「リーシェを……幽閉するの?」
「そうだ。これは、もう既に決まっている事だから、例えレミリアやフランがなんと言おうと覆らん。当然、本人の抗議なども聞かんぞ」
「どうして……!」
愛する母様が死んでしまってから今日でちょうど1週間、私を含めた紅魔館の皆は、父様からとある重大な決定を伝えられるために食堂へと集められていた。それは、今日から行われる事になるらしい、あの日に扉にかけられた結界とは比べ物にならない強度を誇る障壁が張られた地下室へと幽閉するものであった。
「俺の命令を無視し、結界を破壊してまで葬式に強行参加してきたからだ。あれは、それなりに強力な防御力を持っていたはずだったが、それを破壊してきた……つまり、何か気に食わない事があれば誰彼構わず殺しかねんと言う事だからな。それが直るまで、地下で幽閉させておけば安心だろう」
「詭弁ね……大好きだった人のお葬式の日にあんな事をされれば、誰だってああするわ。私やフランでも、同じようにしていたはずよ。だからリーシェはああしたのであって、本来なら誰彼構わず殺すような子じゃ……」
身体の負担や周りへの影響などの事を考えず、母様から譲り受けて何故か変化した弓と教えてもらった魔法を使って、扉にかけられた結界を力ずくで破壊してお葬式に強行参加したのが原因であるみたいだ。
気に食わない人を殺しかねなくて危険だからと言っていたけど、実際のところはあれから周りの来客への対応と後始末、その他色々な面倒事が起き、その原因を作った罰と言う形で父様がこれ幸いにとに忌むべき存在である『私』を隔離したいだけだと、姉様たちがこっそり教えてくれた。まあ、そんな事だろうと思った。
「誰が何と言おうと、リーシェを地下に幽閉すると言うのは当主である俺の命令――」
「当主様、リーシェ様のお姿はあの時に期せずして披露されたのです。幽閉などではなく、この際全面的に押し出してしまうのは如何でしょうか? この際だから申し上げますが、吸血鬼として忌むべき姿であるからと言って、幽閉させるのは可哀想で……」
その時、いつもお世話になっている1人のメイドさんがこのピリピリした雰囲気の中、勇気を出して私を幽閉から回避させようと、これは決定事項だと言い切った父様に対し、全面的に押し出すのはどうかと言ってくれた。他のメイドさんたちが父様から発する威圧感に怯える中、震えながらも意見した彼女にわたしはより一層の好意を抱いた。勿論、何も言わなかった他のメイドさんを責める事はしないし、しようとも思わない。感謝だってしている。
しかし、それでも父様の決定は覆る事はなかった。それどころか彼女の発言に一層の不快感を示し、今にも殺しかねない程の威圧感を放ち始める。これには、流石のあのメイドさんも震えが止まらないようだ。
「リーシェ様……申し訳ありません。一介のメイド程度では、どうする事も出来ませんでした」
「気にしないで。それと、いつもありがとう」
「……!」
すると、そのメイドさんが私の元へとゆっくり歩いてきてお辞儀をしながら、小さな声で申し訳ないと言ってきた。どうやら、父様の意思を曲げられなかった事に何か感じているらしい。
ただ、例え結果がどうであれ、私のために自分の身の安全を捨ててまで、遥かに格上の存在に意見してくれたと言う事実だけで十分であると感じているから、気にしなくても良いとそのメイドさんに伝えた。
「ふん、たかがメイド風情が……まあ良い。とにかく、リーシェの幽閉は決定事項だ。ほら、自分で歩いて地下に行け」
その後、私はメイドさんに意見されて若干不機嫌な父様に促され、亡き母様との訓練の時に使っていた地下室へと向かった。
地下室に入ると相変わらずあの時と同じで、広さの割には物が少なく殺風景な部屋であった。ただ、これから長い間幽閉される事前提であるらしく、申し訳程度にベッドが置かれ、机と椅子がそれぞれ1つずつと本棚の中に当たり障りのない本がざっと6冊程、魔力を媒介として炎が灯る燭台が置かれていた。私は元々外でワイワイするようなタイプじゃないからマシだけど、それにしたって物が少な過ぎではと思う。
それから、食事は交代でメイドさんが運んできて、レミリア姉様やフラン姉様との面会は何日かに1度、幽閉期間は未定であるなどの事を父様から伝えられた。
「レミリア、フラン。早く出るんだ」
「「……」」
用事が終わり、この場に1秒たりとも長く居たくないらしい父様がレミリア姉様とフラン姉様を連れて、この部屋を出て行った。その際に一瞬見えた、姉様2人の表情はとても見るに堪えない物だった。
あの姉様たちの事だからきっと、私をここに幽閉などさせた父様から助け出したかったと思っているのかもしれない。しかし、吸血鬼の大人である父様と子供である姉様2人では力の差があり過ぎるが故に歯向かう事が難しいから、致し方なく私を無視せざるを得なかった事が辛いといったところだろうか。
(レミリア姉様、フラン姉様……大丈夫。私、頑張るから!)
そんな姉様たちの心中を察しつつ、心の中でそう思いながら、長い間の幽閉生活を耐える事を私は決意した。
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