パーティーへのお誘い
「ねえ、お姉様。ここ最近、強くなったと思わない?」
力が最も発揮しづらくなる新月の夜、当主の仕事の休憩がてら妹2人と一緒に、食堂でお菓子と紅茶を飲みながら楽しい時間を過ごしていた時、流れを断ち切る形で私はフランから話を振られていた。
ついさっきまでは、私やリーシェと他愛もない話をしながら笑って過ごしていたのに、何の脈絡もなく真剣な表情で強くなったと思わないかと問いかけられたものだからどうしたのかと思って、一瞬だけ固まってしまった。左隣を見たら、案の定リーシェも不思議そうにしている。
「……フラン。急にどうしたの? 強くなったって、誰の事を言ってるの?」
「えっとね、リーシェの事だよ! 吸血鬼としての強さもそうだけど、精神的にさ!」
だから、急にそんな事を言ってどうしたのかと、一体誰の事を指しているのかと問いかけてみた。
後は、ここ数年の間に勢力を増してきていると言う、聖魔騎士団の事を指している可能性もあり得る。私たちやレイブン家の勢力圏には全然攻め込んでくる様子はないし、色々な意味でこちらから仕掛ける訳にもいかないから、今のところは偵察程度で済ませている。
「あぁ、なるほど……リーシェの精神的な面の話ね。言われてみれば、確かにその通りだと思うわ」
頭の中で思考を巡らせていると、フランはリーシェについてだと笑顔でそう言ってきた。何でも、ここ最近リーシェが精神的に強くなった事を言いたいらしい。
確かに、フランの問いに対しては納得しかない。今から60年前、まるで昨日の事の様に思い出すクレイナとのお別れ会を経てから、リーシェが精神的に強くなったと思える出来事があったからだ。
それは、クレイナと似た理由で一線を退いた人間メイド3人のお別れ会の時、自分からそれを悲しみに耐えつつ執り行い、かつ立ち直りが早かったと言うものである。
当時は、リーシェがクレイナの時と同じ位精神的に辛くなるなと予想していたから、本当にビックリしたけど嬉しくもあった。きっと、死んでしまった彼女たちも私と同じ思いを抱いている事だろう。
多分、フランもその時の出来事をふと思い出したから、脈絡もなく話を振りたくなったのかもしれない。そう予想しながら、問いかけに対して肯定の意を示した。
「でしょ? ついこの間……いや、クレイナのお別れ会が60年前で、私が言いたかったのは55年前の事だから、全然この間じゃなかったね。えっと、クレイナの後に死んじゃった最後の人間メイドさんのお別れ会の時の事、覚えてる?」
「ええ、勿論よ。それにしても、あれからそんなになるのね。時が経つのは本当に早いわ」
「そっか。もう、クレイナとお別れしてからそんなに経つんだ……早いね。フラン姉様」
すると、案の定フランもその事を想像していたらしく、私に対して人間メイド3人のお別れ会の時の事を覚えているかと聞いてきたため、勿論だと答えた。きっちりと記憶に焼き付いているから、まるでつい最近の事みたいに感じるけど、もう55年と言う時間が経ったんだなとフランの言葉で改めて実感する事となった。
「レミリアさま! フランさまに、リーシェさまも! 3人に、用事があります!」
それからは、あまり長くそう言う類いの話をしていると、いくらリーシェの精神が強くなったとは言っても、聡明に思い出させてしまって辛い事には変わらないと思った私が、話題を他愛もないものに戻そうとしたけど、それはすぐに中断される事となった。
「あら、どうしたの?」
「お手紙です! えっと、差出人はレイブンとか言う人たちからです!」
「レイブン家からの手紙……わざわざありがとうね。もう行っても大丈夫よ」
「はい!」
何故なら、愉快な妖精5人組の内『
で、渡しに来てくれた青髪の妖精にお礼を言って下がってもらい、早速渡された手紙を開いて内容を見たところ、書かれているのはこれから開かれる事になったパーティーに、私たちも来ないかと言うものであった。
参加する場合は今日の指定された時間までに招待状を持って館へ行き、しない場合は招待状に参加しないと書いて送り返してくれと、付属されていた手紙に書かれていた。
「なるほど、パーティーへのお誘いって訳ね。フランとリーシェはどうしたい?」
「私? うーん……何だか楽しそうだし、行ってみたいかな」
「レミリア姉様とフラン姉様が行くなら、私も行くよ」
「分かったわ。じゃあ、準備を済ませてから出発するわよ」
取り敢えず、コルベルシア家関係の事柄は今はなく、勢力が増し始めた聖魔騎士団の面々も紅魔館には攻め込んで来ない事は確認済みである。なので、私は行く事を決めた。
手紙を一緒に見ていたフランとリーシェにもどうするか聞いてみたところ、2人からも行くと言う答えをもらったため、館の皆に出掛けてくる旨を伝えるなどを済ませてから、レイブン家の館へと向かう事が決まった。
そして、出かける準備を済ませた上でパチェや美鈴、見かけた妖精メイドたちに手紙を見せながらの説明をし終えたため、私は妹2人と一緒に紅魔館から飛び立っていった。
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