「流石、レイブン家のメイドが淹れる紅茶はいつ飲んでも美味しいわね。しかも、最近また腕を上げたかしら」
「それに、こっちのお菓子も美味しいよね! 紅魔館のメイドさんたちと料理で争わせたら、どっちが勝つのかなぁ?」
「うーん……私的には、好みで別れるとは思うよ。フラン姉様」
レイブン伯爵に促され、姉様2人にミドナやネイビスも加えた5人で、私はパーティーを存分に楽しんでいた。紅魔館のメイドさんたちの作る料理や淹れる紅茶に匹敵する美味しさで、レミリア姉様もフラン姉様もかなり楽しそうにしていて、笑顔で話す様がとても可愛かった。
私たち以外にも、レイブン家やスカーレット家の傘下の吸血鬼たちも参加しているからか、会場が非常に賑やかな場と化していた。招待状に、常識を弁えていれば食事中のマナーなどは問わないで楽しもうとの一文が添えてあったから、余計にそうなっているのだろう。
「天使様、どうだ? 楽しんでるか? レミリアとフランの2人はどんな感じだ?」
「まあね。美味しい料理に大好きな姉様2人が加わってるから、尚更」
「言うまでもなく、楽しませてもらってるわ」
「私も同じだよ!」
「そうか、なら良かったぜ。なあ、ミド兄」
「うん、確かに良かった。レミリアさんとフランさんも同じみたいだし、僕たち
そんな感じで姉様2人と会話を交わしていると、ネイビスがこのパーティーを楽しんでいるかと話しかけてきたので、楽しんでいると正直な気持ちを答えた。姉様2人との幸せな一時には流石に及ばないけど、それを言うのは野暮な事なので言わない。
で、私に続いてレミリア姉様が比較的落ち着いた様子で、フラン姉様がいつも通りの元気な感じで楽しんでいると答えると、レイブン兄弟は良かったと言いながら、嬉しそうな様子を見せた。これだけの大規模なパーティーの準備を手伝ったらしいから、その苦労が報われると嬉しいのだろう。
もし私がその立場だったら、殆んどミドナやネイビスと同じ反応を示していただろうし。
「よう、レイブン兄弟にスカーレット姉妹。お前たちは知っているか? 聖魔騎士団の『聖女』の噂」
そう考えつつ、レイブン家のメイドさんの淹れてくれた紅茶を飲もうとした時、赤ワインが半分入っているグラスを持った吸血鬼がいつの間にか現れ、聖魔騎士団の『聖女』についての噂を知っているかと話しかけてきた。どうでも良いけど、随分と酔っぱらっているみたいだ。
「聖魔騎士団の聖女の噂……ああ、聞いた事あるぜ! 確か、単騎で弱小吸血鬼一家を文字通り光属性魔法などで
「その話なら当然、私も聞いた事あるわ。全く、相性が悪すぎるとは言え、とんでもない化物ね」
「だよね! それに、聖魔騎士団には他にも危ない相手がいっぱい居るから、大変だもん!」
当然、私たちにも深い関係のある噂のため、色々調べたりしてある程度の知識は既に得ていた。聖魔騎士団を作った聖教会が大々的に、神の加護を一身に受けた人々の救いとなる者として宣伝していて、名前は確か『エルラート・ディーハイン』と言っていた。
ネイビスの言っている通り、弱小吸血鬼一家程度なら単騎でも余裕で滅ぼせ、中堅吸血鬼一家でもある程度の味方が居るだけで壊滅的なダメージを与える事が出来る程の実力の持ち主である。他の属性魔法や身体能力がどうかは知らないけど、伝わる話を聞く限りで光属性魔法について言えば、全力のパチュリーと最低でも同等か、もしくはそれ以上の敵でしかない。
まだ、スカーレット家やレイブン家と言った上位吸血鬼一家や悪魔とは相対した事はないらしいけど、これらの理由から強く警戒する必要がある存在と認識していた。
「確かに、ヤバイ奴なのは話を聞けば良く分かるが、調子に乗りすぎさえしなければ、上位吸血鬼一家なら何とか大丈夫だと思うぜ。特に、スカーレット家なんかは調子に乗っても良いって思える位にはな」
「えっ? 流石に買い被りすぎじゃない?」
「いいや、買い被りすぎじゃないな。やたら強い美鈴って門番にあらゆる属性の魔法を使えるパチュリーって魔女、レミリアとフラン、天使様は言わずもがなだ。コルベルシアの一件から、紅魔館の住人たちも有名なんだぜ?」
すると、ネイビスが何を思ったのか、私を含めた紅魔館の住人なら聖女率いる軍団から襲撃されようともまあ大丈夫だろうと、そんな事を言い始めた。何でも、コルベルシア家の一件から紅魔館の住人たちがかなり強かった事が知れ渡り、ネイビスもそこからそう思ったらしい。
私はともかく、姉様2人や美鈴にパチュリーが良い方に有名になったのは嬉しい。けれど、実際はそんなに余裕があった訳じゃないから、調子に乗っても大丈夫かと言われると、それは違うのではと言わざるを得なかった。
まあ、5人で400人近くの吸血鬼を始末ないし撃退したと言う話を聞けば、そう思うのも理解は出来るけれど。
「ハハハ! 確かに、ネイビスの言う通りかも知れんな!」
「はぁ……あんまり、私たちに過剰な期待を寄せられても困るんだけど」
そんな話をしていると、最初に話しかけてきた酔っぱらい吸血鬼までもが大笑いし、ネイビスの言った事に同意し始めてしまった。こうなると、いくら言っても聞いてくれない気がしてきたため、もう好きなだけ言わせておこうと私は決めた。姉様2人も、特に止めようとしていないみたいだったから。
で、その後は何ら変わった事などなく、運ばれてきた最後の料理を食べながら5人で他愛もない話をしたり、お互いの館の住人についての自慢大会の様なものが開かれたりなど、心行くまでパーティーを楽しんだ。
途中、酔っぱらい同士の小さな喧嘩が数件発生したり、隣のテーブルで飲み食いしていた吸血鬼が調子に乗り過ぎて、何故かテーブルごとひっくり返すトラブルに見舞われたりもしたけど、概ね平和であった。
「皆さん、今日のパーティーは如何でしたか?」
「今日はありがとうね、楽しかったわ」
「勿論、お姉様と同じだよ!」
「私も姉様2人と同じで、この場を十分楽しめたと思ってる」
「そうですか。楽しめて頂けたのなら良かったです」
そして、最後の料理も食べ終わってもう帰る時間となった時、レイブン伯爵から今日のパーティーは如何でしたかと聞かれたため、美味しい料理にこの賑やかな雰囲気などを引っくるめて楽しかったと、感想を述べた。
私も含めて言ったのはありきたりな感想だったけれど、主催者のレイブン伯爵や兄弟2人も喜んでくれてたから良かった。もしも、紅魔館でパーティーを開く事があった時は、レイブン家の面々に同じ様におもてなしをして、楽しんでもらうことを考えよう。
こうして、レイブン家の館で行われた大規模なパーティーは、大きな揉め事は何も起こらずに楽しい気分のまま、終わりを告げる事となった。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。