鬼に伝わるにつれて、それを聞いた吸血鬼などからの面倒臭い戦闘系の依頼が今までよりも格段に増えてしまった事である。
(はぁ……)
加えて、うちに直接訪れて直談判しに来る奴らまで増えてきて、面倒な事この上ない。美鈴にも随分と苦労をかけてしまってるから、どうにかしたい訳だけど、レイブン伯爵の住む地域にまで広がっているのなら、噂の沈静化は不可能であろう。思わず、ため息をついてしまった。
ただ、露骨にそう言う態度を取られずとも、色々なところで遠回しに容姿などを貶される事が多いリーシェが、そう言った奴らから純粋に吸血鬼としての力を恐れられるのは誇らしく、嬉しい事である。だから、多少面倒になろうともこの状況が続いて欲しいと言う、そんな複雑な思いもある。
「全く、面倒な事になったわ。まあ、お陰様で私やフランはもとより、リーシェへの
「ですわね。それに、それのお陰でコルベルシア家の勢力は夫人が残っているとは言えど急速に衰え、驚異ではなくなった恩恵があるでしょう。レミリアの望む、愛する妹2人や館の者共との幸せな生活を送る目標が達成出来ていると言う訳ですから、この程度の面倒事なら大した事はないのでは?」
「ええ、ルーテ夫人の言う――」
その事をレイブン伯爵との会話の際に口に出したところ、ミドナやネイビス、フランと会話していたルーテ夫人から、私自身の愛する妹2人や館の皆との幸せな暮らしをしたいと言う、強い望みが叶っているのだから良いではないかと、そう言われた。
まさにその通りで、ここ8年間は前述の面倒事を含めたやるべき仕事が増えてしまったものの、コルベルシア家の勢力が衰えた事によって、報復や嫌がらせの心配も大きく減少した恩恵も得ている訳である。だから、ルーテ夫人に貴女の言う通りだと言おうとしたのだけど、それは中断させられる事となった。
「なあ、レミリア! そういや何で、ここに天使様が居ねえんだ?」
「ネイビス。いくら殆んど年が離れていないとは言え、彼女は当主の吸血鬼なんだから、少しは丁寧にした方が……」
「ああ、ミドナ。別に呼び捨て位なら良いわよ。それで、リーシェが何でここに居ないかって話だけど……」
何故なら、この場にリーシェが居ない事に対して、ネイビスがどうしてなのかと疑問を投げかけてきたからだ。
そう言えば、まだここにリーシェが居ない理由を話していなかった事に今気づいたため、ネイビスの態度に苦言を呈するミドナに構わないと言って終わらせ、レイブン家の全員に理由を話し始める。
「なるほど。ミド兄が天使様と
「うん。リーシェさんって自分自身や僕たちの様な他人よりも、まずはお姉さん2人と館の皆を優先するタイプだからね。それはともかくとして、人間で80歳は長生きだと思うなあ」
「確かに、言われてみりゃその通りだ」
で、フランにも補足してもらいながらクレイナのお世話をしていると言うのを伝えたところ、ネイビスやミドナは勿論の事、レイブン伯爵やルーテ夫人もすぐに納得してくれたから良かった。まあ、リーシェの性格を他人の中で最も良く理解してくれてるから、納得してくれないとは思わなかった。
それにしても、人間であるクレイナが80歳まで生きている事にレイブン家の皆は結構驚いてたけど、そんなものだろう。
後は、うちみたいにわざわざ人間のメイドを雇い、自分の意思で出ていかないか他の住人を害さない限りは最期まで面倒を見るなんて、珍しいを通り越して変人と思われてるのもあるはずだ。まあ、だから何だと言う話ではあるけど。
「さてと、久しぶりにのんびりした事ですし、我々もそろそろ帰りましょうかね」
「ええ、そうですわね。レミリア、リーシェによろしく言っといて下さいよ。フランも、よろしくお願いします」
「勿論よ。伝えておくわね」
「分かった。私からも言っておくね」
そして、愉快な妖精メイド5人組たちが持ってきてくれたお菓子や紅茶、人の血液を食べたり飲んだりしながら色々と楽しむ事1時間半、そろそろ帰ると言い出したレイブン伯爵のひと声により、終わりを告げた。その際、この場に居ないリーシェにもよろしく言っといてと頼まれたため二つ返事で了承し、館を飛び立って見えなくなるまで見送りをした。
(さてと、リーシェのところに行こうかしら)
こうして、レイブン家との時間は幕を閉じる事となった。
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